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「『(書籍)ウルトラ・ダラー』に関する北朝鮮からのシグナル」----(MouRaから)
http://www.asyura2.com/0601/asia4/msg/582.html
投稿者 ミスター第二分類 日時 2006 年 5 月 16 日 14:48:44: syFUAx3Wc1pTw
 

出典 http://web.chokugen.jp/sato/2006/05/post_1e2d.html

 書籍「ガリバー旅行記」は実は政治書で童話の形をとり当時のイギリス社会を批判したと言う話がありますが、書籍「ウルトラ・ダラー」はそれに当たるとの話が掲載されており興味深いので掲載します。

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2006.05.10

第6回「『ウルトラ・ダラー』に関する北朝鮮からのシグナル」

 「事実は小説より奇なり」と言うが、インテリジェンスの世界では、小説の方が事実をよりリアルに表す場合がある。
 例えば、1963年にイギリス秘密情報局(SIS、いわゆるMI6)幹部のキム・フィルビーがソ連に亡命した。

 この事件が西側陣営に与えた影響は計り知れない。
 本件については、数多くのノンフィクションが書かれたが、そのどれよりもイギリスのカトリック作家グレアム・グリーンが書いた小説『ヒューマン・ファクター』(ハヤカワ文庫)の方が真相を知る上で有益だ。諜報機関員はほぼ例外なくこの小説を読んでいる。

 さて、日本でも、最近公刊された一冊の小説がインテリジェンスの世界に激震を与えている。

 NHK前ワシントン支局長の手嶋龍一氏の『ウルトラ・ダラー』(新潮社)だ。
 奥付によると3月1日の発行だが、2ヵ月強で既に20万部を超えるベストセラーだ。

 本書について、筆者は『文藝春秋』5月号で書評しているので、ここでその内容を繰り返すことは避けるが、北朝鮮が精巧なニセドル「ウルトラ・ダラー」を製造し、それでウクライナからミサイルを買い付けるという筋立てだ。

 そこに拉致問題や日朝国交正常化交渉を巡るごく限られた関係者しか知らないはずの秘密が上手にちりばめられている。

 手嶋氏がインテリジェンスの国際的ネットワークから、重要な秘密情報を提供されていることは間違いないと筆者は睨んでいる。

 筆者は、本書が刊行されてから3ヶ月くらい経ったところで北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)から反応が出ると予測していたが、思ったよりも早く、それも意外な形でシグナルが送られてきた。

 それを読み解いてみたい。
 実は、一般にはあまり知られていないが、北朝鮮政府の事実上の公式ウェブサイト「ネナラ・朝鮮民主主義人民共和国」を用いて、北朝鮮はシグナルを送ることが多い。

「ネナラ」とは、朝鮮語で「わが国」という意味で、このサイトは朝鮮語、英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語、中国語、日本語、アラビア語の9ヵ国語で運営されている。

 その内、筆者が理解する日本語、朝鮮語、英語、ドイツ語、ロシア語の内容を比較してみると、発信する情報の内容がかなり異なっている。

 情報操作のプロが各国別にシグナルを送っているからだ。

 4月19日付で「ネナラ」日本語版に北朝鮮人民保安省スポークスマンの談話が掲載された。人民保安省は、日本語で人民保衛部と表記されることが多いが、北朝鮮の秘密警察(インテリジェンス機関)だ。

 北朝鮮の普通の警察は社会安全省で、普通の警察官を社会安全員というが、この警察でも国際水準では秘密警察くらい怖い。

 2002年9月17日に平壌で金正日総書記が小泉純一郎総理に対して日本人拉致について認めたが、それに関与した「特殊な機関」こそが人民保安省なのだ。

 秘密警察はその姿を表に出さないから秘密警察なのであるが、最近、今年に入って「ネナラ」で今回を含め、人民保安省スポークスマンの声明が2回掲載されている。1回目は、北朝鮮人を拉致した日本人に対する引き渡し要求(3月27日)で、今回は麻薬、偽造紙幣などを用いた日本、アメリカの謀略に対する弾劾が内容だ。

