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ドイツと同じ選挙制度なら、結果はどうなったんでしょう。
http://www.asyura2.com/0505/senkyo14/msg/949.html
投稿者 どっちだ 日時 2005 年 9 月 20 日 00:30:18: Neh0eMBXBwlZk
 

(回答先: まともに国民投票をしていたら郵政民営化法案は廃案になっていたのでは? 投稿者 ワヤクチャ 日時 2005 年 9 月 19 日 23:06:33)

衆議院憲法調査会事務局によれば、小選挙区比例代表併用制の長所は、「政局の安定と民意の反映を調和させられる。」点にあるそうです。

今回の選挙は、小泉によれば、「郵政民営化(小泉法案)に反対か賛成か民意を問う」目的を持って行われたものです。にもかかわらず、選挙結果は、小選挙区制度の欠点が露呈し、適切に「民意の反映」が行われたとは到底言えないものでした。

ほぼ同時にドイツの連邦議会選挙が行われました。日本がドイツの選挙制度と同じと仮定した場合の議席数を計算してみると、日本の選挙制度の欠点が理解しやすくなるのではないでしょうか。

-----資料1------
http://koho.osaka-cu.ac.jp/vuniv2003/noda2003/noda2003-8.html
概説:現在ドイツの政治

野田昌吾(法学研究科)

第八講 ドイツの選挙と政党

 つい先ごろ衆議院選挙が行われました。皆さんも選挙にかんするひじょうにたくさんの報道に接しられたことと思います。今回はドイツの選挙と政党について講義します。日本の選挙のことも念頭におきながら勉強していきましょう。
1 ドイツの選挙制度

候補者選挙を加味した比例代表制

 まずは選挙制度からお話しましょう。ドイツの議会は連邦議会と連邦参議院の2院から成ってはいますが、前にもお話したように、連邦参議院は州政府代表者会議であり、国会議員の選挙は連邦議会選挙しかありません。ドイツ連邦議会の選挙は日本の選挙制度と同様に小選挙区制と比例代表制の二つから成り立っています。ただし、その中身はというと、相当異なっています。日本の場合、小選挙区制で選ばれる定数と比例代表制で選ばれる定数ははっきり区別されており、しかも、その定数は300対180で小選挙区制の定数が圧倒的に多く、その意味では、小選挙区制を基本にしつつも少数勢力にも配慮して比例代表制を加味した選挙制度だと言うことができます。これに対し、ドイツの選挙制度は、各政党の当選者総数はあくまでも比例代表の原理で決定し、この比例配分された当選者数から各小選挙区の当選者の数を引いて残った数を比例名簿の順位にしたがって当選決定するというもので、その意味で、基本は比例代表制で、そこに候補者選択の要素を加味させた選挙制度なのです。衆議院選挙同様、ドイツの有権者は投票のさい2票を行使できます。第1票は小選挙区の候補者に、第2票は各州単位でつくられた政党の候補者名簿に対して投じられます。

5%条項

 このようにドイツの選挙制度は比例代表制度を基本としているわけですが、比例代表制には昔から小党分立や極小政党が生まれやすく、政治の不安定を招きやすいとの批判が行なわれてきました。ドイツの場合、こうした批判はワイマール共和制において現実のものとなり、議会にはたくさんの政党が進出し、安定的な議会多数派をつくりだすことができず、挙句の果てにナチスによる議会制の破壊を許してしまいました。この悲劇の経験から戦後のドイツは議席獲得に必要な最低得票率を定め、一定規模に達しない小政党を議会から排除する制度を定めました。これが5%条項です。政党が連邦議会に議席を獲得するには全国で5%以上の得票率を記録する必要があります。この条項のため、ドイツには1983年選挙で緑の党が進出するまで長期にわたって基本的に3つの政党しか連邦議会に存在しませんでした。なお、この5%条項には例外があって、小選挙区で3つ以上の議席を獲得した政党には得票率に応じた議席が配分されます。94年選挙のPDSがこの制度によって連邦議会進出を果たしました。

