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遺伝子組み換え食品について衣料品製造会社が知っていること  【パタゴニア】
http://www.asyura2.com/0601/gm12/msg/433.html
投稿者 hou 日時 2006 年 3 月 30 日 00:22:04: HWYlsG4gs5FRk
 

http://www.patagonia.com/japan/enviro/reports/2003/a_what_does.shtml


遺伝子組み換え食品について衣料品製造会社が知っていること
by イヴォン・シュイナード
『the heart of winter 2002』カタログ掲載

なぜパタゴニアが遺伝子組み換え食品の反対運動に加わるようになったのかという質問を受けることがある。自然保護の運動ならわかるけれど、衣料を製造するパタゴニアがBtコーンやラウンドアップ耐性大豆について、いったい何を理解しているのかと。

正直言って、十分にはわかっていない。そして実は誰にもわかっていないということが、遺伝子操作の重大な問題なのである。遺伝子組み換え作物を含む食品が及ぼす危険性としては、害虫、バクテリアおよび菌類が、それらを駆除するための化学物質への耐性を今よりもいっそう速いスピードで増してしまうこと、益虫が棲息地を失うこと、世界中の農家が5,000年にわたって育んできた膨大な種類の種子が、化学薬品会社所有の種子会社からしか購入できない特殊なもののみに限定されかねないこと、などが挙げられる。

これらの他にも現時点では予測不可能で、より有害とさえ言えるリスクが考えられる。その一つは、遺伝子が組み換えられた種子が風や虫、鳥などによって運ばれ、既存の植物の種子と交配し、生命を形成し維持する自然の過程を永遠に変えてしまうというものである。

実験室でヒラメのDNAを移植したイチゴを育てることもさることながら、そのイチゴを畑で栽培した場合、ほとんどが解明されていない複雑な生態系を根底から変えてしまうことになる。香港で蝶の群れが移動したことがニューヨークの天候にどう影響するかは現在明らかになっている。しかし人間が手を加えた新しい生命体をいったん自然に解放してしまったら、どんな影響が起こり、どうしたら回復できるのかは誰にもわからない。

聡明な企業、注意深い政府、そして賢明な科学者が存在する現代社会で、それほど危険なことが実施されるはずがないと思い込んでいるなら、もう一度よく考えてほしい。放射能に汚染されたビキニ環礁を伝える古いニュース映画の一場面で、数人の科学者が宇宙飛行士さながら頭から足の先まで安全服に身を包み、ガイガー計数管を土壌にかざしている背景で、水着姿の水兵たちが歩いていたことを思い出してほしい。川に放出された放射性廃棄物内のストロンチウム90が混入した牛乳を子供時代に飲んだために、白血病に侵されたロシア人たちがいる。彼らの歯のエナメル質は、被爆から50年経った今でもガイガー計数管に反応するという事実を考えてほしい。かつて私たちが庭の芝生に散布したDDTにより、カッショクペリカンが絶滅の危機に瀕したことは覚えているだろうか。そしてサリドマイド児、アスベストを使用した教室の天井、狂牛病など……。私たちは十分な実験が行われないまま自然界に放たれたテクノロジーにさらされ、膨大な被害を被ってきた。

科学を擁護する人々は、新たなテクノロジーは必然的にリスクを伴うものであり、科学技術社会に生きる私たちにできることは、最悪の事態が発覚した時点で修正をすることなのだという。どうやら彼らはソロ・クライマーやホワイトウォーター・カヤッカー、ビッグウェーブ・サーファーらとは異なり、リスクと愚行の相違がわかっていないらしい。

例えば、クライマーは自分の限界に挑戦するべく数々の岩を登り訓練する。しかし同時に自分の限界を見極めている。5.10をリードできるからといって、いきなり5.11をソロで登るようなクライマーはいない。ギリギリのところを目指しながらも、そのボーダーラインの内側に留まる。つまり理性的にリスクを選択しているのである。

新しいテクノロジーは我々をボーダーラインの外に追いやるかもしれず、ましてそこにはどんな危険が待ち受けているのかもわからない。それにもかかわらず、できるからやる、という理由でそのテクノロジーを導入するのは無責任な行為だといえる。遺伝子組み換え食品のような自然にとって全く新しいテクノロジーはその安全性が証明されない限り、危険な行為と見なされるべきであり、決してその逆であってはならない。