 少し長いが全文を正確に引用しておく。

〈最近、米国、日本をはじめ反共和国敵対勢力は、「人権」や「麻薬」、「偽造紙幣」などを盾に取ってわが共和国に「犯罪国家」、「無法国家」のレッテルを貼るための宣伝謀略攻勢をエスカレートさせている。
 いま彼らは、あらゆる卑劣で汚い手口を用いて、「物証」および「反証資料」を捏造することに狂奔している。
 わが人民保安機関が入手した情報や資料によると、こうした捏造策動の裏には米国、日本の情報・謀略機関と南朝鮮の極右保守勢力があり、彼らがこのような反共和国謀略活動を直接立案して組織し、その実行をも担当していることが明らかになっている。
 米中央情報局と日本の情報・謀略機関は、われわれの「人権の実態」や「麻薬および偽造紙幣」に関する写真や動画を専門に収集する組織までつくり、反共和国映像「資料」の捏造に狂奔しており、これに巨額の資金をつぎこんでいる。
 これらの謀略機関は、「資料の出所」に「信憑性」を持たせるため、第三国や南朝鮮の米軍基地内に「仮設舞台」をつくり、コンピュータ画像処理技術まで利用して反共和国映像「資料」を大々的に演出、捏造しており、こうして作り上げた「資料」を米国と日本、南朝鮮のメディアに売り渡すよう、陰で糸を引いている。
 米国と日本のメディアもそれなりに、このような動画や写真をさらに精巧に手直しして報道している。
 このような「資料」のメディア公開やインターネットサイトを利用した伝播・流布を通じて、米国は各国がわが共和国を陥れるのに協力、合流するようあおり立てており、日本はそれなりに自国民に反共和国対決意識と極右の気運を鼓吹している。
 南朝鮮の「ハンナラ党」をはじめ右翼保守勢力も、時節到来とばかりに北南関係の進展をはばみ、再執権の野望を遂げるためにこの「資料」を大いに利用している。
 米中央情報局と日本の情報・謀略機関は、われわれを陥れる「資料」をいくら捏造しても米国、日本、南朝鮮、ヨーロッパではその真偽を確かめるのが困難であり、たとえ後日、「資料」が偽りであることが露呈するとしても、朝鮮に対する悪宣伝はすでに広まっているだろうから損することはなく、その時には訴訟を起こす者もなく、制裁を受ける心配もない、と公言している。
 結局、米中央情報局によって捏造された「資料」はなんらの制限も受けることなく、国連の人権舞台で反共和国「人権決議」を強行採択し、米国で「対北人権攻勢」と経済制裁を加えるうえで、決定的な根拠として利用された。
 先日、わが国の北部国境地域のある都市に潜入し、ありもしない「麻薬製造工場」を撮影してくるようにとの任務を遂行中に摘発、逮捕された外国人犯罪者の陳述によると、敵は「朝鮮を『麻薬国家』に仕立て上げようとしても明白な証拠がない。もっともらしい証拠を作り上げさえすれば金はいくらでも出す」、「以前、ある者は他国のある農村の実験室のようなものを撮ってきては、あたかも朝鮮で撮ってきたかのように嘘をつき、代価を要求した。少しでも似ていれば、手を加えて編集してでも資料を作り上げる」、「どうしても駄目なら、どこそこにある製薬工場でも撮ってこい。そうすれば編集してインターネット網に入れる」として、巨額の報酬を約束したとのことである。
 米中央情報局がわが共和国を「偽造紙幣生産国」に仕立て上げるため、「世界最高の水準」にあるとされる偽造紙幣の専門家をひそかに抱き込み、世界各地の米軍基地に入れて、そこに設けた「北朝鮮式偽造紙幣工場」で大量の偽造紙幣をつくらせた後、商業取引の形でそれをわが国に送り込み、再びそれが流れ出るようにしているという資料も入手されている。
 米国と日本の情報・謀略機関のこうした不法行為は、初歩的な国際法も無視した破廉恥な行為、神聖なわが共和国の主権に対する重大な侵害であり、絶対に許すことができない。 諸般の事実は、米国が、あたかもわが共和国政府が犯罪を奨励し、はては国際的な組織犯罪集団とつながりのある「犯罪国家」であるかのように喧伝し、国際法と米国の国内法施行の問題を盾に取ってわが国に対する金融制裁、経済制裁の圧迫をエスカレートさせている裏には、本質上「体制抹殺」、「国家転覆」をねらう不純な政治的目的が潜んでいることをいま一度明確に示している。
 敵対勢力がわが共和国を陥れるために繰り広げている悪辣な宣伝謀略攻勢に関連して、われわれにも該当の法にもとづき、それに強く対処する権利がある。 国家安全の銃剣を固く握りしめ、われわれの生命であり生活である社会主義制度を法的に固守すべき使命を帯びているわが人民保安機関は、共和国に抗する敵の情報・謀略機関のあらゆる卑劣な陰謀と謀略策動を高度の警戒心をもって注視しており、どんな形であろうと、それに加担する行為はわが国家の主権と安全を侵した犯罪とみなし、徹底的に計算するであろう。2006年4月19日 平壌〉


