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今週の主張9月4日 保守派からも始まった靖国神社批判 (鈴木邦男をぶっとばせ!)
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投稿者 Kotetu 日時 2006 年 9 月 06 日 21:17:35: yWKbgBUfNLcrc
 

今週の主張9月4日
保守派からも始まった靖国神社批判

(1)驚いた。「正論」が靖国神社を批判してたよ!

 やっぱり、と思った。保守派からも靖国神社批判が始まった。といっても、A級戦犯分祀論ではない(それは勿論、保守派内部で激論が闘われているが…)。今、問題にしてるのは遊就館のことだ。
 8月24日(木)の産経新聞の「正論」欄を見て驚いた。ここまで来たか、と思ったのだ。親米派の逆襲が始まったと思った。
 元駐タイ大使の岡崎久彦さんが書いている。タイトルも凄い。

 「遊就館から未熟な反米史観を廃せ」

 今まで遊就館を批判してきた人は左翼の人ばかりだった。「あの戦争を美化し、侵略戦争を正当化している。許せない!」と。靖国神社は「慰霊」だけでなく、「顕彰」の施設だという。「よくやった」「あなた達の死で私達は救われた」と讚えるのだ。そうすると、「自衛の戦争」「やむを得ぬ戦争」の側面を前面に出し、強調しなくてはならない。アジア解放のための「正義の戦争」だ。と言わなくてはならない。
 「あれは誤った戦争だ」「義のない戦いだった」と言ったのでは、〈犬死〉になる。だから、「慰霊・顕彰」するためにも、〈戦争〉そのものも〈大義ある戦争〉だ、と言わなくてはならない。それが靖国神社の理屈だ。又、遊就館の理屈だ。何もそこまで無理して、戦争を正当化し美化することはないだろう。と、僕は思うが。
 この「正当化」が進めば、「悪のアメリカ」に「善の日本」が立ち向かったのだ。という構図になる。そんな理屈になる。物量の差で負けたけど、〈正義〉はこちら側にある。
 さらに進むと、こうなる。アメリカは無理矢理、日本を追いつめて戦争に向かわせた。パールハーバーだって、わざと日本にやらせたんだ。アメリカ大統領は知っていて、誘ったのだ。その謀略に日本は乗ったのだ…と。そんな「謀略説」まで出る。昔からあった。今でも信じている人は多い。
 遊就館では、さすがに「パールハーバー謀略説」は言わない。しかし、似たような謀略説や、未熟な反米史観があると岡崎氏は言う。日本の誇りを取り戻し、英霊を顕彰するのはいい。しかし、行き過ぎると今の日米関係を壊してしまう。岡崎氏は、それを恐れているのだ。それも、アメリカ人の論説を取り上げながら、遊就館批判をしている。まず、こう書く。

 〈8月20日の米紙ワシントン・ポストに保守派の論客として知られるジョージ・ウイル氏が論説を掲げ、安倍晋三氏は新総理になったら靖国に参拝すべからずと論じている〉

 特に、遊就館についてだ。ウイル氏は激しく攻撃している。

 〈遊就館の展示によれば、『大東亜戦争』は、ニューディール政策が大不況を駆除できなかったので、資源の乏しい日本を禁輸で戦争に追い込むというルーズベルト大統領の唯一の選択肢として起されたものであり、その結果、アメリカ経済は完全に回復した、と言う。
 これは唾棄すべき安っぽい(あるいは、虚飾に満ちた、不誠実な=disgracefully meretricious)議論であり…〉

 日本の戦争を正当化するために、不当にアメリカを貶めている。これは全くの言いがかりだ、と言う。岡崎氏は(ウイル氏論文の全体には批判的だが)、この部分については全面的に賛同、支持する。さらに、日本では、政府も民間人も、又、教科書も、不当に〈反米主義〉が強調されていると批判する。

 〈この展示には、日本では他の国より弱いかもしれないが、世界的にどこでもある反米主義の一部が反映されている。
 過去4年間使われた扶桑社の新しい教科書の初版は、日露戦争以来、アメリカは一貫して東アジアにおける競争者・日本の破滅をたくらんでいたという思想が背後に流れている〉

 うん、確かにそれはあるな。移民を制限し、「ABCDライン」で日本を経済封鎖し、日本が暴発するしかないように追いつめた。そう言ってる人は多い。教科書だってそう書かれているのがある。そして、教科書について、さらに凄い話をする。

(2)さらに驚きだ。靖国神社は非を認めて、遊就館の「記述」を改めると言う

 〈そして文部省は、その検定に際して、中国、韓国に対する記述には、時として不必要なまでに神経質に書き直しを命じたが、反米の部分は不問に付した。
 私は初版の執筆には全く関与しなかったが、たまたま機会があって、現在使用されている第2版から、反米的な叙述は全部削除した〉

 エッ!そうだったのかと思った。「新しい歴史教科書をつくる会」の扶桑社の教科書から、「反米的な叙述」は全て削除したという。驚きだ。又、それだけの力があるんだ、この人は。岡崎氏はさらに言う。

