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国家を草刈り場とする各エージェントの権益争奪戦について(ある対談)(MIYADAI.com Blog (Archive)
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投稿者 まさちゃん 日時 2006 年 6 月 13 日 19:13:34: Sn9PPGX/.xYlo
 

国家を草刈り場とする各エージェントの権益争奪戦について(ある対談)


宮台◇ この問題[共謀罪や入管法改正]については二枚腰、三枚腰だな。どの“腰”から話すかで賛成にも反対にもなっちゃう。一枚目の“腰”から言えば、共謀罪と入管法改正は、盗聴法や周辺事態法で悪名高い1999年145回通常国会以降の、情報管理行政に関わる法整備の一環。99年から繰返し述べてきた通り──当時から述べていたのは僕一人だけど──「一枚岩の国家権力」の横暴と見ると、事の本質を完全に見誤っちゃう。
 国家が様々なエージェントの草刈り場になってるの。行政官僚や司法官僚や政治家や私企業のね。「昨今」とは冷戦終焉後。厳密には96年の日米安保共同声明後。(1)対米追従を前提とした、(2)情報管理行政の利権争奪戦が、まず官僚サイドで常態化。そこに政治家や私企業が絡んだ。
 例えば入管法改正では、改正案審議前の昨年秋に指紋情報・顔写真データなど生体情報の「認証装置及び自動化ゲート」のソフトウェア開発と実験業務をアクセンチュア社が10万円で落札。バミューダに本社があるけど、会計&コンサル兼業が問題化して潰されたアーサー・アンダーセンのコンサル部門がルーツ。
 「次期登記情報システム開発に係るプロジェクト統合管理支援業務(法務省民事局)」「検察総合情報管理システムのシステムテスト、導入等作業(同刑事局)」も、宮内庁や各地方自治体の情報管理行政も、請け負う。驚くべきことに各省庁の役人たちがその事実を知らないの。

(中略)

宮台◇ そこが問題。誤用乱用を含めたアーテキクチャの潜在能力に、官僚よりも民間企業が通暁する。法務省入国管理局のIT担当なんて十人程度だが、原型のUS-VISIT開発に携わったアクセンチュア側スタッフは膨大な数。橋梁やトンネルと違い、情報管理行政には「場所性」がなく、政治家や役人や含め国民全域を制禦する。だから怖い。
 特殊性溢れる地方行政の場でも、行政現場を実地見聞せず、米国で培ったノウハウを「そのまま」納入する。プレゼンの席で「我々はこれだけ実績があります」ってバーンと書類を積む。賢い官僚ならそれだけで入札させないよ。「現場も知らずに何が実績だよ」と。でも昨今は法務官僚も含めて役人が馬鹿だから、バーンと書類を積む会社に発注する(笑)。しかもどの省庁や自治体が同じ会社に発注するかも知らない。同じ会社が米国で同じシステム納入する事実もね。
 異なる国が同じシステムを持てばデータ結合やファイル結合を巡る安全保障上のリスクが生じることも知らない。安全保障の基本がマクシミン(最大リスクの最小化)なのも知らない。90年代後半から国家が情報管理行政利権の草刈り場と化したが、役人が馬鹿だから「単に他もやるからウチも」のレベル。住基カード化、Nシステム化、免許IC化、サイバーポリス化、入管生体情報化、全部同じ。
 これらに、個人情報保護法に支援された企業の情報データベース化がシンクロする。草刈り場には役人、企業、政治家などいろんなステイクホルダーがいるが、全体性を見通す“大ボス”がいない。アクセンチュアが見通しているかというと違う。馬鹿役人よりマシだけど。

(中略)