議席配分の方法

 連邦議会の現在の議員定数は598で、その半分の299が小選挙区から、残りが各党の候補者名簿から選ばれます。うえで述べたように、各党の獲得議席数は第2票の得票率にしたがって決まります。比例代表選挙の議席配分の方法については大きく二つのものがあります。日本で採用されているドント方式とドイツで現在採用されているヘア・ニーマイアー方式です。ドイツでも以前は日本と同じドント方式を採用していたのですが、配分が大政党に有利という批判があり、1987年選挙より現在の方式へと変わりました。

 ドント方式は各党の総得票を1、2、3…と自然数で割り、その商が多い政党から順に議席を与える方法です。これに対し、ヘア・ニーマイアー方式は簡単に言うと各党の得票率にできるだけ対応した議席を与えようとするもので、総議席数に得票率をかけて算出される各党の理論上の議席数の整数部分をまずそれぞれの党の獲得議席として配分し、残った議席を小数以下の数字の大きい順番に与えるというものです。1996年衆議院選挙の鹿児島県の比例区のデータ*を用いて両者の違いを見てみると以下のようになります。この例では、自民党が得票率45%弱であるにもかかわらず、ドント方式では過半数を超える4議席を獲得するのに対し、ヘア・ニーマイアー方式では自民党が3議席にとどまり、代わりにドント方式では議席を獲得できなかった民主党が1議席を獲得しています。このように、ヘア・ニーマイアー方式は少数勢力をより優遇する配分方式であると言うことができます。

 *データは、西平重喜『各国の選挙―変遷と実状−』木鐸社、2003年、87頁より。

表1 ドント式による配分(鹿児島県1996、定数7)
得票数(÷1) ÷2   ÷3  ÷4    ÷5   議席数
自民  358,869@  179,435A  119,623C   89,717D  71,774   4
新進 143,802B    71,901                     1
社民 85,399E                  1
自由連 76,085F 1
民主 71,896
共産 53,965
新社 9,936
さきがけ 5,400
計   805,352

表2 ヘア・ニーマイアー方式による配分(鹿児島県1996、定数7)
得票数   得票率P  P×7(定数) 議席
自民  358,869   0.445   3.11      3
新進 143,802 0.178 1.24      1
社民 85,399 0.106 0.74      1
自由連 76,085 0.094 0.65      1
民主 71,896 0.089 0.62      1
共産 53,965 0.067 0.46
新社 9,936 0.012 0.08
さきがけ 5,400 0.007 0.04
計   805,352

 ドイツに話を戻すと、ドイツの連邦議会選挙ではまず299の小選挙区で第1位になった候補者の当選が決められます。残りの299議席は州候補者名簿によって選出されるわけですが、この当選者決定にさいしてはまずヘア・ニーマイアー方式にしたがって各党の全国議席数が決められます。このときの獲得議席数の配分には5%以上得票した政党の得票数しか計算に入れられません。次いで、各政党の州ごとの議席数が州ごとの得票数にしたがってこれもまたヘア・ニーマイアー方式により算出されます。こうして算出された州別の獲得議席数からその州の小選挙区で当選した人数を引いて、残った人数分だけその州の候補者名簿の上位者から順に当選者とします。

超過議席と重複立候補

 この制度ではまず小選挙区で1位になった候補者を当選者として確定することから、しばしばある党の小選挙区で当選した人数が比例代表制によるその党の配分議席数を上回るということが生じます。もちろんそうした場合でも、小選挙区での当選を無効とはできませんから、定数以上の議員が結果として議会に出て行くことになります。これを超過議席といいます。昨年の総選挙では超過議席はSPD4、CDU1の合計5つ発生し、そのため総議席は603となっています。昨年の総選挙の結果、SPDと緑の党の連立政権はさらに4年間の存続できることになりましたが、もしこの超過議席がなければ与野党の議席差は9議席からわずかに6議席差に縮まっていたことからわかるように、この超過議席は政権の行方に少なくない意味をもっています。

