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日本在住米国人精神科医から診た日本人の心理特性
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投稿者 デラシネ 日時 2005 年 11 月 24 日 02:18:52: uiUTTMWMO8Vq6
 

日本在住米国人精神科医から診た日本人の心理特性

バーガー ダグラス  米国精神療法センター/アルバートアインシュタ イン大学
訳:福西勇夫・神山佳奈絵 東京都精神医学総合研究所
現代のエスプリ423:191-198; 2002.

欧米人による精神療法を望む人たち

筆者は、都心に米国精神療法センターを開設した。このセンターは、東京在住の日本人と欧米人のいずれにも精神療法やカウンセリングを提供するためのセンターである。米国精神療法センターを訪れる患者は、欧米人による治療を望んでやってくる人がほとんどである。その第一の理由は、在日欧米人には言葉や文化という障壁が存在する。日本人の治療者で英語が堪能な人や、欧米に在住してそこで精神医学の資格を取っていた人の場合でも、思考パターンや対人関係には基本的な違いがあり、多くの欧米人は同じく欧米から来た治療者を好む傾向がある。日本でも欧米と同様に精神療法が進んでいるように思われるが、彼らからすれば、日本社会のシステムの『外』にいる人に対しての方が、よりプライベートのことを話しやすいのではないかと思われる。

来日前から抱えていた精神医学的問題への精神療法

米国精神療法センターを訪れる外国人患者のなかには、水商売をしている人から英 語教師やテレビ・ラジオのタレント、さらには外資系企業の社長まで実にさまざまである。彼らのなかには比較的軽い精神症状を持っている患者が多い。たとえば、うつ状態や軽いそう状態、パニック障害、全般性不安障害、強迫性障害、対人関係に困難を引き起こす人格障害などである。ここで注意しなければならない点は、これらはほぼ全て彼らが来日する以前より存在していた精神医学的問題であり、日本での生活に よるストレスによって新たに引き起こされた精神医学的問題ではない。しかしながら、在日外国人はアパートに入居できないとか、日本の会社では責任ある仕事を任せてもらえない等のストレスなどがあることは言うまでもない。 

精神分裂病あるいは精神分裂病に匹敵する重篤な精神疾患を患っている患者や、深刻な自殺の危険性等がある患者がやって来ることもあるが、日本で働き続けることは難しく、通常は母国へ帰国することになる。しかしながら、彼らのなかには、幸いにも日本に長い間在住していて彼らに協力的なサポートを提供してくれる人たちがおり、われわれのもとで治療を受けることもある。また母国には自分をサポートしてくれる人たちがいないので、彼らは母国で治療を受けずにわれわれのもとにやって来る人たちもいる。

欧米人の精神療法を求める若い日本人女性

以上は在日欧米系外国人についてであるが、われわれのところに治療を求めにやって来る日本人も少なからず存在する。米国精神療法センターを訪れる日本人のほとんどが二十代から三十代の女性である。彼女たちのなかには「日本人の男性に自分の気持ちを話すのは気が進まない。日本人の男性は話をするのがあまり上手ではないから。」と訴える人が含まれている。このことは彼女たちの父親との関係に起因しているのではないかと思われる。推測にしか過ぎないが、彼女たちの父親はあまりにも厳格で時間的余裕がなく、彼女たちに共感的態度を示すことができないのではないかと考えられる。父親との関係は精神療法の中でもよく話し合われる問題でもある。 

しかし、他にもいくつかの理由が考えられる。日本の精神科臨床においては重篤な精神病や薬物療法に主眼が置かれ、精神療法があまり盛んではないことも関係しているように思われる。また、感情をよりオープンに表現する欧米人に比べ、アジア社会では感情や個人的な問題はあまり表立って口にされることがないという特徴にも関係しているのではないかと思われる。総じて、日本人は感情の言語化が訓練されていないために、親子関係においてもそのことが微妙に影響しているのではないかと思われる。このようないくつかの理由が関与して、日本人の若い女性がわれわれのところに治療を求めにやってくるのである。

精神療法と薬物療法の関連性

さて、次に精神療法と薬物療法とのつながりについて述べる。多くの患者はカウンセリングに加えて薬物療法を必要とする。これは重篤なそう病やうつ病、パニック障害、全般性不安障害、強迫性障害などを持つ患者である。精神療法に関する私見を述べたい。基本となる前提は、患者には幼少期の頃から数多くの大きな心理的問題があったということである。たとえば、愛されていないと感じる、認められていないと感じる、支配されていると感じる、家族内の葛藤、などが考えられる。人は成長するにつれ、これらの感情を自分自身や他者との関係の中で乗り越えようと試みる。このような心理的問題を乗り越えたい、あるいは自分自身を守りたいという願望は、問題を悪化させるような行動(心理的防衛)をしばしば引き起こす。 

