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”これからも小泉首相は「日本国の代表」としてではなく「ブッシュ大統領のお友達」として、アメリカに従属していくしかない”
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投稿者 外野 日時 2005 年 3 月 15 日 21:39:57: XZP4hFjFHTtWY

(回答先: 台湾海峡 投稿者 外野 日時 2005 年 3 月 15 日 21:35:14)

『SAPIO』2005.03.09号

 ≪アメリカ国民は就任演説で早くも大続領を見離してしまった
 80億円の米国債を抱えた日本はブッシュ政権失速で再びマネー敗戦する≫
 大前研一(UCLA教授)

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 アメリカ・ブッシュ政権の2期目がスタートした。就任演説や一般教書演説で示されたスタンスは、北朝鮮やイランの核問題では、アジア諸国やヨーロッパの同盟国と連携、協力する従来の政策を継続する方針を示したものの、全体としては、国際協調への歩み寄りよりも、引き続きアメリカ主導で「自由の拡大」と「圧制の終結」を目指して「テロとの戦い」を拡大することに重心が置かれている。国際的な孤立を恐れないブッシュ政権はどのような道を突き進むのか? 2期目の命運を占った。
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 ■枢機卿や大司教の説教かと耳を疑うような就任演説

 ブッシュ大統領は、おそらく1年ぐらいでレイムダック(死に体)化するだろう。2期目のアメリカ大統領は早晩レイムダックになるが、ブッシュ大統領の場合は1月20日の2期目の大統領就任式の時点でそうなり始めたと思う。なぜなら、就任演説を聴いたアメリカ国民の多くが「ああ、我々はこんな人物を再選してしまったのか……」と、すでに嫌気がさしているからだ。
 その理由はまず、ブッシュ大統領が就任演説の中で「世界で(自由と対立する)圧制に終止符を打つという究極の目的を実現する」と述べたこと。これは、コンドリーザ・ライス国務長官が大統領就任式前の上院公聴会で「圧制の拠点(アウトポスト・オブ・ティラニー)」という表現を使い、人権問題を抱えるイラン、北朝鮮、キューバ、ミヤンマー(ビルマ)、ベラルーシ、ジンバブェの6か国を名指しで批判したことを踏まえたものである。つまりブッシュ大統領は、独裁的な政治体制を持ち、国内の反体制派や民主化勢力を弾圧している「圧制の拠点」がなくなるまでグローバル・コップ(世界の警察官)として撃つ、と宣言したわけだ。
 しかし、アメリカはイラク1国だけでも四苦八苦している。米軍を15万人も投入し、その戦費が毎月5000億円ぐらいかかっている。こんなことを続けていたら大変だ、さっさとイラクから撤退しろよ、というのが今のアメリカ人の正直な心境である。
 にもかかわらず、さらにあと6か国も手を広げるつもりなのか、と国民はあきれている。しかも、イラン以外の5か国についてはキリスト教対イスラム教といった宗教的な理由もない。そういう自分たちと遊離した世界観を持っている人間があと4年間も大統領をやるのかよ、と就任演説以降は国民もマスコミも開いた口がふさがらないという状況なのである。
 また、ブッシュ大統領は「中東全体に民主主義を広げる」とも述べている。しかし、アメリカが最も頼りにしているサウジアラビアは、王制の国で民主主義はない。名指しで非難されたイランは少なくとも選挙で政治指導者を選んでいる。アメリカが必死に守った頃のイランはパーレビ国王の時代で、やはり王制だった。アメリカ自身の中東政策こそ民主主義とはほど遠い”ご都合主義”なのだ。
 そのうえ、今回の就任演説には「圧制に終止符を打つ」ことを「神からの召命」と位置づけるなど「神」や「崇高なるもの」といった人間ではない存在に委ねているかのように聞こえる言葉が、そこかしこにちりばめられていた。あんな物言いは、枢機卿や大司教の説教ならともかく、大統領就任演説では極めて珍しい。
 そもそもブッシュ大統領が再選されたのは、民主党の大統領侯補だったジョン・ケリー上院議員に魅力がなかったこともあるが、最大の理由は国民が「ブッシュ大統領は修羅場(戦時)に強い」と判断したからである。ただし、その場合の「修羅場」とは、外国ではなくアメリカ本土のことである。実は、大半のアメリカ人は、アメリカがグローバル・コップの任務を請け負うのは間違いだと考えている。つまり、アメリカ人は「ホームランド・セキュリティ(本土安全保障)」の指導者として、ブッシュ大統領を選んだのである。
 ところが、就任演説を聴くと「修羅場の神頼み」になり、しかも「ホームランド・セキュリティ」を拡大解釈してアメリカ本土を防衛するだけでなく、自分たちが聞いたこともない国やどこにあるかも知らないような国にまでちょっかいを出そうとしている。そのコストを誰が払うのかといえば自分たちだ、それはちょっと約束が違うんじゃないか、冗談もほどほどにしてくれよ、という感じになってきた。
 就任演説の文章自体は、ピュリッツァー賞の受賞者が書いたのかと思うほど格調高く、個々のセンテンスが非常に美しい。だが、その内容は1期目の反省が皆無で、多くのアメリカ人の期待を裏切るものだった。むしろ文章の美しさ故に、国民との遊離が際立ってしまった。