 小選挙区制と比例代表制の結合にかかわって、もうひとつ問題となってくるのは重複立候補の問題です。この重複立候補制については、日本では「ゾンビ議員」などと言って、「復活当選」すなわち小選挙区で落選したにもかかわらず比例選挙での当選を可能とする制度としてあまり評判がよくありませんが、ドイツの場合、選挙の基本は政党を選ぶ比例制にあるため、小選挙区落選議員の比例区当選は問題視されません。比例名簿は連邦議会での各党の活動に不可欠な政策専門家などの当選を保障する制度としても観念されており、有権者もどの政党を選択するかを考えて第2票を行使するのです。のちに首相にまでなったコールも選挙に弱く、比例区で「復活当選」し、政治家としてのキャリアを積み重ねました。

分割投票と貸し票

 以上のように、ドイツの選挙制度は政党選択のための比例制が中心となっているわけですが、小選挙区的要素を加味した2票制を採用していることから、有権者の投票行動には独特の特徴が見られてくることになります。その第1は「分割投票」と呼ばれているものです。これは、小選挙区の候補者を選ぶ第1票と政党を選ぶ第2票とを意識的に使い分ける投票行動を指す言葉で、たとえば第1票はSPDの候補者に入れるけれども、第2票では緑の党に投票する場合がこれにあたります。同じことは比例区と選挙区の2票をもつ日本の衆参両院の選挙でも見られます。日本の場合、全選挙区に主要政党が候補者を出すということがないため、仕方なく次善の候補者に投票するというケースも多く存在すると思われますが、ドイツでは主要政党は基本的に全選挙区に候補者を擁立するので、この分割投票はより戦略的な色彩を帯びてきます。言うまでもなく、小選挙区では第1位の得票者しか当選できませんから、小政党の候補者が当選するのは至難の業です。とりわけ政党本位選挙が根付くドイツでは不可能といっても過言ではありません(2002年選挙では全299選挙区のうち2大政党以外が小選挙区を制したのは、緑の党が1つ、PDSが2つの計3つだけです)。そのため、小政党の支持者のなかには自らの第1票を死票にしないために、2大政党のうち自らの支持政党と連立を組む、あるいは組んでほしいと思う政党の候補者に投じることになります。

 また逆に、比例制を基本とするドイツの選挙では単独過半数を獲得する政党が出る可能性はほとんどないため(1957年選挙の1回だけです)、2大政党の支持者でも連立の問題が常に念頭におかれ、第1票は支持政党の候補者に入れるけれども、第2票では連立相手となる小政党に入れるという投票行動も珍しいことではありません。このように一定の連立政権を成立させる目的で大政党の支持者が小政党へ投票することを「貸し票」と呼んでいます。とくにこれが重要になるのは、連立相手が得票率5%の壁を突破できない可能性が強いときです。コンマ数ポイントでも5%に達しなければ、その政党は議会進出を阻まれますが、600議席の5%、30議席のあるなしは政権獲得の成否を分ける大問題です。そこで大政党はしばしば戦略的な観点から支持者に連立相手への投票を陰に陽にはたらきかけます。昨年の選挙では、連立政権を組んでいたSPDと緑の党が意識的にこの「貸し票」戦略を展開し、選挙戦も終盤に入ったころから、小選挙区はSPD候補者に、比例区は緑の党にという呼びかけが全国で行なわれ、この戦略が功を奏し、辛くも与党は接戦をものにしました。緑の党に投じられた第2票の少なくとも3分の1は選挙区ではSPDに投じられ、超過議席4というSPDの小選挙区での踏ん張りに貢献しました。これに対し、コール政権時代にCDU/CSUと連立を組んでいた野党FDPはこの選挙に連立相手をあえて明示せず臨んだのですが、これが裏目に出て、戦略的投票者の票を獲得できず、期待された躍進を果たせませんでした。

投票機会の拡大

 以上、ドイツの選挙制度について説明してきましたが、この選挙制度を根本的に批判するような議論はドイツでは見られません。強いてあげれば超過議席制度の是非が問題になったぐらいです。選挙制度改革で問題になるのはドイツではむしろ投票権の拡大についてです。ドイツでは投票権は18歳以上のドイツ国民に与えられていますが、これをさらに16歳にまで引き下げてはどうかという議論が出ています。この16歳選挙権は、自治体レベルではすでにニーダーザクセン州で実現しています。

