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「しかし、そんなに国有林の運営は苦しいのか」。 <<財投の隠れ不良債権>>
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投稿者 hou 日時 2005 年 8 月 06 日 23:17:12: HWYlsG4gs5FRk
 

算を追う(上)財投の隠れ不良債権――ツケ回る“打ち出の小づち”(エコノ探偵団)1996/11/02, 日本経済新聞 


 紅葉狩りに出掛けた探偵が、登山道で募金箱を見つけた。「森林環境整備推進協力金」と書いてある。「何で山奥に募金箱? 国有林は税金で整備しているんじゃないのか」。協力金の裏側を探ると、ナゾは政府予算に行き着いた。探偵団は「予算を追う」シリーズで、財政のカラクリ解きに挑戦する。 経済解説部 小野聡
 「スキー場でも募金箱を見かけた」という友人の言葉を手掛かりに、探偵は調査を始めた。
 スキー場のリフト事業者の団体、日本鋼索交通協会に事情を聴いたところ、「林野庁に頼まれたんです」と国有林野委員長の下山裕司さん。昨年春、国有林を利用した全国約二百カ所のスキー場に、リフト料金に数百円の協力金を上乗せしてほしいと話があった。
 しかし、上乗せでは強制的な徴収になり、募金とは言えない。「スキー客からだけ取るのでは、客の理解を得られない」と事業者が反対し、山と同じ募金箱設置に落ち着いた。
 「山道には改札口を作るわけにはいかない。だから、取りやすいスキー客から取ろうとしたと勘繰られても仕方ないな」。探偵の報告を受けた所長が言った。「しかし、そんなに国有林の運営は苦しいのか」。
 探偵見習の高井円子は、国有林の経営収支を調べて驚いた。
 財源を税金で賄う政府予算の一般会計と違い、国有林の運営は独立採算(国有林野事業特別会計)。林産物売却の収入で経営することになっているが、九六年度の事業計画では、造林費や人件費などに三千三百五十七億円の資金が必要なのに、自ら稼ぐ業務収入などは五百五十七億円しかない。不足分の二千八百億円を国の財政投融資(財投)で穴埋めする。
 円子が言った。「財投って、郵便貯金や国民年金が原資よね。特別会計や特殊法人向けなどの融資や出資のことでしょ」。融資を受ければ当然、利子を付けて返さなければならない。
 郵貯も年金も国民の資産。「国有林野事業はかなり経営が苦しそうだが、借入金を返せるのか」。心配そうに円子の資料をのぞいた所長が絶句した。累積債務が三兆三千億円もある。
 「返せるアテはあるのか。貸し手も返ってくると思っているのか」。所長の怒鳴り声を背中に事務所を飛び出した探偵と円子はまず、借り手の林野庁を訪れた。
 「六四年の木材輸入自由化以来、国産材は輸入材に押され、価格も低迷続きで……」。担当者は経営環境の厳しさは認めるが、「九一年に立てた経営改善計画では、二〇一〇年度には完済できる」と続けた。植林した木が育ち、高値で売れる樹齢に達するからだ。しかし、七八年、八四年と過去二回作った経営改善計画は、いずれも失敗した。
 岩手県岩泉町で林業を営む植村武司さんは、今回も悲観的だ。「間伐など必要な手入れをしないので、国有林は荒れている。資産価値の高い木は育たない」。森林環境整備推進協力金についても「経営破たんのツケ回し」と手厳しい。
 「大金を貸すには心もとない状況だ。貸し手の判断を聞こう」。探偵と円子は大蔵省に向かった。
 財投を担当する理財局は、「融資に際しては、償還の確実性などを審査している」という。では、三兆円超の債務を抱える国有林野事業に償還能力がある、と判断する根拠は何か。経営改善計画は法律になっていて、国会で成立している。しかも、農林水産相が計画に責任を持つ。国の保証という担保があるから安全確実で、不良債権にはならないという理屈だ。
 「大丈夫といっても、返せるという借り手の言い分をうのみにしているからか」。事務所に居合わせた黒地捜査官は不満そうだ。「国の保証を突き詰めれば、最後は『国民負担』だろう。無責任すぎる」。なぜ、そんな甘い融資がまかり通るんだ。
 「財投は貸し手にとっても都合がいいからなんです」。立教大学教授の新藤宗幸さんが内幕を解き明かしてくれた。税金で賄う一般会計に費用を計上すると、国会審議などで厳しい攻撃を受けかねない。しかし、財投なら「あくまで融資で、税金無駄遣いではない」という言い逃れが利く。
 都合がいいのは借り手も同じ。借金で借金を返す自転車操業でも資金繰りに行き詰まらなければ、“倒産”はしない。その結果、「調達資金が無償の税金か有償の財投かは、大した問題ではないという意識に陥る」(新藤教授)。その間は、経営体質にメスを入れずとも延命できるからだ。
 財投で処理すれば、一般会計ベースでは表向き「小さな政府」を演出できる。九六年度の一般会計予算額は七十五兆円だが、裏には「第二の予算」として、四十九兆円の財投計画がある。「一般会計は無理でも、財投でなら」という甘えが、はびこっている。
 探偵は林野行政に詳しい筑波大学教授、熊崎実さんの言葉を思い出した。「財投で表面を取り繕う結果、国土保全に必要な森林まで切るような事業を続けていいのか、という根本的な議論を先送りしている」。
 所長は深刻な表情だ。「債権が不良化することはないという建前で毎年、財投の借り入れを続けたら、膨大な債務が累積するぞ」。
 確かに、円子はあるシンクタンクで「焦げ付く可能性がある財投機関の債務は百兆円以上になるかもしれない」という試算を見た。国有林野事業だけでなく、国鉄清算事業団など多くの財投機関が焦げ付き債務を抱えている。しかも、不良債権額はほとんど公表されていない。
 「無責任体質のツケを国民に回すという意味では、財投は住専問題と同じだ」。黒地捜査官の怒りは収まらない。でも、所長は「ウチの事務所も財投機関になれないかな。資金繰りが楽になるのに」。

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