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安易な三位一体改革に反対するという点で推薦せざるを得なかった(週刊ダイヤモンド/続・憂国呆談)
http://www.asyura2.com/0505/senkyo10/msg/497.html
投稿者 i^i 日時 2005 年 7 月 13 日 01:45:33: uYCM.EuCxbqec
 

(回答先: ぴりりと辛味がきいてますね(笑) 投稿者 外野 日時 2005 年 7 月 12 日 22:41:31)

私が以前に見たのとは違いますが、こんなのがありました。

「全国知事会長選挙の真相」ほか
(http://dw.diamond.ne.jp/yukoku_hodan/200503/)

週刊ダイヤモンド
■ 連載 第三十回「続・憂国呆談」番外編Webスペシャル
 2005年3月号

憂国放談    ............... ■ 弁証法の通用しない権力者の怖さから、「一太郎」訴訟に見る知的財産権の問題、さらには全国知事会長選挙の実態まで、今月も広く深く語り尽くす!
...............


モノローグの時代?


●ブッシュと小泉は新しい?
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浅田 彰 本誌で触れた郵政改革のように、日本では小泉が何でもかんでも民営化って言ってるわけだけど、アメリカでもブッシュが内政では社会保障改革を目玉にすると言って、公的年金に個人投資勘定を導入できるようにしよう、と。企業年金で言えば401kみたいなやつだね。だけど、これってイギリスですでに失敗してるわけ。下手をすればフランクリン・ルーズヴェルトの「ニュー・ディール」の最大の成果が掘り崩されかねないと思うな。ブッシュは「オーナーシップ・ソサエティ」と称して、全国民が自分の資産を自由に運用すればいいって言うんだけど、それだったら極端に言えば政府はいらないわけよ。それでうまくいかないところを政府がやる——年金でも、世代間の相互扶助とか世代内の再分配とかいうことでやるわけでしょ。基本的に小泉とブッシュは市場原理主義一本槍で民営化に走り過ぎてるよ。

田中康夫 しかも小泉は何も中身を考えてないから全部丸投げ。三位一体の改革も補助金をやめると言って地方に全部丸投げ。国の官僚も怒るべきだよ。思うんだけど、彼らの権限を奪って士気を削ぐより、二一世紀に相応しいソフト事業の補助金を考えよ、と各省庁の予算をゼロ・ベースから競わせるべきだよ。一応は優秀なんだから、危機感を抱かせれば、素晴らしい補助金を考えてくるかも(苦笑)。

浅田 彰 やっぱりブッシュと小泉って似てるな。内容がないことを、しかし短い言葉で何度も何度も言い続ける(笑)。「民間にできることは民間に」「地方にできることは地方に」とか、「改革なくして成長なし」とかさ。

田中康夫 それで通用させちゃうんだから、ある意味天才的かもね(笑)。まあ、四年経っても騙され続けてる中央マスコミが愚か過ぎるんだけど。

浅田 彰 つまり彼らにはダイアローグ(対話)やダイアレクティクス(弁証法)がまったくないわけ。対話ってのは「その点は確かに問題だが、この点ではこういう利益があって……」というふうに進む。その「確かに……だが」という譲歩がブッシュや小泉には皆無なんだな。とにかく「イラク情勢は日々良くなってる」とか「改革は着実に進んでいる」とか、自分の思い込みを短いモノローグ(独白)の形で反復するだけ。ところが、それが繰り返しメディアで流されていく結果、いわば自己成就的に仮想現実がつくられちゃう。昔はいちおう保守対革新とかいって弁証法的対話をやってたんだけど、そんな七面倒くさいことはしない、ひたすらモノローグだけでいくってことでは、ブッシュや小泉は新しいと言えるかも。しかも、本誌で触れたとおり、CBSや朝日新聞の苦境に象徴されるように、それをチェックすべきメディアの力が急速に低下してきてる。難しい状況だね。


●全国知事会長選挙の真相

浅田 彰 本誌で言ったように、安易な三位一体改革に反対するという点で、田中さんとしては全国知事会長選挙で石原慎太郎を推薦せざるを得なかったわけだね。でも、そういう知事は少数で、勝算の立たなかった石原は立候補せず、二月一七日の選挙は福岡県の麻生渡と岩手県の増田寛也の一騎打ちになり、結果的には麻生が二七票を獲得して勝利した。

田中康夫 今や一五名を数える総務省出身の連中は石原じゃ嫌なんだよね。つまり、彼は作家だから何をやるかわからない。予定調和ではないもの。だから、不安なの。一方、麻生や増田みたいな官僚出身者なら計画どおりに動いてくれるだろうってこと。

