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BSEの発生の多かったイギリスでも、有機酪農の農場からの発生は無かったそうです。
http://www.asyura2.com/0510/nature01/msg/397.html
投稿者 hou 日時 2006 年 3 月 29 日 00:51:01: HWYlsG4gs5FRk
 

http://www.geocities.co.jp/milkfarm00jp/yasasii.doc

千葉の御宿で酪農をしている大地と言います。
現在の飼養頭数は200頭あまりで、日本で唯一のオーガニック牛乳の生産牧場です。
今年、JASの有機畜産の基準が施行されます。
有機畜産という言葉は新聞等でも見られるようになりましたが、私がはじめて聞いたのは藤本敏夫さんに出会ってからです。
餌は全て有機栽培で作ったもの、化学薬品は使わず抗生物質はもちろんダメ。牛は束縛されず放牧されてノンビリと過ごす。出来たらすごいが無理だ!
これが最初の感想でした。
けれど、藤本さんの考え方に共通点を持つ事もあり、不完全な形ではありましたが藤本さんの率いる鴨川自然王国を通して少しづつ取り組み始めたのが10年位前です。
その後、タカナシ乳業から「本格的に認証を受けて、有機牛乳を出してみないか」と言うお話を貰いました。
認証を受けると言うことは、今までのようなわけには行きません。
何回かの、話し合いがもたれ熱心な担当の熱意にも押されまずはやってみよう。これがはじまりでした。
藤本さんにであう5年位前の事ですが、一度だけコーンの畑に除草剤を撒いた事があります。
散布が終わりタンクを洗い、水をざぁっと空けた時、地面からミミズが苦しがって飛び出して来ました。ミミズが住めない土で作物を作る事に大きな疑問を感じた瞬間です。
それ以来、そのタンクは使う事無くひとにあげてしまいました。
環境問題は昨今の大きなテーマ、あるいは大事なイメージ作りのひとつとして、常に大きく語られています。
有機というものも、根本は環境問題からはじまっている事を知る人は少ないのではないのでしょうか?
BSEの発生で、私たち酪農家は大きな苦難を強いられました。
あの時、私たちが今まで牛に食べさせていた餌は、どこからきた物だったのだろう。改めてこの事を考えた人はたくさんいたと思います。肉骨粉の入った餌なんか食べさせた記憶は全く無い!でも、ヒョットしてどこかで混入していたのではないだろうかと言う不安は皆が感じていたと思います。本当に身に覚えの無い災難だったのに、それなら、安全かと問われて「絶対!」と言い切れる自信の無いもどかしさ悔しさ、たとえ牛の餌でもやはりきちんと知るべきだったのです。この時以来「安心、安全」と言う言葉が呪文のように農業にも大きなテーマとなってきました。
それから、トレーサビリティーと言う言葉が盛んに使われるようになりました。
有機認証を受けるには、トレーサビリティーは(生産履歴)は当然の条件です。
我が家では、今日牛に与えた餌がどこの農場のどの圃場でいつつくられた物なのかがはっきりとわかります。自家産はもちろん購入飼料もです。もっと追跡していけばその圃場が、いつどのような管理がされていたかもわかります。
あんなにBSEの発生の多かったイギリスでも、有機酪農の農場からの発生は無かったそうです。
そんなこんなで、BSEをさかいに急に有機が取り上げられるようになりました。
でも有機農業は、元々環境を考える人の中から生まれた物なのです。
1940年代から、農薬や化学肥料を使った農業が急速に発達し始めました。そこで現れてきた数々の現象に対して警鐘を鳴らせたのが、レイチェル・カーソン女史の書いた「沈黙の春」と言う本です。
日本では、有吉佐和子氏の『複合汚染』で、畜産の現場で使われている薬剤について、警告が発せられました。
それから、すでに30年の月日が経っていますが、現状では今でも多くの部分で問題が解決されていません。
畜産の現場でも、すでに現状で抗生物質が効かなくなりつつあります。
抗生物質を使い続ける事の意味をもう一度考えてみてください。
命の基本は土です。
有機農業は、農薬や化学肥料で荒れてしまった土を戻す事からはじまりました。
土壌の状態は、作物のみならず、水や空気、動物、草木そして人などあらゆる物の生態系に大きな影響があります。
ミミズが住めない土には、人間もすめないと言うことです。
よく酪農でも、「牛づくりは土づくり」と言われるとおりです。
そんな思いではじめた有機でしたが、まわりにやった事がある人がいるわけがなく、基準を読んで手探りでやってきました。
自分で考えて証明できる物や資料になるものをそろえて検査に臨みました。
有機の検査の中でも畜産は専門知識が多く必要で、特に酪農は難しいので検査員も少なく、もちろん日本で出来る人がいるはずはなく、アメリカから検査員に来ていただいたのです。
