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イラク開戦2年 (朝日新聞)
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投稿者 彗星 日時 2005 年 3 月 20 日 15:58:32: HZN1pv7x5vK0M

【社説】2005年03月20日(日曜日)付


イラク開戦2年

●世界の不安は消えない

 米英軍がイラクに侵攻を始めてから、きょうで2年になる。

 「中東で民主主義の雪解けが始まった。イラクの人々は、完全な民主国家を築こうとしている」。ブッシュ米大統領はこの日を前にした演説で、勝ち誇るように戦争の成果をうたいあげた。

 確かに、1月の国民議会選挙に有権者は高い投票率でこたえ、国の再建へ歯車が一つ回った。絶望的に見えたパレスチナ和平でも対話が始まった。民衆の声に押されて、シリア軍がレバノンから撤退の動きを見せている。

 イラクで苦境続きだった2年を思えば「自由のラッパが鳴り響いている」と、はしゃぎたくなる気分も分かる。再選を果たした自信もあるだろう。だが、現実はどうだろうか。

 もし戦争がなかったら、フセイン体制は生き延び、米国にもイラク国民にも中東世界にとっても大きな脅威であり続けたに違いない。大統領はそう言う。

 しかし、その結果起きたこととの収支決算は、まだとても出せない。

 民間人が何万という単位で死んだ。人々の反米感情につけ込んだテロの勢いは衰えを見せない。スペインや東南アジアにも広がった。米国内では4年前の9・11事件以来、新たなテロ攻撃はないが、だからといって世界が安全になったとはとても言えない。

 開戦の大義として、あれほど強調された大量破壊兵器が発見されなかったことのけじめも、いまだについていない。軍事超大国が誤った情報と先制攻撃論を結びつけ、国連や同盟国の意思を無視して行動することの危うさを、この戦争は世界に思い知らせた。

 フセイン政権の打倒は、多くのイラク国民が望んだことだ。新たな国づくりも少しずつ進んでいる。それでも、この戦争を正当化するわけにはいかない。

 中東民主化はそもそも、この戦争に対する批判をかわす狙いもあって語られだしたことだ。独裁や圧制に彩られてきた中東に自由と民主主義を広める。それによって地域は安定し、国際テロの温床を絶つこともできる。それがブッシュ大統領の主張だ。

 だが、アラブの世論が圧倒的に反米であることを、米国は軽んじていないか。もともと民主化は簡単ではない。たとえ民主化が進んでも、その先にあるのは反米色の強い政権かも知れない。イラクも例外ではあるまい。

 大統領の先月の欧州歴訪は、イラクの再建に向けた協力取り付けが狙いだったが、成果は乏しかった。開戦から時を経ただけでは亀裂は埋まらない。

 世界は米国の強大な力にどうしようもなく振り回されているのでないか。そんな世界の不安は少しも薄れていない。

 力の行使が新たな脅威を生み、それに対してまた力を行使せざるを得なくなる。そんな連鎖を米国自身が壊そうとしない限り、不安は解消しない。

●軍とは違う自衛隊の姿

 これは、ほとんど奇跡に近いと言うべきかも知れない。

 自衛隊がイラクの地を踏んでから1年余りになる。迫撃砲弾が撃ち込まれはしたが、本格的な戦闘には巻き込まれず、死傷者もない。とにかく、訓練を除けば一発の銃弾も撃っていないのだ。

 イラク戦争に反対した私たちは、自衛隊の派遣にも反対した。いかに人道復興支援とはいえ、戦火や自爆テロがやまない現実は、派遣の根拠である特措法の想定を超えていると考えたからだ。派遣が現実となってからも、早期に撤収の時期を探るよう主張を重ねてきた。

 無事に活動してきたことは喜びたい。しかし、だから派遣はよかったという乱暴な議論にくみすることはできない。

 小泉首相は無理に無理を重ねて派遣に踏み切った。憲法は海外での武力行使を禁じているのに、戦地へ行く。当然、自衛隊の活動は針の穴にラクダを通すような窮屈さと慎重さを求められる。

 攻撃を受ける恐れのある治安活動は引き受けない。迷彩服を着て銃を携えているが、やっていることは給水や医療サービス、道路や学校の修理だ。情勢が緊迫すれば宿営地で待機する。

 駐留するサマワを「非戦闘地域」にしておくための努力も涙ぐましい。部族や宗教者から情報を集めて、危険を避ける。部隊は沿道の住民に笑顔で手を振ることを励行する。外務省が現地の指導者らを東京に招いたのも、その一環だ。

 サマワの治安を引き受けていたオランダ軍が撤退することになると、小泉首相は豪州のハワード首相に電話をして代わりの部隊の派遣を頼んだ。

 「なぜ日本の部隊を防衛しなければならないのか」という読者の疑問に、豪紙はこう解説した。日本には平和主義の憲法がある。われわれが安全を確保しなければ、自衛隊は撤退することになるかもしれない。それでいいのか、と。

 「それでも軍隊か」と、他国の将兵からいぶかられることもある。

 でも、ちょっと視点を変えてみよう。自衛隊は米軍と一緒にイラクを攻めたり、他の「有志連合」の国々と同じように武装勢力を制圧したりする軍隊とは違う。この違いを日本人の多くは支持している。そんな自衛隊のありのままの姿を、世界に見せたことは、派遣の思わぬ効用と言えるかも知れない。

 ならば、と考える。他国にはない様々な苦労や無理をしながら自衛隊を戦地に派遣して、それに見合う何が達成されているか。自衛隊員がサマワでいかに労苦を重ねても、イラクという国全体の再建や秩序回復とはあまりに距離がある。対米協力の証しとして、サマワに「いる」こと。それが小泉首相にとっての最大の目的ということなのだ。

 イラクの再建は助けたい。治安が改善され、イラクの人々による統治が実現したなかで、改めて出直すことが日本の賢いやり方だと思う。

http://www.asahi.com/paper/editorial20050320.html

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