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【参考図書】武士道の逆襲 (菅野 覚明/講談社現代新書)【「公共の利益」と武士道はむしろ対立概念】
http://www.asyura2.com/0505/asia1/msg/1005.html
投稿者 傍観者A 日時 2005 年 6 月 16 日 10:36:06: 9eOOEDmWHxEqI
 

(回答先: 新版の「つくる会」教科書の問題点 投稿者 ワヤクチャ 日時 2005 年 6 月 15 日 20:16:16)

>B 明治維新
> いままでの歴史研究が積み重ねてきた常識と、それにもとづく多くの教科書の記述では、明治維新がおこった原因をこのようにとらえていました。
 江戸時代の生産力の発達とそれによって活発になった商業の発達にもとづく経済変動により、幕府と藩の権力が衰退したこと、そこへさらに欧米資本主義国家による開国要求の圧力が強まり、支配権力の改革によってそれに対応しようとする倒幕派下級武士勢力が、民衆の闘争をも利用しつつ幕府権力を打倒した、と。
 ところが「つくる会」教科書は、江戸時代の民衆の暮らしも生産と流通の発達の記述もきわめて簡単になり、それと社会の変動を結びつける記述はありません。
 明治維新の改革をもたらした底流として、経済の発展と資本主義への芽、そのなかの民衆運動に目を向けることもしません。ではなぜ明治維新がおこったのか。それは「公共の利益のために働く」武士道のおかげだったと説くのです。「武士たちが藩のわくをこえて日本の存続のために立ち上がったのは、武士道の中に公共の利益のために働くことに価値をおく忠義の観念があったことと深い関係がある。」「全国の武士は、究極的には天皇に仕える立場だった。(中略)皇室を日本の統合の中心とすることで、政権の移動が比較的スムーズに行われた。」などと書きますが、藩のわくの中にいた江戸時代の武士の立場と「忠義の観念」について、なんの証明もなく勝手に断定をくだし、明治維新を民衆とは無関係に、武士道と武士の自己犠牲の精神によって武士がみずからなしとげた改革だとするのです。
 ここにはいくつかのメッセージがこめられています。社会の変革は民衆の力によっておこるのではなく、支配者自身の努力によっておこるのだ、だから民衆はそれにしたがっていればよい。日本では、天皇の存在があったために、それがいっそううまくできた。中国・朝鮮にはそれらの条件がなかったから、欧米の植民地になったのはしかたなかった、というものです。このような考え方では主権者を育てることはできません。

参考:
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061497413/249-6310484-3252323
武士道の逆襲 講談社現代新書
菅野 覚明 (著)

書籍データ

* 新書: 295 p ; サイズ(cm): 18

* 出版社: 講談社 ; ISBN: 4061497413 ; (2004/10/19)

* おすすめ度: 5つ星のうち4.3 カスタマーレビュー数: 3 レビューを書く

* Amazon.co.jp 売上ランキング: 24,055

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レビュー

出版社 / 著者からの内容紹介
存亡を懸けて自己を問う武士の思想の真髄とは
武士道は大和魂ではない!
●武士道とは何か
●本当の強さとは何か
●生死の場での常識
●恋か、忠義か
●根本は人を切ること
●あらかじめ死んでおく
●「大和心」の創出
新渡戸武士道の呪縛
そもそも、武士道という言葉が一般に広く知られるようになったのは、明治中期以降のことである。とくに、日清・日露という対外戦争と相前後して、軍人や言論界の中から、盛んに「武士道」の復興を叫ぶ議論が登場してくる。(中略)はっきりいえば、今日流布している武士道論の大半は、明治武士道の断片や焼き直しである。それらは、武士の武士らしさを追究した本来の武士道とは異なり、国家や国民性(明治武士道では、しばしば「武士道」と「大和魂」が同一視される)を問うところの、近代思想の1つなのである。<本書より> pixel 目次

第1章 武士道とは何か
第2章 勝ちがなければ名は取れぬ
第3章 主君と家来
第4章 一生を見事に暮らす
第5章 明治武士道
カスタマーレビュー
おすすめ度: 4.3 5つ星のうち
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14 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。

5つ星のうち5 「武士道」と「明治武士道」との間, 2005/01/05
レビュアー: 青ち (プロフィールを見る)   大阪府 Japan
武士が生きた時代に、武士の武士たるあり方として形成された「武士道」と、武士が退場した時代に、日本国民の日本国民たるあり方として編成された「明治武士道」とは明確に違う。これが、一読すればすぐ分かる本書の核心である。

