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JMM [Japan Mail Media]  敵対的買収は日本でも盛んになるか? 
http://www.asyura2.com/0505/hasan41/msg/238.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 27 日 14:29:19: ogcGl0q1DMbpk
 

                              2005年6月27日発行
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JMM [Japan Mail Media]                 No.329 Monday Edition
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                        http://ryumurakami.jmm.co.jp/

▼INDEX▼

■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第329回】

  ■ 回答者(掲載順):

   □真壁昭夫  :信州大学大学院特任教授
   □山崎元   :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員
   □菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト
   □金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務
   □三ツ谷誠  :三菱証券 IRコンサルティング室長
   □津田栄   :経済評論家
   □北野一   :三菱証券 エクィティリサーチ部チーフストラテジスト
   □岡本慎一  :生命保険会社勤務

 ■ 『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』


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 ■ 先週号の『編集長から(寄稿家のみなさんへ)』
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 Q:615への回答ありがとうございました。質問をして回答をいただいたあとで
自分の意見を述べるのはやや公正さに欠けるところがありますが、わたしは政府がク
ール・ビズというファッション運動を主導することに異和感を持ちました。以前、イ
ン博(インターネット博覧会)というものがあって、批判的だったあるITの専門家
に、「でもやらないよりはやったほうがいいんじゃないの?」と言ったところ、彼は、
「害悪だからやってはいけない」ときっぱり明言しました。理由は、「いろいろな意
味で個人のものであるインターネットを政府主導で盛り上げ普及させようとすると、
結果的にその国のインターネット文化が陳腐化し、衰退する」というものでした。

 イン博とクール・ビズは、確かに性格が違いますが、政府主導ということでは同じ
です。巨額のPR費を大手代理店に丸投げして政府主導を謳うよりも、どうすれば民
間主導に転化できるのかを戦略的に考えるべきだったと思います。

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■ 『村上龍、金融経済の専門家たちに聞く』【メール編:第329回目】
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====質問:村上龍============================================================

Q:616
 ライブドア騒動のあと、「日本でも敵対的買収が当たり前になる時代が来る」と言
われ、少なくない企業が、株式の持ち合いなどその防止策を発表しました。敵対的買
収は、本当に日本でも盛んになるのでしょうか。

============================================================================
※JMMで掲載された全ての意見・回答は各氏個人の意見であり、各氏所属の団体・
組織の意見・方針ではありません。
______________________________________

 ■ 真壁昭夫  :エコノミスト

 わが国で、株式の買い集めや敵対的なTOBというと、かつての総会屋などが、株
式の売買で収益を上げることを目的とする、いわゆる“グリーンメイラー”のような
印象が強かったと思います。しかし、最近、海外投資家による株式保有比率の上昇な
どの影響もあり、資本市場が少しずつ国際化していると考えられます。因みに、5つ
の証券市場が行った調査によると、海外投資家の持ち株比率は全体の23%強に達し、
マクロベースで見ると、わが国の企業セクターの筆頭株主が海外投資家ということに
なります。また、グローの売買高でも、50%程度のシェアを占めているようです。
これだけ、海外からの風が吹き込んでくると、好むと、好まざるに拘わらず、欧米流
の論理で、わが国の資本市場が動くことが想定されます。

 こうした国際化の流れに伴って、公開株式会社の所有者=株主、経営者=株主から
経営を委託されたエージェントという関係が、わが国の資本市場でも、徐々に浸透し
てくると思います。そうした考え方が定着すると、企業価値を増加させるために、企
業や企業の一部を買収したり、他の企業に譲渡するケースは、自然と増加するでしょ
う。最近、M&Aの専門家の話を聞く機会がありましたが、彼は、「わが国でも、か
なり小さな規模の企業にまで、M&Aの考え方が浸透している」と指摘していました。
たぶん、その通りなのだと思います。

 企業の所有と経営の分離や、M&Aに対する考え方が浸透すれば、買収に係わる案
件数は増加するはずです。そして、その内のいくつかは、被買収企業の経営者が賛同
しない、いわゆる敵対的なM&Aになることが考えられます。実際、わが国でも、ベ
ーリンガーインゲルハイム社によるエスエス製薬に対する公開買い付けや、米系ファ
ンドによるユシロ化学、ソトーに対する敵対的なM&A案件などの実績ができ始めま
した。さらに、ライブドアによるニッポン放送の案件が発生しました。これらの流れ
を見ると、基本的には、わが国でも、今後、敵対的なM&Aの件数は増加傾向を辿る
と予想されます。

 敵対的買収は、攻守の激しい攻防を伴うケースが多く、市場の注目を集め易いこと
もあり、M&A案件の典型例、あるいは花形のように思いがちですが、実際には、M
&A案件全体の約1割から、多くても2割程度といわれています。割合から見ると、
友好的なM&Aの方が圧倒的に多いのです。また、敵対的買収の成功割合は、相対的
に低いようです。米国企業を対象とするケースで、約35%、欧州の企業を対象とす
るケースでは、同50%程度といわれています。企業買収の先進国である欧米諸国で
も、友好的な買収形態が主流ということが出来ます。

