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瓶の中の少女 [きっこの日記]
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投稿者 white 日時 2005 年 11 月 01 日 22:08:43: QYBiAyr6jr5Ac
 

(回答先: 母に劇物、16歳少女を逮捕 静岡・三島、殺人未遂で [共同通信] 投稿者 white 日時 2005 年 10 月 31 日 20:25:57)

□瓶の中の少女 [きっこの日記]

 http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=338790&log=20051101

■2005/11/01 (火) 瓶の中の少女 1

静岡県伊豆の国市に住む高校1年の少女が、自分のお母さんに劇薬のタリウムを飲ませた事件で、静岡県警少年課と三島署は、この少女を殺人未遂の容疑で逮捕した。お母さんは意識不明の重体で、現在、とても危険な状態だと言う。この少女は、静岡県立韮山高校に通う16才で、あたしの手元には名前も写真もあるんだけど、当然、ここに書くことはできない。だけど、写真を見た感じでは、すごく大人しそうで真面目そうな子で、とてもこんな事件を起こすようには見えない。

あたしは、最初、この事件を聞いた時には、お母さんを憎んでの犯行だと思った。自分のお母さんを殺そうなんて普通じゃ考えられないことだから、誰でもがそう思うだろう。だけど、今回、驚くべき事実が分かったのだ。それは、この子の中学校の卒業アルバムに、尊敬する人として、「あんまり有名な人じゃないけど、グレアム・ヤング」って書いてあったのだ。

この、グレアム・ヤングってのは、1947年にイギリスに生まれた殺人鬼で、幼いころからナチスと黒魔術と毒薬に興味を持ち、色んな毒薬の研究をしていた。12才ごろから、家族や友人の食べ物にコッソリと毒薬を盛り、苦しんだりする様子を見ながら、毒の量を加減したりして、人体実験を繰り返して行った。そして、14才の時に、ついにママハハを毒殺してしまう。そのあと、父親も倒れ、グレアムは逮捕される。そして、精神病院に送られたんだけど、24才で退院になると、今度は会社の同僚などに毒薬を盛り始め、たくさんの人が入院して、そのうち2人が死亡したのだ。結局、また殺人の罪で逮捕されたんだけど、この男の生涯を追ってみると、人を殺すことに快感を覚える「殺人鬼」とは一線を画してることが分かる今日この頃、皆さん、いかがお過ごしですか?

■2005/11/01 (火) 瓶の中の少女 2

‥‥そんなワケで、グレアムは、殺そうと思えばいくらでも殺すことができた。だけど、この男のやったことは、死なない程度の毒薬を盛り、相手の苦しむ様子を細かくノートに書き綴り、研究していたのだ。そして、死んでしまったママハハや同僚たちは、たまたま盛った毒薬の量が多すぎただけなのだ。つまり、グレアムの目的は「殺人」じゃなくて、「毒薬の研究」であり、あたしには理解できない世界だけど、「毒薬マニア」「毒薬フリーク」「毒薬ヲタク」だったってワケだ。

そして、そんなグレアム・ヤングを尊敬してた今回の事件の少女も、お母さんを憎んでて殺そうとしたんじゃなくて、グレアムと同じ「毒薬ヲタク」だったのだ。少女は、8月の中旬から9月末までの間に、ごく少量のタリウムをお母さんの食べ物に混入し続けて、お母さんの様子を見ながら、体調の変化などを細かく観察していた。ようするに、自分のお母さんをモルモットにして、毒薬の実験をしていたのだ。その様子は、少女のブログに細かく綴られていて、あたしは全部読んだんだけど、その文体に背筋が凍る思いがした。

実の母に毒薬を盛り、その苦しんでる様子を文章に書くとしたら、よほど根性のある人間でも、多少は情緒が乱れたり、自戒の念にかられたり、精神的にパニックになったりと、何らかの動揺が文章に表われるもんだと思うけど、この少女の文章は、極めて淡々と書かれている。それは、まるで、カフカの「変身」の文体のようで、「ある朝、目が覚めたら、自分が巨大なイモムシになっていた」って言う、普通なら大パニックになる情況なのに、それを事務的に淡々と書き綴ってあるから、余計に読む者に恐怖を感じさせる。それと同じ恐怖感が、この少女のブログの文体から感じられた。

