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米軍兵士は「条件反射」でイラク民衆を殺す  行動心理学に基づく「殺人マシーン」化訓練で洗脳 【蛭田勢二】
http://www.asyura2.com/0510/war75/msg/470.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 10 月 11 日 23:28:48: ogcGl0q1DMbpk
 

米軍兵士は「条件反射」でイラク民衆を殺す

  行動心理学に基づく「殺人マシーン」化訓練で洗脳

蛭田勢二


http://www.bund.org/opinion/20051015-1.htm

 イラク戦争によるイラク民間人の戦死者は、最大で2万9000人をこえた(イラク・ボディカウントによる)。さらに米軍は、ファルージャ虐殺やアブグレイブ刑務所での捕虜虐待などの数々の蛮行を行っている。普段は私たちと同じような日常生活を送っている米兵が、一度戦争となると平気で人を殺し、時には目を覆うような残虐行為を行っている。どうしてそんなことができるのだろうか。

兵士も「人殺し」はしたくない

 疑問に思っていたところに、デーヴ・グロスマン著『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫、以下『人殺しの心理学』と略す)を読んで、その理由が理解できたように思えた。同書によると、米軍は新兵に対して人殺しに慣れさせる訓練を行っている。こうした訓練の結果、敵を人とも思わず、敵兵も捕虜も非戦闘員も見境なく殺す殺人マシーンのような兵士が生み出されているのだ。  

 「人殺しの訓練というのは、要するに戦闘訓練のことだろう。軍隊が戦闘訓練をするのは当然じゃないか」と思われるかもしれない。だが米軍が行っている新兵訓練は、ただの戦闘訓練ではない。米軍は、条件反射的に敵を殺せるように、行動心理学に基づいた系統的な訓練を実施している。同書は、こうした米軍による「条件付け」訓練の根拠と有効性(人殺し訓練の有効性!)を心理学的に明らかにした研究書として、米軍のウエスト・ポイント陸軍士官学校や同空軍士官学校で「教科書」として使用されている。  

 同書の内容を一言でいえば、スタンリー・キューブリック監督の映画『フルメタル・ジャケット』(1987年)に描かれているような過酷な新兵訓練の有効性を、行動心理学的に裏付けるものだと言っていい。同書でのグロスマンは、「戦場での人殺し」に関して、プラグマティズム・行動主義の国の軍隊にふさわしく徹頭徹尾「実証的」に分析している。旧日本軍のような軍人精神・武士道といった精神主義とは全く無縁だ。だがその分、同書は、日本語版カバーにあるように、まさに「戦慄の研究書」となっている。  

 同書でグロスマンは、南北戦争、第一次・第二次世界大戦、ベトナム戦争などの帰還兵の証言に基づき、以下のような前提から考察をはじめる。「ほとんどの人間の内部には、同類たる人間を殺すことに強烈な抵抗感が存在する」「歴史を通じて、戦場に出た大多数の男たちは敵を殺そうとはしなかったのだ。自分自身の生命、あるいは仲間の生命を救うためにすら」  

 例えば、ナポレオン戦争や南北戦争では、一連隊(連隊は200〜1000人規模)は、約30ヤード(約27・5m)先の敵軍に対して、平均して1分間に1人か2人しか殺せていないことが統計的に明らかになっている。当時の銃でも、人間ではない標的なら、75ヤード(68・8m)先でも命中率は60%だった。敵兵を撃つように訓練し命令されたにもかかわらず、多くの兵士は実際には敵を撃ち殺すことができなかった。  

 事態は20世紀の第二次大戦においても変わらない。米軍陸軍准将のS・L・A・マーシャルは、第二次大戦中の米軍兵士にライフルを敵に発砲したかどうか質問した。その結果、平均して米兵の15〜20%しか敵に向かって発砲していないことがわかった。では彼らは戦場で何をしていたのか。「発砲しようとしない兵士たちは、逃げも隠れもしていない」「多くの場合、戦友を救出する、武器弾薬を運ぶ、伝令を務めるといった、発砲するより危険の大きな仕事を進んで行っていた」という。  