 もう一つ、私自身気になることがあります。それは、“企業の所有と経営が、完全
に分離できるのか”、あるいは、“分離する方が合理性は高いか”、という疑問です。
もちろん、企業の規模、業種などによって条件は異なると思いますが、例えば、知識
集約型の企業で、それほど大きな資本を必要としない企業では、公開株式会社にする
要請は、本来、低いのではないかと思います。そうした企業が、株式を公開して、市
場に上場することのメリットと、所有と経営を分離することに掛かるコスト(エー
ジェンシーコスト)とを比較すると、必ずしも、メリットが大きいケースばかりでは
ないと考えます。

 欧米諸国の一部でも、そうした考え方が広がっているようで、所有と経営を分離し
ない、LLP(リミテッド・ライアビリティー・パートナーシップ=事業組合)など
の組織が利用されるケースが増えているという話を聞いたことがあります。LLPは、
特定の人が資金を出し合って組合を作り、それらの人が直接、日常の経営に当たる組
織です。これだと、多額に資金を、不特定多数の投資家から集めるには不適当かもし
れませんが、意思決定の仕組みは簡単で、株主総会などを開催する必要はありません。
英国などでは、こうした組織の数が、既に、1万件を越えているようです。わが国で
も、今後、こうした動きが出てくることも考えられます。

                      信州大学大学院特任教授:真壁昭夫

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 ■ 山崎元  :経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員

 敵対的買収は文字通り「盛ん」にはならないでしょうが、日本でも今後時たま起こ
るでしょうし、それは望ましいことだと思います。

 企業買収は、何らかの事業や事業のための経営資源を手に入れる上で手っ取り早い
方法であり、事業構築のための時間短縮効果があるので今後も盛んに行われるでしょ
う。ちなみに、これが「敵対的」であるか否かは、既存の経営者がこれに同意するか
否かの問題で、本質的に善悪の問題ではありません。

 買収が「敵対的」だと何が違うかですが、傾向として、(1)買収後の経営が上手
く行きにくい、(2)支配権を求めて両者が競る形になるので買収価格が高くなりや
すい、という二つの問題があります。

 企業は、法的には株主・従業員・関係先との諸契約(したがって権利・義務)の束
であり、一口に誰のものだという問題の立て方自体が正確ではありませんが(注:企
業は誰のものだ? という問題を立てた下らない論考が山のようにあります)、経済
的な本質は、人材を含む諸資源を、市場から調達するのではなく、あらかじめ内部化
してまとめたものです。このまとまりの中心をなすものは、経営者・従業員双方を含
む人の集まりです。買収者が、法的な権利と、経済的なインセンティブだけで、既存
の人をうまく活かせるかどうかは、買収が「敵対的」な場合には傾向として(絶対に
そうなるというわけではありません)難しいといっていいと思います。

 程度は薄らいできましたが、日本の企業の多くは「社員共同体」的な意識の下に営
まれているので、敵対的な買収を成功させてから、さらに経営を成功させることは大
変でしょうし、タイムワーナー社のAOLによる買収がその後上手く行っていない様
子などを見ると、米国の企業にあってもこの難しさは存在しているようです。

 所有権などを競るような形で手に入れる時に、最終的な勝者は、他人が付ける価値
(ある意味では市場価値)以上の値段を付けなければならないので、この種の競争の
勝者は儲かりにくい、という現象があり、これは「勝者の呪い」とも呼ばれています。
「敵対的な買収は上手く行かない」と事後的に言われやすいことの背景には、買収価
格が高すぎることがあります。

 しかし、だからといって、敵対的な買収が「いけないことだ」と言うのは正しくな
いでしょう。買収者は、採算に関する独自の成算を持っている可能性もありますし、
もちろん結果に伴う損得に責任を持っています。経営資源が非効率的に利用されてい
る状態に対して改善の可能性を高めるためには、敵対的な買収が行われやすい状態で
あることが有益であり(所有者が変わることによる経営変改善の可能性と、現在の経
営者に対するプレッシャーの両面で)、これを制度的に行いにくくすることは誤りで
しょう。

 これらの制約があるにも拘わらず敵対的な買収が起こるためには、「それでも有利
だ」と思えるくらいに株価が安いことが必要です。買収者は、(1)現在の換金でき
る資産価値以上に株価が安い、(2)資産を効率的に利用すれば(たとえば過剰な現
金を株主に返せば)価値が高まるので株価が安い、(3)事業を改善・再構築すると
利益が高まるので株価が安い、といったチャンスを見つけなければなりません。

 こうした観点から「安い」企業はまだ相当数ありそうですし、今後も存在するだろ
うと思います(観点の違いによって多数存在しうる)。これが、敵対的な買収が「盛
ん」(頻繁)ではなくとも、時々はあるのではないかと思う理由です。

 ところで、買収防衛策は必要なのでしょうか。

 会計と投資家の企業価値・株式価値に対する判断が正しいと仮定しましょう。やや
単純に議論すると、PBR(株価純資産倍率)1倍割れの株価の企業は、株式のリス
クに見合うだけの収益を将来稼がないだろうと評価されている経営落第点の企業です
から、こうした会社の場合に必要なのは、経営の改善であり、経営者の交替あるいは
買収の可能性も含めた経営へのプレッシャーです。こうした会社には、買収防衛策を
持たせる「意味が」ありません。

