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人工林は間伐しないと荒廃する  鋸谷式(おがやしき)間伐の考え方 【喜多岳史】
http://www.asyura2.com/0510/social2/msg/236.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 10 月 22 日 08:04:43: ogcGl0q1DMbpk
 

人工林は間伐しないと荒廃する


http://www.bund.org/opinion/20051015-2.htm

  鋸谷式(おがやしき)間伐の考え方

喜多岳史

 岐阜県御嵩町産廃処分場建設に反対する運動にかかわり5年になる。産廃建設計画が住民と柳川町長の決断で「休眠」状態になって以降、継続してきたのは主に「水源の森・みたけ」を拠点とした活動であった。  

 産廃反対の住民から山林を購入。隣接する人工林の枝打ち、間伐を行ない、間伐材で「水源の森・みたけ」内に周回路を整備し、丸太小屋を建設してきた。運動の停滞期でも運動を継続してこられたのは、この森の月例作業があったからだ。月例作業の蓄積がなければ、地元御嵩町住民や森づくりボランティアの新規参加を得ることもできなかっただろう。  

 こうして「水源の森・みたけ」での作業は、だれでも気軽に参加できる森づくりボランティア活動の体裁を保つものにはなった。  

 しかし、日本全国で日々進行する山林の荒廃(特に、戦後復興で木材需要の高まった時期に植林した人工林)を押し止める態勢が整っているかと問われれば、「NO」といわざるを得ない。

急増する間伐手遅れ林


  その理由は、一言でいうと「山仕事は手間が掛かる」ということだ。特に間伐がネックになっている。森づくりの活動をしている人ならわかると思うが、多くの労力と時間を割くわりに、なかなか間伐面積が広げられないのである。  

 間伐が追いつかないことが、全国の山林を荒廃させている最大要因であることはいまや常識だ。実際の間伐は、選木、除伐、伐倒、掛かり木処理、伐倒木の枝払い、玉切り、皮むき、横積み、運搬など、強度の労働集約型作業が大半を占める。それでもチェンソーで10m以上のヒノキを伐倒する作業などは大きな爽快感が得られるし、夏場シュルシュルと面白いように表皮がはがれる皮むきも作業者を飽きさせない。だがいかんせん、間伐が進まないのである。

 そこで今、間伐手遅れ林を健全な植生の人工林に改良する技術として注目されているのが鋸谷式間伐(おがやしきかんばつ)だ。ポイントは、間伐材を森林生態系の修復する「環境材」とみなし、適正な密度管理のもとに@伐り置き(伐採したまま放置)A巻き枯らし(立ち木のまま枯らす)という省力的方法により、自然生態系の回復をはかることにある(別途詳細説明)。考案者は福井県職員の鋸谷茂さん。林業改良指導員をしていた95年から育林の省力化=効率化をめざした鋸谷式間伐を提唱し、実践・普及に努めている。  

 鋸谷さんは、従来の林業のあり方を「山を木の畑のように考え、木材をより多く収穫するやり方」(研修会での発言より。以下同)と批判する。戦後復興で木材需要が高まる中、多くの山林地主がそれまで薪炭材生産の場としてきた雑木林を伐採し、収穫が高いスギ・ヒノキを植栽した。多い時には1ヘクタール当り1万本も植えた。ところが建築材として利用可能になる前に、海外から大量に木材が輸入されるようになり、市場価格が下落。結果として、コスト割れする山仕事を放棄してしまい、荒廃する山林を生み出してしまったのだと。  

 多くの地主が完全に育林を放棄する中、少数だが山に手を入れる地主もいる。それに対しても鋸谷さんは、「巷では『もったいない』が流行りつつありますが、間伐においてはこの『もったいない』が良くない」と批判する。たとえ手を入れても「もったいない、できるだけ多くの木を残そう」という発想に縛られているため、「優良木を育てるために混んだ森を間引きして生育環境を整える」という間伐本来の目的が果たせずに、間伐手遅れ林になってしまっている例が多いというのである。

 間伐手遅れ林の特徴は次のようなものだ。  線香のように細長い樹形の木が密に生える。林床に差し込む光が少なく、昼でも暗い。クマザサなど一部を除いて、下層植生がほとんど育たない。植栽木の根が表土流出により洗われている。植栽木の枝下高(=地際から生枝が伸びている最下部までの高さ)が高い。  

 間伐手遅れ林は、全国いたるところに存在している。「水源の森・みたけ」周辺の人工林もその一つであり、従来の定性間伐(=形質の悪い木だけを間伐する方法)では健全性を取り戻せなくなってきている。そうしたなかで、定性間伐とは異なる発想に立つのが鋸谷式新間伐なのだ。  

 鋸谷さんはいう。「育成木は土の養分を吸収して成長します。この土は森林生態系が何百年、何千年という年月をかけて育み蓄積したものです。山を木の畑と見なした場合、育成木は土の養分を一方的に吸い取ることになります。また間伐遅れの山では、下草が生えないため、この大切な表土を雨で洗い流すことになります。豊かな山林を次世代に繋げるためにも、林床植生を改善する間伐技術は非常に重要です」  

