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マスコミ報道の問題とネット上の情報操作の実例--インターネット評論の危うさ--(21世紀中国総研)
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投稿者 ミスター第二分類 日時 2006 年 5 月 22 日 01:03:04: syFUAx3Wc1pTw
 

マスコミ報道の問題とネット上の情報操作についての実例--インターネット評論の危うさ--中国アジア局長の日本メディア批判発言をめぐって

出典
http://www.21ccs.jp/china_watching/NewspaperCritique_TAKAI/Newspaper_critique_13.html

 少々古いものですが、日中間の「報道」の中身を詳細に解説した記事が「21世紀中国総合研究」に掲載されていたので転載いたします。
 日頃、「マスコミの報道は当てにならない」とおっしゃっている皆様も情報を「操作」している「ブルジョワジーの手下の工作員」の危険性を認識なされるようお願い申し上げます・・・・・・・

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インターネット評論の危うさ
――中国アジア局長の日本メディア批判発言をめぐって

 共同通信によると、中国外務省の崔天凱アジア局長は1月9日、北京で開かれた日中政府間協議で「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかり書いている。日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」と述べ、日本側に中国報道についての規制を強く求めた。

 この発言は、日本のインターネット上で、様々な批判的論議を巻き起こした。

 もちろん、この発言が、日本と中国の政治体制の違い、メディア政策の違いをわきまえない不用意な発言であることはいうまでもない。
 もし事実としたら、全くの内政干渉発言といえよう。
 ただ、この発言をめぐる日本のネット上の議論も事実を踏まえない、ひとりよがりな議論も目立つ。
 筆者はあまりこうしたネット上の議論に慣れていない。
 たまたま局長の発言を調べるためネット検索してみたら、議論があまりにもあらぬ方向に展開してしまっているので、たいへん驚いた。
 ネット評論の危うさを感じた。


1、なぜ日本の記者は怒らないかという怒り

 アジア局長の発言をめぐるネット上の議論に首を突っ込むことになったのは、筆者が理事長を務める日中コミュニケーション研究会(JCC)のメーリングリストにある会員が、この発言を取り上げ、日中双方の会員の間で、議論が盛り上がったためだ。
 そのうち、会員から、特派員の経験のある理事長もその見解を明らかにすべきだという“挑発的な”書き込みも出てきた。
 そこで私はJCCのHPに設置している掲示板に、以下のような意見を書き込んだ。


 「日本政府ももっとマスコミを指導すべきだ」という発言は、アジア局長の個人的な意見ではなく、中国側の指導者たちの基本的認識でしょう。
 お話になりません。どなたかがおっしゃっていたように焦りではないでしょうか。

 第1に、私がいうまでもなく、日中のメディアの性格が全く違います。
 それを混同しています。
 中国政府は努力しているのに、日本政府は努力していないなどというのはお門違いですね。
 中国政府はメディアを管理する、指導するという体制をとっているけれども、日本はそうではないわけですから。
 それに指導しろって、どこの役所がやるんでしょう。
 警察にやれということなんでしょうか。これこそ内政干渉ですね。

 第2に、「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかりなぜ書くのか」というのはあまりにも乱暴でしょう。
 日本のマスコミの中にも、いろんな報道があり、まじめに仕事をしている記者を敵に回します。
 こんな乱暴な議論はケ小平のような指導者はしませんでしたね。

 第3に、ブッシュ政権のようなメディア操作を言っているなどという意見もありましたが、メディア操作をやっていますなんて政府はどこもないわけで、小泉政権だって当然やっているし、中国はいうまでもなく、直接的に指導しているわけですね。
 そういうことからいえば、そもそも両国の政府に対立点があり、それを多くのマスコミが反映し、さらに一部のマスコミが増長させているわけで、マスコミを批判する前に、政府間がしっかりした議論をすることが先でしょう。

 第4に、もし日本のメディアにもっと中国をよく書いてもらいたいというなら、きちんとした情報公開をすべきです。
 情報閉鎖では、とてもよい広報はできません。情報操作もできません。


