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近く発行の『放送メディアの歴史と理論』の冒頭陳述
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投稿者 木村愛二 日時 2005 年 10 月 05 日 23:23:17: CjMHiEP28ibKM
 

近く発行の『放送メディアの歴史と理論』の冒頭陳述

冒頭陳述・NHK受信料の歴史と問題点

●本書の最重要課題としてのNHK受信料に関する歴史的事実と問題点の概略

本書の仕上げ直前に、NHKが、受信料不払いへの「法的措置」を云々し始め、その一方では、民営化の観測気球が打ち上げられる状況になった。
「法的措置」ともなれば、受信料の法的な根拠、歴史的な成り立ちの経過が問われることになる。
そこで、「はしがき」の前に、異例の緊急項目を設けることにした。この「冒頭陳述」では、本書の「歴史編」の詳しい記述からの最小限の抜粋により、そもそも、受信料制度が、いかなる理由で実施されてきたのか、その歴史と問題点を、簡明に記し、終章と「あとがき」で展開する今後の課題に関しても、概略の方針を述べる。

●政府自ら経営しようという目論見もあったらしい

歴史編で紹介する『ラジオ産業廿年史』(無線合同新聞社事業部刊)の冒頭、「創業時代」の項には、次のような当時の事情が記されている。
《放送事業に対する政府の方針はどうであったか。種々なる説もあったが、当初は無線電信法の定めに依り企業独占権を有する政府自ら公企業として、之を経営しようという目論見もあったらしい》(同書三頁)。
 つまり、社団法人としたのは、最初からの意図ではなくて、政府自らの経営に代わる次善の手段だったのである。
 NHK発行の「公史」の記述は、かなりの変遷を経ているが、以下、一九五一年版『日本放送史』と一九六五年版『日本放送史』の関係箇所を抜粋して、さらに説明を加える。
 《アメリカのラジオ熱は、特に民間に対して大きな影響を与えたのであって、民間側が主としてアメリカ式の自由企業を念頭に置いたとしても、当然のことであった(一九六五年版『日本放送史』三六頁)》。
 そういう事情の下で、苦心の密室論議を重ねた末、「放送用私設無線電話規則」なるものができあがった。
 逓信省のやり方は、すでに一九一五(大正四)年に成立し、第一条に「無線電信および無線電話は政府これを管掌す」と明記された法律、「無線電信法」の第二条により、逓信省がラディオ放送の私設を特許する方法であった。だから、「法律」ではなく、「規則」なのであった。独自の法律を作らなかったのは、以下の理由による。
 《放送だけの特別の法律をつくると、放送番組の取締りなどの面で他の省との間に権限争いが起こることも予想された(同書一五頁)》。
 だが、逓信省の方針は、決して、一般の民意に従うという形での「私設」ないしは「民営」、「民間」ラディオの許可、という意味ではなかった。官営でもよかったのである。
 しかし、種々の議論があり、そのなかでも決定的なのは、「殊に経済界の不況によって国家財政は甚だしく逼迫」している状況の下での財政上の危惧であった。
 《仮に官営で事業が発展したとしても、その拡張充実に要する財源に窮し、このため一般の非難を招き、結局社会公共の福利増進を阻害するに至る(一九五一年版『日本放送史』六九頁)》。
 つまり、ラディオ放送の実施は急ぎたし、急場の財政はなし、というのが本音であった。
 逓信省通信局は、私設でありながら、官営と同様の効果を上げる免許方式を研究し、特に以下の要点を定めたのである。
 施設の数「一地域一局」
 施設者「新聞社、通信社、無線機器製作者、販売業者を網羅した組合または会社」
 収入源「受信装置者から一定料金の徴収、広告は許さず」
 一見して明らかなように、目下、議論沸騰の受信料問題の爆弾を抱える今日のNHKの路線は、ここに敷かれたのである。
 「受信装置者」が使用する「受信機」に関しては、以下の「規則」があった。
 《「規則」では、聴取用の受信機は逓信省(通信局)の「型式証明」を受けなければならないことになっていた。これではアマチュアの組み立てた受信機は省令違反となり、これでラジオを聴くことは盗聴ということになる(一九六五年版『日本放送史』一六頁)》。
 
 《聴取料の法的な規定について逓信省は独特な処理をした。一九二二年(大一一)にイギリスで始まった聴取料制度では、政府が聴取料を集めて放送局に交付する形をとった。この制度を日本で採用するには特別な法律が必要であり、既述のように、逓信省は放送のための特別立法を避け、現行法規の中で処理したかった。そこで考えられたのが放送局と聴取者が取りかわす”私法上の聴取契約”であった。聴取者はラジオを聴く場合、それぞれの放送局の「聴取承諾書」、後の「聴取契約書」を添えなければならないことにした。つまり、聴取者が聴取料を払うという”私法上の聴取契約”を放送局と結ばないかぎり、ラジオ設置の許可(施設特許)が逓信局から下りず、違反すれば無許可聴取として無線電信法の罰則が適用されることになった(一九六五年版『日本放送史』一六〜一七頁)》。
 戦前の日本の当時の「無線電信法の罰則」は、本書の歴史編で述べるように、「厳罰」であった。「厳罰」を背景として「契約」がかわされたのである。戦後になって、無線電信法は廃止された。
 