 上層にスギ・ヒノキが枝を張り、中層に広葉樹が樹冠を広げ、地表にシダ類、コケ類が生えている森。鋸谷式間伐のめざす健全な森の姿は、上層木のスギ・ヒノキが優位に成長できる針広混交林といえるだろう。  

 こうした森は、上層木の適度な密度管理により、太陽光が林床まで差し込み豊かな下層植生、豊かな生態系が維持されるために荒廃することはない。「良質な木材の生産」と土壌保全を含めた「森林の公益的機能」が調和する森がめざされているのだ。

省力化された間伐方法


 実際に、豊田市足助の私有林で行なわれた鋸谷式間伐の実地研修に参加してみた。  昨年度間伐が実施された林の最下部には、スギの伐倒木が無造作に伐置きされている。従来のような枝払い・玉切り・横積みは見あたらない。伐置きは後処理作業軽減だけでなく、鹿やカモシカなどの大型獣侵入防止や、下層植生の貧弱な過密林で表土流出を防ぐ効果があるという。  

 伐置き現場から上部はヒノキ林となっているが、スギ林に比べ木が間引かれた様子がない。その代わり赤テープが巻かれた木が点在し、無印のものは地際から木肌が剥がされているのが目に付く。赤テープは間伐で残す(残された)木の印で、無印は間伐対象木である。樹冠を見上げると、表皮の剥がされた木は緑葉を失っており、立ち枯れていることがわかる。  

 現場を一通り見学したあと、樹木の形状比や胸高断面積などをはかることにした。用意するものは、密度管理竿・直径巻尺・目印テープ・のこぎり・ナタなど。鋸谷さんは山での使い勝手から、4m以上の伸縮式の硬い釣竿を「密度管理竿」として薦めている。  

 まず、間伐範囲にある木々を見渡し、平均的な太さと思われる木の胸高直径を測る。密度管理竿を木に沿わせておおよその樹高を割り出す。平均木の形状比を計算し、「伐倒」か「巻枯らし」かを選定する。胸高直径から胸高断面積も求める。  

 間伐の目標密度数値はha当りになっているが、一度に密度計測できる面積は限られているので、これを小割する。基準単位は密度管理竿を一周させてできる半径4mの円の面積(=約50u)で、1haの200分の1だ。これらの数値から、半径4m円内の残木数を割り出していく。  

 次に平均的な木を1本選び、これを中心に密度管理竿を回し、できるだけ丈夫な木を7本選木して目印の赤テープを巻く。巻枯らしにする場合、早く立ち枯らすには地際から1m高さまでぐるりと一周表皮のすぐ下の形成層まで剥がすのがよい。  

 ここで必要な数値は、胸高直径と残木数を対応させた簡易表に記されており、現場で簡便に割り出すことができるようマニュアル化されている。安全かつ省力化された作業を可能とし、山仕事素人でもすぐ取り組めるのが鋸谷式間伐の最大の魅力だ。

山の公益的機能を高める

 エネルギー安保というと、すぐに核燃サイクル確立、プルサーマル、核融合…といいたがるが、これらはどれも莫大な税金とエネルギー投入と引き換えに危険な事故リスクと廃棄物を生み出す技術体系だ。こんなものが持続可能であるはずがない。  

 石油減耗の時代、国土の70%が森林で温暖・多湿な日本は「木質資源」というバイオマスこそ、自給可能な資源として本格的に研究すべきである。木質資源の源はいうまでもなく太陽エネルギーである。石油は太古の太陽エネルギーの蓄積したものであり有限だが、木質資源は光合成が可能である限り、持続した再生産可能なエネルギー源になりうる。  

 昨年に続き、今年も強烈な台風が日本列島を直撃した。宮崎県に2日間で1300ミリ(=東京都の年間降水量)の雨を降らせた台風14号では、20数名が土砂崩れで亡くなった。そのほとんどが九州、中国地方の中山間地に住む高齢者である。局地的豪雨が頻繁に降る気象条件の変化と、森の荒廃による土壌保全機能喪失が大きな原因だ。  

 人工林の荒廃とともに、肥料・燃料の供給源であった雑木林も荒廃しつつある。瀬戸内の島々で山火事が多発して大きな社会問題になっているのも、雑木林に人が入らなくなったからだと言われている。  

 防堰堤など土木工事による対策や、山火事対策にシフトした消防態勢の構築も必要だろう。しかし、そのいずれも受動的対処療法でしかない。抜本的な対策として、山の公益的機能を認め、しかるべき予算措置をして多くの人が手を入れていくような施策が早急にとられなければならない。鋸谷式間伐がその一助になることを願い、実践にいかしていきたい。

(エコ・アクションなごや)

鋸谷式新間伐法 (図:『鋸谷式 新間伐マニュアル』より)

@折れない木を残す  単位面積あたりに成立できる太さと本数には相関関係があり、ぎゅうぎゅう詰めの森では木が太れない。そこで樹高(m)÷胸高直径(=山側の地際から1・2mの高さの幹直径、m)=形状比に注目し、「形状比70以下」を残す目安として間伐する。形状比が大きいほど、細長い幹となり雪折れなどへの抵抗力が弱くなる。鋸谷氏は山林の実地調査から、風雪害に強い木は「形状比70以下」と割り出した。