 ■2期目初日から始まったレイムダック化

 もう1つ、アメリカ人があきれたのは、大統領就任式に4000万ドル(約42億円)も使ったことである。就任式はまるでハリウッドを延長したブッシュ・ファミリーのダンス・パーティーのようだった。しかし、その一方で、イラクに派遣されている15万人の米軍は防弾チョッキが足りず、みんなでシェアしている。車両などの装甲部品も不足しているため、兵士が鉄クズを拾って補っている。4000万ドルあれば、全員に防弾チョッキを配れるし、装甲部品も補給できる。そちらのほうが、あんなバカげたお祭り騒ぎよりもよほど優先的ではないか。あるいは、いっそのこと2回目だから就任式は中止にして、使うはずだった4000万ドルをインド洋大津波の被災国に寄付するというセンスがあってもよかったのではないか。いったい、あの就任式は誰のためにやったのか? 答えは「ダディ」だ。1期しか大統領を務められなかった父親に息子が2回目の就任式を見せたかっただけだろう。そうした批判が識者やマスコミから続出し、それがアメリカ人の琴線に触れ、共感を呼んでいるのだ。
 ブッシュ大統領の2期目スタート時の支持率は50%を切り、これまで2期務めた大統領としては最低水準だった。
 大統領選挙の惨敗で民主党は立て直しに30年かかるという見方もある。しかし、クリントン前大統領が再選された時は、共和党も同じようなことを言われていた。アメリカの政治の振り子は、すぐ逆に振れるのが常である。歴史を踏まえると、ブッシュ大統領の2期目は2年目ぐらいから綻びが広がるとみていたが、就任初日からレイムダック化が始まったと言えるだろう。
 しかも、レイムダック化してきた時に、ブッシュ政権はキャビネットの人材が非常に薄っぺらい。留任したラムズフェルド国防長官や新任のライス国務長官ら”身内”だけで固めているから、体を張ってブッシュ大統領を守る人もいなければ、違う発想をする人もいない。これまではワシントン政界で手練れの戦略家として知られ、「ブッシュの頭脳」とも呼ばれているカール・ローブ氏という参謀(正式な肩書は大統領上級顧問兼次席補佐官)が、巧妙にブッシュ大統領のイメージを演出してきた。いわば小泉首相における飯島勲首相秘書官のような存在だが、今後はローブ氏ひとりでは防御しきれなくなり、急速にブッシュ・ファミリーは孤立していくだろう。就任式はそのプロセスが始まった日であり、おそらく2期目のブッシュ政権は4年もたずに崩壊すると思う。