 しかし、JCCの会員の中には、アジア局長の発言だけでなく、日本のメディアの対応にも不満が高まっていた。こんな書き込みもある。

 「何をやっていたのでしょう?」と、いう意見が、このニュースを読んだ一部の人から挙がってきました。
 まったくそのとおり。日本経済新聞・産経新聞の記事を改めて読んでみると・・「こういう記者会見がありました」という報告から始まり、「これについて云々」と、分析じみた内容を記事にしているにすぎません。
 「こう言われました。その場でこんなことを記者が質問すると・・」のように、突っ込んだ質問をその場で行った媒体はなかったのでしょうか。
 突っ込んだ質問をすると、Jビザを取り上げられるのでしょうか。
 記者会見の場で質問の自由がないのか、単に質問する間もなくこの話題は終わってしまったのか・・いずれにしても、日本のメディアにある「報道の自由」はこの国では通用しない、そんな気がしなくもない記事では、中国同様報道の信憑性を疑わずにはいられません。

2、想像で物を言ってはいけません。


 この書き込みを読んで、少し戸惑った。

ここに書いてあることのほとんどは思い込みと推論で、コメントばかりが先行しているからだ。

そもそも記事を誤解して読んでいる。
アジア局長が記者の前で発言し、それを記者が何の疑問も差し挟まず、記事にしたと思い込んでいるのだ。
外交交渉の一つである高官協議に新聞記者が同席するはずはなく、これは明らかに協議の後、日本側のブリーフィングを聞いて書いたものと想像できる。

さらに、「突っ込んだ質問をすると、ビザを取りあげられる」というのも、すごい想像力である。

その上で報道の自由もない、信憑性を疑うとまで発展してしまう。
 実際、調べてみると、冒頭の記事は、高官協議の後、日本側出席者によるブリーフィングを受けて書いたものだった。

また10日にも、中国外務省の定例記者会見があり、朝日新聞の報道などは「孔泉報道局長は10日の定例会見で『日本の一部メディアは中日関係の報道で、遺憾な方法をとることがある』と述べ、昨年の日中首脳会談など具体的な例を挙げて批判した。
中国政府が、日本のメディアの具体的な報道内容について言及し、注文をつけるのは異例だ」と報じている。

こういう報道があると、またネット上では「日本のメディアは言われっぱなし」という批判であふれる。

 しかし、元特派員の私は、こんな発言を外務省の報道局長が自らするはずがないと思い、会見のやり取りを調べてみた。
定例会見では、要人の往来などの日程を、スポークマンの方から発表するが、その他の問題は記者が質問し、答える。

日本のメディアどうのこうのなど自ら口にすることはない。

こんなあてつけがましい発言を自らしないのだ。
当初は以前、務めていた新聞社の後輩特派員に問い合わせようかと思ったが、これは中国外務省のHPに出ているのではないかと思い直し、アクセスしてみた。
いとも簡単にみつかった。なんとも便利な時代になったものだ。

 http://www.fmprc.gov.cn/chn/xwfw/fyrth/1032/t230353.htm

 (この部分中国語の文書なので省略)


 やはり日本人記者からの質問に答える形で、孔泉局長が語ったのである。
しかも、日本人記者は「日本のメディアが中国のマイナス情報ばかりを報道している。日本政府は指導すべきがと発言したのは事実かどうか。もし事実としたら、個人の見方か、外務省の公式見解か、これは日本の内政に干渉した疑いがあるのではないか」とまで聞いている。
「言われっぱなし」ではない。

 これに対して、実は報道局長は強硬どころか、「中国高官の発言の引用は正しくない。中国に駐在する記者は全面的な(プラスもマイナスも)報道をしている。善隣友好関係に積極的に報道している。しかし、中日間に問題が発生した時に、一部のメディアが、遺憾な方法を取る場合がある」と、防戦一方である。