浅田 彰 それに、とにかく三位一体改革に反対のやつはダメだ、と。

田中康夫 もちろん。まぁ、神奈川の松沢成文や埼玉の上田清司は日の丸好きの石原という面で支持してたこともあるかもしれないけど、でも、彼らに「官僚知事にはやられたくない」という思いがあったことも確か。そういう意味では、彼らと国家論は違っても連帯はしなきゃいけなかった。

浅田 彰 なるほど。苦しいところだね。
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田中康夫 ところが、総務省としては総務省出身者じゃあからさまだというんで旧通産省出身の麻生を立てた。御しやすい調整型の人間だよね。まだ鳥取の片山なら合併特例債もムダだと言ってるぐらいな旧自治省出身者だから面白かったんだけど、彼では役人は怖いわけよ。それに対して宮城の浅野は、ほんとうは自分が出たかったんだけど、今年改選で出られないから岩手の増田を推したわけ。

浅田 彰 なるほど。いずれにせよ、結果的に、シナリオどおり動いてくれそうな麻生になっちゃったわけだ。

田中康夫 そういうこと。結局、知事という人たちも、他の省庁や県職員出身者を入れれば過半数を大きく上回る訳で、みんな役人なんだよ。自治とは程遠い官治。改革なんか望んでない。やっぱり一回カオスにしないとダメだよね。


●真の保守? 田中康夫

田中康夫 このあいだ自民党本部の文教制度調査会ってところから、党本部で講演してくれって頼まれたの。三位一体改革における義務教育費の問題とかをしゃべってほしい、と。

浅田 彰 教育等については国家が責任をもつべきだって点で森喜朗と意気投合したあげく、ついに党本部からもお呼びが(笑)。

田中康夫 いやぁ、乱世だねぇ(笑)。で、これまで小沢一郎の塾や民主党の勉強会や亀井静香の志帥会には私務で行ってたんだけど、これは公務申請して公務で行こう、と。議会が文句言ったら、政権与党から義務教育問題で呼ばれてなぜ公務で行っちゃいけないんだって言おうと思ってたの。そしたら突如、中止の連絡があったわけ。自民党長野県連が党本部に中止要請を出して、それが通ったんだ。

浅田 彰 うーむ、ありそうな話(苦笑)。

田中康夫 県連は「非常に不快でセンスのない人選だ」と問答無用の言論封殺に出たんだよ。そのセンスのない圧力はどうなのよ(笑)。詳しくは県の環境保全研究所長を務めて貰っている青山貞一武蔵工業大学教授のサイト(http://eritokyo.jp/independent/aoyama-column1.htm)と「日刊ゲンダイ」の僕のコラム「奇っ怪ニッポン」(http://gendai.net/contents.asp?c=025&id=17923)をご覧頂くとして、何だかわけわからない世の中だよ。中央じゃ自民党からも声が掛かって、亀井静香も加藤紘一も田中康夫を評価しているのに、地元じゃ自民党から公明党、社民党、民主党、さらには共産党まで最近は田中に反旗を翻してるんだから(苦笑)。
 そういやこのあいだ、宮台真司がガラス張り知事室に来たとき話したんだ。彼が、支持率が下がってどうとか言うんで、「それはそれだけの改革をしてるってことだよ」と言ったの。前任の県知事と県職員と県議会で形作っていたピラミッドの壁面に、地元の報道機関や金融機関、補助金交付団体がくっついていた。僕が究極のフラット社会を目指して、内側が腐りきっていたピラミッドを壊し始めたら、壁面に寄生していた皆さんが、キャーッ、崖崩れだ、緊急治山工事をしてくれよ、と悲鳴を上げ始めた。それに対して僕は、無駄な公共事業はしません。皆さん、自律の精神で対応して下さい、と安倍晋三や小泉純一郎が高言する「自己責任」よりも脱物質主義の時代に相応しい優しい言葉を掛けたら、さらに怒っちゃった。
 早い話が、地元の金融機関や報道機関が中心になって招致した冬季五輪の帳簿焼却問題に関する「長野県」調査委員会を設置したり、ヤマト運輸の中興の祖である小倉昌男を座長として、地元金融機関も多額の融資をしているであろう外郭団体の抜本的統廃合案を作成したり、田中康夫はホリエモンと並ぶ体制内変革のトロツキスト(笑)。まあ、金融機関としては、統廃合に伴ってバブル期の融資判断が明るみに出るのは、五輪関係の出入金を一手に引き受けていた事と並んで、痛くもない腹を探られる気がしちゃうのかも。それは護送船団「記者クラブ」を牛耳っていた報道機関にとっても同じかもね。
 建前として総論としての改革に賛成していた面々が、本音としては各論としての改革に抵抗したくなっちゃうんだね。ホリエモンとフジの攻防みたいなものかな(苦笑)。この点は、「日刊ゲンダイ」の連載「奇っ怪ニッポン」に寄稿した文章を読んでよ(http://eritokyo.jp/independent/nagano-pref/aoyama-col3041.html)。
それと、「長野県」関係の状況は、会派「あおぞら」のHP(http://www.azm.janis.or.jp/~vinsan/sanae/aozora050211.htm)、北山早苗県議のHP(http://sanae.voicejapan.net/index.html)を見て頂こう。
 で、話を宮台に戻すと彼は、田中康夫ってのは手続き民主主義ではない成果民主主義を目指しているわけで、それはモンテスキューやエドモンド・バークの二一世紀版だと言うの。つまり、バークは、市民が革命を起こさざるを得ない程の状態に至る前に、エリートはノーブレス・オブリージュの精神で社会改革を進めるべし、と唱えている。「保守するために改革しろ」と。だから宮台は、田中康夫こそ真の保守だと言うわけ。日本の保守というのは、単に日の丸・君が代とか、「物事を変えるな」だけど、そうじゃないんじゃないか、と。なるほど面白いなと思った。そう考えりゃ、自民から声も掛かるわけだ(笑)。
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浅田 彰 なるほどね。