 〈戦時経済により、アメリカが不況の影響から最終的に脱却したことは客観的な事実であろうが、それを意図的にやったなどという史観に対しては、私はまさにウイル氏が使ったと同じような表現--歴史判断として未熟、一方的な、安っぽく、知性のモラルを欠いた、等々の表現--しか使いようがない〉

 これは岡崎氏の言う通りでしょうな。いくら戦死者を顕彰する為とはいいながら、アメリカに対する言われなき誹謗中傷は許されまい。「結果」から見て、全てを判断してはならない。
 日本だって、たとえば1950年の朝鮮戦争の特需で助かり、日本経済は復興した。だからといって、「朝鮮戦争は日本が起こしたのだ。日本の陰謀だ」などとは言えない。それと同じことだ。
 ともかく、遊就館の「反米叙述」は目に余る、と岡崎氏は言い、こう断言する。

 〈私は遊就館が、問題の個所を撤去するよう求める。それ以外の展示は、それが戦意を鼓吹する戦争中のフィルムであっても、それは歴史の証言の一部であり、展示は正当である。ただこの安っぽい歴史観は靖国の尊厳を傷つけるものである。
 私は真剣である。この展示を続けるならば、私は靖国をかばえなくなるとまであえて言う〉

 最後の文章は凄味があるね。俺は本気だ。これを撤去しなければ、「反靖国」に回るぞ。と言ってるようだ。さあ、靖国はどうする。そして、靖国を全面的に支持する人々はどうする。反米派の人々はどうする。
 靖国は今まで、中国、韓国からの批判に対しても、分祀の要求に対しても、一切、耳を貸さなかった。靖国のやってることは全て正しい。それが英霊の声だ。文句を言うな。という態度だった。だから、今回だって、「あんたに言われたくない。かばってもらわんでもよか。勝手に批判、反対闘争でもやってくれ!」と言うのかと思った。それだけ毅然として岡崎氏と闘うのかと思った。今までの頑なな姿勢を考えたら、それしかない。
 ところがだ。又しても驚くべき事が起こった。次の日の産経にこんな記事が出ていた。

 「靖国・遊就館。米戦略の記述変更。第二次大戦『誤解招く表現』」

 エッ、昨日の今日じゃないのか。8月24日に岡崎氏が抗議、25日には「はい。わかりました。撤去します」と靖国側は言ったのだ。一体、何が起こったんだ。靖国が全面的に誤りを認めるなんて…。
 記述を変更・撤去する部分は、勿論、岡崎氏の主張している箇所だ。

 〈靖国神社が運営する戦史博物館「遊就館」が、館内で展示している第二次世界大戦での米国の戦略に関する記述の一部について、「誤解を招く表現があった」として見直し作業を始めたことが、24日、わかった〉

 24日の「正論」を見て、靖国神社は即座に、「はい。悪うございました。直します」と言ったのだ。こんなことがあるのか。

 〈この記述をめぐっては、遊就館の歴史観に理解を示す言論人からも「一面的な歴史観」との指摘があり、同館としても主観的な表現があることを認め、内容を変更することを認めた。同館展示物の大幅な記述の変更は異例〉

 本当に「異例」だ。今まで靖国は一切、「妥協」も「話し合い」もして来なかった。たとえば、A級戦犯分祀、国家護持、中国・韓国からの批判。そして韓国・台湾の遺族による「祖霊奪還」要求にも、全て、耳を貸さず、頑なに拒否し通してきた。それなのに、今回はどうしたことか。前日に岡崎氏が、このままでは靖国をかばえなくなる、と言ったからか。「私は真剣である」と言ったからか。そんなに岡崎氏の言葉は重いのか。
 日本を戦争に追いつめて、アメリカは参戦することにより、経済復興した。この「歴史観」は大幅に訂正される。岡崎氏の力も大したものだ。産経も、それを認めている。

 〈この記述をめぐっては、元駐タイ大使の岡崎久彦氏も24日付本紙「正論」で、「安っぽい歴史観は靖国の尊厳を傷つける」と指摘、同館に問題の個所の削除を求めていた。岡崎氏は「早急に良心的な対応をしていただき感動している」と話している〉

(3)テリーさんとの対談で、「遊就館はイデオロギー過剰だね」と批判した直後だった

 「正論」で批判されたので靖国神社は一日にして、「削除・変更」を決めたのか。ところが新聞をよく読むと、そうでもないらしい。(靖国の面子かもしれないが)、実は前から考えていたという。それと岡崎氏の批判が時期的に重なり、「実は、私たちも削除しようと思ってたんですよ」と発表した。ということらしい。

 〈こうした記述について、同館では4月ごろから見直しの検討を始め、7月ごろから本格的に見直し作業に入ったという〉

 靖国神社だって、「記述」の一方的なことや、不備なことは前から認めていたんだ。ただ、直すのはシャクだ。でも、親米派の岡崎氏に言われた。このまま放っておくと、アメリカの圧力がかかるかもしれない。そんなこを考えたのかもしれない。だから、「実は私達も見直しを考えてたんですよ」と言ったのかもしれない。
 まァ、経過については、問題もあるが、「安っぽい」「一面的」な歴史観が訂正されるのはいいことだ。他にも、まだまだ訂正することはあるだろう。その第一歩になった。