たとえば、筆者のもとに父親と兄からひどく支配されていると感じている男性がやって来た。彼は小学校時代、餓鬼大将であったが、高校生になるといじめられるようになった。彼は身長が低い上に、その横柄な態度が身体の大きな少年たちには気に食わなかった。大人になった彼は非常に厭世的で、しかも受動―攻撃的行動(すべきことをしない、あるいは人が嫌うことをして怒らせること。たとえば面接料を持ってこない)を呈することが多かった。しかし、それでも彼は皆に好かれたいと思っていた。彼の行為は子ども時代の経験を乗り越えるための試みであり、劣等感から自らを 守る防衛的な手段であった。ただ実際には周囲の者を遠ざけるだけだった。彼が誰にも尊敬されないという事実は、対人関係の葛藤や人生への不満感へと発展した。そしてこのような問題で治療に通うようになった。 

このタイプの精神療法は力動的精神療法と言う。力動的精神療法は、フロイトらによって示された心理的機能のモデル『自我心理学』に基づくと言われている。しかし これは、ハインツ・コフートが提唱した『自己心理学』や、メラニー・クラインやオットー・カーンバーグらによって発展させられた『対象関係論』の影響も受けている。対象関係論についてはホームページに詳しく書かれているのでここでは省略する。

自我心理学

自我心理学は次の三つの考えに基づいている。人には、(1) 無意識が存在す る、(2) 子ども時代の重要な他者との関係が大人になってからの他の人との関係 に『転移』する(患者の転移の典型例は治療者との関係である)、(3) 不快な感 情が起こるのを防ごうとして『防衛』を使う。 

無意識の世界には、互いに葛藤し合うことの多い複数の考えや感情が存在するが、 たいていは何らかの妥協によって、ぶつかり合うニーズの両方を満たすことが試みられる。それにより、非適応的な特性(何らかの症状や人格の病理)と適応的特性(その人の喜びや生産性や健康な人間関係の一般的なあり方)の両方が同時に生じる。患者と何度も話をするうちに関係が出来上がり、その中で思考や感情の無意識的かつ習慣的パターンに関するヒントが見つかる。夢もまた無意識をより深く理解する有用な方法である。目的は、患者の病理全体の中に数は少ないけれども蔓延している問題を探し出すことである。病理の源は、患者の個人的な過去へと遡って見つけることが可能である。治療では、患者の転移や防衛を分析することによって、患者がよりふさわしい方法で自分の葛藤を処理できるよう援助する。しかしこのプロセスは時に困難を伴う。なぜなら、長い間患者が使ってきた防衛のスタイルを捨て去ろうとするとき、無意識が抵抗を起こすからである。 

心理的葛藤は、両親に対して愛情と依存を同時に求めることによって生じることがよくある。たとえば、侵入的な両親に対しては、愛情欲求を表現することが難しくなる。「きちんとしすぎた」両親を持つ十代の子がいた。その子は部屋をいつも汚くし ていたが、その子が表現しているのは自立したい(両親と同じことはしたくない)という気持ちと愛され世話されたい(母親が来て掃除をしてくれなければならない)という両方の気持ちであった。反抗的態度を示してもそれをものともせずに周囲が愛情を示し続けてくれない限り、怒りと苛立ちや不安と抑うつなどを含む症状に陥ってしまう。このケースでは、怒りと愛情の葛藤を両親に直接表現することに対する防衛と、無意識による「転移」のスタイルが非適応として捉えられる。 

防衛が失敗に終わった時には心理的症状(例:不安、抑うつ)が現れる。そして非適応的防衛である時には他者との関係がうまくいかない。たとえば、無意識内の自己不適切感に対する防衛としての傲慢な態度が失敗した時、抑うつ感情が生じ対人関係は難しくなる。それは対人関係として適応した行為ではないからである。 

自己心理学モデルはここまで構造的ではないが、両親は子どもたちが何かを達成できるように「鏡映」し、支え褒める必要があるとしている。共感に失敗すると、自己適切感の発達が歪められたり妨げられたりすることになる。その結果として何らかの症状が生じたり、他者との対人関係のスタイルに害が及ぼされたりする。そしてここでも、自己発達におけるこのような障害を補おうと防衛が働く。共感は自己心理学モデルの中で治療の主たるツールとされている。それにより患者の自己不適切感を解消する援助を行う。治療では患者の転移と防衛のスタイルを分析することにより、共感の失敗の原因を理解する。そして非適応的な対人関係のスタイルを改善する。この非適応的なスタイルは、根底にある自己不適切感に基づくと考えられている。