 以下は、NHKの受信料に関する説明の要約である。
 《1950(昭和25)年4月、放送法などの電波三法が成立し、受信料を財源とするNHKと、広告収入を財源とする民放とがよい意味の競争を行い、それぞれの特色を生かして視聴者のみなさんの要望に応えるという日本の放送の原型ができあがりました。放送法は、「放送の最大限の普及」「放送による表現の自由の確保」「健全な民主主義の発達に資する放送」という3大原則に従って、公共の福祉とその健全な発達を守っています。
放送法【抜粋】
第32条(受信契約及び受信料)
協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない》。

しかし、この「しなければならない」と記されている「契約」には、契約しない者への違反の罰則がない。いわゆる「尻抜け」、「ザル法」なのである。
 拙著『NHK腐食研究』では、次のように論評した。
《放送の受信者に受信料を請求するという行為は、ふつうの商品と貨幣の交換とは、大いに事情を異にしている。[中略]
 職業として類似のものをたどれば、大道芸人に近いであろう。この場合も「勝手に」大道で演ずるので、聴衆は投げ銭を強制される立場にはない。どだい「放送」という言葉自体が、「送りっぱなし」の漢語化である同書八八頁)》。

●「未契約者」九五八万件(『日本経済新聞』二〇〇五年九月二一日)

『日本経済新聞』(二〇〇五年九月二一日)は、「受信料不払い」「NHK、法的手段導入」の見出しの長大記事を掲載した。副題では「新生プラン」を発表、というのだが、さらに、「視聴者の反発呼ぶ恐れ」「有料放送化論議、浮上も」「職員1200人削減」「効果は200億円」などの副題もあり、見出しだけでも、問題の複雑さを示している。「NHK労組の日本放送労働組合のコメント」の小見出しもある。


拙著『NHK腐蝕研究』では、「第二章 NHK《受信料》帝国護持の論理」に以下の項目を設けた。

ちょっと“低次元”ですが
(「労使の言い分」がなぜか一致
意識的不払い者の激増と数字のカラクリ
“隠し田”ありの弱い者いじめ
“契約率”と“普及率”のNHK式用語研究

この内から、以下、現在のNHKの発表の「未契約者」九五八万件に相当する部分を要約する。

《すでに現状の追求でも、六百〜七百万の“未契約世帯”があった。テレビを設置していないのかといえば、そうでもない。NHK自体、世帯数に対するテレビ設置の率は一九七二年で限界点、いまは九十八%には達しているだろうといっている。“未設置”が仮に百%マイナスの九十八%、イコール二%としても、七十万世帯ぐらいにしかならない。

 どう計算しても、残りの五百〜六百万世帯は“未契約”か“未払い”か“不払い”、もしくは“支払い拒否”になる。これは大変な数であって、これだけですでに総世帯数の二十%近くなる(同書六六頁)》。


 《NHKの最新かつ最大規模の公史、『放送五十年史』の資料編には、第2〜3表のように、この“普及率”の数字が年度別に明記されている。だが“普及率”は、正しい日本語に直すと、“契約率”でしかなかった。
『NHK国営化の陰謀』という単行本の著者は、匿名だが、電波ジャーナリズムの関係者らしい。そして、この“普及率”の正体“あらわる”の瞬間をこう描いている。
 「このトリックがはからずも暴露される日がやってきた。
 昭和四十八年二月、郵政省の記者クラブで、NHKの四十八年度予算案の説明中、ある記者が『収納率は別として、受信機を設置しながら、NHKと契約していない未契約の数字はどのくらいか』と質問した。この質問に対して、NHKの担当部長は、はじめ言葉をにごしていたが、きびしい追及に抗し切れず『テレビを設置しながら、NHKと受信契約していない一般家庭の未契約世帯は、現在ざっと二百六十八万世帯である』と答えた。
 本来、部外秘になっている数字を、この部長はうっかりともらしてしまったのだ。うっかりとはいえ、NHK側が自ら未契約の実態を明らかにしたのは、これがはじめてのことであった(同書七〇〜七二頁)》。
 
 「昭和四十八年」は西暦で一九七三年である。本年の二〇〇五年から数えると、三二年前のことである。この三二年間に、「未契約」の数字が、二百六十八万から「九五八万」(右の日経記事)に増大したのであろうか。かつての「部外秘」の数字も、非常に疑わしいのである。
 
 昨年、二〇〇四年七月の紅白歌合戦チーフ・プロデューサー醜聞暴露以来、「契約者」の中での「不払い」も激増した。合わせると、「受信料を払っていない世帯・事業者は千三百五十七万件」(右の日経記事)に達したのである。
 
 NHKの受信料の実態が、これほどまでに露呈したのは、史上空前の事態である。
 『日本経済新聞』は、以上の長大記事掲載の翌日(二〇〇五年九月二二日、イギリスのBBCの実情を報じた。受信料に関する解説に曰く、「英国では違反者に懲役刑を含む罰則を設けるなど受信料支払い義務を徹底している」。
 『NHK腐食研究』の著者と名乗って、NHKの広報に電話すると、非常に丁重で素直な応答であった。最近の状況の反映で、困っているのである。「法的措置」に関して、「未契約」をどうするのかと聞くと、イギリスの例を持ち出したが、「NHKは放送事業者なので自ら提案はできない」と答えた。
 
 つまり、問題は、「有権者」の認識いかんにかかっているのである。
 本書、『放送メディアの歴史と理論』「終章 送信者へのコペルニクス的転回の道」では、「NHKの抜本改革には、オランダの実例にならい、放送団体が放送時間を分割する方式が、理想的」と主張する。
 最良、理想的な公共放送の活用は、「受信者」から「送信者」へのコペルニクス的転換である。これは、今から二四年前の一九八一年に発行した『NHK腐食研究』以来、各所で発表し続けてきた意見である。

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