★阿修羅♪ > 戦争71 > 334.html
 ★阿修羅♪
戦争ビジネスで急成長する民間軍事会社(PMC)  【軍事問題研究会 蛭田勢二 】
http://www.asyura2.com/0505/war71/msg/334.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 6 月 18 日 05:48:35: ogcGl0q1DMbpk
 

戦争ビジネスで急成長する民間軍事会社(PMC)

戦争が長引くほど出番

戦闘からゴミ処理まで

軍事問題研究会 蛭田勢二


http://www.bund.org/opinion/20050625-2.htm

 ハート・セキュリティー社の社員・斎藤昭彦さんがイラクで武装組織に殺害された事件をきっかけに、日本でも民間軍事会社(プライベート・ミリタリー・カンパニー、PMCと略す)の存在が注目されるようになった。日本政府も、PKOに参加する自衛隊が「PMCを使うことも十分考えられる」(政府関係者)と検討を始めた(「朝日新聞」6月12日付朝刊)。戦闘から給食・ゴミ処理まで戦争に関するあらゆる業務を請け負うPMCの登場で戦争のあり方が大きく変わろうとしている。

T 無法地帯活用する戦争の請負人

 現在イラクで活動しているPMCの人員の総数は約3〜4万人とされ、イラク駐留英軍約1万人を上回り10万人規模の米軍に次ぐ「第2の軍隊」だ。  

 PMC要員の犠牲者も多く、03年4月から今年5月初めまでに名前が判明しただけで234人にのぼる(イラク人スタッフを除く)。今回のイラク戦争は彼らの存在がなければ行うことはできなかったとさえいわれている。PMCのコマンドは、ファルージャ掃討作戦など実際の戦闘行動にも参戦している。  

 PMCは、イラク戦争の汚点にも深くかかわっている。アブグレイブ刑務所でのイラク人捕虜虐待を米兵に教唆したのもPMC要員だった。アブグレイブ刑務所の事件では、捕虜虐待をした米兵は軍事法廷で裁かれたが、米兵を教唆したPMC要員の社員は何の罰も受けてはいない。なぜか? PMC要員を規制する法律も国際法もないからだ。  

 戦争に関する国際条約であるジュネーブ条約によれば、戦争=戦闘行為は「戦闘員」(正規軍部隊)だけに認められる行為だ。戦闘員は、「戦闘員である権利及び捕虜となる権利」を有し、正当な戦闘行為で相手の戦闘員を殺しても国内法で裁かれることはない。戦闘員の任務中の不法行為は一般に自軍の軍事法廷で裁かれる。降伏した場合は捕虜としての正当な待遇を相手国に求めることができる。アブグレイブで捕虜虐待を行った米兵が、まがりなりにも軍法会議で裁かれたのはこうした法的取り決めに基づいたものだ。  

 PMCの要員は各国正規軍の軍人ではないから、国際法上、「戦闘員」とは認められない。彼らの国際法上の立場は、「ジュネーブ条約第一追加議定書、第四十七条」が定める「傭兵」に該当すると考えられる。  

 同条項は傭兵とは「外国人であって、紛争に参加している軍隊の成員ではないにもかかわらず、戦争目的のため特に募集され、本質的に個人的利得を動機としている者」と規定し、「傭兵は、戦闘員である権利又は捕虜となる権利を有しない」と定めている。PMC要員の戦闘行為への参加は、各国の国内法――イラクならイラクの国内法によって裁かれる。人を殺せば、殺人罪が成立することになる。  

 しかし、現在のイラクは国内法整備が遅れており、事実上の無法状態が続いている。PMCはそうした無法状態を利用し、イラク国内で自由に活動している。無法状態ゆえにPMCの需要があり、無法地帯だからこそPMCが法に縛られることなく自由に活動できるという関係があるのだ。まさにPMCは無法地帯を活用する「戦争の請負人」なのだ。