■2005/11/01 (火) 瓶の中の少女 3

中学時代のクラスメートによると、この少女はものすごい化学マニア、実験マニアで、化学の教師でも分からないような難しいことまで知っていて、国語の授業中に国語のノートの端に、落書きの代わりに化学記号や数式を書くほどだったと言う。そして、およそ中学生が読むようなレベルじゃない化学の本などを読んでいたりして、クラスではちょっと浮いた存在だったそうだ。韮山高校に進学してからは、化学部に所属し、部屋からはタリウムの他にも、色々な化学薬品や専門書などが複数見つかっている。

‥‥そんなワケで、この少女自身も、10月20日未明に何らかの毒薬を飲んで自殺を図り、21日に入院したけど、サスガ、自分のお母さんを実験台にして研究してただけあって、死なない程度の量しか飲まずに、10日後の31日には退院した。そして11月1日付けで逮捕されて、現在は三島署で厳しい取り調べを受けてるワケだけど、この自殺未遂は、完全にヤラセだろう。現在、取り調べ中なので、あんまり突っ込んだことは書けないけど、これほどの毒薬ヲタクで、直前までお母さんを実験台にして観察してたんだから、ホントに死ぬ気なら、きちんと致死量を飲むハズだろう。

つまり、知能は子供でもベッドでは大人、迷探偵キッコナンの推理によれば、自分も被害者に成りすまし、犯人が他にいるように見せかけるために、自らも微量の毒薬を飲んだのだ。その証拠に、この少女は、警察の取り調べに対して、「母がタリウム中毒になったことは知っていた」と話していながらも、自らの犯行は否認し続けていて、「そんなことはしていない」と言っている。自分の罪にさいなまれて、本気で自殺を図ったのなら、きちんと致死量を飲むハズだし、致死量を飲んだのに奇跡的に一命をとりとめたのであれば、この期に及んで犯行を否認したりはしないだろう。

さて、いくら毒薬ヲタクでも、自分のお母さんを実験台にするなんて、あたしにはどうしても理解できない。それで、今年の6月27日から始まってるこの子のブログをじっくりと読んでみた。それで、気になった部分をここにコピーしてみるので、こう言う犯罪を犯す少女の心理がどんなものなのか、皆さんそれぞれが考えてみて欲しい。ちなみに、ブログ上では、この女の子は男性名を名乗ってて、一人称も「僕」になっている。

■2005/11/01 (火) 瓶の中の少女 4

6月27日
日記を書き始めようと思います。学校の人はこの事を知らないので、嫌な事とかも全て書くつもりです。

6月28日
今日は暑かったです。昨日も真夏のようでした。昨日は水泳の授業がありました。憂鬱な体育の授業です。

7月2日
久しぶりに買い物に行ってきました。買ったものは、以下の通りです。瓶500ml・・・5瓶、瓶750ml・・・2瓶、8/4スプレー・・・1缶、チャッカマンミニ・・・

7月3日
今日は本の紹介します。 グレアム・ヤング毒殺日記 尊敬する人の伝記、彼は14歳で人を殺した。酒石酸アンチモンカリウムで、毒殺した。

7月7日
晴れのち雨そして快晴、この間買った酔い止め薬の通常使用量の8倍の量を飲み干しました。なんか浮かんでいる気がします。ふわふわして地に足が着いてない感じがします。

