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■ 『Younghee Ahn の韓国レポート』 第１８３回
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「Ｗ杯の崇りシリーズ」
韓国では、５月３１日に同時地方選挙があり、臨時休日となった。
韓国では選挙日は投票率を高めるため臨時休日となる。
それだけ大事にしているわけで、独裁政治の頃は投票率が９０％台の頃もあったが、今年は、５１．６％と半分を少し上回る程度
であった。
今回、選挙前に巨大野党ハンナラ党の党首が不審者から刃物で顔を切られるといった騒動やこれまでの与党に対する信頼が薄れてしまったせいか、ハンナラ党の圧勝となった。
その選挙も終わり、これからは今月９日に開幕するＷ杯に向けて、全国の関心が一つにまとまるようだ。
ラジオをつけると、Ｗ杯の応援歌と言われる様々な歌が流れ、テレビをつければ、Ｗ杯への出場が決まった選手たちの顔が映る。
４年前のＷ杯は韓国人が最も団結し、幸せな思い出となっている。
その後、景気は悪くなり、現在、輸出に頼る産業界はウォン高で悩んでいる。
人々は４年前のあの熱気を欲しがっているのかもしれない。
先月、サッカー韓国代表チームのメンバーが発表された時、選ばれなかった選手は泣いたことだろうが、その裏でも泣いたスポンサーがいた。
特に、２００６年ドイツＷ杯オフィシャルスポンサーであるコカコーラ社は、ダブルパンチをくらった。
今年の初めからイ・ドングック選手とチャ・ドゥリ選手をモデルに起用した。
イ選手ははにかみ屋のイケメンで女性に人気があったし、チャ選手はサッカー界の大御所であるチャ・ボムグン元選手を父に持つサラブレッドだった。
にもかかわらず、二人はどちらもエントリーされなかった。
それだけではない。
コカコーラ社は、イングランドの神童と呼ばれたウェイン・ルーニーもモデルに起用したが、彼も骨折で試合出場が危ぶまれている。
これを巷では、「コカコーラの崇り」と呼んでいる。
つまり、コカコーラ社にお墨付きをもらうと、Ｗ杯に出られないということだ。
また、「ペレの崇り」というのもある。
世界的に有名なキング・ペレにお墨付きをもらったＷ杯の予想はことごとく外れるということである。
これまで、ペレに褒められた選手や国は実際の大会では日の目をみたことがないというのだ。
例えば、１９９８年のフランスＷ杯では、「ブラジルの２連覇の可能性が高く、スペインも有力な優勝候補」と言ったが、スペインは組予選で脱落し、フランスが優勝した。
また、２００２年日韓Ｗ杯の前には「フランスがＷ杯の勝者となり、ジダンは世界で最もすばらしい選手」と讃えた。
しかし、フランスは組予選で脱落し、ジダンは負傷した。
こんな噂があるにもかかわらず、韓国の某放送局が大胆にもキング・ペレの単独インタビューを試みた。
ペレは、「韓国は予選を通過し、フランスと韓国がベスト１６に入るだろう」と予想した。
局は誇らしげに独占インタビューだとニュースを流した。
これに対し、一部の人たちは「あの局は『ペレの崇り』も知らないのか。まったく要らぬことをしてくれたもんだ」と憤怒している。
ペレの予想はともかく、街に出ると光化門の前に巨大なサッカー選手のオブジェやくるくる回るサッカーボールが飾ってある。
最初は度肝を抜かれたが、何度も見る内に目がなれてきた。
野党に大敗した与党は少し落ち込み、大勝した野党は浮かれているようだが、Ｗ杯も選挙もお祭の雰囲気に似ている。
最中は、何でもかなえられるような錯覚に陥るが、実際終わって見ると、寂しくなる。
選挙で勝った野党は、ちゃんと公約を守ってほしいし、負けた与党もどうしてそんな結果になったのか考え、もっと民衆と共にできる政治をしてほしい。
そろそろ、４年前に買っておいた赤いＴシャツをまた出しておこう。
やはり祭りは楽しいのだから。
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Younghee Ahn（アン・ヨンヒ）
韓国生まれの韓国人。小学４年から高校１年まで、大阪在住。韓国外国語大学同時通訳大学院日本語修士課程卒業。
同時通訳からスタートして、現在は会議通訳、及び、韓国梨花女子大で、日本語の講師も務める。
著書に『シナブロ（知らぬ間に少しずつ）』（小学館）
http //www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093860971/jmm05-22
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