U 戦争を丸ごと請け負う企業体

 PMCは、「お金で雇われた兵隊」という意味では「現代の傭兵」と言える。だが、傭兵が国際法上「非合法」な存在なのに対して、PMCは各国の法律に基づいて設立された「合法的」な企業体だとされている。この点でいわゆる「傭兵」とは異なる。  

 PMCの法的立場はきわめて曖昧だ。PMCの要員が戦闘行為に参加するのは国際法違反の犯罪行為だが、警備員を派遣したり軍隊から業務を請け負うこと自体は合法的な企業活動だとされている。  

 PMCはネットなども活用して大々的な人員募集=「兵員募集」を行っているが、罪に問われることはない。ここが個人として他国政府に雇われる古典的な傭兵との一番大きな違いだ。  

 世界的なPMC研究の第一人者、米ブルッキングズ研究所国家安全保障問題研究員のP・W・シンガーは、『戦争請負会社』(NHK出版)で、PMCはその主たるサービスの形態に応じて三種類の形態があると指摘している。  

 一つ目は、「軍事役務提供企業」で、実際に武装した戦闘部隊を派遣して戦闘行為を請け負う。有名なのが南アフリカのエグゼクティブ・アウトカムズ社だ。内戦により政権転覆の危機にあった西アフリカ・シエアレオネ政府から反乱軍の鎮圧を受注。同社に所属する千数百名の兵士を近代装備と共に投入し、契約通り反政府軍を壊滅状態に追い込んだ。  

 二つ目は、「軍事コンサルタント企業」で顧客の要請に応じて軍事訓練や軍事的助言を与える。軍事役務提供企業のように先頭に立って戦闘を行うようなことはしない。退役した米軍の将軍・将校を多数雇い、米軍の訓練・コンサルタント業務を受注している米国のMPRI社が有名だ。1990年代初頭、ボスニア紛争に際して米国は表向きどの勢力も支援しなかったが、MPRI社がクロアチア軍の近代化に協力。クロアチア独立を側面から支えた。背後でそれを指示したのは、チェイニー米国防長官(当時)だ。  

 三つ目の「軍事支援企業」は、戦闘はほとんど行わず軍隊のサポートに徹する。兵士の食事、弾薬や食料の補給、兵器のメンテナンス、兵舎の構築や管理などを請け負う。  

 この分野で有名なのは、チェイニーがCEOをやっていたハリバートンの子会社KBR社だ。KBRは、イラク・クウェート地帯に2万4000人を配置し、常時700台以上のトラックを輸送に当たらせている。03年4月以降、同社は、米軍の食事4000万食、食事施設64カ所を提供、大量の洗濯物やゴミ処理、郵便物運搬など計180億ドルもの業務委託契約を結んでいる。  

 実際の戦闘を請け負う一つ目の軍事役務提供企業が一番危険だが、企業の売り上げ(利潤)という点では、三つ目の軍事支援企業が一番儲かる。軍と軍事支援企業との契約は、申告される「かかった費用」プラス利益を支払うといった、軍事支援企業にとって非常に有利なものとなっている場合が多い。軍隊としては、軍事支援企業の支援がなければ一日たりとも活動を続けられないわけで、「金に糸目は付けられない」からだ。軍事支援企業としてみれば、こんなに美味しい商売はない。  

 実際、イラク戦争では、KBR社の米政府に対する過大請求が問題となっている。チェイニー副大統領の関与も噂されている。戦場での戦争利権に群がる、新たな形の軍産複合体が生まれているのだ。

V イリーガルな活動にも従事

 PMCの一番の顧客である米軍とPMCとの契約は、1994年から2002年の間に数にして3000件、金額にして3000億ドルを超える。米軍がPMCへの依存を深めるのには、いくつか理由がある。  