 ちなみに、国政選挙ではもちろん対象外ですが、地方レベルではさらに定住外国人への選挙権の付与が問題となっています。ドイツ統一前にSPDが与党であった北部の二つの州で自治体議会の選挙権を外国人に保障する法律がつくられましたが、1990年の連邦憲法裁判所判決でこれが違憲とされてしまい、その後、EU加盟国市民についてのみ、EUのマーストリヒト条約により居住地での自治体議会選挙権が認められるようになり、現在に至っています。そのため、ドイツにたくさん居住しているトルコ人などには自治体議会の選挙権は依然としてありません。

 なお、投票機会の拡大のための制度として郵便投票制度があります。日本でも不在者投票制度が利用しやすくなりましたが、ドイツでは手続きをすれば選挙当日でも郵便により投票できます。この制度の利用者は近年10%を越えており、過去10年間最低でも78%近くの投票率を維持してきたひとつの秘訣はこの制度にあるようです。また、日本では前回衆院選挙より在外投票制度が導入されましたが、ドイツでも1985年からこの制度が導入されています。

選挙区割り

 日本では選挙制度にかんしてさまざまな議論があり、1994年に小選挙区比例代表並立制と呼ばれる現行制度が衆議院選挙に導入されましたが、この制度改正によっても解消されていない根本的な選挙制度上の欠陥に「1票の格差」の問題があります。たしかに、このときの制度改正によって第三者機関である衆議院選挙区画定審議会が設けられ、選挙区割りを利害当事者である国会議員のみに委ねない制度となりましたが、国会はこの審議会の答申を「尊重する」となっているだけで、しかもこの選挙区の再画定は国勢調査の結果行われるということから10年に1度しか行なわれません。加えて、現行の小選挙区区割り法は、まず全都道府県に1つの議席を配分して残った253議席を人口比例で配分するとなっているため、原理の上からも「同一投票価値原則」が損なわれています。そのため、2002年に国会で可決された新しい区割りによっても格差2倍を超える選挙区がなお9つも存在しています。

 ドイツではそもそも選挙制度が比例制を軸に組み立てられており、議席配分では1票価値が等しくなることになっていますが、超過議席の問題もあるように、小選挙区の区割りももちろん重要です。ドイツの選挙法では、各小選挙区の人口数は全選挙区の平均人口の上下25%以内に抑えられなければならず、平均人口の3分の1以上人口が上下した選挙区では区割りが変更されることになっています。すなわち、人口が最大の選挙区と最小の選挙区との格差が2倍を超えないように制度設計が行なわれています。

 この区割り変更は第三者機関が行い、選挙ごとに調整が行われています。新しい選挙が行われて15ヶ月以内にこの区割り委員会は内務省に報告書を提出し、変更がある場合は公示されます。議員はこの見直しに介在せず、そのためたくさんの選挙区で見直しが必要になっても問題とはなりません。

選挙と選挙運動

 日本の選挙制度の特徴には、選挙運動にかんする詳細な制限や禁止の規定が存在することもあげられます。日本では、まず、選挙運動期間というものがあり、立候補受理以降投票日前日までの12日間がそれにあたります。もちろん、公示から投票日前日までのひじょうに短いあいだだけで有権者に浸透することは不可能ですので、実際の選挙戦は、立候補準備行為、地盤培養行為、政治活動といった名目で公示前にすでに開始されており、政治家のあいだでは公示後はいわば票田の「刈り取り」の段階で、公示前の「種まき」の段階でどれだけ金を使うかが選挙結果を分ける(たとえば「5当4落」=5億円かければ当選、 4億円なら落選)ということがまことしやかに語られてきました。これに対し、ドイツでは選挙運動期間の定めはありません。選挙手続きの開始は選挙の90日前で、連邦議会議員は選挙前に8週間の休暇がとれますので、この選挙前8週間が事実上の選挙戦の期間となります。