7月11日
頭が痛いです。エフェ錠の副作用でしょうか?周りで女子の甲高い声が響いているのが聞こえます、其の音が耳に入る度に、後頭部に鈍い痛みが走ります。

7月14日
道を歩いていた野良犬を蹴ったら、キャンキャン喚きながら、地べたを這いずり回った。あはは、まるで本当の犬みたい。

7月16日
今日は図書館に行って本を借りてきました。「死体を語ろう」や「日本列島毒殺事件簿」、「薬物乱用の科学」、「有機科学入門」等を借りました。

7月18日
お昼頃、買い物をしに歩いていたら道端に血まみれの猫の死体が落ちていました。頭が潰れていて、中から脳髄がはみ出していました。

7月19日
ネット上の性別は、戸籍上のものとは違うものが使われることが多いのでしょうか?だとしたら、僕の罪も少しは許されると思います。

7月23日
そんな事は在りえないけれども、もし、一度だけ生まれ変われるとしたら、僕は植物になりたい。大きな喜びは無いけれど、代わりに深い悲しみも無い。

7月26日
暗闇の大木に揺ら揺らと紅い光を馳せて蝉が光る茶色く干乾びた其の体に命の残り火を燻らせニイと啼く木々の沈黙の中其の声は雨の様に僕の下へと降り注ぐ

7月28日
僕の中に居る彼女の存在を感じなくなりました。消えてしまったのでしょうか。とても寂しいです。

7月30日
唐突だけど、僕は酒鬼薔薇少年が好きではありません。自作の詩だという「懲役13年」は、神曲等の有名な詩を切り貼りしただけの代物ですし。

■2005/11/01 (火) 瓶の中の少女 5

8月5日
テトラヒドロゾリン―目の充血、鼻づまり改善薬『ABC点鼻スプレー』『ナーベル点鼻・点眼』『リン酸コデイン―鎮咳剤』『コデイン』『リンコデ』『リン酸コデイン』

8月6日
西友は薬品の品数が少なくて、思った様には行きませんでしたが、テトラヒドロゾリンを5mg/10mlで含んでいる物として、バイシン1箱を手に入れました。早速飲んでみました。

同日
今まで様々な生物を僕は殺戮してきた。彼等で遊ぶのは楽しかったが、同時にとても疲れた。何故なら、残った肉塊の処理だけでも数時間は優に要したから。

同日
僕の周りの、僕以外の全ての人にオキシトシンを嗅がせたい。

8月9日
もしも人間が悪魔であるなら・・・種族そのものが邪悪な存在であるなら・・・その対極にあるべき『善』とは何だ?

8月10日
赤いマントで興奮するのは、牛じゃなくて観衆。牛は色が見えない。

8月14日
Benzene Hexachloride―ベンゼンヘキサクロライド―を昨日合成しました。 別名ヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)とも呼ばれる、有機塩素系の殺虫剤の一つ。

8月19日
薬局から電話がありました。問屋が“酢酸タリウム”と“酢酸カリウム”を間違えたらしいです。直ぐに取り替えるそうですが、待ち侘びている。

同日
昨日から母の具合が悪いです。全身に発疹が起こり、特に顔面に症状が強く出ています。今日は皮膚科へ行きましたが、医者もただ首を傾げるばかりで原因は分からないそうです。

8月24日
酢酸タリウムが届きました。薬局のおじさんは「医薬用外劇物」の表示に気付かず、必要な書類を通す事無く僕に其れを渡してきました。

8月25日
変な夢を見ました。僕が彼女を食べる夢です。僕は彼女を手、足、胴体、頭の順に食べました。細い腕は魚みたいに痙攣していて、引きちぎれても未だ動きました。

8月26日
お腹が痛いです。原因は解っています。タリウムです。昨日、それの水溶液を誤って指に付けてしまったのです。直ぐに手を洗ったのですが、指先は白く濁ったままです。

8月27日
寝ても起きても気持ち悪いし、指先とか脚とかが痺れてきたので、解毒剤を作りました。タリウム中毒の治療はプルシアンブルーと塩化カリウムの経口投与によって行なわれます。

8月31日
暗い部屋で、蝋燭の炎を見る。ゆらゆら、ゆらゆら、おもしろいよ・・・

■2005/11/01 (火) 瓶の中の少女 6

9月4日
生き物を殺すという事、何かにナイフを突き立てる瞬間、柔らかな肉を引き裂く感触生暖かい血の温度。漏れる吐息。すべてが僕を慰めてくれる。

9月12日
今日も母の調子は悪いです。2,3日前から脚の不調を訴えていたけど、遂に殆ど動けなくなってしまいました。二階にある僕の部屋まで来る事も出来なくなりました。

