★阿修羅♪ > アジア4 > 751.html
 ★阿修羅♪
隠されたヒバクシャ (マーシャル諸島共和国)
http://www.asyura2.com/0601/asia4/msg/751.html
投稿者 Kotetu 日時 2006 年 5 月 28 日 17:37:51: 7m23/iYy5J8l2
 

 
▼▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽(転載開始)▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▼
[AML 7368] 軍隊のない国家7−−マーシャル諸島共和国
前田 朗 maeda at zokei.ac.jp
2006年 5月 28日 (日) 13:42:38 JST
--------------------------------------------------------------------------------

前田 朗です。

5月28日

日本民主法律家協会の機関誌「法と民主主義」5月号に軍隊のない国家7を掲載
してもらいました。

http://www.jdla.jp/houmin/index.html

メインの特集は「どう変わる?刑事裁判」と「座談会・私たちの改憲阻止運動」
です。

前田 朗「軍隊のない国家7―― マーシャル諸島共和国」法と民主主義408号
(2006年5月)

<目次>

一 ビキニ事件半世紀

二 太平世の真珠

三 隠されたヒバクシャ

一部をご紹介します。

* ******************************

三 隠されたヒバクシャ

 第五福竜丸や近海で操業していた多くの漁船が被曝していたのであるから、ミ
クロネシアに暮らす人々が被曝していないはずがない。

イギリスの女性ジャーナリストであるジェーン・ディブリンは、ミクロネシアの
島々に住む島民の太平洋戦争後の四〇数年の体験を描いた。日本の支配から米国
統治に置きかわってまもなく、諸島民は「疑似核戦争」の恐怖の中での生活を余
儀なくされた。広島原爆の一〇〇〇倍もの破壊力をもつビキニ島の水爆など、実
に六六回もの核実験が行われ、弾道ミサイルやスターウォーズ計画の実験地にさ
れた。アメリカの世界軍事戦略の犠牲となった島民の苦難の歴史と抗議の声を世
に明らかにしたドキュメンタリーは衝撃を与えた(7)。

 被曝だけではない。アメリカは、一九四六年一月にビキニ環礁を「クロスロー
ド作戦」実験地に選定し、三月、住民をロンゲリック環礁に移住させた。同年五
月には、エニウェトク環礁住民をクワジャレイン環礁のメック島に避難させ、ロ
ンゲラップ環礁とウォト環礁の住民をラエ環礁に移住させた。四七年一二月には
エニウェトク環礁を実験地とし、住民をウジェラング環礁に移住させた。四八年
一月には、クワジャレインの米軍基地労働者のマーシャル人をイバイ島に移住さ
せた。同年三月、ロンゲリックで飢餓状態に陥っていたビキニ住民はクワジャレ
イン基地に収容されたが、一一月にはラグーンのないキリ島に移住させられた。

 核実験のために、マーシャル諸島住民は伝統的な生活を奪われ、食糧確保も十
分できない土地に追いやられたり、たらいまわしされていった。

 核実験終了後も、苦難の日々が続く。故郷が放射能汚染されていたため、島の
生活と環境は破壊され、癌、甲状腺障害、異常出産などの病気が頻発する。

 冷戦下での核軍拡競争に励むアメリカ政府にとっても、その「核の傘」に安住
しようとする日本政府にとっても、第五福竜丸やその他の漁船の被曝問題も、ミ
クロネシアの人々の被曝問題も隠蔽することが利益であり、国策とされた。後に
フランスが仏領ポリネシアで全く同じ政策をとることになる。まさに「核の植民
地」である。

 ディブリンや豊崎博光が見事に描き出し、世界に向けて告発したマーシャルに
おける核の犯罪とその結果を、「グローバルヒバクシャ研究会」の若き研究者グ
ループもまた徹底調査し、厳しく問い直す試みを続けている(9)。

 高橋博子「第五福竜丸被災とアメリカ政府の対応」は、アメリカの近年の公開
文書をもとに、ビキニ実験以前に、米上下両院合同原子力委員会が住民避難を求
めていたのに、避難させずに実験が行われていたこと、住民が高レベルの放射線
に被曝した事実を把握しながら「若干の被曝」と虚偽発表をしていたこと、第五
福竜丸の乗組員についてCIAに極秘調査を依頼していたこと、アリソン大使は
補償金を支払うことを提案していたが見舞金で決着が図られた経緯、久保山愛吉
を水爆の犠牲者と認めずマグロ調査を打ち切っていった経緯などを解明し、潜在
的なヒバクシャが放置されていると指摘している。

 竹峰誠一郎「塗り変えられる被災地図」は、ビキニ水爆被災は、今まで考えら
れてきたロンゲラップ環礁やウトリック環礁にはとどまらないこと、つまりマー
シャル諸島には他にも見捨てられたヒバクシャがいることを調査している。具体
的には、これまで放射性降下物の降灰地図には含まれていなかったアイルック環
礁(爆心地から五二五キロ)での聞き取り調査やアメリカ公文書をもとに、放射
性降下物のあったこと、アメリカは当時からその事実を把握して調査していたこ
と、そればかりかロンゲラップと同様に避難計画が検討されていたのに、実施さ
れなかったことを明らかにし、「現地の住民が『置き去りにされたネズミ』のご
とく、意図的にヒバクさせられたとの疑い」について検討している。アイルック
住民の間には異常出産、先天性障害、コブ、癌・甲状腺異常が確認されている。
二〇〇四年三月一日、マジュロの国会議事堂前で被災を思い起こす「ニュークリ
ア・サバイバーズ・リメンブランスデー」が開催され、参加者は正当な償いを要
求している。被災者のプラカードには次のように書かれていたという。