 他方、PBRが十分に1倍よりも大きい会社の場合、買収して簡単に儲けることは
難しく、現在の経営構造を破壊して、もっと儲かるようにすることは難しい。株価が
十分に高い会社(あるいは余計な資産を抱えていない会社)は買収防衛策の「必要が」
ありません。

 株主・投資家の立場から見て買収防衛策に意味があるとすれば、現在の株価が過小
評価だと思って株式を保有している場合に、不十分な株価で部分的な買収提案が行わ
れるような場合に、現経営の継続と新提案のそれぞれによる株主価値を再検討する時
間が欲しいといった理由ですが、これはその都度投資家が判断していればいいことで
す(投資家の自己責任について割り切って考えるということです)。そう考えると、
買収防衛策は、株主にとって余計なお節介ということですし、その主な意味は、買収
の妨害であるとともに、経営者・従業員の保身、ということになり、これらは株価を
低下させる要因です。

 特に日本の企業の場合、社外取締役が十分に機能していませんし(現経営陣が任命
に関わっている間はダメでしょう)、取引先等株主一般としての利益以外の要因で行
動する株主がまだ多いことを考えると、経営陣に追加的な保身の手段を持たせること
は余計だと思います。従って、株主総会では、「買収防衛策の導入には反対」と決め
ておいていいでしょう。

              経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員:山崎元

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 ■ 菊地正俊  :メリルリンチ日本証券 ストラテジスト

 まず、敵対的買収と言う際に、誰に対して敵対的かを考える必要があります。一般
には現経営陣の意思に反した買収が敵対的買収と定義され、それは株主や従業員、ひ
いては社会全体にとって敵対的ではない場合が少なくありません。例えば、欠陥自動
車を作るメーカー、談合を繰り返すような建設会社の経営陣であれば、敵対的に買収
されて、経営陣が替わり、ひいては企業が大変革した方が社会全体のためでしょう。
しかし、そのような会社は外部投資家にとって魅力的でないため、敵対的買収の対象
になり難いのは事実です。

 敵対的買収が起きるとマスコミが大きく取り上げますので、敵対的買収が急増して
いると思われるかもしれませんが、世界的にみて敵対的買収はさほど多くなく、ほと
んどは友好的買収です。M&A全体の1割程度が敵対的M&Aといわれます。最近、
日本で話題の敵対的買収に対する防衛策に関しても、4千社近くある上場企業のうち
約100社が導入したにすぎません。その多くは、株式発行枠の拡大や役員の定数削
減であり、ポイズンピルと呼ばれる新株予約権の発行を決めたのは10社強にすぎま
せん。いろいろ統計的な誤解があると思います。ライブドアのニッポン放送買収の試
みのために、1年延期された外国企業と日本企業の株式交換を認める法改正にしても、
実施するためには3分の2以上の株主の賛成が必要ですから、敵対的買収には使い難
いものです。

 M&Aのバイヤーは、ライブドアのように事業会社が行なう場合のストラテジック
バイヤーと、スティールパートナーズや村上ファンドのような投資ファンドが行なう
場合のファイナンシャルバイヤーに分けられます。事業会社がM&Aを行なう場合は、
買収後の経営を考える必要がありますので、今後も友好的なM&Aの大半を占めると
思われます。日本企業は薬品、電機、機械業界など再編が遅れている業種があること、
経済のグローバル化の進展、企業の金余りなどを背景に、今後も友好的なM&Aは増
え続けるでしょう。一方、ファイナンシャルバイヤーに当たる投資ファンドは高いリ
ターンをあげて投資金額が増えていることや、企業再生ファンドが再生案件不足から
買収ファンドに転じるケースもあることから、敵対的TOBをやるかどうかは別にし
て、企業の経営者に物言う株主が今後も増えるでしょう。敵対的TOBも今よりは増
えると思います。

 企業にとって、株主構成の変化には今まで以上に注意を払う必要性が高まっていま
す。2004年度株式分布状況調査によると、外国人投資家の持株比率は、金額ベー
スで23.7%、株数ベースで21.9%と過去最高に達しました。個人投資家や事
業法人の持株比率はほぼ横ばいだったものの、年金を含む国内金融機関の持株比率の
低下が続きました。最近、事業会社間では一部に株式持合を強化する動きが出ていま
す。今年度に入り、事業法人の株式買い越し額が既に2004年度通年を上回りまし
た。日経の社長100人アンケートによると、日本の企業経営者で株式持合が悪いと
する意見は5%強にすぎず、7割以上が持合を容認しています。経済産業省が提示し
た買収防衛策のガイドラインは遵守ハードルが高いため、株式持合を手っ取り早い防
衛策と見なす企業が出始めているようです。日本は増配企業が増えているとはいえ、
配当性向、配当利回りとも諸外国より低いままです。日本企業に求められている資金
使途は、株式の魅力を高めるための、増配、自社株買い、有効な設備投資、M&Aな
どであり、株式持合の再強化ではありません。M&Aは経済全体の経営資源の配分の
効率性向上につながるものですので、歓迎すべきでしょう。

