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裏検定とは、正規の文部省検定とは異なり、一部の団体が教科書採択への影響力を背景に特定のイデオロギーの観点から教科書をチェックすることです。裏検定は実際の教科書採択率に少なからず影響を及ぼしており、教科書採択のために従来の教科書会社はこの裏検定に従わざるを得なかったという実態があります。ここでは裏検定の実例として大阪市・大阪府同和教育研究協議会(大同協)による教科書評価の観点を紹介し、それが教科書の記述内容にいかに大きな規制力を及ぼしているかを明らかにします。
『裏検定ー中学歴史教科書をダメにした大同協による恐るべき「裏検定」の実態!』
現行教科書は以下の指示通りに書かれている!
大同協(大阪市・大阪府同和教育研究協議会)の45項目の「チェック基準」
『反差別・人権の視点を教科書に−1997年度用中学校教科書検討資料(社会科)より』
01 農耕生活が始まると、階級分化が起こり、支配−被支配の関係が形成され、国家が誕生していく過程が論理的に記述されているか
02 大和国家の大王の位置づけが、皇室の祖先として強調されて記述されていないか
03 律令時代における税制と農民の生産や生活の問題が詳しく記述されているか
04 律令性のなかにみられる支配−被支配関係で、生まれによる身分差別等について記述があるか(良民−賤民、奴婢などとその関係)
05 記紀(古事記・日本書紀)の内容が、皇室中心の物語として改作されたことが明記されているか
06 奈良時代の農民の生活や労働と抵抗のようすがのべられているか
07 中世農民のたちあがりに関して、土一揆や一向一揆などが民衆の生きるための団結した闘いとして記述されているか
08 検地・刀狩りよって兵農分離が確立し、封建的身分制度が固められたことが記述されているか
09 民衆文化(芸能、造園など)が、身分の低いとされてきた散所、河原者のあいだからおこったことが記述されているか
10 「えた」身分、「ひにん」身分などに関して、支配者の分断政策のしくみとして記述されているか同じく、被差別身分の人々の社会的位置づけがされているか
11 農民・町人身分の統制についても社会的位置づけがされているか
12 蝦夷地についての記述とアイヌ人の権利の侵害、また、アイヌ人の抵抗について記述されているか
13 独立した文化を有する琉球国にたいする島津藩の支配、さらに中国による二重支配にふれられているか
14 封建制に対する批判的思想(安藤昌益、司馬江漢等)が、紹介されているか
15 被差別部落大衆の抵抗や闘いが、分断支配の強化のなかで強まったことが、具体的事例をあげて明記されているか(渋染一揆や竹皮値下げの闘い)
16 「解放令」が出されるにいたった政治的背景が述べられているか
17 「解放令」による賤民廃止を明記し、新たな天皇中心の「身分制度」が確立されたことが記述されているか
18 「解放令」の歴史的意義とその限界についてどのように記述されているか
19 中央集権国家の形成と減免措置廃止、血税一揆、「解放令」反対一揆等が記述されているか
20 北海道や沖縄、また天皇制下における民衆の生沽の矛盾や問題点について記述があるか
21 日本の資本主義と大陸進出の項で日露戦争下における庶民の困窮化と反戦の動きにふれている記述があるか
22 韓国併合が朝鮮の植民地化を意味し、それに村する朝鮮半島での反対運動について記述されているか
23 日本の朝鮮侵略政策の流れが、途切れなく記述されているか(強制連行まで)
24 朝鮮人民の抵抗・独立運動がそのつど明記されているか
25 朝鮮人にたいする日本人の差別意識についてふれているか
26 工場労働の実態とその社会問題化が具体的史実をもとに記述されているか
27 足尾銅山と田中正造の反対運動についての記述があるか
28 労働運動の起こりと労働組合の組織化について具体的事例をあげて記述があるか
29 社会主義・民主主義運動に村する弾圧についてふれられているか
30 第一次世界大戦と民族解放運動の関係が世界的規模で関連づけられて記述されているか
31 21カ条の要求と中国民衆の戦いが記述されているか
32 米騒動が生活苦に村する民衆運動として位置づけられて記述されているか。また、被差別部落の人々も民衆とともにたち上がったことや、それに村する為政者の民衆を分断する弾圧にもふれられているか
33 全国水平社の設立の歴史的意義、差別にたいする組織的闘いと日本最初の人権宣言としての意義がどのように記述されているか
34 世界の民主化運動・日本の社会運動の高まりが関連づけて記述され、それに対する弾圧として治安維持法についても記述されているか
35 ファシズムの胎動と日本の軍国主義化が関連づけて記述されているか
36 15年戦争が侵略戦争として位置づけられる内容で明記されているか。特に南京大虐殺についての記述があるか
37 沖縄戦を象徴とする戦時下における民衆の生活について記述されているか
38 日本人による反戦、厭戦運動について記述があるか
39 部落解放運動の再出発について、どのように記述されているか
40 ベトナム戦争と日本の関連について米軍基地と日本の関連について記述があるか
41 ベトナム反戦運動について日本や世界の状況にふれられているか
42 沖縄の本土復帰と復帰の問題点、ならびに反対運動について関連づけて記述されているか
