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日本人の「法意識」を問う。 明治以後、国民は国法を自分のものとして見なかったのが実態だ。
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投稿者 新世紀人 日時 2005 年 8 月 21 日 17:35:33: uj2zhYZWUUp16
 

文芸春秋9月号は特集を載せている。「運命の8月15日 56人の証言」と題されている。

その中に俳優の丹波哲郎さんが書かれた一文があり、読んでみて大いに関心を注いだ。
題は「GHQで会ったマッカーサー」とある。
しかし、内容はマッカーサーの事は末尾に少し触れられているだけで、多くはご本人の終戦までの学徒出陣の体験が書かれている。
私は、丹波さんは好きな俳優で、興味深く読ませていただいた。
ドラマ「キー・ハンター」からのイメージとは実像はかなり隔たった方であるらしく、「機械オンチ」で「何をやらせてもダメで、とにかく軍隊には向かなかった。」とある。
立川の航空隊に全国から集められたクズ学徒兵360人の中に入っていて、終いにはクズの中から更に落第した36人の中に入ったとの事である。
最後のほうには何もすることがなく、実に楽な生活だったとのことである。

実に気張ったところが無く、「自然体」で好感の持てる文章である。
面白い話も出ている。
「女性関係は自由で、もて放題。軍隊の靴下の中に砂糖を入れていくと、どんな女性でもモノにできた。」とのことであり、女性のそして人間の逞しさを窺わせる。戦後の所謂「パンパン」の戦中版であり、私はこういった話を非難する気はまるで無い。

前置きが長くなったが、一つだけ本気で採り上げたい話が出されていたので紹介する。

「米軍に取られるくらいだったら、何でも持って行っていい」というので、迷彩を施した5トン積みの軍のトラックに物資を満載して実家に帰った。軍靴だけで百足、米も何表も持って帰って、親戚縁者に配ったものだ。無論、悪気はない。

最後の「無論、悪気はない」と言うところを、私は「日本らしい発言」
であると思ったのである。
今更、戦時中のことで丹波さんを非難する気は全く無い。
この事から日本人の法意識を探る材料を探し出したので採り上げただけの事である。

私の母もよく似た体験をしていた。
母は戦時中に大きな陸軍の兵器工場に努めていた。戦前には珍しい職業婦人でありベテランの電話交換手であった。
8月15日に重要な放送があるということで、職員全員が集められ、「玉音放送」が流されたのである。良く聞き取れない放送だったのだが、そのうちに聴いている人達の中で「どうも負けたらしい」との声が上がり、そのうちに玉音放送が終わりきらないうちに多くの職員が、工場の備品や設備を盗み始めたのです。
母はそれを見て随分と驚いたとの事ですが、職員達は地位に応じて備品・設備を盗んでいったとの事であります。
盗まなかったのは、母の他に数名に過ぎなかったとのことです。母は敗戦のショックを受け止めるのが精一杯であったのですが、「敗戦よりもさらにショックだったのはこの時の日本人の行いだった」と話していました。そして、「翌年の元日に初詣をしたが、誰も参拝には来ていなかった、この様な日本人だから神も日本人を見放していたのだろう」とも話していました。
空襲が激しくなってから、苦戦を意識していたので、敗戦そのものは意外には思わなかったそうです。
この窃盗事件の時に、工場の中で勤務していた「歯医者さん」は、軍医であったのか軍属として徴用されていたのかは判りませんが、彼は部下に命じて「俺の家にこの機械をべ」と命じて治療に使う大きな研削機械(歯医者で患者が座らされるものです)を軍のトラックで自宅まで運ばせたのです。部下達は「わかりました」と言って運んだそうです。
勿論、彼らはお礼を貰った事でしょう。しかし、この機械もトラックも勿論陸軍のものであり、国家の財産なのです。
この歯医者さんは私が卒業した小学校の学区の人で、とても温厚な良い人であり、私も虫歯の治療の殆どは彼にして貰いました。もう他界された筈ですから、ここに書かせて貰っているのです。

私は母からこの話を中学校に上がる前後に聞かされたのでその時は少しショックでしたが、その後に日本人について考える上で大変に参考になり、国民性の究明を課題として私が考える出発点になった話でした。

この歯医者さんも「悪気は無かった」と思います。
恐らく、米軍に陸軍の設備は接収されると考えたのでしょう。
「米軍に取られるくらいなら自分達で使おう」との考えになったのでしょう。

この事件を、海外で戦ってから降伏して復員してきた元軍人たちに話して、感想を聞くと皆が一様に驚き、
「そんな有様だったのか。我々は武器も装備も全部を敵に渡して組織的に降伏したのだが」と言う反応でした。

問題は、
8月15日には日本軍は解散しては居らず、軍の物資の窃盗は犯罪であり軍法会議にかけられる行いでありましょう。
正式に降伏調印が行なわれ、さらに軍の解散が決定し、解散命令が出されなければ勝手に物資、設備の処分を行なってはなりません。
既に憲兵の出動も考えられない現実ではありましたが、法的にはそういうことになります。
軍の装備、設備、物資を定めた軍法などの法が定められていた筈なのです。
そして、窃盗、略奪をする時に、
「国の法律に触れるのではないか?」と考えた形跡が無い事が大きな問題なのです。
丹波さんの「悪気は無かった」との言葉がこの事を表しています。
兵器工場での歯医者さんやその他の窃盗・略奪をした人達も、全員が「悪気は無く」、「国法に触れるとは考えなかった」ことでしょう。
しかし、大日本帝国は現存しており、陸海軍も現存しているのにこの様に考えた事はなにを意味しているでしょうか?

それは、「日本人の法意識に於ける二重性」を表しています。
「大日本帝国体制は日本国民を自分のものとして認識しては居なかった、生活意識と公的生活とが離れていた。」と言う事でしょう。
日本人の生活と意識は、「江戸時代までに堆積された慣習法的、慣行的規範」に従っており、それは企業などにおいての職業生活と地域での住民生活において成文化はされていないが確固としたものとして存在しています。
古代から江戸時代に至っての文化的堆積として存在しているのです。
中華帝国体制から導入された律令体制は国情に合わずに自然消滅し、江戸時代へと至ったのです。
大日本帝国体制もそれを構成する法体系を国民は自分のものとして受け入れる事をせず、
本心では無視をし、眼中に無かったのです。
その淵源は、明治政権が徳川幕府の大政奉還の後に、乱暴なクーデター政権を造り上げた為に、その政権の権力は国民から浮き上がったものとなってしまった事にあります。
それで、「国法を破った」との罪の意識も感ずる事無く、「悪気は無かった」と言う事になるのです。
歯医者さんは勿論、庶民ではなく知識人であり、丹波さんも大学生であったのですが、彼らも「国法を自分のものとは考えず、無視していた」のが」実態であるのです。

戦後体制も同じでしょう。従って、今から平和憲法を自分達を守ってくれるものとして改憲目論見から防御し、国民の政権・政府を造り上げる中で本当の国民的法意識が醸成されて来るでしょう。

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