9月13日
今日は体育の補修で500mを泳ぎました。カフェ錠を飲んでいたので、比較的楽しく泳ぐ事ができました。

同日
アトロピンの抽出朝鮮朝顔の根もしくは葉を熱湯で湯掻き、炉液をケン化させる。アルカロイドが沈殿するため此れを濾過し、希硫酸を加え硫酸アトロピンとする。

9月19日
現実の方が大変になってきてしまったので、暫くブログの更新を停止します。すいません。

9月26日
明日、母は入院します。未だ原因は不明のままです。残念な事に母は余り良い保険に加入していないため、生活は少しばかり苦しくなるでしょう。

9月27日
隠れる事は喜びでありながら、見つけられない事は苦痛である。見つけられることは危険である。しかし其の逆に、自分が存在していることを確認するためには、誰かに見つけられるしかない。

9月28日
母はよく泣くようになった。僕に“毒を造って欲しい”“誤って飲んだ事にして貰いたい”とぼやく。自殺衝動が出始めたようだ。

10月2日
母は入院した。父が呼んだ救急車で連れて行かれた。入院先は近くの病院、布製の担架で運ばれて行った。父も同伴した。少し悲しそうな顔をしていた。

同日
銀色のベルを揺らせば涼しげな音が鳴るだろう銀色の刃物の先で命が震えている此れはどんな音色を奏でているのか。母の顔を暖かいタオルで拭いてあげた。

10月3日
今日は病院へ行ってきた。祖父母と兄と僕とで母の見舞いに訪れたのだ。先客として叔母さんが居た。まあ、呼ばれて行ったのだから当たり前ではある。

10月某日
今日は調子が良い。何でも新しい薬を貰ってきたという。病名も分かった、ストレスによる多発性神経炎だそうだ。検査で何も出なかったからそう判断したらしい。

■2005/11/01 (火) 瓶の中の少女 7

10月某日
星が空から落ちる。兔たちはオーブンの中で草むらの記憶すらも硬化させる。500mgに増やしたステロイドの影響だろうか、顔の腫れが目立っていた。

10月某日
人は輪になって踊る。丘の上で死体を数え、微笑みながら飲み交わす。撃ち殺された男の匂い、引き裂かれた女の匂い。

10月某日
部屋が変わっていた。4階のB棟、3人部屋だ。

10月某日
血圧は上が115、下が85であった。殆ど戻ってきたところだ。しかし病状は悪化している。日直の先生も異常を察し、集中治療室へ連れて行った。

10月某日
特に変化なし、今日も昨日と同じように写真を撮って帰った。長男に目つきが怖いと言われた。寒気がするって、僕は“毎日この顔を洗面台の前で見ているんだぜ。

10月16日
叔母が言うところによると、母は幻覚を見始めたらしい。居もしない虫や、ドアの傍の白い陰に悩まされていると言う。

同日
今日の朝、先生に筆記用具を借りた。其の時泣きながら母の話しをして、同情を得た。人って案外簡単に騙されるものなんだと思った。

同日
蒼ざめた馬の通る道に、規則は存在しない。暗闇を進む足跡は草木を枯らし、死を招く。其処に生命は宿らない。在るのは寂しい同じ形。

‥‥そんなワケで、少女の日記は、ここで終わっている。そして、この4日後に、自らも毒薬を飲んで自殺未遂をした。だけど、あたしには、前に書いたように、どうしても本気で自殺を図ったとは思えない。お母さんに劇薬のタリウムを飲ませ続け、その中和剤まで合成する知識を持っている少女が、本気で自殺を図ったのなら、間違いなく確実に死ぬだろう。そして、万が一、助かったとしても、わずか10日間の入院だけで済むとは考えられない。たぶん、生死のハザマをさまよって、何ヶ月も入院すると思う。それに、集中治療室に移され、幻覚まで見始めた重体のお母さんのことを「同情を得るためのネタ」として使った少女が、その4日後に自殺を図るとは考えられない。病気の母さんをずっと看て来たあたしからすると、なんとも気分の重たくなる事件だけど、これも時代の流れなのかな‥‥なんて思う今日この頃なのだ。

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