 日本の新聞は事実報道を好むので、自身を当事者にして報道しない。

したがって、日本人記者の質問を書かないで、いきなり、報道局長の発言から入る。
このことがかえって誤解を増してしまったのである。

3、事実関係を確認しないネット評論

 それにしてもなぜ中国に駐在する日本特派員にこれほどの不信が高まるのか。
筆者アジア局長の発言などをネットで調べてみてわかった。

ネット上には意図的に情報を捻じ曲げ、感情的対立を煽る輩が跋扈しているのだ。

例えばアジア局長の発言報道をこうコメントしているブログ(?)があった。


 恐らく中国外務省は実際にはこのように言ったんだと思う
    ↓
「日本のマスコミは中国のマイナス面ばかり書いている。日中記者交換協定に基づき日本政府はもっとマスコミを指導すべきだ」

はてなダイアリー - 日中記者交換協定とは
 正式名を「日中双方の新聞記者交換に関するメモ」と言い、当時、中日友好協会会長であった廖承志氏と自民党の松村憲三衆院議員らとの間で1964年に交わされた協定。

 1. 中国を敵視しない。
 2. 二つの中国を造る陰謀(=台湾独立)に加わらない。
 3. 日中国交正常化を妨げない。

の三点を守れないマスコミは、中国から記者を追放するとしたもの。

 これにより、日本の新聞は中国に関して自由な報道が大きく規制されることになった。
 当初、朝日新聞・毎日新聞・読売新聞・産経新聞・日経新聞・共同通信・西日本新聞・NHK・東京放送(TBS)の九社に北京への記者常駐が認められたが、「反中国的な報道をしない」という協定が含まれているために、国外追放される報道機関が相次いだ(何があっても親中的な報道を続けた朝日新聞だけは大丈夫だったようである)。

 また、これは本来新聞のみを対象としたものであったが、その後の新聞とテレビとの資本交換による系列化の強化で、事実上テレビに関しても適用されることになった。
 
 上海総領事館員が中国の工作活動により自殺に追い込まれた事件が発覚して以降、やたらパンダがどうたらとか中国のホンワカムード満開の報道が目に付くのも、「中国を敵視させない」ための巧妙な情報操作そのものだろう。

 日本における中国に関する報道の殆どは、日中記者交換協定を盾に日本のマスコミを服従させた中国政府によるプロパガンダと言っても過言では無い。その呪縛がやっと解け始めたのは喜ばしい限りだ。

 まあ推論だらけのでたらめな評論である。

 40年以上前に交わされた記者交換協定なるものに日本の特派員が縛られていると勝手に思い込んでいる。
 現在の日本人特派員でこの協定を知っている人がどれほどいるだろうか。
 私自身見たこともないし、実際、そのメモなるものを、東大の田中明彦研究室のデータベースでやっと見つけたが、「中国を敵視しない」といった条項はどこにも含まれていない。
 ましてや「三点を守れないマスコミは、中国から記者を追放する」なんてしばりもない。

(資料1)
 http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/JPCH/19640418.O1J.html


 大体、国交正常化前のこんな協定にどんな意味があるのか。

 いまや平和友好協力条約が締結され、敵視するもしないもないだろう。
 全く時代背景も考えない短絡的な発想である。
 ところが驚いたことに「日中記者交換協定」をキーワードにネット検索をかけると、出るわ出るわ、このでたらめな「はてなダイアリー」を基にした、中国と日本のマスコミに対する罵詈雑言の山である。

 協定で日本のマスコミが服従しているのなら、アジア局長がわざわざ冒頭のような発言をすることもないだろう。

 インターネットは非常に便利でもあるし、マスコミと違って、利用者の側も大いに発信できるというメリットもある。
 しかし、ネット上にあふれる情報を疑わず、実情と検証してみるといった作業を怠ると、とんでもない暴論をはびこらせることになる。
 暴論の側は、意図的にやっているから、なかなか自ら退出することもない。
 日中関係だけでなく、ネットは厄介な存在となりつつあると思う。


