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帝国主義世界経済と危機の臨界点  【島崎光晴】
http://www.asyura2.com/0601/hasan44/msg/455.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 1 月 20 日 03:26:46: ogcGl0q1DMbpk
 

週刊『前進』(2229号14面1)(2006/01/01)

http://www.zenshin.org/f_zenshin/f_back_no06/f2229c.htm#a14_1

 日米韓の国際連帯を発展させ崩壊的危機の帝国主義打倒へ

 万国の労働者は戦争・民営化と闘おう

 島崎光晴

 はじめに

 06―07年は日本革命の命運をかけた時となった。4大産別での労働組合破壊を許して資本のむきだしの奴隷制度に引きずり込まれるのか、それとも4大産別決戦に勝ちぬいて労働者階級が社会の主人公として自らを解放するのか。新憲法の制定を容認して再び侵略戦争に動員されるのか、それとも新憲法を粉砕して日帝を崩壊的危機に追い込むのか。すべてが06―07年で決まる。日本の労働者人民は国際連帯を強め、日帝の戦争・改憲と民営化(労組破壊)攻撃をずたずたに切り裂き、日本革命に向かって06―07年を全力疾走しなければならない。

 現代帝国主義は今や、世界大恐慌と世界戦争に突入しつつある。第2次大戦後60年間の積もりに積もった全矛盾が噴き出している。そのような体制的危機の中で、帝国主義は、帝国主義国でも新植民地主義体制諸国でも、全世界で労働者階級に対する空前絶後の攻撃を仕掛けてきている。資本主義としても19世紀的な搾取を強め、帝国主義としては20世紀以上に最も凶暴になっている。

 しかし、帝国主義国の労働者階級はギリギリのところで反撃に立ち上がっている。新植民地主義体制諸国の人民は、イラク人民を始めとして民族解放闘争の新しい高揚期を切り開きつつある。今や、全世界で革命的情勢が到来し始めているのだ。20世紀はスターリン主義によって歪曲されてきた。しかし、21世紀冒頭の現在、歴史はついに世界革命に向かって転回しようとしている。11月の国際連帯・労働者集会と訪韓闘争はその最先端に位置し、革命の21世紀を照らし出すものとなっている。日本の労働者人民は、世界革命―日本革命に向かって死力を尽くして決起しなければならない。

 以下、第1章では、帝国主義が世界大恐慌と世界戦争にのめり込みつつあることを分析する。第2章と第3章では、米国と韓国の労働者階級がどのような情勢下で、どういう攻撃と闘っているのかを明らかにしたい。第4章では、日帝の戦争・改憲と民営化(労組破壊)の攻撃が帝国主義としての生死をかけた攻撃であると同時に、しかし日帝にとって確固とした展望があるわけでもなく、労働者人民が真っ向から立ち向かえば必ず日本革命に転化できることを明らかにする。

 第1章 米帝の恐慌防止策が限界へ 石油争奪めぐって戦争拡大

 第1節 住宅バブルの崩壊が間近に 自動車敗退でドルが弱体化

 現代帝国主義は今や、帝国主義としての基本矛盾を爆発させている。革共同は第6回大会(01年)で、帝国主義の基本矛盾を次のように規定している。「@過剰資本・過剰生産力問題の歴史的激化と世界経済の分裂化・ブロック化、その結合点で爆発する29年型世界大恐慌の不可避性として、Aまた、そうした事態のなかで生じる帝国主義体制の危機と、そのもとでの帝国主義戦争すなわち植民地侵略戦争と帝国主義世界戦争の不可避性としてあらわれざるをえない」と。今、世界で起きているのはそういうことだ。

 帝国主義世界経済は、すでに90年代末に危機の臨界点を越えていた。97年のアジア通貨・経済危機、97年秋からの日本経済の恐慌への突入、00年春からの米経済のIT(情報技術)バブル崩壊を経て、世界経済は大恐慌に突入し始めた。ただ、米帝が財政・金融政策を総動員して恐慌突入を防いだことによって、世界大恐慌はぎりぎりのところで先延ばしされてきた。しかし、そうした米帝の恐慌防止策は、より矛盾を深めるものとなった。いよいよ世界大恐慌は避けられなくなっている。

 何よりも、米経済の恐慌防止策とバブル引き延ばしが限界にきている。恐慌を防いできたのは以下の4点だ。

 @まず01年からの金融緩和である。03年には長期金利が1958年以来45年ぶりの歴史的な低水準となった。

 Aこの低金利によって住宅ローン金利も下がり、住宅バブルが膨れ上がった。米家計は住宅価格の上昇分を担保にカネを借り増し、それを消費に充ててきた。05年上半期の名目成長率6%強のうち住宅関連の寄与がほぼ半分を占めた。一方、米家計の負債総額は11兆1420億j(約1300兆円)に膨らんでいるが、その約7割が住宅担保ローンだ(05年6月)。