宮台◇ [共謀罪が国際組織犯罪防止条約への加盟を口実とすることについて言えば]確かに国際組織犯罪防止条約に加盟できないのは困るさ。でも役人は組織防衛が習性。ドサクサ紛れに裁量行政の範囲を拡げる。国会答弁を見ても、なぜ“5年以上”や“6年以上”でなく“懲役4年以上の犯罪”が対象なのか実質的説明がない。“国際組織犯罪防止条約のスペックを満たせない”と言うが、そんなこと条約のどこにも書いてない。
 案の定、民主党との妥協で“5年以上”で構わないと来た。それじゃ満たせないんじゃあ(笑)。結局、議員やマスコミや国民が馬鹿なのを前提に、火事場泥棒的に裁量行政の範囲を拡げる。盗聴法と同様、今回も役人や推進派議員の目の色がまるで覚せい剤(笑)。
 ・・・確かに「個人情報取扱事業者」に始まって共謀罪の「団体」に至るまで、“これは何だ”という概念だらけ。それもやはり裁量行政の範囲を広げるため。本当は政治家が反対すべきだよ。役人が強い裁量権を持つほど政治家に対し強い立場をとれる。共謀罪についても「選挙違反の共謀の嫌疑」で全政治家が行政権力の標的になり得る。実際に標的になるかどうかは別にして、“そういう状況になり得る”との思いが政治家を不自由にする。それが情報権益の最たるもので、推進議員は自分の権力減少に気づかない。


(中略)

宮台◇ 国家を草刈り場とする情報管理行政の鍔迫り合いが「尻馬・勝馬」競争を呈し、吟味の時間も勢力もなく雪崩現象的にシステム改変が進む。それがもたらす不安が教育基本法改正に直結する。ホリエモンみたいな若者を生まないためにって(笑)。
 民主党の小沢代表の戦略は賢明だな。小泉自民党を出来るだけ右に追いやって不人気にする戦略。“民主党が他野党に呼び掛けて反安部候補に投票する”というリークも、安部に一本化させる高等戦術。対米ベッタリ&対中ガチンコの安部なら来年の参院選で民主楽勝。小泉サイドは敏感に察知して教育基本法改正にも共謀罪にも熱心じゃない。
 その意味で千葉七区の補選では民主が負けた方が良かったな。民主が勝つと福田康夫が後継になる可能性が高まる。会期延長で右的法案が通るほど、会期延長で格差社会批判が拡がるほど、安部後継イメージが右によるほど、福田と民主党が有利になるのは必定。
 ネットの議論を見ていれば分かる。サヨク叩きはピークを過ぎ、小泉的なものを叩く方向にシフトしつつある。そのあたりの読みは、官邸に出入りする総務省官僚や電通さんにもあるでしょ(笑)。

(中略)

宮台◇ [「尻馬・勝馬」的つばぜりあいとの関連で重要なのが]僕の言葉では「統合シンボル問題」ね。どんな社会でも、経済がうまく回っていること自体が統合シンボルになる。逆に経済がポシャると統合シンボルが問題になる。だから90年代に「新しい歴史教科書をつくる会」が生まれた。この問題に小泉改革による過剰流動化──昨今のホリエモン問題に象徴される──が拍車をかけ、教育基本法の愛国心問題へと繋がる。
  「つくる会」の如き連中を単に批判しても駄目で、統合シンボルの代替物をどう作るかが重要。米国や欧州では統合シンボルについての明確な理解がある。「プラットフォーム」ということ。最近翻訳されたロバート・パットナムの『孤独なボーリング』という素晴らしい本があるけど。フランスならレジスタンス史に象徴される「連帯」がプラットフォーム。デモやストや暴動は、政治要求であると同時に、要求行動の土台たるプラットフォームの保全行動。米国ならプラットフォームは「社会関係資本」つまり結社リソース。
 パットナムは一人でボーリングする人が増えたとのデータを基に「社会関係資本の減少」を説くけど、ボーリングが減った分を別のサークルやボランティアやNPOが代替したとする批判が続出。この批判自体がまさに米国の結社主義を示すんだな。「個人が埋め込まれた社会性」を強調する欧州流の共同体主義と違い、結社主義は「個人が選び取る社会性」。