               メリルリンチ日本証券 ストラテジスト:菊地正俊

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 ■ 金井伸郎  :外資系運用会社 企画・営業部門勤務

『敵対的買収』の定義は、「買収者が、買収対象企業の取締役会の同意を得ないで買
収を仕掛けること」とされています。従って、「敵対的買収」を仕掛けられた側の買
収対象企業の取締役会は、買収者に対抗するため様々な対抗策を繰り出すことになり
ます。

 こうした対抗策としては、敵対的買収の事前に用意されるものも多く、設問にもあ
るような株式の持ち合い強化などの安定株主対策、あるいはポイズン・ピルなどと呼
ばれる敵対的買収者の株式取得に対抗した新株引き受け権の発行などが代表的です。
しかし、実際の敵対的買収に際して、これらの対抗策は決定的な対抗手段というより
は、対抗手段を講じる時間を確保するための手段として位置付けられます。これは、
敵対的買収であっても株主利益に資する買収提案と見做されるものであれば、安易に
対抗策を用いて排除することは株主利益との相反となるため、こうした対抗策の利用
には一定の制約が生じるからです。

 これに対して、敵対的買収に対して有効な対抗手段としては、やや古典的ではあり
ますが、ホワイト・ナイトと呼ばれる友好的買収者による対抗TOBの要請や、企業
価値を敵対的買収者以外の市場参加者に再認識させる行動(例えば、経営改善策の発
表や含み資産価値の開示)などが挙げられます。

 このように、敵対的買収への対抗手段の本質は、買収価格を吊り上げることで、敵
対的買収者による買収を断念させるか、あるいは、買収に成功したとしても敵対的買
収の投資採算を悪化させることにあります。つまり、敵対的買収者に対して「勝者の
呪い」を掛けようとするものと言えます。

 この「勝者の呪い」とは、競争入札など競争的な価格形成では、しばしば落札価格
が実体価値を大きく上回るなど、勝者である落札者にとって著しく不利な結果(投資
採算の悪化など)がもたらされる現象を指します。これは、参加者が合理的であれば
本来は起こり得ない現象であり、経済的なアノマリーのひとつとされています。

 こうしたアノマリーが発生する根拠としては、入札者は合理的な価値判断に基づく
価格と同時に、競争に競り勝つための価格を意識しなければならないというジレンマ
を持つことが指摘されます。敵対的買収者がこのような「勝者の呪い」に打ち勝ち、
企業買収で十分な収益性を確保するためには、買収対象企業について(1)他の競争
者に知られていない隠された価値を見出すか、(2)他の競争者が実現できない買収
価値を実現できるか、にかかっています。

 ただし、敵対的買収者の立場では、買収対象企業の内部情報へのアクセスが制約さ
れると同時に、防衛側は意図的にそうした情報を一般に開示したり、友好的買収者に
対して優先的に提供するため、(1)のような情報を活用することは難しいと考えら
れます。むしろ、自社の既存ビジネスとの合併や業務提携などを通じたシナジー効果
により、買収対象企業単独での価値以上のものを創出することが重要でしょう。これ
は、敵対的買収を含めて企業買収が経済の効率化に寄与するはずだ、とする考え方の
根拠の一つとされています。

 ここで、今回の設問である「敵対的買収は、本当に日本でも盛んになるのか。」に
戻りますと、これは買収側の選択(覚悟)の問題であると同時に、被買収側(防衛側)
の選択の問題でもあります。当然、買収者にとっては、買収コストの上昇を避けるた
めにも、できる限り敵対的買収よりは友好的買収の形を取りたいというインセンティ
ブがあります。一方で、防衛側にとっては、企業防衛のためにも、株主利益のために
も、敵対的買収に持ち込んだ方が有利な場合が少なくありません。また、友好的な買
収提案の受け入れについては、被買収側の取締役会にとっては株主訴訟リスクが付き
纏います。このような点を考慮しますと、買収案件が増える中では、敵対的買収の形
態をとるものが増加することが予想されます。

 ここで、敵対的買収のダークサイドについても若干触れておく必要があると思われ
ます。敵対的買収を通じて掛けられた「勝者の呪い」を誰が負うのか、と言う問題で
す。

 株式交換など、外部からの資金調達を伴わない企業買収であれば、基本的には双方
の企業の株主間の利害の調整のみとなり、買収側の株主が株式価値の希薄化という形
で負うことで済みます。一方、買収資金を借り入れや優先株の発行、あるいはLBO
やMBOのように買収対象企業を担保とした債券発行などで外部から調達する場合、
「勝者の呪い」すなわち過大な債務負担は、最終的に買収企業や被買収企業が負うこ
とになります。

 こうした債務に対する元利金の支払いは、従業員の給与の支払にも優先しますので、
結果的に「勝者の呪い」を掛けられるのは、これらの企業の従業員ということになり
ます。また、買収によって経営権を完全に掌握した上で、被買収企業では徹底的なリ
ストラが行われるのが通例ですが、買収コストが高くなればなるほど、より徹底した
リストラによって収益性を向上することが必要となります。従って、その意味でも
「勝者の呪い」を掛けられるのは、従業員といえます。