本来の「武士道」、即ち自己と守るべき妻子や領地や主君とを徹底的に守り抜こうとする私的戦闘者としての武士。それが何ゆえに、またいかにして、近代国民国家日本において“復興”され、高唱されたのか。この点を論じた第五章はスリリングな展開を見せ、思わず手に汗を握る。武士の私的な主従関係を徹底的に否定しながら、その関係を天皇と国民との関係にスライドさせる。その綱渡りのような危うさは、しかし矛盾をはらみつつも、近代日本ネイションの構成原理として国民国家の中心に据えられたのである。

そうした原理が否定された戦後日本。だが、筆者は言及していないが、依然としてそこにも「戦後武士道」とでも称すべきものが存在するように私には感じられる。例えば司馬遼太郎・早乙女貢・『プレジデント』誌・戦国時代史や幕末維新史の根強いファン…。彼等の扱う論理もまた、「武士道」の名を冠しつつも、本来の「武士道」とは違うものである。「明治武士道」とも違う。ではいったい「戦後武士道」とは何か。今後に残された課題であろう。

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5つ星のうち4 感涙, 2004/11/20
レビュアー: グレゴリー・ザムザ (プロフィールを見る)   京都府 Japan
著者も言うように本書の主題は、明治期に作られた国家道徳としての「武士道」を明示することで、武士が実在していたそれ以前の時代の元祖「武士道」の姿を克明に記すことであると思う。新渡戸稲造や内村鑑三の「武士道」論が前者に該当することをはっきりさせているので、あやふやに把握していた「武士道」概念をすっきり整理することが出来たように思う。ただし僕が本書から学んだのは、その箇所よりも元祖「武士道」の真の姿についてであった。「日本にはこんな素晴らしい思想があったのか」と自信を回復するような腰抜け発言をしているのではない。「恐れながら天朝も幕府吾藩もいらぬ。只六尺の身体が入用」と言った吉田松陰の独立精神、「死ぬ事と見付たり」と書いた『葉隠』の意味、敵に遠慮させぬため戦場で自らの白髪を敢えて染めて討ち死した斎藤実盛、などの武士の生き方に共鳴したのである。彼らの壮絶なエートスを感じてなぜか涙してしまった。

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5つ星のうち4 新渡戸らの明治武士道はクリスチャンのトンデモ的主張, 2004/11/09
STRING(top-500-reviewer_5245) レビュアー: ib_pata (プロフィールを見る)   神奈川県 Japan
著者の定義によると、原始武士道は「自己の自立を懸け、己と己の一部たる妻子、共同体のために戦う、私的戦闘者であることに根ざした思想である」 (p.232)。この本の問題意識は、西南戦争を経て、武士団が日本社会から一掃された後に、新渡戸稲造などによる"明治武士道"がブームになるが、それは西洋の倫理に対抗するために、むりやり日本の伝統の中から探し出してきて、しかもかなり換骨奪胎している主張だった、と。戦国時代までの武士道というのは、血塗られた作法であり、それを徳川幕府が戦闘者というよりも天下国家を統治するための新たな倫理"士道"として再編したものに由来する、というもの。

 本当に書きたかったのは、最終章の明治武士道に関する考察だろう。著者によると、明治15年に下された「軍人勅諭」は、自立した戦闘者としての武士を「私情の信義」として否定した。その後、日清戦争の勝利によって、軍隊が揺るぎない唯一の武力だと認識される明治30年すぎになって、キリスト教文明の西欧諸国との関係において、日本の自意識を分かりやすく表現でき、しかも昔からあった価値観として、武士道が引っ張り出されたという構造がみえる、と著者は主張する。

 キリスト教国の知識人に対して、日本の義は聖書の義に似ているなど日本の独自の精神文化である武士道は、実はキリスト教精神とつながっている、と強引に主張したのが新渡戸らの明治武士道であって、内村にあっては、「物質文明に汚染され、衰弱した欧米の精神にはもはやキリスト教を支える力がない」、日本人の道徳性は「キリスト教を背負うためにこそ二千年にわたって育てられてきたのだ」というトンデモ的な主張につながっていくのだ、というのが著者の言いたかったことだと思う。

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