 ひとつには、米兵が死亡すると政治問題化する恐れがあるが、PMCのコマンドが死亡しても、そうした恐れはないからだ。例えば、1993年、米軍は、国連平和維持軍の主力としてソマリア紛争に介入したが、ソマリア民衆によって市中を引きずり回される米兵遺体がテレビで放映され、米国世論はソマリアからの撤退へと大きく傾いた。イラク戦争でもブッシュ政権は米兵の犠牲増大を少しでも隠蔽しようと、星条旗で覆った米兵の棺写真の撮影を「プライバシー侵害」として禁止。米国政府は、テレビはもとより新聞・雑誌への米兵遺体の掲載にもナーバスになっている。  

 米兵が死亡すれば遺族友人は悲しむし、補償もしなければならない。死者数が激増すれば、ベトナム反戦運動のような反戦運動に火がつくかもしれない。これに対してPMC要員は自ら進んで「仕事」を請け負ったわけで、死んでも文句を言う人はいない。米国政府が補償する必要もない。米軍としては危険な任務をPMCは請け負ってくれれば、大いに助かるわけだ。  

 さらに米軍は、米軍正規軍が直接関与することのできないイリーガル(非合法)な活動をPMCに請け負わせている。「民主主義と人権」を掲げる米国政府は、人権を尊重しない非民主的な政権や軍事独裁政権を公然と支援することはできない。  

 例えば米軍は、1990年代、アメリカへの麻薬供給地の一つであるコロンビアで、コロンビア軍の麻薬取り締まり作戦への支援を実施した。しかし麻薬の売買はコロンビアの反政府ゲリラ(コロンビア革命軍)の資金源の一つであり、コロンビア軍による「麻薬取り締まり作戦」は必然的に反政府ゲリラとの全面戦争へと発展した。米軍はコロンビア軍の全面支援に乗り出そうとしたが、米国議会は人権抑圧で有名なコロンビア政府と軍への軍事援助に反対し、麻薬取り締まり作戦以外への米国および米軍の関与を認めなかった。  

 そこで当時のクリントン政権は、自由に活動できない米軍にかわってPMCを活用することを選択。軍事コンサルタント企業の一つダインコープ社は、麻薬根絶と称してコロンビア軍が枯れ葉剤を撒くための訓練と技術支援を行った。ダインコープ社は反政府ゲリラとの戦闘にまで参加、2001年の2月には戦闘ヘリ・ヒューイコブラまで動員した軍事攻撃を実施している。  

 コロンビアでのダインコープ社の活動について米国政府および米軍は、ダインコープ社が勝手にやっていることだと米国議会で釈明している。だがコロンビア現地の人々にとって、米軍と米系PMCの違いなんて意味がない。すべては米国がやっていることだ。  

 イラクでは、PMC要員も米軍と同様の攻撃・テロの対象になっている。04年3月にはファルージャで殺害され遺体を鉄橋につるされた4人も、米英占領当局(CPA)関連業務を請け負った米系PMC「ブラックウオーター・セキュリティー・コンサルティング」のコマンドだった。イラクで殺害されたハート社の斎藤さんに関してもイラク武装勢力は「友好的だと称する日本人部隊(自衛隊)が米軍基地の治安責任者として働いている証拠」と、米軍を支援する日本の軍人として殺害したと声明している。

W 国際的な法的規制が必要だ

 正規の国軍の場合、少なくとも建前上は、その戦闘行為は各国の軍事法規や国際法に則ったものでなければならず、違反すれば兵士は軍法会議にかけられ、国もその責任を追及される。議会や国民への情報開示も義務づけられている。  

 先述したコロンビアの場合、民間会社であることを立てにダインコープ社はコロンビアでの活動に関する情報公開を拒否している。米国の法律では契約が5000万ドル以下なら、民間企業は議会の監視を受けることなく自由に仕事をすることができる。そこに目を付けたPMCは、金額の大きい契約の場合、契約を細分化して議会からの監視を逃れている。PMCの活動は、まさに「藪の中」だ。  

 PMCは米軍と違って議会の監視を受けずに、世界中で、米国国民の支持が得られないような作戦も行う。これは実際上、米国政府が好き勝手やるのと同じだ。PMCは民間人をなるべく殺さないようにするとか、人権に配慮するとか、国際法や国際世論に配慮することなく行動する。  