 ところで、昨年の12月に、米国のコンピューター会社がPC部門を中国企業に売
却するということがありましたが、その際の売却価格については、妥当な範囲ながら
若干割安に設定されたとの評価がなされていました。同時に、同社の経営からは、関
連ビジネスを推進する上で、PC部門を売却後も買収企業との友好関係を維持するこ
とを重視するとの説明もなされていました。これは売却価格が安いのではないかとの
株主の懸念に対して、その価格設定に一時的な売却益の最大化だけではない経営上の
判断があったことを説明するものでした。そして、これは推測ですが、多くの社員が
新会社に移籍させられることも踏まえての配慮でもあったと思われます。このケース
は友好的買収の場合に相当しますが、企業の売却・買収に当たっては、極めて複雑な
バランス感覚が求められることが判ります。

                外資系運用会社 企画・営業部門勤務:金井伸郎

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 ■ 三ツ谷誠  :三菱証券 IRコンサルティング室長

「人民解放軍としての敵対的買収者」

 企業の存在意義は価値(冨)の創造にこそあると考えた場合、価値(冨)を毀損さ
せる経営者や従業員の存在は、資本主義的意味での「悪」と呼べると思います。

 ただ、一度価値(冨)が蓄積され、心地よい停滞が許される状態に至った企業にお
いては、経営者と従業員の馴れ合い、凭れ合いの中で、過去に蓄積された価値(冨)
の緩やかな浪費が行われる事は往々にしてありますし、全体的には日本特殊的な「株
式持合いの揺り篭」の中で日本企業は相互に心地よい午睡を楽しんでいたと言えなく
もありません。

 敵対的買収において用いられるTOB(公開買付)が制度として確立され証券取引
法に導入されたのは1971年ですが、1990年までの20年間、僅か3件しかT
OBが行われなかったことを見ても、日本が高度経済成長によって名実共に先進国の
仲間入りをしてからバブル経済の崩壊「喪われた10年」に至るまで、長い午睡の中
に日本企業がまどろんでいたことが伺えるのではないでしょうか。

 実際、TOBは、合理性を持って株式を売却する株主を前提にして初めて作動する
制度なのであって、この間、日本企業は株価という企業の「価格」を通じた経済合理
性によってではなく、説明不可能ではないけれど「価格機構」のような合理性を欠い
たもっと別の論理によって統治されていて、経営陣にとっての「敵対的買収者」が極
めて合理性に富んだ価格を提示し、経営権取得を可能とする株式収集を図っても、そ
のような合理性ではない基準で株式を保有(持ち合い)している法人株主は株式を手
放さなかった訳です。新古典派的な意味での経済合理性を欠いた株主(制度学派的な
経済合理性に貫徹された株主)に支えられた日本企業は、新古典派的な合理性に基づ
くTOBからとても遠い世界に安住していたと言ってみるのも楽しいかも知れません。

 しかし、「喪われた10年」を経た2005年の我が日本の現実を鑑みれば、70
年代には日本の上場企業の僅か数パーセントしか株式を保有していなかった外国人株
主が25%近くの株式を保有した状態となっており、また、「物言わぬ」株主であっ
た金融機関はバブル崩壊から立ち直るために、ドラステックに保有株式を売却、事業
法人も少しずつ持ち合いを解消する方向にあります。

 また、信託勘定として示される企業年金や投資信託もまた急速に日本企業の新しい
支配者としてその存在を大きくしてきています。

 勿論、外国人株主とは海外の機関投資家なので、要するに日本企業の株主は急速に
機関投資家に成り代わっていると考えることができるのです。

 敵対的買収が日本において増加するかどうかを占う上で、この事実は決定的に重要
だと感じます。なぜならば、説得力を持つ価格提示に対して機関投資家は、資金の委
託者に対して「説明責任」を有するため、それ以上に合理的な理由を以ってしかTO
Bに応じないという選択ができないので。

 ここにおいて敵対的買収は日本においても成功する可能性を持った訳です。

 実際、トヨタ自動車をはじめ、日本を代表する企業もまた敏感に自らの株主(外国
人や機関投資家)の厳しい統治の視線を感じながら、これまでの「持ち合い」の論理
ではなく、あくまで新古典派的な(笑)経済合理性に基づく判断によって、所有株式
の処理(TOBに応じるかどうか等)を決め始めています。

 このような動きは、新古典派的な合理性(アメリカ的な合理性と言い換えてもいい
かも知れません)が制度学派的な意味での合理性を突き崩し始めた動き(アメリカの
浸透)として理解できるものだと思います。

 敵対的買収者にとって重要なのは、「勝てる可能性」がある、という事実です。

 また、敵対的買収者の目から見れば、先人の遺産に安住しているだけで、勤勉さを
失い怠惰をむさぼる企業は全ての企業に「つけいる隙」があると見えるでしょう。そ
のような企業は必ずB/S上に怠惰の綻びを抱えているからです。或いはいまは見え
ないけれど、生かされていない資産があって、運用者が変われば価値(冨)をがんが
ん創造すると思える企業も彼らから見れば魅力的な獲物に見えるでしょう。