A胸高断面積合計50u/haを基準に密度管理  胸高断面積とは、胸高(=1・2m)で伐った木の断面積のこと。どんなに肥沃な土地でも木々が最大に成長できる限界は、胸高断面積合計で80u/ha。この密度で生える木はひょろ長く風雪害に弱い。形状比70以下の丈夫な木を育てるために、50u/ha以下の密度にする。 (それぞれの間伐対象林で平均的な木の胸高断面積を計算。胸高直径20p=半径0・1mの場合、断面積3・14×0・1×0・1=0・0314u。残す本数は50u÷0・0314u=1592本)。


胸高直径の計り方 B巻枯らし間伐  伐採する前の平均形状比が85以上の林では、強度の間伐を行うと風雪害が発生する危険がある。その場合、間伐で伐倒すべき木を立枯らしにして、枝葉を枯れ落として空間をつくり、間伐と同じ効果をつくりだす。

●従来法との違いは、間伐の割合でいうと本数率で50%程度(従来法は20%程度)、材積率で33%(従来法13%)という強度間伐ぶりだ。強度間伐のメリットは間伐スパンが10年ですむ(従来法は5年)ため、間伐を遅らせる大きな原因であるコストと人手不足問題を軽減できることだ。


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雑木林の萌芽更新が危機に瀕している

飯塚今日子

 私は埼玉県の三富新田のくぬぎ山で、農家の協力を得て里山再生ボランティアを行っている。なにぶん素人なので、ヤマ仕事や里山のことを勉強しようと思い、今年の春(財)東京都農林水産振興財団の「森林ボランティアのための基礎講座」に参加してみた。参加者はざっと60人。中高年が多い。講師の中には脱サラして、林業と森林インストラクターをやっている人もいた。  

 講習会で一番ショックだったのは、日本の雑木林の萌芽更新(ほうがこうしん)が危機的な状況になっていることだった。萌芽更新とは、15年から20年ぐらいの生長期にあるクヌギ・コナラ等を根から10センチほど幹を残して切ると、その幹から「ひこばえ」といわれる小さな芽が出てきて生長し、15〜20年後には元の幹の太さにもどる性質のことをいう。人間なら小・中学生ごろに身長がぐんぐん伸びるイメージだ。木の活力が旺盛の時期なら、何度伐採しても復活する。この性質を縄文時代初期から人間は利用してきたという。  

 里山では、例えばある1地域を20の区画に等分しておき、1年で1区画ずつ伐採して薪や炭に利用する。20年目に元の区画に戻ると、20年前に伐採した樹木が生長して元の太さに戻っている。こ れを繰りかえすのが里山の持続可能なサイクルだ。

 杉・檜なら一度伐採したら新たに植林するが、雑木林はその必要がほとんどない。ところが、50年以上も経って活力を失ったコナラ等の木の幹は伐採されると再生不可能となる。この萌芽更新のタイムリミットがそろそろやってくるというのだ。「林業統計要覧」(2001年)によると、日本の人工林のうち、1〜20年経過した樹木は22%、21〜40年は59%、41年以上は19%となっている。早くてここ数年、遅くて15年で再生不可能に近い状態の林が過半数を超すことになる。  

 雑木林はかつて薪・炭に利用され、落ち葉は畑の堆肥として活用された。竹林は籠などの道具、コナラ・クヌギはシイタケのほだ木にもなり、カブトムシなど昆虫の棲家にもなった。春には山菜の宝庫となり、多くの恵みをもたらした。それが石油燃料と化学肥料の大量使用によって利用価値のないものとされてきたのだ。  

 一方、杉や檜はどうだろうか。建材として経済価値があるとされた杉や檜は、戦後雑木林やブナ林を伐採して拡大造林された。しかし、今では安い輸入材におされ(80%のシェア)、国産材は採算が合わないことから、多くの森林が管理放棄されたままだ。通常杉や檜は50年で伐採・収穫されて新たに植林されるが、長年放置された結果、古い木は巨木となって酸素を放出することができなくなり、新しい木はモヤシのようになっている。  

 講習会ではこうした日本の森林全体の危機に対して、林業従事者の増加と森林ボランティアの参加に展望を見出そうとしていた。はたしてそれで間に合うのだろうか、という不安は多々あるが、少しでも貢献したいという人々は決して少なくないと思う。  

 くぬぎ山の再生プロジェクトでは、4年前から下草刈りを毎年行い、落ち葉かきを行ってきた。今年は三富農法の落ち葉の堆肥づくりにチャレンジしている。来年堆肥ができあがったら、サツマイモ畑にすきこみ、収穫の秋には芋掘り大会を開きたい。ささやかではあるが、農家に負担となっている里山の手入れを行うことで、人とヤマとのつながりを取り戻せたらと思う。くぬぎ山に通うたびに新緑が変化している様子が見られ、週末に通うのが病みつきになっているこの頃である。

(グリーンアクションさいたま)


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