(中略)

宮台◇ 重要なのはゲームとゲーム盤の差異。或いはゲームとプラットフォームの差異だ。日本人はこの差異に鈍感で、「ゲームのルールが許容してもソレをするとゲーム盤が壊れる」という認識が不得意なの。
 例えば、戦前は西欧的近代の克服を主題とした丸山眞男は、反転して大東亜戦争突入に市民性の未成熟を見出したでしょ。ところが安保闘争時に反転して「市民性の成熟」を見出し(在家仏教主義)、その後に反転してブント系の国会突入や大学闘争を批判(心情倫理)、そこから一貫して市民性の未成熟を主張し続ける(吉本隆明との対立)。
 丸山が安保闘争に見出した「市民性の成熟」とは、「政治からの自由(人権)」を前提として「政治への自由(参加)」があること。だが丸山の誤解と違い、「政治への自由」は現象的な政治参加を意味するものじゃない。そうじゃなく「政治参加を支えるプラットフォーム」へのコミットメントなんだ。
 日本の政治参加は、専ら労働組合運動的な「物取り」に象徴される経済要求に偏る。だから豊かになってノーマライズされれば政治参加が消える。現にそうなって今日に至る訳だ。米国&欧州的には、“問題があれば要求すること”よりも“問題があれば要求できるプラットフォームを維持すること”が大事。それが米国流の結社主義者や欧州流のコミュニタリアン。要求を通すのは大事。要求を通じて連帯を確認するのはもっと大事だ、と。
 どの国でも例外なく、プラットフォームは歴史的イベントを参照してリマインドされる。米国の独立宣言だったりフランスの人権宣言だったり。プラットフォームをシンボライズする歴史的出来事はすごく重要だけど、日本にはそれがないのは確かだな。

(中略)

宮台◇ 憲法学者の奥平康弘と議論した時、僕が「憲法意思がない」と言ったら、彼が「そうは言うけど強固な憲法感情があった」と返した。憲法意思はルソーの言う一般意思の特殊形態で、「歴史的に継承されてきた皆の意思だ・と皆が思うもの」。定義上プラットフォームを意味する。憲法感情はプラットフォームか。違う。なぜか。
 感情には再帰性がない。感情の前提を自覚的に選択する意思的契機がない。感情はいずれ薄れる。前提の自覚的選択という意思的契機だけがプラットフォームを与える。それが理由だ。感情を感情のままで終わらせない工夫を再帰的に実現した暁に、憲法意思になる。というか、その工夫が憲法そのもの。でも日本ではそうならなかった。
 どうすればこの状況に抗えるか。一番恐怖すべきはノーマライゼーションだよ。日本の市民運動は「ノーマライゼーションの地獄」に鈍感なの。部落でも在日でも琉球でも、差別糾弾の母体となる共同性が、差別解消で消える。部落の人々の同対法時限化を巡る両義的意識、在日の人々の外国人参政権達成を巡る両義的意識、琉球の人々の本土並み化達成を巡る両義的意識が、辛うじて存在するのが救いだけど。
 でもノーテンキな市民運動サヨクは一般にダメだぜ。ノーマライゼーションに抗うには格差が不可欠だというのは重要な智恵だ。そもそも欧州にも米国にも「格差社会が悪い」なんて発想はない。欧州では、底辺の幸せが保障されているならば[階層上昇機会が乏しくても]格差OK。米国では、底辺にも等しく階層上昇の機会が与えるなら[底辺が相当ひどくても]格差OK。
 ノーマライゼーションに抗う智恵だよ。抗おうと思えば論理的に言って格差が不可欠。皆が横並びで幸せになるノーマライゼーションの完成こそ、SF(サイエンスフィクション)的な意味での「社会的な死」だと。日本のサヨクはノーマライゼーション一辺倒。プラットフォームに鈍感である限り、日本はダメだな。

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