 場合によっては従業員が無能な経営者によって生かされていない資産に苛立ちを覚
え、敵対的買収者として名乗りを挙げる可能性も当然あります。その場合問題は、金
融なのでしょうが、やっと我が国にも育ち始めた投資銀行や様々な投資ファンドが、
価値を創造したいと考える主体者を支える勢力になっていくでしょう。

 或いは、敵対的買収者が適切な情報戦略アドバイザー(IR/PRアドバイザー)
を得て、無能な経営者に苛立ちを覚える従業員や株主に熱いメッセージを送れるなら
ば、その場合、敵対的買収者は彼らにとっての「人民解放軍」として受け留められる
でしょう。

 敵対的買収は怠惰に耽るという「悪」を許さないために資本主義世界に組み込まれ
た制度的規律であり、この規律あるがゆえに資本主義の中で人々はピューリタンのよ
うに勤勉に動かざるをえない訳です。そう考えれば新古典派経済学自体がキリスト教
的な予定調和を教義の中心に据えた現代の神学に思えるから不思議です。

                三菱証券 IRコンサルティング室長:三ツ谷誠

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 ■ 津田栄  :経済評論家

 ライブドア騒動は、どこか不完全燃焼の形で結末を迎えましたが、これまでの日本
企業のあり方に問題があり、その転換を促した点で、堀江氏の及ぼした効果は大き
かったといえます。そして、フジテレビの例のように、会社の経営と所有を同じと考
え、株主にあまり配慮しないで行ってきた経営が、グローバル化した市場経済にそぐ
わないことを、日本企業の経営者に認識させたといえます。

 これを契機に、多くの日本の企業で、より株主重視の姿勢が見られます。これまで
の低配当は許されないとして配当金を引き上げたり、優待制度を設けたり、またより
詳しく株主に情報開示を行うために、株主総会の日時を変えたり、時間を長めに取っ
たり、あるいは、懇談会を入れて、より株主との対話を図ったりするなど、これまで
にない対応をしてきています。堀江効果といえましょう。

 さて問題になる企業買収ですが、もちろん、これまでは、日本でも海外でも、友好
的買収がほとんどであり、「敵対的買収」は思ったほど多くはありません。アメリカ
でも、80年代に多く行われて問題になった敵対的買収は、防衛策や対抗策がいくつ
も生み出され、買収者のメリットよりもデメリットが目立つと、最近ではそれほど多
く行われていません。

 問題は企業がなぜ敵対的買収にあうのかです。基本的には、本来高いはずの企業価
値が引き上げられず、株価が安く放置されているからだといえます。つまり、自分に
課せられた義務と責任を自覚せずに行っている現経営陣の経営に問題があるというこ
とです。その意味で、「敵対的」とは多くが今の経営陣に対してであって、株主や従
業員などステークホルダーに対しての言葉ではないということです。

 当然、買収者が、被買収会社を傘下に加えることによってシナジー効果を発揮し、
自己の企業グループの企業価値を戦略的に引き上げようとする敵対的買収もあります
し、短期的に利益を得ようとして、買収後に資産を売却したり、会社を解散したりし
ようとして行う敵対的買収もありますが、どれも、株価が本来の企業価値よりも低く
置かれ、もっと経営資源が有効かつ効率的に活用されていないことから起こるのであ
り、だからこそそういう会社が狙われるといえます。

 そういう点で考えると、これまで日本では、持ち合い解消で株式が流動的になり、
世界的にカネ余りで買収資金が調達しやすくなったなかで、企業価値を高める努力を
怠り、株主が期待する利益還元、情報開示(IR)をしてこなかった株主軽視経営の
企業が、敵対的買収にさらされてこなかったのは不思議です。その意味で、ライブド
ア騒動以降、株主不在の独善的な経営やこうした企業価値向上を図れない経営を行う
企業は今後敵対的買収の対象になるといえ、まだそうした企業が散見される日本で敵
対的買収がこれからも行われる可能性が高いといえます。

 したがって、依然企業価値に比して低い株価で放置されている会社がある日本では、
敵対的買収が今後増えると予想されます。ただ、盛んになるかというとそうでもあり
ません。買収後の会社間及び従業員間の利害対立、会社の運営手法や組織文化などの
違い、従業員の退社や取引先の離反などの問題をクリアするには相当努力が必要です。
海外でも、敵対的買収をして期待した成果を挙げている例が少なく、日本企業の経営
者も、株主重視の姿勢を強めつつあります。

 また、この敵対的買収を警戒して、会社法改正でポイズンピルなどの防衛策が認め
られ、企業の一部に再び株式持合いなどによる安定株主作りなども行われようとして
いると聞きます。そういうことからも、敵対的買収はやりにくくなっているといえま
す。ただし、これは敵対的買収は「悪」という前提でなされており、こうした防衛策
が過度に行われれば、政府及び企業のとった行動は、現経営陣の既得権益保護に力点
を置いた、世界の流れから逆行するものになります。