 エグゼクティブ・アウトカムズ社はアンゴラで小型核兵器級の破壊力を持つ燃料気化爆弾を投下し、ゲリラと民間人の区別なしに多数の人々を虐殺した。軍事コンサルタントとしてボスニアに渡ったダインコープ社の社員は、売春から武器の不法取引まで様々な不法行為を行ったが、裁判にかけられた者は一人もいない。この事実を告発したダインコープ社員は会社を首になった。  

 一般に正規軍の兵士は、戦争が早く終わって欲しいと願っている。生きて祖国に帰りたいからだ。ところが、PMCは紛争が拡大し、長期化することを望んでいる。その方が会社も社員(コマンド)も利益をあげられるからだ。米国のMPRI社は、ユーゴ紛争で、コソボ解放軍とその敵対者であるマケドニア軍の双方に軍事訓練を実施した。ユーゴ紛争が続く限り、どっちが優位にたっても仕事はなくならない。  

 PMCの活動を押さえ込むために、各国政府および国際機関は早急にPMCの法的規制に乗り出すべきだ。 特殊作戦からハイテク兵器操縦まで

 冷戦終結後に生まれた戦争のプロ集団  PMCが登場してきたきっかけは、米ソ冷戦の終結だった。冷戦終結後、米ソ両国やヨーロッパ諸国は、軍事予算の削減と軍隊の縮小を行った。米陸軍の現役部隊は、冷戦時代の150万人が現在の50万人へと3分の1にまで削減された。リストラされた職業軍人たち、とりわけ「戦争のプロ」とも言うべき特殊部隊の要員たちが、自らの特技(=戦争にまつわる能力)を生かそうと起業したのがPMCだ。  

 PMCは、SAS(英国陸軍特殊空挺部隊)、米国の旧デルタ(現在は米国特殊作戦司令部に編入)、シールズ(米国海軍陸海空作戦隊)など、優秀な特殊部隊要員を多額の報酬で引き抜いている。PMC要員には「歴戦の勇士」が多い。実際の戦闘現場では、不慣れな正規軍の特殊隊員たちは「大先輩」のPMCコマンドの指揮に従うようになる。  

 PMC要員の中には、各国の特殊機関に所属し暗殺や人権抑圧などのイリーガルな活動に従事していた者も少なくない。04年4月、斉藤さんと同じハート社の要員グレイ・ブランフィールドが殺された。彼は南アフリカの秘密機関で反アパルトヘイト勢力の暗殺を任務にしていた人物だった。またチリの独裁者ピノチェット将軍の元で反対派の弾圧・粛正を行ったチリ軍の元コマンド多数がPMCと契約してイラクで活動しているという情報もある。彼らはイラクでも手荒い方法で「武装勢力の掃討」を行っているであろうことは想像に難くない。  

 米国防総省はRMA(軍事における革命)による兵器のハイテク化によって人員削減を補おうとしてきたが、最新鋭の迎撃ミサイルなどのハイテク兵器は高度化しすぎて前線の一般兵士は扱えない。そこで軍事専門家を有するPMCにハイテク兵器のメンテナンスから操作まで、すべて委託せざるを得なくなっているという事情もある。イラク戦争ではPMCは米軍基地の建設からイージス艦やステルス機の管理・操縦まで請け負っている。  

 現在、世界中で活動するPMCは50〜60社もあり、市場規模も90年の550億ドルから今や1000億ドル規模へと急成長し、2010年には2000億ドルにまで膨れあがると予測されている。9・11以後は、「テロとの戦い」という新たな要員も加わってPMCの需要は増加の一途をたどっている。戦争がPMCを必要とし、PMCが戦争を必要としている。


--------------------------------------------------------------------------------


http://www.bund.org/opinion/20050625-2.htm

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ       HOME > 戦争71掲示板



  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。