 人民保安省によれば、「ウルトラ・ダラー」は、米CIAが世界最高水準の偽造紙幣専門家を抱き込み、世界各国の米軍基地でニセ札を印刷し、北朝鮮に持ち込み、あたかも北朝鮮が犯罪国家であるとの印象を世界に植え付けようとする謀略工作なのである。

 もちろん、このような説明を信じる者は、北朝鮮人民保安省高官を含め、一人もいないであろう。ここで筆者が注目する内容は2点だ。

 第一は、この声明が朝鮮外務省ではなく人民保安省から出ていることだ。北朝鮮でも外交は外務省が窓口になることが原則だ。
 しかし、麻薬、ニセ札などの問題については人民保安省が管轄しているので、外務省を窓口としても無駄だというシグナルを流している。

 第二は、麻薬問題、偽造紙幣問題に関し、日本やアメリカが現在展開している情報戦の目的が「わが共和国政府が犯罪を奨励し、はては国際的な組織犯罪集団とつながりのある『犯罪国家』であるかのように喧伝し、国際法と米国の国内法施行の問題を盾に取ってわが国に対する金融制裁、経済制裁の圧迫をエスカレートさせている裏には、本質上『体制抹殺』、『国家転覆』をねらう不純な政治的目的が潜んでいることをいま一度明確に示している」との認識を北朝鮮政府が表明していることだ。

 北朝鮮外交は「求愛を恫喝で示す」という独自の文化をもっている。

 今回の人民保安省の強硬な声明を平たい言葉に訳せば、「あなたたちの戦略が北朝鮮の体制転覆にあることはわかっている。それは勘弁してほしいので、早く話し合いをしたい」ということだ。

 このような北朝鮮の「求愛を恫喝で示す」という論理を日本外務省のインテリジェンスのプロが一般国民に理解可能な言語に翻訳することが重要であるが、どうもそれが不十分なようだ。

 外務省のインテリジェンス部局である国際情報統括官組織は、潤沢な報償費(機密費)を用いて外国政府関係者や日本人情報提供者との会食を楽しんでいるようだが(因みに、老婆心ながらレストランを予約するときは痕跡がつかないようにもう少し注意した方がよい。

 筆者に誰と誰が会ったという情報が入ってくるようでは、北朝鮮が本気になれば国際情報統括官組織の北朝鮮関係の人脈はすべて把握されてしまう)、もう少し公開情報の読み込みに力を入れた方が予算の節約にもなるし、国益に貢献する。


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