43 人権獲得の歩みにふれて国連(難民条約や子どもの権利条約等)や各国の闘い(アパルトヘイトヘの各国のとりくみ等)について具体的な記述があるか
44 「同対審答申」とその後の課題について記述されているか
45 戦争責任に対する補償の問題が、政府の課題として今なお残されていることが明記されているか
05 [学習指導要領]→考古学などの成果を活用するとともに,神話・伝承などの学習を通して,当時の人々の信仰やものの見方などに気付かせるよう留意すること。
[不合格の事例(大同協のコメント)]→帝国書院:記紀の改作については説明していない。
問題点: 神話は「元来民衆の中にあったアニミズム」を「皇室中心の物語」に「改作」し「天皇支配の根拠づくり」に利用したものだと教科書に書かせることによって、教科書から神話を追放し、神話の持つ豊富な教育的意義を抹殺しようとしている。これでは、指導要領にあるように「神話・伝承などの学習を通して,当時の人々の信仰やものの見方などに気付かせる」ことなど出来はしない。大半の教科書は文科省の検定など無視して、大同協の「裏検定」に従っているが、こんなことでいいのだろうか。
12 [学習指導要領]→記述なし
[合格の事例(大同協のコメント)]→教育出版:『地域から歴史を考える』の『立ち上がるアイヌの人たち』で2ページにわたって「アイヌシモリ」「松前藩の支配」「シャクシャインの戦い」について詳しく記述されている。
問題点: 殆どの教科書で「シャクシャインの戦い」を大きく取り上げている。大同協は被差別部落民の他にもアイヌや琉球、朝鮮人に非常に同情的で、その抵抗の戦いを教科書に書かせようとする傾向が目立つ。しかし、その「裏検定」に安易に従った結果、現行の教科書は「社会的弱者」の「抵抗」のみを過度に強調するものになっているのである。中学歴史教科書としては明らかにバランスを失している。
15 [学習指導要領]→記述なし
[合格の事例(大同協のコメント)]→日本書籍:渋染一揆について、1ページ丸々さいている。差別に苦しめられてきた人々が、差別をなくすために、どのように主張し、行動したのかについて、経過がよくわかるよう詳しく記されている。
問題点:これも大同協の「裏検定」が現行の教科書に影響を与えている、顕著な事例の一つ。「渋染一揆」という聞いたこともないような一揆が全社に登場しているのは異様という他はない。大同協はまだ不満らしく、記述の少ない教科書を叱咤している。
17 [学習指導要領]→「明治維新」については,複雑な国際情勢の中で独立を保ち,近代国家を形成していった政府や人々の努力に気付かせるようにすること。「新政府の諸改革」については,廃藩置県,学制・兵制・税制の改革,身分制度の廃止,領土の画定を扱うこと。
[不合格の事例(大同協のコメント)]→教育出版:法律の上で平等になったと記されているのみである。皇族を華族・士族・平民と並列して書いており、天皇中心の身分制度とは読み取れない。
問題点:大同協の「裏検定」により、教科書の記述は四民平等などは単なる見せ掛けで「天皇中心の身分制度」への新たな再編だったとねじ曲げられつつある。由々しき問題であろう。
23 [学習指導要領]→記述なし
[合格の事例(大同協のコメント)]→教育出版:差別の問題にもふれ「韓国の皇太子と伊藤博文」の写真、「朝鮮総督府」の写真を同時に載せている。・・・『日本名をなのらせ、神社への参拝を強要した。また朝鮮人を強制的に日本に連行して、各地の鉱山や炭鉱などで、ひどい待遇で働かせた』と記述し・・・「歴史を考える」の2ページで、強制連行で福岡の炭鉱で働いた金さん、花岡鉱山での中国から強制連行され、奴隷のような労働を強いられ、その人々が蜂起した事件が具体的に記述されている。
問題点: 教科書に「日本の朝鮮侵略政策の流れ」を「途切れなく記述」させるという大同協のとんでもない「裏検定」によって日本は一方的な悪役にされてしまっている。他の教科書も大同小異で、大同協は一様に評価している。
36 [学習指導要領]→昭和初期から第二次世界大戦の終結までの我が国の政治・外交の動き,中国などアジア諸国との関係,欧米諸国の動きに着目させて,経済の混乱と社会問題の発生,軍部の台頭から戦争までの経過を理解させるとともに,戦時下の国民の生活に着目させる。
[合格の事例(大同協のコメント)]→全社:全社とも15年戦争について、東アジア及び東南アジアに対する侵略戦争と位置づけている。
問題点: 大東亜戦争については全社とも「侵略戦争」と位置づけていることを一様に評価しているが、大同協の「裏検定」に対する教科書会社の全面屈服と言えよう。
45 [学習指導要領]→記述なし
[合格の事例(大同協のコメント)]→東京書籍:・・・戦争を考えるというコラムを設けて、強制連行に対する日本政府の補償と謝罪を求める裁判をおこした韓国の人々の写真や戦後50年にあたっての当時の村山首相の談話を資料として掲載している。
大阪書籍:・・・コラムページを設けて日本軍に徴兵された中国人兵士や戦後補償を求めて行動する韓国の元従軍慰安婦たちの写真資料を掲載している。
問題点:日本政府はこの問題は既に決着済みとの認識である。にも拘わらず、教科書で殊更に未解決と主張させるのは政治的プロパガンダ以外の何物でもない。この大同協の政治宣伝に完全に乗せられているのが、教育出版、東京書籍、大阪書籍の3社である。