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Re: 事件・事故報道で今一度考えたいメディアの責任と体質(中) (nikkeibp.jp)
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投稿者 ウソ捏造工場 日時 2005 年 8 月 21 日 06:17:41: OszuLYfIhReeI
 

(回答先: 事件・事故報道で今一度考えたいメディアの責任と体質 (nikkeibp.jp) 投稿者 ウソ捏造工場 日時 2005 年 8 月 21 日 06:13:33)

2005/05/13

(藤代 裕之@ガ島通信)

JR脱線事故で『ハインリッヒの法則(重大災害を1とすると、軽傷の事故が29、そして無傷災害「いわゆるヒヤリ・ハット」は300になるというもの)』というのが話題になっていますが、この法則はマスコミの事件・事故報道にも当てはまるのではないでしょうか。

松本サリンやイラク人質事件など、問題が大きくなった場合のみ、マスコミは重い腰を上げて訂正や謝罪をしてきましたが、あくまで「特例」で、言葉を変えれば「運が悪かった」で済ませてきました。内部には依然として「当局の動きを追ったもので、その時点では真実だった。結果誤報は、誤報ではない」との意識が根強く残っています(サリン事件での深刻な人権侵害を考えれば理解は得られないでしょう)が、結果誤報は誤報です。

マスコミ的な考えでいくと、(上)で紹介した「ブレーキ痕があった」か「なかった」か(どちらかは確実に誤報)などは、さほど重要ではありません。このような、誤報を軽視するムードや体質が、大きな誤報(誤報に大も小もないと思いますが、適当な言葉が見当たりませんでした)が繰り返されるひとつの要因となっています(いつも述べていますが、原因は複合的ですが、改善されていないことは確かでしょう)。

事件・事故の場合、捜査当局は記者会見や発表をほとんど行いません。関係する企業や団体も「捜査中なので警察に情報提供を止められている」、「裁判に影響がでる」などの理由であまり会見をしたがらないものです。夜討ち朝駆けと呼ばれる取材手法で、捜査員などから情報収集した「非公式」なものが報道されていきます。この非公式情報を、どれくらい「取ってくるのか」が記者の力量とされています。

記者は日ごろから関係を作っているネタ元(警察の幹部や企業の経営者などさまざま)のところに話を聞きに行きます。「列車の事故時のスピードは時速何キロだったのですか?」と記者が尋ね、警察のネタ元が「だいたい100キロくらいかな」と答えたとします。翌日には「○○署の調べによると列車は100 キロ出ていた」という記事が紙面に掲載されます。「そんないい加減なの?」と思われるかもしれません(複数のソースに当たったりしますが、基本構造を支えているのはこのようなネタ元とのやりとりです)。

今回の事故列車のスピードでも「約100キロ」、「108キロ」、「108キロからさらに加速していた」、「カーブ手前の直線では120キロ」など、さまざまな報道がありました。いずれも列車に搭載されているモニター解析装置(非常ブレーキの5秒前から速度を記録するとされる)の記録と思われますが、結局のところどこで何キロ出ていたのか良くわかりません。記者が解析データを入手しているわけではなく、ネタ元の「証言」に基づいて報道している可能性が高いことが推測できます。

このような取材手法で「確かさ」を担保するものは「自分のネタ元はウソをつかない」という、非常に脆く、願望めいたものでしかありません。もし、捜査当局が目をそらすために口裏を合わせてリークをしていたらどうするのか…。残念ながらそのような視点はマスコミ内にほとんどありません。どちらかと言えば、ニュースソースが秘匿されている状況に胡坐をかき、なんでもありの「書き得」報道を繰り広げているのが実態です。

記者の原稿はデスクがチェックしますが、「誰が100キロと言ったのだ、確かなのか?」との質問はほとんどありません(デスクから何度も質問される記者は新人やあまり仕事ができない記者とされている)。「確か」なネタ元の話を、「確か」な記者が書いているから報道内容は「確か」なのです。

このような無責任な構図が誤報を生みだした最近の一例が、共同通信のイラク人質事件報道です。イラクで米軍が発見した遺体を福岡県出身の青年のものと「断定」したものの、別人と分かり「殺害を取り消し」。翌日に「殺害」が分かったというものです。共同による検証記事を各新聞(共同通信のHPに関連記事が掲載されています)でご覧になった方もいらっしゃると思いますが、検証記事を読めば「取材先がウソを言うはずがない」という過信と思い込みで突っ走り、後戻りできなくなってしまった様子が良くわかります。

もちろん公式情報だけでは「隠している問題点」を明らかにすることはできません。夜討ち朝駆けによる情報収集も、大切な取材活動の一環だと考えています。問題は、記事の「確かさ」への認識不足と誤報への意識の甘さです。マスコミ報道の「信頼」を支えるのは正確さです(以前の和菓子屋の例で言えば、和菓子の味と品質です)。丁寧な事実の積み重ねを軽視している現状は、安全運行をないがしろにして重大事故を起こしてしまったJR西日本を非難できるようなものではありません。結果誤報であっても、インシデント誤報(報道で誰も傷つかない、影響がないもの)であっても、誤報としてとらえ、改善の糧とすべきだと私は考えています。

たくさんのご意見やトラックバックありがとうございます。ご意見は編集部から「本文」のみ転送してもらい目を通しています。このテーマ、当初は、(上)(下)で予定していましたが、書いているうちにまとまりがつかなくなり、3回に分けることにしました。どうぞよろしくお願いします。

参考となる文献を紹介しておきます。「支店長はなぜ死んだか」(上前淳一郎著、文芸春秋)、「誤報 新聞報道の死角」(後藤文康著、岩波書店)。

http://nikkeibp.weblogs.jp/gato/2005/05/morethink2.html

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