田中康夫 それにバークっていわばエリート主義でしょ。僕はそれもある種必要だと思う。みんながフラットに意見を言えるような社会をつくる強いリーダーシップというか。

浅田 彰 たしかに、いい意味でのリーダーシップは必要だよね。

田中康夫 そのかわり、そのリーダーに文句を言うシステムや、問題があればすぐ代えられる制度をつくっておきゃいい。

浅田 彰 そのとおり。

田中康夫 いずれにせよ今みたいな時代は、真の意味で私益のない公益の歴史観を持つやつが世の中を直さないといけないと思う。その意味では、ジョージ・ソロスあたりは面白いかもね(笑)。つまり彼みたいに、悪いことというか、一回、人生をきわめたようなやつのほうがいいんだよ。だって、若いときに女性といっぱい付き合ってこなかったやつに限って、地位を得ると女にはまっちゃうじゃん(笑)。ホント、そういうもんよ。


●知的財産権のあり方

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浅田 彰 東京地裁が、ジャストシステムのワープロソフト「一太郎」とグラフィックソフト「花子」が特許権を侵害したとして、製造・販売を禁止する判決を出したね。

田中康夫 ヘルプボタンのマークが絵文字だったんで、松下電器産業の特許を侵害したことになっちゃうらしい。いやぁ、技術的なことはよくわからないけど、ちょっと行き過ぎじゃないのかね。

浅田 彰 ヘルプ・モードのアイコンをクリックしてから実行したい機能のアイコンをクリックすると機能の説明文が表示されるなんて、そんな基本的なことが特許の侵害なら、他にもいくらでもあるだろうと思うけど。

田中康夫 ねぇ。つまり、ネット社会というのはリンクフリー、Linux的なものなんだから、そこから最も対極にある独占的な著作権の意識は変えていかなきゃ。その意味では我々、物書きの世界では引用されるのは寧ろ名誉。出典さえ書いて貰えばOKな訳でね。逆に作詞の場合は、カラオケで歌われても印税が入る。まあ、僕も秋元康だったら今頃、左ウチワだったけど(苦笑)。松下も、僕が評価する経営者の中村邦夫の下で業績好調で今回も狙いどおりってことなんだろうけど、かつてはマネシタなんて言われたこともあるのにこりゃないだろうって(笑)。

浅田 彰 いまは、松下も含め、むしろ「知的財産権を徹底的に主張せよ」っていう流れになってるんだよね。でも、それは自縄自縛だと思うけどな。

田中康夫 だいたい知的財産権ってのは言い過ぎるとギスギスしてくるよね。それに、あらゆる創造は模倣から生まれる面もあるわけだしさ。

浅田 彰 それが行き過ぎると例の中村修二の青色LED訴訟みたいに二〇〇億円とかいう話になっちゃう。あの裁判は八億四〇〇〇万円で和解したけど、個人でそれだけもらえば十分じゃない(笑)。おカネなんてどうでもいい、学会で認められたらそれでいい、なんてのはもう古いのかな。
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●病気から身を守る基本