資料1
[文書名] 連絡事務所の設置および新聞記者交換に関する高碕達之助,廖承志両事務所の会談メモ
[場所]
[年月日] 1964年4月18日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),498−500頁.「増補改訂 日中関係資料集(一九七一年刊),239−40頁.
[備考]
[全文]
連絡事務所の相互設置ならびに代表の相互派遣に関する高碕達之助事務所と廖承志事務所の会談メモ
 一九六四年四月十四日から十八日まで廖承志事務所と高碕達之助事務所は代表の相互派遣と連絡事務所の相互設置の件について会談を行なった。会談には中国側から孫平化,王暁雲の両氏が参加し,日本側から竹山祐太郎,岡崎嘉平太,古井喜実,大久保任晴の諸氏が参加した。
 双方は次の諸問題について取り決めを行なった。
一,廖承志事務所が日本駐在のために派遣した代表の事務機構は廖承志事務所東京駐在連絡事務所と称する。高碕事務所が中国駐在のために派遣した代表の事務機構は高碕事務所北京駐在連絡事務所と称する。
二,双方が連絡事務所に派遣する人員は暫定的に代表三人,随員二人の計五人とし,しごとの必要によって双方の話し合いと同意を経て増員することができる。
三,双方の人選について中国側は廖承志事務所が責任をもって決定し,日本側は高碕事務所が責任をもって決定する。
四,双方代表の一回の滞在期間は一年以内と定める。
五,双方は相手側人員の安全を責任をもって守る。
六,双方の代表と随員は六月上旬までに相手国に到着することを定める。双方はまた責任をもって相手側人員の入国手続きをとる。
七,本会談メモは中国文と日本文によって作成され,両国文は同等の効力をもつものとする。廖承志事務所と高碕事務所は中国文と日本文の本会談メモを一部ずつ保存する。
 
日中双方の新聞記者交換に関する高碕達之助事務所と廖承志事務所の会談メモ
 一九六四年四月十四日より十八日まで廖承志事務所は日中双方の新聞記者の交換問題について会談を行なった。会談には,中国側から孫平化,王暁雲の諸氏が参加し,日本側から竹山・太郎,岡崎嘉平太,古井喜実,大久保任晴の諸氏が参加した。双方は次の取り決めを行なった。
一,廖承志氏と松村謙三氏との会談の結果にもとづき,日中双方は新聞記者の交換を決定した。
二,記者交換に関する具体的な事務は,入国手続きを含めて廖承志事務所と高碕事務所を窓口として連絡し,処理する。
三,交換する新聞記者の人数は,それぞれ八人以内とし,一新聞社または通信社,放送局,テレビ局につき,一人の記者を派遣することを原則とする。必要な場合,双方は,各自の状況にもとづき,八人のわくの中で適切な訂正を加えることができる。
四,第一回の新聞記者の派遣は,一九六四年六月末に実現することをめどとする。
五,双方は,同時に新聞記者を交換する。
六,双方の新聞記者の相手国における一回の滞在期間は,一年以内とする。
七,双方は,相手方新聞記者の安全を保護するものとする。
八,双方は,相手側新聞記者の取材活動に便宜を与えるものとする。
九,双方の記者は駐在国の外国新聞記者に対する管理規定を順守するとともに,駐在国が外国新聞記者に与えるのと同じ待遇を受けるものとする。
十,双方は,相手側新聞記者の通信の自由を保障する。
十一,双方が本取り決めを実施する中で問題に出あった場合,廖承志事務所と高碕事務所が話し合いによって解決する。
十二,本会談メモは,中国文と日本文によって作成され,両国文は同等の効力をもつものとする。廖承志事務所と高碕事務所は,それぞれ中国文と日本文の本会談メモを一部ずつ保有する。

 
付属文書
 かねて周首相と松村氏との間に意見一致をみた両国友好親善にかんする基本五原則,すなわち両国は政治の体制を異にするけれども互いに相手の立ち場を尊重して,相侵さないという原則を松村・廖承志会談において確認し,この原則のもとに記者交換を行なうものである

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