気分は数十年ぶりの受験生。オマケにアメリカ人ですから緊張しました。
まずは聞き取り調査です。
あらかじめ申請書にこちらの状態を記入して提出してありますので、それをみながら検査員は数々の質問をしてきます。そしてそれらを証明する物として、資材の購入伝票、日々の管理の記録等を確かめていきます。
その後、現地調査です。牛舎での牛の状態。飼料の保管状況。堆肥の状態、草地の状況等に、オーガニック性を損なうものがないかとひととおり見て歩きます。
最後に、検査員の方は、「これから私一人で自由に牧場内を見させてください」と言われました。案内されていくところには事前に準備をしていますので問題がなくて当然です。一人で行きたい所見たいところを見に行き、すみの納屋をのぞくと禁止資材が…なんてこともあるのだそうです。
検査の厳しさ、厳正さを感じて思わず緊張してしまいました。
初回には、たくさんの指摘を受けましたが、どれもなるほどと思う事ばかり。
不十分な点については、宿題となりました。
餌の入荷量、使用量、在庫量がすべて分かる様に。それは、薬品類などの資材についてもそうですし、草地の管理も記帳します。
自給飼料の場合は、圃場にナンバーをつけて、いつどこの草を何番のサイロに詰め、それをいつ開封して牛にどの位づつ給与したかがわからなければならないのです。
さてそれをどのように書くのか?書き方の見本などありませんから自分で試行錯誤しながらノートをつくり上げました。
はじめにどういう風に書いたら良いのかと検査員に聞いたところ、自分で考えて作る事が大事なのだと言われました。
自分で試行錯誤して書いてゆくうちに問題点が見えてくる。ここをもう少しと言う気持ちが生まれてくる。これが大事なのです。様式があって記入してゆくのなら楽ですが、それから先に進もうということがなくなってしまうと言われました。
検査員は、記帳した事柄を見て検査するより、生産者のこういう姿勢を見るのだと、現在、日本オーガニック協会の水野葉子さんの言葉は、非常に印象深い物でした。
検査は毎年行なわれます。
そして今、言われた通りに、これらは大きな財産になっています。
毎回記帳したあと担当者が、サインをするようになっていますので、各自が責任を持つようになります。ローリーの運転手さんにもサインして頂いています。集乳した後に、バルクの洗浄のスイッチを入れて頂いているのですが、おかげでミスを素早く見つけて運転手さんに説明をする事が出来ました。
餌も最近は、Non・GMOのものが多く使われるようになったと聞きますし、有機だけが特別な物ではなくなりつつあるような気がします。
トレーサビリティーが難しいと言われる牛乳も、出来ない事は無いのです。
こうして、2000年、アメリカの認証団体QAIの認証を取得し、日本ではじめてのオーガニック牛乳としてタカナシ乳業から発売されています。
それから、ここまで順風満帆とはとてもいえない道のりでしたが、問題点は着実に減りました。これは、記帳する事で皆が変わってきた事も大きいと思います。
でもこれで十分だとしているわけではありません。
餌は自給飼料のほかに購入飼料が有りますが、日本では有機の飼料はなくアメリカの有機農家の作ったものを輸入しています。
有機なのにフードマイレージはとても高いのです。
もし,日本で有機の飼料を作ってくれる所があるのなら、有機をやろうと言う人には大きな力となります。
せっかく作った堆肥も受けいれてくれるところが無いということをよく聞きます。その堆肥を使い、近頃増えてきている耕作放棄地を利用して有機の飼料や有機農産物を作ったらどうだろうかと考えるのです。
私たちの頃は、若者は都会に出て農業をしようとする人はわずかでした。
ところが今、若者にとって農業は魅力ある仕事になりつつあります。特に有機に関心の有る子が多い。この子達に土地と堆肥を提供して地域で応援できないでしょうか。
農業や環境だけでなく地域の活性化にもつながります。
オーガニックのものは、外国でも慣行栽培の物より価格が高い事が多いのですが、貧しいのにそれを選んで買う学生がいたそうです。水野さんがどうしてと訪ねるとオーガニックのものを買い、オーガニック農家を支援することで自分も環境問題に貢献できるからと笑って答えたそうです。
環境問題は難しい事じゃない、身近な事で出来る事をしようと言う姿勢のこの若者はすごいと思いました。
地球は、この星に生きるもの全ての共通の財産です。
それを少しでもよい状態で次の世代に伝えたい。
皆が環境を考えて行動すればきっとできると思います。

家族で酪農をやり結婚して今年で25年、時代に乗り遅れまいとがむしゃらに働いてきました。
若いパワーを借りながら夫婦であと25年、できたら生涯
ミミズが黙々と地球を掘り返すように、ちょっと誇りを持って牛飼いが出来たらいいなと思います。

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