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ウソかホントか韓国の奴隷物語--「天上天下唯我独尊」---『Younghee Ahn の韓国レポート』から
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投稿者 ミスター第二分類 日時 2006 年 5 月 07 日 23:39:09: syFUAx3Wc1pTw
 

「天上天下唯我独尊」


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■ 『Younghee Ahn の韓国レポート』               第181回
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「天上天下唯我独尊」

 今年の五月五日は、子どもの日であり、お釈迦様の誕生日である。
お釈迦様は、生まれるとすぐ四方に七歩ずつあるいた後、「天上天下唯我独尊」と発したそうだ。私たちは生まれながらにしてとても尊い存在であることを指すのだと言う。

 韓国は今でこそキリスト信者が50%の国になってしまったが、373年に仏教が伝来して以来15世紀末までは仏教国家であった。今でも、仏教信者は1千万人を超えると言われ、お釈迦様の誕生日は大々的に祝う国民の祝日でもある。

 毎年今頃になると、ソウル市庁前には仏教と関連する何かが建てられ、街のあちこちには色とりどりの蓮灯が飾られて美しい。振替休日などない韓国では、今年の「お釈迦様の誕生日」は「子どもの日」と重なってしまい、残念がるサラリーマンも多いことだろう。しかし、日本のような連休ではないにしろ、韓国でもこのあたりの週を「黄金の連休」と呼んでいる。

 このように平和な五月を向かえた韓国に、五月二日、あるショッキングな番組が放送された。
 なんと、50年間も奴隷生活を強要された老人がいたというのだ。
 その番組は、SBS局の「緊急出動SOS」という番組で、毎週虐待されている人たちを救助するといった趣旨の番組である。毎日のように暴力を振るう夫や子どもを虐待する親などを直接取材し、かれらを救出しているという。えげつない場面が「観たくないようで観たい心」を刺激させるのか、かなりの高視聴率をほこる番組だ。

 五月三日、筆者が気持ちよく朝起きて、ネット検索に入った頃、前日の番組オンエアを観た人たちの反応が熱かった。それにしても現代のように利己主義がはびこる世の中で、50年も奴隷生活をしてきた人はどんなものだろうと、野次馬根性むき出しで番組のHPに入ってみた。その番組はなぜか基本的にVODサービスをしないらしいが、五月二日オンエアした分に関しては無料でVODサービスをすると書いてあった。
 ネットでの関心と同じ様に口コミで聞いた人たちがどんな内容なのか知りたいとわめき散らしたのに違いない。

 この番組は、情報提供者がネットなどを通じて知らせてきたものを扱うらしい。
 まずは確証を取るために現場に出向いて隠しカメラで撮る。
 その老人は71歳で、腰が曲がっているにもかかわらず、ご主人と言われる男から指示されるとおりに畑の仕事をしていた。トラクターも使わず、鍬で畑を耕していた。
 数日観察してみた結果、老人は奴隷のように働かされ、食事もあまり与えられずゴミ箱を漁っていた。寝床も汚いゴミためのような場所で、寒々した場所であった。

 老人からご主人と言われる男は、先代から老人を受け継いで彼を養ってあげているとのことだった。取材者が笑いながら「労働の対価は何もないんですか」と聞くと、「そんなもん、一日に2−3時間働くだけだもの、いらねえよ。それより、寝泊りと食事とたばこなんか無限に俺が提供してるんだから」と答えた。男は堂々としていた。

 奴隷のようにこき使われている老人はびくびくしながらご主人の様子を伺うようだった。

 老人の寝床のすぐそばには、丁寧に整えられた植木や芝生のきれいな御殿があった。

そこがご主人様の家だった。彼の家は先祖代々その地域の地主で、今でもご主人は徳のある人として通っているらしかった。また、日本でもそうであろうが、地方では村中が親戚関係にある。だから、老人が可愛そうだと感じてもそれを咎めることができない。

 韓国では、基礎生活対象者になると政府から支援金が出る。
 老人もその対象になっており、月々政府から支給されていたが、その通帳を管理していたのは、ご主人だった。
 そして、取材者に問い詰められ持ってきた通帳には20年間で1300万ウォン(約160万円)が入っているはずなのに約5万ウォンしか残ってなかった。それを見せながら、彼らは烈火のごとく怒りながら、自分たちのような善人にこんなイチャモンをつけたりせず、もっとひどいところへ行って取材したらどうだ、と言った。

 結局、救助するのが目的であるその番組のスタッフは老人を彼らから隔離し、病院での検査を済ませ、家族を探し、老人ホームに入居させた。家族は、現在男を告訴したという。しかし、男は実刑を受けずに出てくる可能性も強いと言う。なぜなら、農業には勤労基準法が適用されにくいことや彼への虐待が長期に渡っているため、病院でそれを証明することが難しいからだという。

 昨日、筆者はVODサービスを見ながら泣いた。
 老人の奴隷生活を見ていた場面ではなく、老人がご主人から隔離され、家族に出会い、そして窓の外を見ながら一人で歌う「故郷の春」という歌を聞いている時だった。

 老人にはやっと春が来たのだ、遅い春ではあるが。

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Younghee Ahn(アン・ヨンヒ)
韓国生まれの韓国人。小学4年から高校1年まで、大阪在住。韓国外国語大学同時通
訳大学院日本語修士課程卒業。同時通訳からスタートして、現在は会議通訳、及び、
韓国梨花女子大で、日本語の講師も務める。著書に『シナブロ(知らぬ間に少しずつ
)』(小学館)

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