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代用監獄(警察の留置場)は虚偽の自白を誘発しやすい → 茨城・布川事件の再審開始決定(救援新聞)
http://www.asyura2.com/0505/nihon17/msg/689.html
投稿者 gataro 日時 2005 年 11 月 01 日 09:52:46: KbIx4LOvH6Ccw
 

【茨城 布川事件・再審開始決定の内容とその意味】
布川事件弁護人 谷村作太郎    (救援新聞10月25日2面から)

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茨城・布川事件は9月21日、水戸地裁土浦支部で再審開始決定を勝ちとりました。再審開始決定の内容と意義について、同事件の弁護人・谷村正太郎さんより寄稿していただきました。
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一 布川事件とこれまでの裁判

(一)布川事件は、1967年(昭和42年)に発生した強盗殺人事件です。

この年の8月30日朝、被害者Tさん(62歳の男性)が利根町布川所在の自宅で、何者かによって殺害されているのが発見されました。家の中は荒らされ、犯人が物色した形跡が明瞭でした。解剖の結果、犯行日時は28日の午後9時頃と推定されました。

捜査は難航し、警察は10月中旬になって、桜井昌司さん(当時20歳)と杉山卓男さん(当時21歳)の2人を別件で逮捕し表した。2人は警察の取調べの苦しさに耐えかねて虚偽の自白をします。いったん警察の捜査が終わり、拘置所へ移監され検事に取調べられたとき、2人は警察の取調べのひどさを訴え、犯行を否認しました。ところが2人は警察の留置場に逆送され、激しい取調べを受けて再度自白をしました。そして12月に強盗殺人罪で起訴されます。

公判が始まり、2人は無実を訴え、犯罪事実を否認します。しかし水戸地裁土浦支部、東京高裁、最高裁は2人を犯人と認定し、1978年7月に無期懲役刑が確定しました。

(二)1983年12月、再審を請求、しかし再審請求は棄却され、1992年最高裁の特別抗告棄却で第一次再審は終了しました。

1996年11月、2人は仮釈放で出獄します。逮捕以来、在獄29年を経過していました。

2001年12月に桜井さん・杉山さんと弁護団は、再び再審を請求しました。水戸地裁土浦支部は、弁護人の提出した106点の新証拠と3人の証人(うち1人は検察官申請)を取調べ、2005年9月21日、再審開始決定をしました。

二 再審開始決定の判断

決定は本文268ぺージジ、別紙30ぺージという長文ですが、次の順序で判断しています。

第1 事案の概要

これは捜査の経過と確定判決が認定した事実の要旨です。

第2 確定判決の証拠構造

決定は、確定判決の証拠構造を精密に分析し、小括として次の通り要約しています。
1 請求人らと本件犯行を結びつける直接証拠は、指紋、掌紋、足跡、遺留品等の客観的証拠がないため、結局請求人らの自白だけとなる。

2 6名の目撃証言は自白の補強証拠であり、かつ自白を離れた情況証拠である。ただし6名は犯行自体を目撃したのではなく、時間的・場所的にも犯行と接着していないので情況証拠としての証拠価値は限定的である。

3 したがって本件では自白の信用性が動揺すれば、確定判決の有罪認定も動揺する。

決定は、この事件の証拠構造を正確に分析しています。

第3 第1次再審
第4 当請求審における審理

これは第一次再審と今回の再審の審理の経過、弁護人、検察官の主張を整理した部分です。

第5 当裁判所の判断

ここからが本論ですo

1 刑訴法435条6号における証拠の新規性、明自性の意義

新規性については従前の判例を踏襲しています。そして明自性については白鳥決定・財田川決定によることを明言しています。

2 第1次再審との関係

今回の再審請求は第1次再審とは理由も証拠も別なので確定カは及ぼない、そして第1次再審請求で提出された証拠も証拠価値が存する限り判断の資料となる、としています。

3 殺害行為の方法およぴ順序

決定は確定審の秦鑑定、新証拠の木村鑑定書・証言、検察官側の三沢鑑定書・証言を検討し、次の通り判断します。

@被害者の死体には扼頸(やくけい:手で首をしめること―編集部注)の痕跡がなく、頸部の表皮剥奪創は絞頸(こうけい:ひも状のもので首をしめること―編集部注)によるものと認められる。Aまた犯行の順序は絞頸が先で、口中にパンツが詰められたのは後である。B確定判決、請求人の自白では、まず口の中に布を押し込み、その後被害者の頸部に布を巻き付けてその上から両手で強く押して扼した、とされているが、@、Aからみて合理的な疑いが生ずる。

