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Re: 「悪魔の詩」翻訳者刺殺時効まで1年->『中東ハンパが日本を滅ぼす』再読の勧め
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投稿者 goose 日時 2005 年 7 月 12 日 16:32:30: mSLVsFhN4judg
 

(回答先: <筑波大助教授殺害>「悪魔の詩」翻訳者刺殺、時効まで1年 [毎日新聞] 投稿者 white 日時 2005 年 7 月 09 日 23:01:03)

事件直後マスコミは『悪魔の詩』のため出されたファトウワに従ってイスラム・テロリストが行ったという報道を垂れ流した。そして今も。

五十嵐一殺害事件についての記事は、常に『悪魔の詩』が引き合いに出されるが、事件直近の著作は、日米の湾岸戦争戦略を実に痛烈に批判する『中東ハンパが日本を滅ぼす』であった。

坂本弁護士一家殺害事件当時、現場には遺留品としてオウムのプルシャが発見されていたという。
警察はそれを意図的に無視し、ゆえに事件は一時迷宮入りとなり、オウム被害は大きく拡大した。

『中東ハンパが日本を滅ぼす』に、五十嵐一暗殺事件のプルシャのような機能はないだろうか?

『悪魔の詩』作者ラシュディに対するホメイニのファトワが出されたのは89年2月14日。
『悪魔の詩』が翻訳刊行されたのは上巻90年2月、下巻9月である。
『中東ハンパが日本を滅ぼす』の刊行は確か91年5月末。
そして、事件が起きたのは91年7月12日。

『中東ハンパが日本を滅ぼす』に言及する記事は今日に至るまで何故か皆無なのが不思議だ。
普通なら事件の背後を探るには、被害者の直近の行動を調べるのが鉄則だろう。

イスラムの専門家だった筆者の文章、どう読んでもイスラム原理主義者に危害を加えられると予想していたとは思えない。

本書の中で彼が批判している組織は相手は誰だろう?
事件によって最も利益を受ける組織は、個人は何か?
筆者の憂慮した方向へと事態が進んでいることに、驚かないだろうか?
「イスラム」「テロ」が横行していることに「なっている」現在、本書は再考に値するのでは。

以下「はじめに」の部分だけでもお読み頂きたい。(後半数行の謝辞は省略。)
惜しむらくは、どうやら本書、絶版のようなことだ。
-----
中東ハンパが日本を滅ぼす アラブは要るが、アブラは要らぬ

