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縄文ビトさん、聞いていただけますか?
http://www.asyura2.com/0505/idletalk14/msg/260.html
投稿者 デラシネ 日時 2005 年 7 月 31 日 08:21:45: uiUTTMWMO8Vq6
 

こんにちは。
縄文ビトさんには、初めて話しかけます。

縄文ビトさんの過去のご投稿は、小生ほとんど読んでおりません。
それは縄文ビトさんのご投稿に、小生が読む価値を見出さなかったという意味ではなく、単に興味がなかったということです。
プロ野球観戦が好きで、将棋に興味がない人間が、単にテレビの将棋対局番組に興味を示さないのと一緒です。
ただ、それだけの理由です。

それでは、どうして小生が今回、縄文ビトさんに話しかけようとしたかなのですが、それはちょっと「思うところがあって」という、小生の勝手な都合からです。
だから、ごく気軽に読んでください。
レスもお返しいただく必要もありません。

縄文ビトさんは、ヒチコックの悲劇という話をご存知でしょうか?
ヒチコックといっても、あの有名なスリラー映画の巨匠、アルフレッド・ヒチコックのことではなく、ニューイングランドの地質学教授、エドワード・B・ヒチコックのことです。
もちろん、実在した人物です。

エドウィン・ハリス・コルバートはその著、「恐竜の発見」の中で、このヒチコックについて数ページを費やしているそうです。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152050667/3w-asin-asyuracom-22/249-8673133-9469961

「彼は1835年、コネチカット渓谷の三畳紀層地帯から発見された恐竜の足跡に興味を持ち、以来その発掘と収集に一生をささげた。
この頃はまだ、北アメリカに恐竜がいたということはわかっていなかった。
ヒチコックも、この岩石につけられた多くの足跡が、古代の巨大な鳥の足跡であると信じて疑わなかった。
なぜならその足跡は、鳥の足跡に酷似した三本ゆびだったからである。
実際は三畳紀の恐竜の足跡であるそれを、ヒチコックが、鳥の足跡だと誤解したのも無理はなかった。
鳥と恐竜の足の類似については、『その事実を恐竜の研究家は、夕食にニワトリを食べるたびに、これでもかとばかり見せつけられる』と、コルバートも述べている。」
(訳・小畠郁生・亀山龍樹)

「ヒチコックが、足跡の収集を始めて26年後の1861年、ドイツのゾールンホーフェンで、始祖鳥の化石が発見された。
最古の鳥である始祖鳥の、最初の発見だった。
この化石は、コネチカット渓谷の三畳紀の足跡よりも数千年も若い後期ジュラ紀の岩石から発見されたので、本来ならばコネチカット渓谷の足跡が、始祖鳥以前の、爬虫類のものであることを証明する筈であった。
ところがヒチコックは逆に、この始祖鳥の化石の発見のため、自分の収集したものが鳥の足跡であるという考えを、ますます固めてしまったのである。

この頃からヒチコック教授の健康は衰えはじめた。
それでも彼は、コネチカット渓谷の足跡の収集をやめなかった。
老教授にそれほどの根気と熱意をあたえたものは、いうまでもなく、この世で見かけることはもう絶対にないであろう古代の巨大な鳥の、より完全な姿を求めようとする探究心であったろう。
しかし、強い夏の日ざしの下、病めるからだに鞭うって、広大なコネチカット渓谷をうろうろとさまよい歩くこの老教授の脳裏に描かれた巨大な鳥たちは、過去の世にさえ存在しなかった。
まったく架空の鳥だったのだ。
それは実際には、大小の恐竜たちのつけた足跡であり、ヒチコックは北アメリカに恐竜が存在した最初の証拠を目前にしながら、その発見者となる名誉を放棄し、死ぬまでそれを巨大な鳥の足跡であると信じ続けたのであった。

晩年のヒチコック教授が思い浮かべていた、大小の巨大な鳥の群が歩いていくその情景は、もはや彼にとって『異常な』ものではなく、むしろ彼のノスタルジアをかきたてるようなものではなかっただろうか。
そして彼は、その情景を胸に抱いたまま、1864年にこの世を去った。
彼の魂は、彼の心にだけ存在した巨大な鳥の楽園に今も遊んでいることだろう。」

(筒井康隆著 私説博物誌)

このエピソードを書いた筒井康隆は、こうも言っています。

「われわれの中にはよく、空想の翼をはためかせ、高く飛翔しようとする衝動が起こる。
しかし、その一方で、その飛翔をうしろめたく思ったり、野放図に広がろうとする想像を現実に縛りつけておこうとしたりもする。
SF作家でもないかぎり、そういうことは現実の社会生活を営む上でなんの益もないことだと思い勝ちであり、むしろ夢想家とみなされることを嫌う気持ちがある。
しかし、そういった空想によってがっちりとした自分自身の世界を構築することが、このお仕着せ的な思想の充満した時代、オートメーションで作られた同じ製品を多くの人が買わざるを得ない現代において、どれほど豊かなことであり、ぜいたくなことであり、すばらしいことであるかを自覚しているひとは少ないのではないだろうか。
自分一人だけのものを持つことがいかにぜいたくで、いかに難しいかは、ファッションにすぐれた感覚を持つ女性ならよくご存知であろう。
ましてヒチコックは、その空想を過去における現実と信じ、死んでいったのだ。
こんなしあわせな科学者は少なかったのではないか。
ほとんどすべてのことが実証されてしまった時、科学者が空想の翼をはためかせる余地はほとんどなくなってしまう。
謎は解明されない間がいちばん魅力的だ。
過去に絶滅した生物たちが魅力的なのは、それが彼らをとりまく謎によってわれわれの空想力を刺激するからに違いない。」

・・・

縄文ビトさんは、縄文の時代という遥か彼方に過ぎ去った時代に、尽きることない想像の翼をはためかせておられるのですね。
このSF作家の言を待つまでもなく、なんとぜいたくで、うらやましいことか。

小生は、現実的になれとか、夢物語を語るなとか、言うつもりはありません。
心から縄文ビトさんを、うらやましく思います。

ですから、ご自身の描かれる夢を、もっと大切になすってください。
他人が見たくても見られない夢だからこそ、ぜいたくなのです。

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