 この11月に行われた衆議院選挙は政権選択選挙、そして「マニフェスト選挙」だと言われました。2大政党のどちらか一方を中心にした連立政権の構成を中心的な課題とするドイツの選挙も、政権選択選挙としての性格を強く帯び、そしてその判断の基準となる各党の政権公約は重要な意味をもっています。日本では、これまで文書図画による選挙運動も厳しく制限され、法定ビラ・法定はがきの頒布、ポスターや立て札、看板などの掲示について枚数や大きさ、掲示場所などについて詳細な規定があり、政党が自らの政権公約文書を作ってもその頒布はできませんでした。今回の選挙にあたって、どうにか冊子の配布が可能になり、ニュースでもその頒布の様子が大きく報道されていましたが、ドイツでは選挙が近づくと広場や街角で各政党がパラソルやテントを置いて選挙スタンドを設け、そこで候補者のビラや各種の選挙パンフレットを並べ、党名の入った風船や小旗、ボールペン、ワッペンなどを配布しています。各党、とりわけ2大政党は政権公約(「選挙プログラム」あるいは「政権プログラム」と呼ばれています)を冊子にし、こうした選挙スタンドや選挙集会で有権者に配布します。

 日本での「マニフェスト」にかんする議論では、マニフェストとはこれまでの選挙公約とは違い、期限と数値目標を明示した具体的な政策であるということが強調されていますが、そうした目標を設定することが可能な政策分野とそうでない分野とがもちろんありますし、目標設定にあたって必要な財政状況をはじめとするデータも野党は正確に知りえないという問題などもあるため、日本の民主党などが言っているような意味でのマニフェストを各党が必ずしも出しているわけではありません。また、ドイツの政権がつねに連立政権であるという点も政権公約の具体化を困難にしている面もあります。しかし、政党選択を基本とするドイツの選挙では、首相候補者と政策的アピールは選挙戦ではひじょうに重要で、そのため、各党はひじょうに分量のある政権公約を選挙前の党大会で採択するのが普通です。ちなみに手元にある昨年の選挙でのSPDの政権公約冊子は四六判70頁もあります。こうした大部な文書はもちろん一般には読まれませんから、各党は雇用・経済・財政・年金・福祉といった各テーマごとに簡潔にその主張をまとめたパンフレットを用意し、配布しています。

 また、日本では禁止されている戸別訪問も認められており、選挙期間中は日本で事実上制限のもとにあるマスメディアにおける報道・評論の自由にかんする制限もほとんどありません。選挙前でもテレビの政治家討論番組の編成は基本的に同じで、各党の代表を平等に扱わねばならないとの日本的配慮は見られません。もっとも英米のメディアとは違い、ドイツのメディアでは、社説などをよく読むと傾向的にどの党にシンパシーを感じているかはわかる場合もありますが、基本的には自らが支持する政党を明らかにするということはありません。しかし、昨年の選挙ではこのドイツ的伝統にも少し変化が見られました。英米系の経済新聞のドイツ版がはじめて支持政党(CDU/CSU)を明らかにしました。

候補者の選出

 ドイツの選挙運動の規制が相対的に緩やかなのは、ドイツの選挙が政党を単位とする比例代表選挙で基本的に行われている点が大きく関係しているでしょう。日本とはまた別の意味で選挙戦は選挙が行われた日からまた始まります。日本では票田の「種まき」そして「草取り」が重要で、議員は国会のある東京から週末にはそれぞれの選挙区へ帰るのが通例です(「金帰火来」「土帰月来」)。もちろん、ドイツでも選挙区選出議員にとって地元とのコンタクトは重要ではありますが、ドイツの選挙が比例制を基本とするため、いかに各党が党として実績をあげうるか、いかに魅力的な政策を提出できるかの方が選挙にとって重要となってきます。

 連邦議会は基本的に解散がありませんから、議員の地位は4年間はまず安泰ですが、その間には各州での議会選挙や自治体選挙、さらにはEU議会選挙もあります。もちろん各選挙ではそれぞれ固有の問題が無視できませんが、いずれも政党単位で争われるため、これらの選挙の結果は国政レベルでの与野党の信任のバロメータとして解釈されますし、また、州議会選挙の結果は連邦参議院の多数派状況にも反映されますから、大きな国政上の意義を有しています。こうしたことから各党はつねに党としてのアピールの向上に気を配らねばなりません。