田中康夫 中尊寺ゆつこが亡くなったニュースには驚いたね。

浅田 彰 まだ四二歳だったんでしょ、早いよね。

田中康夫 ガンだったそうだけど。

浅田 彰 僕は彼女の『スイートスポット』って作品にキャラとして登場してるからさ。

田中康夫 そうだよね。かつて『SPA!』の表紙にも一緒に出てたでしょ。

浅田 彰 それにしても、ああいう女性のマンガ家って、ホントに時代を全身で受けとめてるんだなぁと感じるよ。これまた僕の知り合いだった岡崎京子も、作品を地で行くかのように、交通事故で植物状態みたいになっちゃったし。

田中康夫 岡崎京子は、少しはよくなってきたんでしょ?

浅田 彰 うん。でも、完全復帰ってわけにはいかないみたいだね。

田中康夫 ガンってことで言うと、日本ではPET検査(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ)が隆盛でしょ。でも僕はPETに絶対的な意味があるか疑問にも思ってる。PETで一カ月で見つかるガンはスキルス性のものも多いから、手術しても既に転移してる可能性が高い。逆に普通の検査で三カ月後に初めて見つかるガンは手遅れじゃないから治る確率が高い。なのに、PETは一回四〇万円くらい必要なわけ。

浅田 彰 結局、巨大な検査機器をどんどん普及させるってことなんだな。で、いったん機器を導入しちゃうと、使わないわけにはいかなくなる。

田中康夫 そう。だからある種の公共事業なんだよ。みんなかたちを変えた箱物なんだ。

浅田 彰 実際は、読影技術をはじめ、医者の技量が伴わなければ、どんな機械だって意味ないのに。

田中康夫 あと乳ガンのマンモグラフィ検診とかも、それ自体が悪いわけじゃないけど、その前に保健師の人海戦術を使って触診を夫やパートナーに教えるほうがいいと思う。そういうのが信州にもともとあった食生活改善運動と同じだって僕は言ってるわけ。同じように、風邪なんかだって年寄りが言うように、よく食べ、よく眠り、ノドと手をよく洗うしかないんだよね。その三原則しかないのに、やたら薬とか飲むから抵抗力が落ちちゃう。科学というものをマニュアルでとらえているやつらが逆に科学をダメにしていくようなもの。

浅田 彰 去年に続きヴェトナムあたりで新型のトリ・インフルエンザがヒトに感染した症例が報告されてるけど、トリ・インフルエンザはいずれ必ずヒト・インフルエンザに変異するんで、そうなると、五〇〇万人から最悪一億人ぐらいの死者が出るだろうと言われてる。その防衛のためにも、田中さんの言うとおり、うがいや手洗いの励行といった生活様式の改善からやっていくしかないんだよね。腕時計をしてるだけで手洗いが不十分になるって調査結果もあるし、その辺からきちんと啓蒙していかなきゃ。

田中康夫 トリ・インフルエンザがヒトに拡がったら恐いね。

浅田 彰 一九一八年のスペイン風邪、五七年のアジア風邪、六八年のホンコン風邪と、インフルエンザ・ウィルスは二〇世紀に三種類出て大流行した。最後のホンコン風邪から四〇年近くたつわけで、もういつ来てもおかしくない。現に、新種のトリ・インフルエンザ・ウィルスが広がって、たまにヒトにも感染してるわけだけど、あれが突然変異してヒト・インフルエンザ・ウィルスになるのは不可避だろうなあ。風邪ウィルスに効く薬はないけれど、インフルエンザ・ウィルスに効く薬はできつつあるようで、医学でやるべきことはどんどんやるべきだけど、基本的には生活様式の改善しかないと思うよ。