 「アイルック 無視された五〇年間」

 「アメリカよ なぜ知らないふりをする」

 アメリカとマーシャル政府の間では「完全決着」したことにされているが、ヒ
バクシャはさまざまの条約や協定の条項を用いて提訴したり、抗議運動を続けて
いる。

 竹峰誠一郎「ヒバクは人間に何をもたらすのか」は、健康被害にとどまらない
ヒバクの影響を論じている。故郷を追われ、生活環境が激変した住民には、社会
的・文化的観点での被害もあるとして、「核の難民」が抱える「現在」を追跡し
ている。ビキニにしてもロンゲラップにしても核汚染にさらされている。先祖伝
来の土地での生活を奪われ、異郷での生活を余儀なくされている。海洋民族とし
ての生活は困難となり、独自文化が衰退し、食生活も激変した。こうした被害と
健康被害が重層的に人々を押しつぶしていくのである。

 中原聖乃「挑戦するロンゲラップの人びと」は、移住先のメジャト島に暮らす
ロンゲラップ住民の記憶、移住の繰り返し、メジャトでの暮らしを追跡し、その
苦難を明らかにしつつ、アメリカに対する被曝補償要求運動の主体としての自覚
と行動に焦点を当てる。いったん帰島したロンゲラップは放射能汚染のため定住
できないと判明すると、メジャトへの移住という決断を迫られたが、困難にあえ
ぎながらも、くじけることなくアメリカに要求を突きつけていく主体性である。
ロンゲラップ政府も借入金を使用してアメリカ政府に再定住計画の実現を働きか
けてきた。再定住計画にも多くの問題が残るが、将来の生き方に選択の幅を持た
せるための挑戦が続いている。

  マーシャルの隠されたヒバクシャをめぐる研究は、世界各地の「隠されたヒ
バクシャ」への問題意識につながる。「グローバルヒバクシャ」という実に悲し
い命名の研究会の成果が私たちに突きつける問いは重い。

(註)

(1)「核の世紀」という表現は、豊崎博光『マーシャル諸島 核の世紀(上・
下)』(日本図書センター、二〇〇五年)による。「核の植民地」という表現
は、前田哲男「ビキニ水爆被災の今日的意味」(同監修『隠されたヒバクシャ』
凱風社、二〇〇五年)による。

(2)大石又七『ビキニ事件の真実』(みすず書房、二〇〇三年)。

(3)安斎育郎・竹峰誠一郎『ヒバクの島マーシャルの証言』(かもがわ出版、
二〇〇四年)六頁。

(4)マーシャルを含むミクロネシアの歴史について、小林泉『太平洋島嶼諸国
論』(東信堂、一九九四年)、小林泉『アメリカ極秘文書と信託統治の終焉』
(東信堂、一九九四年)、David Hanlon, Remaking Micronesia, Discourses
over Development in a Pacific Territory, 1944-1982, University of Hawaii
Press, 1998 、Ron Crocombe, The South Pacific, University of the South
Pacific, 2001. 

(5)マーシャルの戦争体験について、 Laurence Marshall Carucci, The
Source of the Force in Marshallese Cosmology, in: Geoffrey White and
Lamont Lindstrom, The Pacifiic Theater, University of Hawaii Press,
1989, pp.73-96.

(6)マーシャルは原水爆による被害のほかに、もう一つ大きな困難を抱えてい
る。地球温暖化に伴う海面上昇による国土の海没である。珊瑚が隆起した島々の
海抜はわずか二メートルであり、もともと海岸が波に浸食されてきた。首都マ
ジュロでさえも、海岸に人々が暮らす家が並んでいる。

(7)マーシャル憲法については、矢崎幸生編『ミクロネシアの憲法集』(暁印
書館、一九八四年)九四頁以下。

マーシャル政府のウエッブサイトhttp://www.rmiembassyus.org/

(8)ジェーン・ディブリン『太陽がふたつ出た日』(紀伊国屋書店、一九九三
年)。 

(9)以下の諸論文は、前田哲男監修『隠されたヒバクシャ』前掲書所収。

http://list.jca.apc.org/public/aml/2006-May/007038.html
▲△△△△△△△△△△△△(転載終了)△△△△△△△△△△△△▲

<コメント>
 ちと違うなと思ったので、「軍隊のない国家7―― マーシャル諸島共和国」のタイトルは使用しませんでした。

 太平洋の諸国は、多くは軍隊を持っていません。数百、数十人の兵隊がいて、軍を名乗っていても、銃を持ってる警察って程度でしょうしね。

 この板でソロモン諸島などの話題があったと思いますが、太平洋の諸国は、軍事的には鬼畜米英仏とその手先の豪新(ニュージーランド)に乗っ取られているようなもんですし。

 ハワイやグアムなんて、鬼畜メリケンの植民地になってますしね。

 マーシャル諸島の被爆者の問題は、大きな問題だと思います。

--------------------------------------------------------------------------------

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ HOME > アジア4掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。