 さて、ドイツの政党は政治資金の国庫補助を受ける代わりに法律による規制を受けることになっていますが、この規制には候補者の選定にかんするものも含まれています。政党法によると、候補者選定は民主主義的に秘密投票によって決定されなければならないと決められています。これにしたがって、各党は党規約で候補者選出手続きを詳細に定めています。1991年ハンブルク州議会選挙でCDUの候補者選定がこの規定に違反していたことから裁判所はやり直し選挙を命じています。

 小選挙区の候補者はその選挙区の党員集会で決定されます。党員が多い選挙区では代表者会議で決定されます。ただし、全党員が決定に参加することは稀なため、事実上、地区の党幹部の影響力が大きい意味をもちます。反対に言うと、党中央や州支部幹部などの影響力は限られます。現職議員がいる場合、通常はそのまま再度候補者に選出されますが、選挙区集会で現職が拒否された事例もなくはありません。

 比例名簿の登載者の決定についてですが、名簿は州単位で作成されます。ちなみにドイツの比例制は拘束名簿式であらかじめ付けられた順位にしたがって上位から当選者が決められます。同一順位に複数の重複立候補者のなかから惜敗率によって当選者を決定する衆院選のような規定はありません。州名簿は各州の党員の代表者会議で作られます。普通トップには知名度・実績・政策能力に優れた代表的な政治家がおかれ、上位にもそうした基準にかなう政治家が並びます。このほか、名簿作成で考慮されるのは州内の地域的バランス、出身母体のバランス(派閥、職業、男女の別)などで、党をまとめるとともに一般有権者にもアピールできる名簿の作成が目指されます。この名簿の採択も民主的投票によって行われます。

 この名簿作成にかんして近年目立つのは「割り当て制」です。これを始めたのは緑の党で、1986年の規約により、党役員ならびに選挙候補者の50%を女性にすることを決めました。選挙の場合、具体的には比例名簿の候補者を上から女男の順で交互に配置します。偶数名当選すれば男女比は同じ、奇数名当選の場合は女性が1名多く当選するということになるわけです。この緑の党に倣おうとする各党の取り組みも続いています。まず、SPDが1988年党大会で男女40 %割り当て制を段階的に実現していくことを決定し、CDUも1996年、党役員および議員の3分の1を女性にすることを目標に掲げました。

 ともあれ、選挙にかかわる一連の決定や行動はすべて党を単位にして行なわれるのがドイツの選挙の特徴であり、このことが政策中心の選挙を可能にする大きな要因となっています。

-----資料2------

主要な選挙制度の比較    資料:衆議院憲法調査会事務局において作成
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kenpou.nsf/html/kenpou/shukenshi060.pdf/$File/shukenshi060.pdf
(29、30ページ)

ドイツ 小選挙区 +比例代表制 併用制 598議席 任期4年 解散あり

個人名と政党名で計2票 選挙権被選挙権とも18歳

各党の得票数に応じて総議席を配分後、小選挙区当選者数を引いた残余を比例名簿から順次選出。

主たる長所
○ 多様な民意を反映できる。
○ 少数政党も議席を確保できる。
○ 個人の情実とは無関係な政党本位の選挙になる。

主たる短所
○ 小党分立を招きやすく連合政権ができやすいため、政権が不安定になる。
○ 候補者選考の過程で政党幹部の力が過大になる。
○ 仕組みが複雑でわかりにくい。

日本 小選挙区制+比例代表制 並立制 選挙権20歳 被選挙権25歳
(他にハンガリー、イタリア、など)

個人名と政党名で計2票

小選挙区選挙と比例代表選挙を別個に行う。

主たる長所
○ 政局の安定と民意の反映を調和させられる。
○ 少数政党も議席を確保できる。
○ 個人の情実とは無関係な政党本位の選挙になる。

主たる短所
○ 大政党に有利で中小政党の議席が減少。
○ 小選挙区が少なく1選挙区当たりの有権者数が多すぎる。
○ 選出方法の異なる議員が混在。

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