そして決定は自白の重要な部分で信用性が動揺した以上自白全体の信用性も動揺するので、捜査段階における自白について関連する新旧全証拠を総台してその信用性を全面的に検討する必要があるとしています。これは非常に重要な判断です。これまで布川事件第1次再審の即時抗告棄却決定など、多くの事件の棄却決定では、自白については確定審でこれまでに十分検討しており、たとえ自白の一部に疑問が生じても自白のその他の部分の信用性には影饗しないとしていました。

4 自白以外の証拠の検討

決定は自白の検討に先立ち、まず自白以外の証拠・目撃証言の検討から始めています。これまでの6名の調書に加え、他の目撃者の調書、その他の関係者の多数の調書(新証拠および検察官提出、確定審、第1次再審での証拠)を検討しています。その際、決定は時
間的にも場所的にも犯行に近接しているものの方が証拠価値が高いとしています。この考え方は名張事件再審開始決定と共通しますが、非常に重要です。今回の再審では、佐藤米生弁護人を中心に、弁護団が粘り強く行った未提出証拠の開示請求の結果提出された調書が大きな役割を果たしました。

被害者宅付近で桜井さんと杉山さんを目撃したというクリーニング店店員の供述について、事件の発生から5ヵ月以上を経過したときに最初の供述がなされたという経過、その後の供述の変化は不自然、不合理であり、信用性は低いと判断しました。

また、栄橋石段での目撃、布佐駅での目撃、我孫子駅での目撃は、8月28日という日時の点は信用できないとしています。

5 自白の全体を再検討した結果浮かぴ上がる問題点

決定はまず捜査段階で2人が自白するまでの経過について、新証拠である録音テープと旧証拠全体を詳しく検討し、2人の自白は任意性が否定されるか否かはともかく、少なくとも虚偽の自白を誘発しやすい状況の下でなされた疑いは否定しがたいと認定しました。

多くのえん罪事件と同様、布川事件もまた代用監獄(警察の留置場)で作られたことを決定は明らかにしています。

ついで自白内容について、犯行に至る経緯、殺害行為、金品奪取、偽装工作、逃走情況を具体的に検討し、いずれも供述の変遷は不自然であり、捜査官の誘導による可能性が大きいとしています。

さらに最終的な自白について、ガラス戸の破損、指紋、毛髪等の新証拠を検討すると、客観的事実と一致しない点が多いと判断しています。供述全体の中に「秘密の暴露」(捜査官の知らないことを被疑者が供述し、捜査の結果、それが事実であると証明されること)が全くないことも重視しています。

第6 結論

以上の検討の結果、決定は新証拠と既存の全証拠とを総合的に評価すれぼ、確定判決の強盗殺人事件についての有罪認定に合理的疑いが生じたとして、再審を開始しました。

この決定は、殺害行為についての木村鑑定・証言の検討から始めています。しかし決定全体を読めば、どこを入り口としても、証拠構造を正しくとらえ、新旧全証拠を総合評価し自白を全面的に再検討すれば、再審開始以外にはあり得ないことが明らかです。

三 再審の流れを定着させるために

再審は長く冬の時代であるといわれてきました。

本年。3月の横浜事件即時抗告棄却・再審開始決定、4月の名張事件の再審開始決定に続く布川事件再審開始決定は、再審の流れを大きく変えるものです。もとより安心することはできません。新証拠に関係する旧証拠だけを検討すればよい、自白全体を再検討する必要はないという限定的再評価の立場に立った棄却決定は依然として多く、大崎事件の即時抗告審決定(原決定取消・再蕃請求棄却)はその典型的な例です。布川事件第1次再審の高裁決定も同じ立場でした。新しい流れを定着させ、再審を誤った裁判を正し、えん罪をなくすための制度にすることはこれからの課題です。

請求人本人と家族、国民救援会と守る会、弁護団が協力するとき、その課題は必ず実現できることを確信しています。

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刑事訴訟法第435条再審の請求は、左の場合において、有罪の言渡をした確定判決に対して、その言渡を受けた者の利益のために、これをすることができる。

6 有罪の言渡を受けた者に対して無罪若しくは免訴を言い渡し、刑の言渡を受けた者に対して刑の免除を言い渡し、又は原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき明らかな証拠をあらたに発見したとき。

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