●オウムの子供を描いた映画

浅田 彰 オリヴァー・ストーンの「アレクサンダー」(http://www.alexander-movie.jp/)が公開されてるけど、去年の「トロイ」と同じで、現在の世界情勢と比べて見ると、ちょっと面白いよ。
「トロイ」では、アガメムノンが、弟の妻をトロイアの王子たちがかどわかしたことを理由に、ギリシア諸国の「多国籍軍」を率いて小アジアのトロイアに攻め込もうとする。ブッシュを前にしたヨーロッパ諸国の首脳みたいに、ギリシアの連中はずいぶん困惑するんだけど、強大なアガメムノンに逆らうわけにもいかず、いやいや付き合わされるわけね(笑)。その中で、ブラッド・ピット演ずるアキレウスだけが異質なの。ドゥルーズ&ガタリ風に言うと、アガメムノンが国家装置を代表するのに対し、アキレウスは戦争機械を代表するっていうか、とにかく戦いと栄光だけを夢見て暴走するわけね。しかし、それが結果的にアガメムノンの勝利に貢献してしまう、と。ともかく、ひとりだけ柄の悪いブラッド・ピットはなかなかのはまり役だったし、高くジャンプして上から敵に襲いかかるところなんかもけっこうよく撮れてた。異常なシェイプ・アップぶりを見ると、ドーピングを疑わずにはいられないけど(笑)。もうひとつ、聖者のように高貴で愚かなトロイア王をピーター・オトゥールが演じてて、あの真っ青な瞳だけでも一見の価値はある。まあ、映画全体としてはとても名作とは言えないけどね。
 これに比べると「アレクサンダー」は主人公を演ずるコリン・ファレルが冴えないの。というか、異邦から来た魔女のような母の影の下で育ったマザコンのゲイっていう設定だから、それでいいんだけどね(「トロイ」でアキレウスとパトロクロスの同性愛を従兄弟同士の親族愛に置き換えちゃったのに対し、「アレクサンダー」は彼をバイセクシュアルとして描いてて、だからアメリカの保守派の反発で興行的に失敗したんだってストーンは言うんだけど、それはどうかなぁ)。ともあれ、ガウガメラの戦いでペルシア王ダレイオス3世と対決する、その段階ではダレイオスはサダム・フセインそのもの。ところが、戦いに敗北したにもかかわらず、ダレイオスは逃走し、何年も逃避行を続けたあげく、山中で部下に殺されてるのが見つかる。その辺はオサマ・ビン・ラディンを思わせずにはいない。ともあれ、アレクサンダーはペルシアを征服しただけでは飽き足らず最後はインドにまで攻め込むんだけど、ギリシア人・マケドニア人とアジア人の通婚を勧め、異種交配的なヘレニズム文化を築く。アレクサンダーが時に都市を焼いたり住民を虐殺したりしたことにはあえて触れず、そういうマルチカルチュラリズム(多文化主義)を強調するあたりも、いかにも現代の映画だと思うな。

田中康夫 なるほど。
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浅田 彰 さらに映画の話をすると、今年は、オウムの地下鉄サリン事件から一〇年目じゃない。

田中康夫 そう、阪神淡路大震災と同じ年の一月にあの事件が起きた。

浅田 彰 その節目の年に、「黄泉がえり」を撮った映画監督の塩田明彦が、「カナリア」(http://www.shirous.com/canary/)っていうオウムの子供を主人公にした新作を撮ったの。そういうテーマだと、悪くすると興味本位、うまくいってもまっとうな生の倫理を説くくらいのことにしかならないんで、もし僕がプロデューサーだったらそんなテーマはすぐやめろと言うと思うけど、にもかかわらずこれがなかなかの力作。子供の母親がオウムらしきカルト教団の幹部で、殺人容疑で手配されてる、それで捨てられた子どもが児童相談所を脱送し、女の子と出会ってふたりで東京を目指すんだけど……。

田中康夫 ドキュメンタリーではないんでしょ?

浅田 彰 うん、まったくの劇映画。で、子役がいいわけ。主人公の男の子が関西の児童相談所から脱走して東京の親戚に預けられた妹を助けに行くんだけど、ドメスティック・ヴァイオレンスで家出した関西の女の子と出会って、二人によるロード・ムーヴィみたいになる。母を恋う観念的な男の子とやたらに現実的な女の子っていう図式的な組みあわせなんだけど、案外悪くないんだ。田中さん、甲田益也子って覚えてる?

田中康夫 あぁ甲田益也子って、たしか網走出身だよね。獨協大学の学生時代に、『an・an』のモデルやってたでしょ。

浅田 彰 そうそう、それで「Dip in the Pool」とかいうユニットで音楽なんかもやってた。彼女がオウムに入る母親の役なんだけど、かつてよりさらにやせ細って、不幸のかたまりみたいな雰囲気を醸し出してて、なかなかいいの。

田中康夫 それはちょっと観たいな。

浅田 彰 そもそも間違ったテーマを取り上げた映画だと思うから、傑作とは言えないけれど、なかなかの力作ではある。さしずめ、大江健三郎なんかが観たら面白がるんじゃないかな。


(了)
●次回更新は3月下旬の予定です!

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