★阿修羅♪ > マスコミ批評1 > 646.html
 ★阿修羅♪
権力監視機能を果たしているか -新聞週間に考える(東京新聞)
http://www.asyura2.com/0505/hihyo1/msg/646.html
投稿者 kamenoko 日時 2005 年 10 月 18 日 09:06:27: pabqsWuV.mDlg
 

権力監視機能を果たしているか -新聞週間に考える(東京新聞)

  神保哲夫 じんぼう・てつお=ビデオジャーナリスト 1961年、東京生まれ。
  2000年、日本発のニュース専門インターネット放送局、ビデオニュース・ドット
  コムを設立。著書に「ツバル -地球温暖化に沈む国」など。

 今更言うことでもないかもしれませんが、ジャーナリズムの最も重要は役割は
権力のチェックです。 とりわけ、絶大な権力が集中する国家権力の監視は、
「それなくしてジャーナリズムに存在価値無し」と言い切っていいほど、
ジャーナリズムの最低限の責務と言っていいでしょう。
 しかし、ジャーナリズム、とりわけその中心的な担い手であるはずの新聞が、
その使命を完全に喪失してしまっているとしか思えないようなできごとが、
昨今頻繁に起きています。 特に朝日新聞が報じたNHKへの政治家の圧力問題と、
朝日側の事後の対応は、その冷酷な現実を露にしたように思います。
 この一件では、取材の過程で朝日側にも多少は詰めの甘さがあったかもしれません。
しかし、もし仮にことのあらましが政治家やNHKの主張する通りであったとしても、
あの記事には明らかに事実相当性があったと筆者は考えます。政治家側がNHKを
呼びつけたのかNHK側が勝手に来たのかなどのディテールにいくつか不備な点が
あったとしても、国政に多大な影響力を持つ有力な国会議員が、結果的に言論に
介入した疑いが強いと思われる場合、警鐘を鳴らすことはジャーナリズムとしては
当たり前過ぎるくらい当たり前のことです。 その意味で、今回は他にも不祥事が
重なったとはいえ、朝日新聞がこの問題で簡単に自らの非を認めてしまったことは、
ジャーナリズムの将来に重大な禍根を残すことになってしまったと思います。
 今回は取材された政治家側が記事の事実関係を否定したとたんに、なぜか朝日側に
記事の事実関係の検証責任を課す風潮が、社会全体に醸成されてしまいました。
多くの市民が「朝日が証拠を示すべきだ」と感じていたことは紛れもない事実でしょう。
しかし、これが朝日ならずともジャーナリズム全体にとって危機的な問題である
ことを、私たちは強く認識する必要があります。
 朝日は独自取材の結果、権力の濫用があったと判断するに足る十分な理由があった
から記事を出した。 これに対して、もし取材を受けた権力側が、それが間違いで
あると主張するのであれば、本来その根拠を提示する一義的な責任は権力側にある
はずです。 しかし、究極の権力者であるはずの政治家は、証拠は提示せずに「あれは
間違い」と主張するだけで済まされ、逆に朝日は証拠の提示を求められることになった。
これは朝日新聞自身がもはや社会の中では膨大な既得権益の受益者として”権力側に
ある存在”と認識され、権力をチェックするどころか、むしろ朝日自身が市民社会から
チェックされる対象となってしまったことの反映だと筆者の目には映ります。
 新聞が再販制度や記者クラブ制度、テレビと新聞の同一資本による業際保有(クロス
オーナーシップ)を通じた極度の資本集中等々、他の業界ではあり得ないような特権的
な地位を享受し続けながら、メディアが抱えるさまざまな構造問題には完全に頬被り
したまま、表面的には善意の権力監視者を装っているような「偽善」を、もはや市民
社会はとっくに見抜いているのだと思います。これは同時に、既存のジャーナリズムが
もはや権力監視機関としての市民社会の付託を失っていることを意味します。 権力が
権力をチェックしても、それは市民側から見れば、単なる二つの権力間の縄張り争いに
しか見えないということです。 
 地球環境問題の分野に「予防原則」という重要な考え方があります。 百パーセント
事実関係が証明されていないことでも、後に重大な結果をもたらす可能性のある問題に
対しては、疑いの段階から一定の措置をとっておく必要があるという考え方です。
 仮に動かぬ証拠まで掴めていなくても、権力が言論に介入している疑いが高いと
信じるに足る相応の理由があれば、その段階で警鐘を鳴らすことはジャーナリズムの
最低限の責務です。 しかし、予防原則に基づく行動が支持されるためには、その
担い手側の動機に一筋の曇りも許されません。 ジャーナリズムが権力監視機能を
果たし続けるためには、自らが既得権益や権力の受益者としての地位を求めない覚悟が
必要なのです。 既存のジャーナリズムが権力監視機能を果たすことが期待されなく
なっているとすれば、それこそが、今日の新聞が抱える最大の問題なのではないで
しょうか。

  東京新聞 2005年(平成17年)10月17日(月曜日) 夕刊7面

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ       HOME > マスコミ批評1掲示板



  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。