認知療法

力動的精神療法と同じく有効だと思われる治療に認知療法がある。認知療法は、非適応的な認知(思考)、感情、行動を変えていく方法である。ネガティブな、あるいは歪んだ自動思考を同定し修正していくプロセスが鍵となる。このような自動思考は、人が特殊な状況のただ中に置かれたときに素早く生じる。その人が感情的に敏感になるような問題が強調される状況であればあるほど、歪んだ思考で反応しやすくなる。これは、感情状態にマイナスの影響を与えることになる。自動思考を簡単に挙げると、二分割思考、拡大視、自己関連づけ、状況からネガティブな事柄を選択的に抽出する、破局視、縮小視、「〜すべき」という言い方、レッテル貼り(自分また〜/ あるいは他者について)がある。根底にある(無意識の)認知的スキーマ(例:「私は誰にも愛されていない」)が、認知的歪みが生じやすい傾向の肝心要のところにあると考えられている。 

抑うつと不安、あるいは対人関係での困難のような問題のある患者は、ネガティブで非適応的な自動思考を多く持っている。この自動思考は無力感や引きこもり、攻撃、回避等の行動につながる。これらの行動によって問題はさらに悪化し、気分状態も悪化して、さらに非適応的な思考が出現する。これは悪循環である。認知療法では これらの認知的誤りを患者が認識して修正できるよう援助する。これは治療者との話し合いや、書くことによって状況や歪みの輪郭を描きリストにすることや、宿題を通して行われる。歪みを強化してきた、昔からの非適応的な行動パターンを修正するためには、行動の変容が必要になることもある。 

患者の思考がいかに感情の善し悪しに影響するのかを患者自身が知るためにも、認知療法は非常に効果的である。しかしながら、歪みや根底にあるスキーマの原因、あるいはどのようにしたら他者との関係がうまくいくようになるのかに関しては、認知療法では触れない。自己をより深く理解するためには、力動的精神療法が必要になる のが普通である。力動的精神療法での方が、感情生活に無意識的に付随するものは何か、そしてそれらがどのように対人関係に影響するのかがもっと扱われるからである。 

いくつかの研究では、重篤な抑うつにある患者の認知的な歪みが抗うつ剤により消えたとしている。重篤な抑うつは生物学的要因(すなわち、気分をコントロールする神経化学物質に乱れが生じている)の結果であることが多いのに対し、より軽度の気分障害は、むしろ個人の人格様式から来る歪みが原因となっているということであろう。したがって、なぜ歪みが生じたのかという正確な原因についての結論はまだ出ていなくても、その歪みのせいでどのようにして感情的問題が生じているのか、その可 能性について患者に示唆することは、臨床的に意義にかなったことである。 

いくつかの精神療法を組み合わせることが、大抵の場合に最も有効である。問題の種類にもよるが、より重篤な症状に対しては、精神療法と併せて投薬を行う必要がある。あるいは、数多くの精神療法を行ったのに効果が見られない場合にも投薬が必要となる。多くの人が薬物という手段を採ることに気が進まないのはわかる。しかし、 次のような原則を知ることにより、不必要な苦しみを防ぐことができる。 

その原則とは、「試してみるまで効くか効かないかはわからない」、「薬が嫌いならいつでもやめて構わない」である。もし脳内の化学物質(神経伝達物質)が精神療法のみでは治らないほどにまで本当に異常をきたしている場合、本人が「自力で頑張りたい」というだけでは、おそらくこうした化学物質は正常に戻らない。これは、糖尿病患者が意志の力だけでインスリンを作り出せないのと同じである。人間は、どちらかと言えば問題は人生のある状況によって引き起こされるのであって、気分を調節する神経伝達物質の異常によるのではないと結論付けることがある。なぜなら、人生の状況は容易に見渡すことができるし、脳内の化学物質に異常があるかも知れないとなると、耐えなければならない感情的負担がまた一つ増えた感じがするからである。

〔参考文献〕

Beck, J: Cognitive Therapy: Basics and Beyond. New York: Guilford, 1995.
Fava M, Davidson K, Alpert JE, Nierenberg AA, Worthington J, O'Sullivan R, Rosenbaum JF: Hostility changes following antidepressant treatment: relationship to stress and negative thinking.Journal of Psychiatric Research. 30(6):459-67, 1996 Nov-Dec.
Perry S, Cooper AM, Michels R, The Psychodynamic Formulation: Its Purpose, Structure, and Clinical Application. American Journal of Psychiatry
1987;144:5:543-550.



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