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占領の影に生きる 増殖する壁――バグダードのパレスチナ化 [TUP速報]
http://www.asyura2.com/0505/war72/msg/174.html
投稿者 white 日時 2005 年 7 月 16 日 09:35:23: QYBiAyr6jr5Ac
 

□占領の影に生きる 増殖する壁――バグダードのパレスチナ化 [TUP速報]

 http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/566

増殖する壁――バグダードのパレスチナ化
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 リバーベンドも、米軍支配地域(グリーンゾーン)が国の中に築かれた国
のようになりつつある状況を報告していますが(TUP速報518、リバー
ベンドの日記6月21日、グリーンゾーン共和国!)、以下の記事もグリー
ンゾーンがどんどん増殖して、住民の生活を分断し壁に接して住む住民をま
すます危険にさらしている状況を伝えています。壁の近くは安全だと喜んで
いるという住民の声もありますが、それだけどこにいても危険で逃げ場がな
い状態なのだと思われます。リバーベンドの日記とあわせて読んで下さい。
(新聞記事のため転載転送はしないで下さい) (TUP/池田真里)

TUP速報518は下記を見て下さい。
http://groups.yahoo.co.jp/group/TUP-Bulletin/message/563
 
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「占領の影に生きる」
ジェームズ・グランズ、ニューヨーク・タイムズ
2005年7月4日

 バグダード発:イラクの人々はそれをアスル(アラビア語で「フェンス」)
と呼んでいる。英語で言えば、「壁」。この2年にわたって拡張を続け、周囲
少なくとも10マイル(16キロ)も切れ目なく続く城壁のように、バグダー
ドのアメリカ軍の本拠地を取り囲むまでになった。

 この壁は、その外に住むイラク市民にとって生活上かなりの問題である。文
化省職員のハリド・ダウードは、いまだに我が家の庭を横切る障壁を見るたび
に信じられない思いだと言う。重さ5トンのコンクリート板でできた高さ3.
7メートルの壁である。

 数ヵ月前、米軍がクレーンを運んで来て、庭の木を切り倒し、まわりを囲ん
でいた低い塀を打ちこわし、コンクリート板をクレーンでつってはめ込み、上
部に鉄条網をめぐらしたとダウードは語る。その後、米軍は壁の外側にまぶし
い投光照明灯と24時間兵士が常駐する見張り塔をとりつけた。プライバシー
が無くなったため、妻と娘たちは庭仕事をするにもアバヤ(ゆったりした長衣)
を着なければならなくなり、一家は停電した暑い夜も屋外では寝られなくなった。
ダウードは息がつまりそうだという。

 以上は、このような壁の影の中で、暮らし、働き、買い物をしたりサッカー
ボールを蹴っている数多くのイラク人の生活のほんの一場面である。多くは壁
を嫌悪しており、おかしなことに好感をもつ人も少数いるが、それを無視でき
る者は誰一人いない。バグダードのいたるところで、形はさまざまだが要塞化
が進んでいるとはいうものの、蛇のように長々と、ジグザグに続く環状の壁に
比べうるものはない。その存在を不快に思う人々がベルリンの壁になぞらえる
こともあるこの構築物は、グリーンゾーンとレッドゾーンをくっきりと分けて
いる。グリーンゾーンとは、かつてのサダム・フセイン宮殿と軍の施設・住宅
があり、今は米当局が使用し米軍によって厳重な監視下に置かれている比較的
安全な地区、レッドゾーンとはグリーンゾーン以外のバグダードの大部分で、
治安の水準はまあまあの所から皆無の所まで千差万別な地区である。

 だが、バグダード中の住民が困難に直面しているといっても、壁から数ブロ
ックの地区はまったく別世界となっている。グリーンゾーンに向けて発射され
た迫撃砲とロケット弾が届かず、この辺りに落ちることが度々ある。壁を突破
できない自爆攻撃者がグリーンゾーンのすぐ傍の店で自爆する。検問所、封鎖
された道、米軍機甲部隊が戦車をころがす音が織りなす混乱もバグダード中で
最もはなはだしい。「ここは第二のパレスチナだ」と壁の北端に近接したセラ
ワンというカバブ(串焼き肉)レストランの店主サマン・アブデル・アジズ・
ラーマンは言う。

 2週間前、昼食時に男がセラワンから数軒隔たったレストランに入って、自
爆し、23人を死亡、36人に負傷させた。ラーマンのレストランまで肉片が
飛んできた。

 バグダードの中央情報センター所長のスティーブン・ボイラン中佐は、壁建
設は「軍防衛総合計画」に基づいており、障壁工事全体は一元的に指揮管理さ
れていると語った。実際に壁を建設しているのはアメリカの請負企業、ケロッ
グ・ブラウン・ルートである(訳注:いま話題になっている戦争請負会社の一
つ)。

