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米国支配層が狙っているのは「人民元の開放」であり「金融活動の対中自由化」
http://www.asyura2.com/0505/hasan41/msg/617.html
投稿者 あっしら 日時 2005 年 7 月 23 日 13:58:57: Mo7ApAlflbQ6s
 

(回答先: Re: 人民元為替制度の改革:目的・目標・原則・内容・特徴・時期の理由・レート変動の見通し [人民網日本語版] 投稿者 sho 日時 2005 年 7 月 23 日 08:11:42)


shoさん、どうもです。

>米国にとって元の切り上げは、
>米貿易収支赤字削減よりも対中債務を踏み倒すことへの
>意義が大きいのでしょうか?

中国の今回の政策変更の主眼は「元の切り上げ」措置ではありません。
昨日は1ドル=8.111ですから、新政策と同時に発表した新レートである1ドル=8.11に較べるとわずかながら「切り下げ」をしたことになります。
(また、新政策発表の日に2%の切り上げに相当する人民元対ドルレートが発表されると、すぐに3円近い円高状況になって人民元−日本円のレートは元の力関係に修正されたように、ドルに対する切り上げが日本円に対する切り上げに直結するわけでもありません)

新政策は、市場に委ねるわけでもなく一日単位の変動幅も限定的だが、人民元レートが対ドルで固定ではないというところにポイントがあります。

他国通貨の変動に関して、日本のような「産業主義国家」では輸出入条件すなわち国際交易競争での有利不利に関心が傾きがちです。
米国のような「金融主義国家」は、外国為替市場など通貨を対象とした取引の自由度(柔軟度)がどうなのか、相手国市場内でどこまで自由な金融経済活動ができるのかに関心を抱きます。

米国支配層が中国に求めているのは、人民元の変動為替相場制への移行であり、資本取引の自由化(財の取引を伴わない通貨が自由に出入りできる取引)であり、中国内で銀行・保険・証券などの金融活動が自由にできるようにすることです。

米国支配層は、中国が経済的に発展途上国であり巨大でありながらも脆弱であることも知っていますから、性急に結果を求めるのではなく今回のような段階的な変更を経ながら上記目標を達成すればいいと思っているはずです。
(丸々と太った豚をおいしく食べようと思っていたら、弱って死んでしまったとかどこかに逃げてしまったというのは最悪ですからね)


ご質問の本題である「米貿易収支赤字削減よりも対中債務を踏み倒すことへの意義」に関してですが、まず、人民元がたとえ30%切り上がったとしても米国の対中貿易赤字が減少することはありません。
米国の平均労賃と中国の労賃は20倍以上の開きがありますから、衣服などを同等の生産設備を使って生産している場合、為替レートがたとえ30%高くなったからといって競争力が逆転するわけではないからです。
逆に、これまで10ドルで輸入できていたものが12ドルになる可能性が高いのですから、米国民は“高い買い物”をしなければならなくなりかえって貿易赤字が増大することになります。(30%の切り上げなら13ドルになるのが論理的ですが、値上げで輸出量を減少することをできるだけ避けるために12ドル程度に抑えられることが多い)
もちろん、中国の交易条件が悪化することで、ベトナムやインドなどの対米輸出が増加することは考えられます。しかし、それは米国の貿易赤字対象国が変動しただけで総貿易赤字が減少するわけではありません。

米国は産業基盤が劣化している(貿易収支が恒常的にとてつもない赤字というのはそういうことです)ので、為替レートの調整では貿易収支構造が変わることはありません。
衣服・家具・家電などは、輸入しなければ国内の基礎的な需要さえ賄えない産業構造なのです。

そうであるなら、ある同等品質の家電製品が日本から輸入すると100ドルで中国から輸入すると90ドルという条件のときは、中国から輸入したほうが安上がりで米国経済にとっても有利なことです。(この論理がここ10年間の中国経済成長の原動力です。日本ブランドが日本製ではなく中国製でも気にする人は少ない)
人民元が切りあがるということは、米国民にとっては中国製の商品が高くなるということですから、「輸入依存国家」である米国にとっていい話ではありません。

このようなことから、米国産業界はそう主張しても、米国支配層は人民元の切り上げを望んではいません。
あくまでも、ドルと人民元を使った金融活動で儲けをあげられる機会が増えることを望んでいるのです。

最後に、「対中債務を踏み倒すことへの意義」について説明します。

この問題は対日債務(日本にとっては対米債権)とまったく同じ問題です。
結論的に言えば、自国通貨の切り上げ(対ドルレートの上昇)は、中国や日本の対米債権を劣化(価値の減少)させる意味を持つとしても、米国が対外債務を踏み倒すことに通じる意味は持っていません。

米国は自国通貨建てで対外債務を抱えていますから、相対レートがどのように変動しようとも、自国通貨であるドルで債務を履行すればいいので決定的な影響を被ることはありません。
(貿易(経常)収支の黒字で債務を履行しなければならない条件に置かれている国家の場合は決定的な影響を受けます)

中国や日本の通貨当局は外貨準備を米国債で保有していますから、対ドルレートが上昇すると自国通貨で評価した外貨準備が減少することになります。
(例えば、1ドル=300円で買った米国債を10億ドル保有していれば3000億円の価値がありますが、1ドル=100円になればその価値は1000億円になります)

かといって、米国の債務履行が楽になるといったことはありません。産業基盤が劣化し経常収支も膨大な赤字を長年にわたって計上している米国は、ますます苦しくなるだけです。
米国の救いは、自国通貨が国際基軸通貨であることと対米貿易黒字国である「産業国家」が米国の“過剰消費”に依存していることにあります。
最悪の場合は対外債務もドルを増刷することで対応でき、「産業国家」は対米輸出を強く望んでいるので稼いだドルを米国に還流させることを厭いません。
(ただし、米国支配層はドルを増刷して対外債務を履行することは望んでいません。なぜなら、それは自分たちが大量に保有し基盤としているドルの価値を劣化させるからです)

今回の中国の新政策で米国支配層が気にするとしたら、中国の通貨当局がドルペッグ制を放棄したことを機に外貨準備対象通貨を分散することでしょう。
そうなると、中国が貿易で稼いだドルが米国に還流せず米国外でだぶつくことになるので、ドル安の大きな原因になります。
「金融主義国家」である米国の支配層は、金融活動の糧である自国通貨ドルが安くなるのを望んでいません。相対的に高い価値を持つ通貨を使って金融活動を行うほうが絶対的に有利だからです。


米国が対外債務を踏み倒すときは、国際通貨体制が根底から変更されるときだと考えています。
それがいつやってくるかが、世界史の今後の一つの焦点だと思っています。


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