 第二次世界大戦中、米国陸軍航空隊(現空軍)が撃墜した敵機の30〜40%は、全戦闘機パイロットの1%未満が撃墜したものだった。ほとんどの戦闘機パイロットは「一機も落としていないどころか、そもそも撃とうとさえしていなかった」。  

 要するに、戦場の兵士の多くは「同類たる人間を殺すことはできない自分」に気づき、「いざという瞬間に良心的兵役拒否者になった」(グロスマン)わけである。

「遠い」他者の方が殺しやすい

 だがグロスマンは、こうした検証に基づき、兵士に「人殺し」を強要する戦争は間違っている、と言いたいのではない。グロスマンは、「適切な条件付けを行い、適切な環境を整えれば、ほとんど例外なくだれでも人を殺せるようになるし、また実際に殺すものだ」と、兵士に人殺しをさせるための「適切な条件付け」と「適切な環境の整備」の必要を力説する。  

 まず、「適切な環境」とは、殺す相手との「距離」をできるだけ遠くすることだ。兵士は、物理的あるいは心理的に自分から「遠い」他者の方が殺しやすい。近距離からライフルで人を撃つのには抵抗感がある。そこでライフルを使った方が正確に殺せる場合でも、多くの兵士は被害者の顔を見ずにすむよう手榴弾を使いたがる。銃剣で人を刺すのも心理的な抵抗が大きい。実際の銃剣戦では、多くの兵士は銃剣で突き刺すのではなく、銃床などで殴り合っている。  

 逆に、飛行機からの爆撃や艦砲射撃の場合、人を殺すことへの抵抗感は少ない。現代の米軍が行っている高々度からの爆撃や巡航ミサイルなどによる攻撃は、兵士にとって非常に抵抗感の少ない殺し方ということになる。  

 同じことが「心理的な距離」――文化的・倫理的な距離にも当てはまる。敵は自分と対等の人間ではなく「格下」の人間だと思えば殺しやすくなる。「人間ではない」と思えば、さらに殺しやすい。第二次大戦中、日本が米国や英国を「鬼畜米英」と呼び、米軍が日本人を「ジャップ」と呼んだのは、「殺しているのは自分と同じ人間ではない。別の下等な生き物だ」と兵士に思いこませるためだった。  

 グロスマンは、文化・民族が多様な米国では、「敵は文化的に劣っている」とか「敵は人間ではない」とかと、あからさまに言うのは社会的に抵抗があるという。そこで米国の場合、敵との心理的距離を遠くするために、第二次大戦の「リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)」、ベトナム戦争の「コミュニストの侵略との戦い」、湾岸戦争の「フセインによるクウェート侵略との戦い」などのような、政治的道徳的な「米国の正義」を強調するのが有効だとする。確かにブッシュも、アフガニスタン・イラク戦争において「テロとの戦い」「9・11を忘れるな」といった心理的距離を強調している。

人殺しも「反復訓練」次第

 さらに米軍は、敵を殺させるための「適切な条件付け」訓練を行い、「目覚ましい」効果を上げてきたとグロスマンはいう。グロスマンは、兵士に人を殺せるようにするためには、「脱感作」「条件付け」「否認防衛機制」の3つのステップを踏んで訓練するのが有効だという。  

 「脱感作」というのは、感受性を軽減したり、除去したりすることだ。具体的には、「殺せ! 殺せ!」と絶叫させたり、殺人を賛美する言葉や敵を侮蔑する言葉を絶叫させながら走り続けるような訓練を繰り返し行うことだ。これが一種の「洗脳」であることはグロスマンも認めているが、「脱感作」訓練としては非常に有効だとする。  

 「条件付け」というのは、「パブロフの犬」のように敵が現れたらパッと銃殺できるように訓練することだ。第二次大戦までの米軍の射撃訓練は、単なる丸形の標的を狙いを定めて撃つというものだった。訓練のやり方を、標的を人型に変え、物陰から差し出したところを撃たせるといった実戦的な訓練に変更したところ、戦場で敵兵を撃つことができる兵士の数が格段に上昇したという。標的を「できるだけ人間らしくする」と効果はさらに倍増する。  