科学者、政治家、弁護士、環境保護活動家が構成するある国際的な団体は「予防原則」を定義した。人間の健康や自然環境を脅かす危険性のある事業に着手する際、たとえ原因と結果の関係が科学的に未解明であっても予防的処置を取るべきである、というものである。新事業に関する安全性の証明は、一般市民ではなく事業の提案者に課されるべき義務である。昨年、EU(欧州連合)は遺伝子組み換え食品に反対する民間団体の圧力に応え、「予防原則」を政策として取り入れることを決議した。これは好ましい動向である。

遺伝子組み換え作物の擁護者(多くは化学薬品会社所有の種子会社)にも同様の義務がある。ところが彼らは、遺伝子組み換えの無害性を証明できないばかりでなく、利益の実証もままならない。遺伝子組み換え作物が第2の緑の革命を生み出すとか、耕作地の縮小や農薬の使用削減につながるという主張は事実かもしれないが、それは一時的な現象であって長期にわたり持続するものではない。

私たちは何年も前、石油を原料とする合成繊維など使用頻度の高い4種類の繊維について環境影響評価を実施し、その際に農業についていくらかの知識を得た。そして最も「自然」な衣類と考えていたコットン製スポーツウェアが、従来の農業で使用される農薬により、環境に最も悪影響を与えているという事実に驚愕した。その後、オーガニック・コットンへの切り替えとともに、私たちは有機栽培農家や持続的農業を推進する人々への理解を深めたのである。

私たちはまた、工業化された農業が機能しないことも学んだ。農薬が広く普及した1940年代以来、減少すると予測された害虫の被害は増加した。一時的に上昇傾向を見せた収穫量は、化学物質への耐性を強化した害虫の発生によりまもなく減少した。第3諸国に広めた緑の改革も効果を示さなかった。小規模の持続的農業は大規模産業と化し、そこでは毎年新たに種を購入しなくてはならない交配種が栽培され、多量の化学肥料や農薬、そして莫大な費用と燃料費がかかる機械を必要とした。ここでもまた、収穫量は一時的に増加しただけで、すぐ低下した。遺伝子組み換え技術を導入したところで、工業化農業の終焉を数年か、数十年先延ばしにするだけなのである。

工業化農業に代わるものとして、有機栽培農業という選択がある。遺伝子組み換え作物のように特許権による利益を上げることはできないが、人類に食物を提供するという基本的な役割は果たす。伝統的な手法を用いているにもかかわらず、現在では非常に革新的で効率的な農法が可能である。土地になじんだ植物の使用や間作、肥料の再利用、土の侵食や水の使用を最小限にとどめる工夫など、さまざまな方法により少ない栽培面積から高い収穫量を上げることができる。

実際、こうした例は世界の各地で実証されている。ブラジルの25万軒の農家は緑肥とマメのさやの使用でトウモロコシと小麦の収穫量を2倍に上げている。メキシコの100万軒もの小さなコーヒー農家も、有機栽培に移行してから収穫量を2倍にした。さらにインドの乾燥地にある3,000軒以上の農家は水と土の管理技巧を駆使してサトウモロコシと粟の収穫量を3倍に向上させた。

世界中で行われている持続的有機栽培農業への転換は何らかのリスクを伴うだろうし、石油や特許所有の新種を開発する遺伝子組み換え作物がもたらすような急速な経済成長に貢献することもないだろう。しかし、有機栽培農家は地球を汚染することなく、私たちの食卓に食べ物を並べてくれる。ここでリスクの計算を行なえば、有機栽培は明らかに善良だ。

パタゴニアがなぜ遺伝子組み換え食品の反対運動に加わったのかと聞かれた時の私の答えは以上である。つまり、私たちが取り組んでいる自然の保護や復元のために重要な運動だと考えているのだ。自然は鮭や原生林の棲息地であるだけでなく、野生そのものと、生命を維持するバランスのために存在している。食物のための遺伝子操作といういたずらによって、これを危険にさらすわけにはいかないのである。

行動を起こそう!
www.gefoodalert.orgのホームページで米国食品医薬品局にメッセージを送りましょう。

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