 先日、海外の企業コンサルタントから、日本に対して、潜在収益が高いという認識
があるにもかかわらず、参入障壁が依然高く、日本投資への興味を薄れつつあるとい
う話を聞きました。こうした、経済がグローバル化し、一体化を強める中で、自国内
で過度の企業防衛を許すのであれば、世界の市場経済に取り残されることにもなりま
す。

 またそれが会社の資産を非効率的に経営している現経営陣の保身を許し、経営の緊
張を薄れさせ、競争意識を低下させます。その結果、市場を通じて資源の適正な配分
がなされず、非効率な経済となってしまいます。その意味で、市場を通じた買収が許
容されることが、企業経営に緊張を与えることになり、経営陣は、経営資源の効率化、
その結果として企業価値の引き上げ、株価の上昇に努め、株主重視の配当政策、情報
開示(IR活動)の強化につながっていきます。

 防衛策を原則禁止している欧州や、ポイズンピルを多くの企業が導入していてもそ
れを利用した例が1件しかないアメリカをみると、最終的に市場取引を通じて最適に
向かおうとする市場メカニズムを利用した企業買収は、経済の活性化につながってい
ます。そういう点からも、過度に防衛策や抵抗策を認めて敵対的買収を規制するよう
なことはせず、その是非の判断を市場に任せるべきであり、そう考えると、日本では
今より敵対的買収が増える方が経済にとっていいといえます。

 そして、敵対的買収の是非が問われた際に、「敵対的」とは誰に対してなのか、そ
の買収が本当に企業価値を高められるのかという観点から、判断は企業の経営者では
なく株主が行うべきだといえます。その点で、判断を企業の経営者に任せようとする
今の日本の流れは、間違った方向に向かっているように見えます。

                             経済評論家:津田栄

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 ■ 北野一  :三菱証券 エクィティリサーチ部チーフストラテジスト

「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005(骨太方針2005)」が、6
月21日に閣議決定されました。印象に残ったのは、やはり最初の文章でした。「日
本の経済社会は大きな環境変化に直面している。本格的な人口減少・超高齢化社会の
到来や地球規模でのグローバル化の進展など時代の潮流に適切に対応し、新たな成長
基盤を確立できるか、緩やかな衰退の道をたどるかどうかは、ここ1年、2年の構造
改革の進展が成否を決める」

 私は、政府のこの考え方に違和感を覚えます。「緩やかな衰退」ということですが、
この国は、今後の問題ではなく、既に50年近く「緩やかに衰退」してきたのではな
いでしょうか。例えば、企業の収益性を表す売上高営業利益率という経営指標があり
ます。日本の全産業ベースの売上高営業利益率は、過去50年間、趨勢的に低下して
きました。持続的な低収益構造にあるということです。

 このことのインプリケーションは、次の二つです。まず、環境変化は関係がないと
いうことです。過去50年を振り返ってみるに、高度成長、オイルショック、バブル
経済、冷戦構造の崩壊、失われた10年、ITバブルとそれこそ様々な環境変化に見
舞われてきましたが、日本企業の収益性は、こうした環境変化にも拘わらず、一貫し
て「緩やかに衰退」してきたのです。問題は環境ではなく、我々自身にあるというこ
とです。

 次に、政府の言う「適切な対応」とは、「小さくて効率的な政府」をつくることで
あり、「官から民へ国から地方への改革を徹底」することを意味しているのでしょう。
しかし、企業の収益性が趨勢的に低下してきたということは、「民」に任せれば良い
という問題ではないことを示しております。日本では、肝心の「民」が、「緩やかに
衰退」してきたことが問題なのです。

 この問題の本質は何でしょうか。神戸大学の三品和広助教授は『戦略不全の論理』
(東洋経済新報社)で、日本企業の低収益構造の要因について分析されております。
彼の結論は、結局、経営者が悪いの一言に尽きます。具体的に何が悪いのかといえば、
高齢になってようやく経営者になっても、次の人が順番待ちをしているという理由か
ら、二期4年程度でコロコロと替わり過ぎるということです。これでは、戦略にコ
ミットできません。戦略の目的は、持続的に高収益をあげることです。言い換えると、
慢性的な低収益にあえぐ日本企業には戦略がなく、戦略が機能不全に陥っているのは、
それにコミットすべき経営者に問題があるからだ、ということになるわけです。

 高齢のトップが二期4年程度でコロコロ変わるというのは、官僚制の特色でしょう。
要するに、いわゆる「官僚」に企業の経営を任せると、緩やかな衰退は不可避である
ということではないでしょうか。ここで、「官僚」とは、自分の頭で判断しない、み
んなが右を向いている時に、一人だけ左を向くことが出来ない人たち、という意味で
ご理解ください。霞ヶ関にいる方々を揶揄しているわけではありません。改めて言う
までもないことですが、この「官僚」は、民間企業にもはびこっております。もっと
言うと、霞ヶ関にいる官僚はまだ良いのです。彼らは居るべきところに居るのですか
ら。問題は、民間企業や政治家が「官僚」化することです。