 ボイランは、壁に関する苦情にどのような対応がなされているかは知らな
いと言った。しかし公式見解はともかく、住民はコンクリート板の設置を遅ら
せようとしても徒労だと言っている。庭をめちゃめちゃにされたダウードは、
苦情を申し出たが、工事は市当局の許可を得ており、ダウードができることは
ないと言われただけであったという。

 しかし、壁の矛盾の一つは、多数の人々がそれを不快に思っている一方で、
その向こう側の圧倒的な力によって守られていると思う人々もいるということ
にある。米軍の徒歩巡視はバグダードの他の地域ではめったに見ることはない
が、壁の外側沿いにはかなり日常的に行われており、もしゲリラがグリーンゾ
ーン近辺で持続的な襲撃を起こせば、たちどころに軍用ヘリコプターのアパッ
チや軍用車のハンヴィー、必要とあらば戦車の1台や2台も来襲するというこ
とを住民は知っている。

 「いい点もあるし、悪い点もありますよ」と政府職員のアブドル・カリーム・
ジャバルは言う。ニワトリと大家族の子どもたちが群れる彼の裏庭は、セラワ
ン・レストランからさほど遠くない壁に隣接している。「良い点は、安全な地
区だということ、悪い点は」といいながら、ジャバルは肩越しに後方の隣家を
指さし「この前迫撃砲弾が落ちたんです」と言った。それ以外でジャバルが一
番迷惑しているのは、一家の車に向けてグリーンゾーンから酒びんが投げ込ま
れることだという。

 セラワン・レストランの近くの壁はしっくいのようなもので塗られ、新しく
ない。ここで壁は、旧サダム・フセイン共和国宮殿に続く道にかぶさる巨大な
アーチ、暗殺者の門を取り込んでいる。米軍が金網フェンスや鉄条網やグリー
ンの防水シートで障壁の高さを2倍にしたにもかかわらず、壁がこの地区を破
壊したという感じはほとんどない。

 サダム・フセイン政権の高官が2003年に放棄して逃げた、7月14日橋
のそばの設備のよいアパートに家族と住む技術者のソアド・ハルブ。彼女はグ
リーンゾーンの南側に接して住むことができて満足だと言う。ときどきグリー
ンゾーンで米軍の下請け大手のフルオルの仕事をすることがあるからだ。

 ハルブは、橋の端にある検問所のせいでこの地区は危険になり騒がしくなっ
たが、地区を子どもたちに話しかけながら歩く兵士たちの存在が、障壁をさほ
ど恐ろしく感じさせないのだと語った。
 (訳注:7月13日、バグダード市内で巡視中キャンディを配る米兵に群が
った子どもたちに向けて自爆攻撃が行われた。死者27名(内子ども24名)、
負傷者67名。)

 しかし、グリーン・ゾーンの西端のすぐ外にある、中流階層の住むハリチヤ
地区では事情が違う。ここに巨大なコンクリート板が運び込まれたのは2カ月
前である。

 底部を広く作って台座としているので、その形からT壁、また内部の強化鉄
で爆破に耐えるよう設計されているので、爆破壁と呼ばれることもあるコンク
リート板は、ハリチヤ地区のアルシャワフ通りを隔てて連なる民家にのしかか
るようにまがまがしい姿を見せている。

 この地で育った35才の実業家、ハイデル・アル・シャワフは初め壁の不快
さをアメリカ風なぞんざいな表現で語っていたが、頭上をヘリコプターがやか
ましく行き交い始めると、不安そうに「ここにいるアメリカ人が怖い、この壁
が怖い」と言った。
 
 近くの土埃の広場でサッカーをしていた若者や少年たちも同じ思いを口にす
る。「この地区には7チームあるけど、そのうち4チームは壁に近いからとい
って、ここにプレーしに来ない」。明るいオレンジ色のジャージを着た21歳
ファダル・ムンデルは、そう言った。

 壁がグリーンゾーンの東側、チグリス川の堤に沿った荒れ地のように、人の
住まない陰気な場所を通っているところもある。ときには二重にもなっていて
それが地形に沿って中世の城の胸壁のように続いているのは、おそらく抵抗勢
力が川から上がってくるのを阻むという目的があるのだろう。

 しかし、米軍と彼らのもとで働くイラク人にとっては重要なものであるこの
壁が、同時にこの都市の近隣地区一帯で、そこに暮らす市民の心を、互いの日
常の行き来を、かくもやすやすと切り裂いているのだ。
 「ここはとてもいい町でした」とシャワフは、この都会の自分の住む一画を
いとおしむ者の落胆を見せていうのだった。「ほんとうにいい町でしたよ」

(翻訳:TUP/池田真里)

原文:
 http://www.iht.com/bin/print_ipub.phpfile=/articles/2005/07/03/news/
wall.php
 
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