はじめに

『悪魔の詩』事件の十倍疲れた!というのが湾岸危機発生以来このかた、戦争終結後の今に至るまでの筆者の正直な感懐である。
イランの故ホメイニー師が『悪魔の詩』の作者はもちろん、出版発行者や外国語版翻訳者にまで死刑宣告のファトウワ(法律に等しい命令)を出したために、日本語訳を上梓した筆者は、記念記者会見の席での襲撃事件はじめ、さまざまな嫌がらせを受けてきた。しかし、終始一貫言い続けてきたように、同小説は知的に書かれた興味深い小説にして、巷間噂されているようなイスラーム批判の書ではない。
それどころかイスラームは同書の主題ですらなく、新しいタイプの放浪者文学である以上、訳者としての筆者のスタンスはむしろ単純明快であった。あらゆる意味で所詮小説は小説なのである。
しかるに湾岸危機は全く様相を異にしていた。アラブのはねっ返りサッダーム・フセインがイラン・イラク戦争のウップン晴らしにクウェートに出てきてアラブ遊牧民風のハッタリをかました程度と思っていたら、アメリカがそれを真にうけたのか、それともハイ・テク兵器デモンストレーションの好機到来とみたのか、"正義"の味方スーパーマンの国際ショーを始め出す。
おまけに、ことの起こりの国境線引き問題には何の関係もなく、石油生産や価格の問題には大口購買者としてむしろ世界経済の安定と平和のために大いに協力しているはずの日本までが、戦争マニアの一方に加担せよと迫られる始末。
実を申せば筆者は、イラク軍がクウェートに侵攻した湾岸危機発生の直前から、当時中東五カ国歴訪を予定していた海部俊樹首相に対し、内閣官房を通じて中東情勢レポートを送り、アドヴァイザー的役割を果たしていたが、それは危機発生後も続いていた。
中東に対する欧米の汚れた手の歴史と、ベドウィン風のイラクの遣り口に思いを潜めれば、そして何よりも石油をめぐって見えない形での日本の貢献を評価するならば、日本にこれ以上の貢献など不必要、どこかの社長のように「戦争でもなんでもおやりになりたければどうぞ」と言えばよろしいと、進言し続けてきたのである。
あろうことか日本国政府は、右のような依頼に応じての筆者の進言を無視して、アメリカの求める資金援助や、さらには自衛隊派遣までを含めた支援策の検討を、国際正義を護るための応分の負担とか称して実行に移してきた。
それが海部俊樹首相個人の本心か、虎ノ門坂上(アメリカ大使館)の筋の意向をうけての小沢一郎幹事長(当時)らのブラフに屈したものかは、この際どうでもよい。まことに中東という馬を見て鹿といい、アメリカという鹿を見て馬という類の馬鹿野郎どもの馬鹿な選択であった。
筆者が『悪魔の詩』事件の十倍疲れたと感じるのは湾岸危機発生以来、こうした馬鹿野郎どもの相手をし続けてきたからである。それもフィクションとフレーム・アップで膨れ上った湾岸危機というお化け相手だけに、疲労感も一段と増加したのである。
加えて、雨後のタケノコならぬ戦争という火事場のドロボーの如き徒輩が登場してきて稼ぎ時とばかりに珍無類の論評を始めた分だけ、歪められた中東像の訂正にも手間がかかった。
ところで筆者は、中東地域やイスラームの宗教と文化を専門とする学者である。学者の常として中東やイスラームに関する基本的データや知識、彼らの物の考え方と、日本として採るベきスタンスや座標軸について繰り返し説き続ける他はない。「馬鹿につける薬はない」とか「馬鹿は死ななきゃなおらない」と言って放り出すわけにもいかないのである。
むろん中東問題のすべてが学問的に整理され、公式やマニュアルが存在するわけではない。しかし、そのような基本がすでにある領域で、それを知らずにもしくは故意に無視して行動することは、大いなる混乱と危険を招来しかねない。
筆者の見るところ、堺屋太一氏の小説『油断!』の影響からか「アブラは要るが、アラブは要らぬ」という常識的反応や、日本文化会議のお歴々はじめ正論グループの「アメリカによって代表される国際正義こそ第一」という絵に画いたモチ的スタンスがその代表例である。
「アラブは要るが、アブラは要らぬ」という本書のモチーフは、最初から最後まで貫徹している。本書は今回の湾岸戦争をトータルとして反省し、いったい何のための戦争であったかを振り返るとともに、同様の事件が今後において発生した時に、慌てて同じような過ちと疑心暗鬼を繰り返さないために、中東を見る視点というか座標軸そのものを反省してみた。
中東やイスラームの歴史はむろんのこと、石油問題やエネルギー事情にも広く深い構造的理解なしには、今回の湾岸戦争から得られる教訓など何ひとつないからである。
すでに他の拙著において開陳したところであるから重複をできるだけ避けたが、筆者は一九七九年に勃発したイラン革命の直接の被害者であり、JAL避難便で帰国した組の一人である。当時は"人質"という言葉こそ用いられなかったが、革命の巷テヘランでは禁足令が出ていたから、似たような情況にあった。
避難民を輸送するために自衛隊機の派遣などの話題も、一部からは出ていた。そうした経験もIJPC(イラン日本石油化学、三井グループとイランの合弁会社)の撤退問題への関与を含めて—もって他山の石とすべしの精神で、本書に織り込んである。
湾岸戦争を重要な主題の一つとしているからといって本書は、実はアノ時こうであった式の実録物、暴露物でもなければ、フセイン支配はあとどのくらい存続して次の政権は誰にといった式の未来予測物でもない。
この種の読み物が好きな読者が少なくないからか、相不変のソ連陰謀説がまたぞろ復活しているし、ゴルゴ13まがいのフセイン暗殺説も根強い。
ペレストロイカ後のソ連のお家の事情や、石油をめぐる米ソの共通利害に思いを潜めれば、ソ連陰謀説など浮上するはずがない。そしてフセイン暗殺後の受け皿溝想−しかも国際的に認知され、かつでき得べくは親米的な政権−なしに、スパイ小説や劇画めいた空想をめぐらせても無意味なのである。
かといって本書は、細かいだけが取り柄の一見学術書風でもない。もっともその悪影響で、他の著者ばかりか読者の中にも、アラブとペルシア、あるいはスンナ派とシーア派の対立にまでやたらと拘泥して一知半解の議論をなす者が少なくない。
生兵法は大ケガの元と申し上げる他はないが、同時に筆者の言うアラブは中東全域に拡大できる概念であって、まず根源を押さえた上で、それぞれの差異性に思いをめぐらすべきであろう。そして中東の人々の思考様式、行動パターンを把握することは、山本七平氏の批評とは異なり、日本人にとってそれほど困難とは思えないだけに、あえて大胆なモデル化も試みておいた。
つまるところ、枝葉末節はともかくも、中東がらみの問題が今後とも発生した場合、必ずや"正義"の味方アメリカが登場し、日本がまたぞろ引き合いに出されようが、本書に開陳されている基本さえ押さえておけば心配ないのである。逆に一つでも踏み外したならば、「馬鹿は死ななきゃなおらない」的破局が生じかねない。
しかし基本は基本である以上、あえて言えばそれを踏まえずして誤る方が悪いのであるが、生涯一学徒と決めた筆者としては身の危険も顧みずに基本を説き続けるしかないのである−アラブは要るが、アブラは要らぬと!
(後略)

一九九一年三月

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