 その結果が、「緩やかな衰退」であるように思えてなりません。さて、ご質問は、
「敵対的買収は、本当に日本でも盛んになるのでしょうか」ということですが、私の
答えは「盛んになるべきでしょう」というものです。むろん、個別の企業をみると例
外もありますが、一括りにすれば、50年近く収益性を毀損し「緩やかに衰退」して
きたのですから、これ以上、経営をお任せすることは難しいでしょう。かといって、
ご自分でお辞めにならないのですから、辞めさせるしかない筈です。

 ところで、政府も、「環境変化」→「適切に対応」→「新たな成長基盤の確立」と
単純に考えない方が良いと思います。あまりに、「恐竜のアナロジー」に毒されすぎ
ているのではないでしょうか。恐竜は、ひょっとすると環境変化に対応できずに絶滅
したのかもしれませんが、我々も同じとは限りません。「環境変化」以前に「自滅」
している危険性があるのですから。それにしても、この国ほど毎年のように、どこか
で「恐竜博」をやっているところはないでしょう。「環境変化」論者を大量に再生産
しているようで不気味です。

         三菱証券 エクィティリサーチ部チーフストラテジスト:北野一
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『戦略不全の論理』三品和広・著/東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492521496/jmm05-22
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 ■ 岡本慎一  :生命保険会社勤務

 日本企業は「株式持ち合い」や「終身雇用」等に象徴される独特の構造を持ってい
ます。「敵対的買収が起こらない」ということも、そうした特長の一つと言われるこ
とが多いと思います。ところが、長い伝統を持っていると思われがちな日本型の企業
構造も、実はそれほど長い歴史を持ったものではありません。

 三菱、三井、住友といった企業グループは、戦前に盛んに買収とスピンオフを重ね
て財閥を形成しました。また、敵対的買収も今よりずっと盛んに行われていました。
例えば、東急電鉄を率いた後藤慶太氏も経済界で「強盗慶太」と恐れられたほど、鉄
道やバス会社を積極果敢に買収し、東急グループを大企業に成長させました。後藤氏
は、失敗はしたものの名門百貨店の三越の買収も計画していた様です。

 終身雇用、年功賃金等の日本的雇用慣行も、1920年代以降の近代産業の発展に
より生まれたに過ぎません。資本自由化に伴い、外国資本による乗っ取り防止対策と
して、株式の持ち合いが進んだ結果、日本型雇用慣行と日本独特の企業所有構造が相
互補完的に強化されたのは、1960年代にはいってからであり、その歴史はわずか
50年程度です。

 今では伝統だと考えられている日本企業の特徴は、それほど長い歴史を持っている
ものではなく、戦前の日本企業や日本のサラリーマンは今よりずっとダイナミックに
市場経済を利用していました。日本の経営者が欧米の経営者に比べて、特別に買収を
嫌うという文化的・精神的カルチャーがあるとは思いません。

 日本の企業構造の一角を支えてきた株式の持合いが、1990年代以降の金融危機
により崩れたのですから、恐らく今後は日本企業も戦前の様なダイナミックな資本主
義形態に戻って行くのではないでしょうか。

 ただ、日本で「敵対的」企業買収が買収の主形態になるとは考えません。それは日
本の企業が生み出す価値は、ヒトが生み出す部分が多くなると思うからです。ヒトで
はなく、機械設備が価値を生み出す企業なら、企業をモノとして扱い企業を売買する
ことで付加価値を生むことができるかもしれません。しかし、ヒトが生み出す価値が
大きい企業では、株主とヒト(従業員)がお互いの信頼関係を築けなくては、新しい
価値を生みだすことはできません。

 数多くの企業買収を成功させている日本電産の永守社長は、敵対的買収により「企
業にのり込んで行ってもカギになる人材に辞められたり、反発されたりしてはしまい、
結局、何もできなくなってしまう」(2005年3月2日 日本経済新聞)と、企業買収に
おける従業員の存在の重要性を指摘されています。私はこの指摘に日本の企業買収の
今後の方向性を感じます。

 企業買収が少ない事は日本企業の伝統ではありません。企業の自由を制限してきた
法律や制度が変われば、日本企業も価値の源泉を目指して自由に動き出すでしょう。
しかし、企業をモノとみなして売買を繰り返す様な敵対的買収は日本では根付かない
と思います。企業をヒトの集合体として扱う様な、友好的な買収が企業再編の主軸に
なって行くと考えます。

                         生命保険会社勤務:岡本慎一

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■■編集長から(寄稿家のみなさんへ)■■

 Q:616への回答ありがとうございました。今、所用で博多に来ています。『半
島を出よ』の取材以来、久しぶりにシーホークホテルやヤフードームを見ましたが、
まったくなんの感慨もないので自分でも呆気にとられました。脱稿したときに、自分
の中で小説の舞台となった場所への興味をすべて消費し尽くしたのだと思いました。

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Q:617
 原油価格がまた値上がりしています。日本経済、およびわたしたちの暮らしにどの
ような影響があるのでしょうか。

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                                   村上龍

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JMM [Japan Mail Media]                 No.329 Monday Edition
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                   独自配信:106,326部
                   まぐまぐ: 19,231部
                   melma! : 8,794部
                   発行部数:134,351部(6月27日現在)

【WEB】    http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
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