 ところで、この日(8月25日)の産経には「遊就館」のいわれについて書いてあった。中国の古典「荀子」の「遊必就士(高潔な人に就いて交わり学ぶ)から2文字を取ったという。中国の「荀子(じゅんし)」から取ったのか。その割には中国に批判的、蔑視的だよな、靖国は。それに、今の日本は。中国だって、複雑な気持ちだろうよ。
 英霊を祀るのに何故、「遊」という字が入ってるのか。これで疑問が解けた人もいるだろう。「遊」には「あそぶ」の他に、「学ぶ」の意味があるのだ。「学ぶ」の反対が「遊ぶ」だろう。と反論する人もいるだろうが、そこが「遊」の深さだ。たとえば、『現代漢語例解辞典』(小学館)を引いてみる。
 「遊」には、「あそぶ」「ぶらぶらする」「およぐ」の他に、「家を離れる・旅をする。仕官、勉学などのために他国へ行く」という意味がある。離れて学ぶのだ。たとえば「遊学」。けっして、遊ぶのではない。遠くへ行って学ぶのだ。
 又、「離れて存在している。一定の場所に所属せず、自由に動く」という意味もある。「遊軍」「遊牧」などだ。決して、ブラブラと遊んでるわけじゃない。遊軍は、いつ声がかかってもいいように準備している。実際、新聞社では「遊軍記者」が一番忙しい。遊牧だって、旅から旅で忙しい。「遊説」という言葉もある。全国を回って、演説をする。大変だ。
 この『辞典』には「遊就」もちゃんと出ている。

 遊就(ゆうしゅう) 故郷をはなれて善良の士のもとに行って交わること。立派な人々について、その行いを見習うこと。

 じゃ、遊就館を見て、国のために死んだ人々のことを学び、あとに続きたいということか。遊就館は、「戦没者顕彰」と「近代史の真実の明示」を目的としている。でも、「慰霊」だけでいいんじゃないのか。「歴史観」を示すとなると、ついつい、「自衛戦争」「聖戦」だといいたくなる。そうすると相手の国を誹謗し、批判しなくてはならない。

 8月29日(火)発売の『アサヒ芸能』でテリー伊藤さんと対談した。靖国の話が中心になった。テリーさんはこう言っている。

 「僕はこの前、靖国神社の中の遊就館に行ってきたんですけど、あそこはムチャクチャですね」
 「かなり、イデオロギーが過剰ですね」と私は応じている。さらにテリーさん。
 「まさにタイムスリップしてて、これはいくらなんでも違うだろうと。英霊を祀っているのと意味が違うんじゃないかと」
 そして私。
 「そうですね。かつては侵略戦争に利用されたんだ。犬死だと言われたときがありましたから、その反動で、あの戦争そのものが全部正しかったんだというところまでいっちゃってるんですね」
 「そうか。余裕がないんですね」とテリーさん。

 この対談をした直後に、岡崎さんの発言があり、靖国神社の「記述変更」発言があった。「富田メモ」以来、揺れ動いている靖国神社だ。
 ところで、「遊び」について、もう少しこだわってみる。オランダの歴史家・ホイジンガの説によれば、遊びとは自由で、日常生活とは切り離されて「ここで」、「このときに」営まれるものである。という。スポーツや芸術はそうだ。彼の『ホモ・ルーデンス』(中公文庫)によれば、「遊び」はさらに拡張して、宗教や政治も「遊び」の中から生まれたものだという。なるほど、それは言える。
 廣中直行の『やめたくてもやめられない脳--依存症の行動と心理』(ちくま新書)を読んでたら、このホイジンガの「遊び」のことが書かれていた。面白い記述がある。

 〈この本(注:ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』)には日本の例も載っている。私たちは高貴な人のなさることを「遊び」と考えている。例えば「死んだ」と言わずに「ご薨去(こうきょ)遊ばされた」と言う。つまり日本人の感覚では高貴な人々は真剣に生きてはいけないのだ。それはともかく、文明を作った脳の余力は現代の私たちにも残っていて、私たちは「遊ぼう」とする〉

 ウーン、そうなのかと唸りましたね。高貴な人にとっては全てが「遊び」なのか。生きるのも、食べるのも、交わるのも、亡くなるのも…。「お食べあそばす」し、「お亡くなりあそばす」のだ。「Hあそばされる」のだ。でも、敬語というか、丁寧語にするための語尾変化のような気もするが。今度、古文の先生に聞いてみよう。
 じゃ、「遊就館」で顕彰されている英霊の方々も、国のために、お亡くなりあそばしたのかもしれない。うるさい世間を超えて、自由に遊んでいるのかもしれない。「まあ、そうカタく考えずに…」と言わっしゃり遊ばされているのかもしれない。

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/2207/2006/shuchou0904.html

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