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【自民党新憲法草案前文】 愛国心は「修正」とし、象徴天皇制の記述には言及せず → 朝日新聞の歪曲大誤報
http://www.asyura2.com/0510/hihyo2/msg/144.html
投稿者 gataro 日時 2005 年 10 月 31 日 16:59:34: KbIx4LOvH6Ccw
 

AMLから転載
http://list.jca.apc.org/public/aml/2005-October/004087.html

<転載歓迎>

反戦の視点 その12

  自民党新憲法草案前文についての『朝日新聞』の報道について

                 井上澄夫(市民の意見30の会・東京)
                 

10月28日に決定された自民党の新憲法草案の前文について、とりあえず二つ指摘したい。「象徴天皇制の維持」の明記と「国を守る責務」とについてであるが、まず後者から。

 【「愛国心による国防」を「国民の責務」としたこと】

10月29日付『朝日新聞』は見出しで「『愛国心』は修正」とし、こう報じた。〈今月上旬の前文原案の段階で「国を愛する国民の努力によって国の独立を守る」などとして盛り込んだ愛国心、国防などの考えは「国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有」と変えた。〉

「変えた」ことは事実だが、変えられた文言に愛国心や国防は含まれていないのだろうか。問題の部分を正確に引用すると、こうである。〈日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し〉

要するに、言わんとすることは「日本国民は帰属する(自分の)国を愛情をもって自ら守る責務を共有する」ということだ。帰属する国のあとに「社会」を、愛情のあとに「責任感と気概」を加えたのは、「愛国心による国防」を呑み込ませるために表現を緩和したにすぎない。国に対する愛情は愛国心であり、国を自ら守るとは自主国防である。だとすると、意味するところは前文の原案とさして変わらない。こういう文言が憲法の前文とされれば、たとえば教育の現場でどういうことが起きるか。教育基本法の改悪と合わせて考えれば明瞭だが、鳥肌の立つ事態が生じるだろう。端的に言えば、愛国心を持つのは「国民の責務」であり「憲法を守ること」になる。愛国心を持たないことは「国民の責務」違反であり違憲とされる……。

中曽根康弘元首相を委員長とする小委員会がまとめた原案(以下、中曽根原案とする)は「国を愛する国民の努力によって国の独立を守る」とのべていて、その主語は「国を愛する国民」であるから、愛国心を持つ「国民」が努力して「国の独立を守る」ということだ。ここでは「国民」が愛国心を持つことは当然の前提とされているとも言えるが、愛国心を持たない「国民」は国防に関係ないと読むこともできる。つまり「国防」に関する「国民」の関与のあり方については多様な解釈の余地がある。

ところが、自民党が決定した前文は「国を愛情を持って自ら守る」ことを《共有されるべき責務》としているのである。これは明確に義務規定であり、日本国に帰属する者すべてに否応なく強要される。従って中曽根原案より質(たち)の悪いものなのだ。

だから『朝日新聞』の「『愛国心』は修正」という報道は〈誤報〉と言うべきである。修正とは「正しく直す」ことなのだ。もっとも、このところ同紙の社説は、自民党の新憲法草案はそれほどひどいものではないという基調に貫かれているが、今回の〈誤報〉はその基調から生まれたものだろう。同日付『産経新聞』社説のタイトルは「国を守る責務は評価する」であり、本文では前文に記された「国防の責務は国民である以上、当然だ」とのべている。同紙の主張には賛成できないが、問題の部分の読み方は正確である。10月30日付『東京新聞』は「愛国心を盛り込んでいた素案〔原案のこと・引用者〕と比べると、保守色は随分薄くなっている。愛国心を『愛情』に置き換え、『独立』は消えた」とのべつつも「現行の前文との一番大きな違いは、自主防衛の概念を含めた国民の責務について言及したことだろう」と指摘している。


  【前文に「象徴天皇制の維持」を明記したこと】

もう一つ、大事なことがある。前文に「象徴天皇制の維持」を明記したことである。中曽根原案はこの点を「天皇を国民統合の象徴として戴き」としていた。この文言は「日本国民は独自の伝統と文化を作り伝え多くの試練を乗り越えて発展してきた」という文脈に置かれているから、史実を無視した超歴史的な観念であり、むろん反対すべきものだが、決定草案の前文はその種の超歴史的な観念は排除したものの、あえて「象徴天皇制の維持」を明記した。

10月29日付『東京新聞』は「前文には、現行にはない象徴天皇制の維持を盛り込み」とのべているが、『朝日新聞』は触れていない。現憲法を読めば、象徴天皇制が国民主権を原理とする民主主義国家にとってムリな接ぎ木であることは明らかである。しかしだからこそ、象徴天皇制の《維持》をわざわざ前文に書き込んだのである。それが意味するところは、後継問題で揺らぐ現天皇制を何としても護持し、新憲法に基づく日本国家の立国の原理として位置づけることだろう。だから、現憲法の天皇条項を前文で繰り返したにすぎないと受け止めるなら、企まれている意図を見落とすことになる。そこには天皇制を外すと日本人のアイデンティティが喪失するという頑迷なイデオロギーが色濃く投影しているのである。前文に「象徴天皇制の維持」を明記することの意味はとてつもなく大きい。しかし『朝日新聞』は意図的にその問題を回避しているのである。


自民党新憲法草案を想像力を余すところなく駆使して読解し批判しようではないか。改憲やむなしと見て、日和見を決め込んでバランスをとりながら、〈そうひどくない改憲〉に世論を誘導するマスメディアを徹底的に批判しつつ、自民党による日本国家―社会の全面的・根本的改造(新憲法国家体制の創造)に総対決し9条改憲に反対する私たちの見解を確立しよう。

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