 ■「お友達外交」というあまりに危険な関係

 その時、日本はどうするのか?
 今や小泉首相はブッシュ大統領の最も忠実な”お友達”のひとりになり、日本はイギリス、オーストラリア、韓国などとともにアメリカの”特待国”になった。日本の外務省は「ブッシュ・小泉の信頼関係がある限り、日米関係は盤石だ」という言い方をしている。
 たとえば、北朝鮮による拉致被害者の曽我ひとみさんの夫で元脱走米兵のチャールズ・ジェンキンス氏の訴追問題について、外務省は「絶対にブッシュ大統領がサポートするから大丈夫だ」と言っていた。実際、この問題は司法取引によって、ジェンキンス氏が禁固30日の刑に服し不名誉除隊となることで決着がついた。しかも、それを決める軍法会議を大統領選挙の日に合わせて行なうという高等戦術を使ったため、アメリカでは大々的に報道されず問題になることもなかった。ブッシュ大統領の特別な計らいにより、予定調和でそういう結果になったわけだ。
 さらに外務省は、日本の国連安全保障理事会常任理事国入りも、ブッシュ・小泉関係の中でやってしまおうとしている。だが、論理的な合理性に基づいていないブッシュ・小泉関係は、精神的な結び付きではなく肉体関係から始まったカップルのようなものだから、外務省のやり方は実に危なっかしい綱渡りだと思う。
 たしかに、ブッシュ大統領は小泉首相を大事にしている。それは、次期駐日アメリカ大使にジョン・トーマス・シーファー氏(前駐オーストラリア大使)を指名したことでも明らかだ。シーファー氏はブッシュ大統領の”お友達の中のお友達”である。ブッシュ大統領の地元テキサス州の下院議員を3期務め、メジャーリーグのテキサス・レンジャーズをブッシュ大統領と共同経営したことがある古くからの盟友で「電語1本で何でも話ができる仲」だという。そんな竹馬の友のような人物を駐日大使として送り込んできたということは、いっそう親密な”お友達路線”で行こう、というメッセージにほかならない。これからも小泉首相は「日本国の代表」としてではなく「ブッシュ大統領のお友達」として、アメリカに従属していくしかないのである。
 百歩譲って、それはもはや仕方がないとしても、問題は小泉首相の任期が2006年9月で切れるということだ。ポスト小泉は混沌としているが、誰が次期首相になっても、小泉首相のようにアメリカベったり、ブッシュ大統領とズブズブの関係にはならないと思う。もしかすると、アメリカと距離を置こうとするかもしれない。となると、せっかくブッシュ大統領との連絡パイプとしてシーファー駐日大使がいても、日米関係は現在のような”お友達連合”にはなりえない。普通の国と国との関係になる可能性が高い。その時、小泉首相がブッシュ大統領の”お友達”になるために支払ってきた代償のツケが一気に回ってくるだろう。
 というのも、小泉首相が誕生してから、日本はいっそう気前のいいアメリカの「ミツグくん」に徹してきたからである。まず、世界中がユーロシフトしているのに、日本はひたすら米国債を買い続けてきた。今や日本は、約80兆円もの米国債を抱えている。もし、日本が5%でも10%でもユーロシフトしたら、ドルは確実に暴落する。
 だが、ドル暴落で傷つくのはアメリカではなく日本などの外国である。なぜなら、米国債を購入しているのは日本をはじめとする外国勢ばかりだからである。たとえば、03年の米国債保有残高の純増額のうち日本が買い増した額は全体の44・3%に達し、日本を含めた海外勢の購入が77・5%を占めている。米国債はアメリカ国内では22・5%しか消化されなかったのである。
 しかも、アメリカは国債を返済する覚悟も予定もない。というのは、ブッシュ政権の財政政策の基本が大型減税だからである。アメリカの財政赤字は過去最大の約40兆円に達している。この巨大な財政赤字を穴埋めするために国債を大量発行してきたわけで、本来それを負担するのは当然、アメリカの納税者である。しかし、ブッシュ大統領が大型滅税を継続しているということは、納税者には負担させませんよ、と言っているのと同じである。言い換えれば、アメリカは払つつもりがありませんよ、日本などの外国に負担してもらいますよ、と世界に対して公言しているのだ。
 この状況が放置されてユーロシフトが加速すれば、ドル暴落は避けられないだろう。アメリカの金融アナリストの大勢は、05年中に1ドル=90円になると予想している。そこで止まらず、1ドル=50円までドル安が進むという見方もある。ドルが10%下がったら、日本が保有している米国債は8兆円目減りする。国税収入が42兆しかない時に8兆円も消し飛んでしまったら、日本にとって死活問題だ。
 さらに、米軍が日本依存を強めているという問題もある。日本は世界で唯一、米軍に対して「思いやり予算」を献上しているお人好しな国だから、アメリカは東アジアに展開している米軍の主要部隊を日本にシフトしてきている。つまり、この4〜5年の間に日米関係は経済から安全保障まで、すべてが一蓮托生の運命共同体のようになってしまった。ここまできたらアメリカの51番目の州になったほうがいいのではないか、と思うほど節操がなくなっているのだ。
 このような状況下では、次の首相も打ち手がない。あくまでも米国債をサポートして、アメリカもろとも地獄に堕ちるのかどうか、という選択を迫られる。ブッシユ大統領がレイムダック化すると同時に日米関係も不安定になることは避けられないから、1年7か月後の日米関係は大変な混乱に陥っているかもしれない。

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