 米軍は現在、模擬弾で実際に撃ち合う訓練やCG映像を使ったシューティング・ゲーム型のシミュレーション訓練も実施している。「そんな子供だましの訓練が」と思われるかもしれないが、グロスマンによればこれが非常に「有効」なのだという。  

 さらに米軍は、単なる条件付け訓練だけでなく、行動心理学でいう「オペラント(自発的)条件付け」訓練も取り入れている。テコを押すと餌が出るような仕掛けをしておくと、ネズミはテコを押せば餌を食べられることを学習する。動物は行為の結果「いいこと」があると自発的にその行為を繰り返すようになる。これがオペラント条件付けだ。  

 米軍は、人間に似せた標的を使った射撃訓練で、成績が良ければ報償や休暇などの「正のサンクション」を与える。逆に撃ちそこなった兵士は、訓練を終了させないとか、上官や同僚から非難や嘲笑を受けるなどの「負のサンクション」にさらす。こうした訓練を繰り返し実施すると、兵士は確実に標的を撃とうと「オペラント条件付け」されていく。  

 三つ目の否認防衛機制。否認と防衛という心理機制は、トラウマ的経験に対処するための無意識の手段だ。具体的に言うと、兵士は殺人のプロセスを繰り返し練習することで、戦闘で実際に人を殺しても、「自分はたんにいつもの標的ととらえただけだ」と思いこむことができるようになる。人殺しの罪悪感を感じなくなってしまうのだ。米軍流の現代式訓練を受けた英兵は、フォークランド紛争から帰還後、「敵は第二型(人型)標的としか思えなかった」と証言している。  

 こうした訓練の結果、米軍兵士の発砲率は、第二次大戦の15〜20%から、朝鮮戦争では55%、ベトナム戦争では90%まで上昇した。ベトナム戦争では、普通の兵士は一人殺すのに平均して5万発もの弾丸を費やしたのに対して、「人殺しの訓練」を徹底的に受けた米軍狙撃兵は、敵一人殺すのに平均1・3発の弾丸しか必要としなかった。米兵は戦場で、実験室のイヌやネズミのように条件反射的に人を殺しているわけだ。

「こころ」を壊された兵士たち

 こうした「人殺し条件付け訓練」は、当然のことながら大きな弊害を生み出さずにはおかない。最大の弊害は、人殺しの条件付け訓練を受けた兵士が、敵を人とも思わなくなり、敵兵も捕虜も非戦闘員も見境なく殺すようになってしまうことだ。かつてのベトナムで、そして現在のイラクで、米軍が民衆虐殺や捕虜虐待を繰り返しているのは、こうした米軍の「条件付け訓練」の当然の結果なのだ。  

 条件付け訓練はまた、米兵の人格や精神の安定も破壊してしまう。条件付け訓練を受けた米兵は、訓練通りに戦場でも敵を(時には非戦闘員や子供を)まさに「条件反射的」に撃ち殺すことができた。しかし、米軍の訓練は、兵士の人間的な「こころ」まで殺人マシーン化することはできなかった。彼らの多くは、「自分は人を殺してしまった」という罪悪感に耐えられず、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などの「精神的な傷」を負うことになった。  

 ベトナム戦争の場合、米軍は敗退した上に、戦争そのものの正義性が米国国内でも疑問視された。戦争の正義性を否定され「適切な環境」を喪失した結果、ベトナム帰還兵280万人の18%〜54%、50〜150万人もがPTSDに苦しむこととなった。  

 現在、米国が行っているイラク戦争もベトナム戦争の轍を踏みつつある。すでに、イラク戦争において精神的疾患を理由に戦線を離脱した米兵は1万人を超え、PTSDに苦しむ米兵も10万人を超えると言われている。イラクでも多くの米兵が、ベトナムと同じように、この戦争に本当に大義があるのかと疑問に感じ、非武装の女性や子供を殺してしまったことに苦しんでいる。  

 同書の最後でグロスマンは、ベトナム帰還兵の社会的救済を訴えている。確かに、PTSDに苦しむベトナムやイラクの帰還兵もまた戦争の被害者であり、救済が必要には違いない。だが、そもそも人間を殺人マシーンへと改造することを目的とした米軍の訓練自体が間違っているのだ。


http://www.bund.org/opinion/20051015-1.htm

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