 B自動車ローンの金利をゼロにし、さらには従業員向け割引を一般客に適用するなど、自動車販売が無理やり拡大されてきた。値引きは最大で正価の34・5%にもなった。
 C01年度から繰り返し富裕層に大減税が実施された。

 しかし、これらの恐慌防止策は完全に限界に達している。

 @超低金利に加え原油価格の高騰で、インフレ圧力が強まってきた。FRB(米連邦準備制度理事会)は04年から金融引き締めに転じ、政策金利は01年9・11反米ゲリラ戦の前の水準に上がった。

 A住宅バブルがついに崩壊し始めている。最も投機的だったマンハッタンのマンション価格が05年7―9月期に2けたのマイナスになるなど、住宅価格はピークを打った。住宅価格が続落していくと消費は激減せざるをえない。家計の住宅ローン返済も焦げつき、米銀や国外金融機関に多額の不良債権が発生する。住宅バブルが全面崩壊する時こそ、バブル崩壊の”本番”がやってくるのだ。米国人民には、返済できない膨大な負債に加えて大恐慌が襲いかかる。資本家階級のためにバブルを引き延ばした結果、人民はとてつもない犠牲を強いられるのだ。

 B自動車の値引き販売で米自動車メーカーが経営危機に陥ってしまった。値引きによってGMは、新車を1台売ると2311j(28万円弱)の赤字を出すまでになった(05年1―3月期)。このため米自動車メーカーの業績は05年に赤字に転落。長期債の格付けは、「ジャンク(くず)債」と同じ格付けに引き下げられた。

 C恐慌防止策は、財政赤字・経常赤字(貿易赤字など)を急膨張させた。経常赤字の膨張によって、対外純債務(債務残高マイナス債権残高)の対GDP比は04年に21%を超え、07年には50%を超える見通しだ。80年代半ばに「ドルの危機ライン」と指摘されたレベルに初めて達しつつある。

 結局のところ01年以降の米経済は、家計債務、政府債務、対外債務を空前絶後の規模に膨れ上がらせただけなのだ。恐慌防止策によって米経済の矛盾は極まり、恐慌の爆発力がさらに充填(じゅうてん)されたのだ。米経済が本格的な恐慌に突入するのは避けられない。

 ドル・石油・軍事での支配が崩れつつある

 恐慌防止策の行き詰まりとともに、ドル暴落がいよいよ現実化している。ドル暴落は、米国と世界の金融市場を瓦解(がかい)させて大恐慌を引き起こすとともに、通貨面からのブロック化を促進するものとなる。

 第一に、自動車産業の崩壊的危機に見られるように、米経済がさらに没落している。90年代半ば以降、米帝は日本の自動車会社に米国現地生産を促し、米国内に日本企業を抱え込んで競争力をそぎ落とそうとした。しかし逆に、日本車の米国現地生産は米自動車会社の敗退を引き起こした。日本車3社の北米現地生産は、00年の285万台から05年には400万台と激増した。その結果、新車販売でGM・フォード・ダイムラークライスラーのビッグ3のシェアは初めて60%を割り込み、日本車全体で初めて30%を超えた(04年)。自動車は、米製造業で国際競争力を保持している数少ない部門だった。GMは米製造業で売り上げ第1位。その自動車で米資本が敗退し崩壊的になっているのだ。日米帝国主義間での新たな〈不均等発展〉にほかならない。ドルを没落させる歴史的事態だ。

 第二に、米国の巨額の財政赤字・経常赤字は国外からの資金流入によって補填(ほてん)され、それによってドルが維持されてきたが、この構図がもろくなっている。国外の民間資金が米市場や米企業に”魅力”を感じて流入してくる、という従来の構図は崩れている。日本・中国などの中央銀行による米国債の買い支え、さらにはオイルマネーという特殊な資金によってドルが支えられる状態だ。特に中国は対米カードとして米国債を買っており、米中関係が緊張していけばドル暴落の現実性はいよいよ高まる。

 第三に、従来、世界の原油取引がドル建てで行われ、それを米帝の石油支配と軍事支配が支え、この全体がドルの信認を維持する関係にあった。しかし、米帝のイラク侵略戦争の泥沼化によってこの全体像が崩れつつある。米帝は、確認埋蔵量で世界第2位のイラクの石油を独占し、親米の大産油国に転換させる狙いだった。しかし、イラク戦争の泥沼化はこの狙いを打ち砕いた。むしろ逆に、戦争の泥沼化は米帝の石油支配と軍事支配の限界性を暴き出しつつある。すでに9・11以降、「有事に弱いドル」に変化している。イラク戦争の一層の泥沼化は、ドル・石油・軍事の一体化でかろうじて成り立っている米経済を最終的に瓦解させるにちがいない。

 中国のバブルも崩壊すると日帝は大打撃

 米経済が本格的な恐慌に向かっていく時、中国経済も崩壊的な危機を迎えざるをえない。何よりも、中国経済の成長なるものは、中国に進出した日米企業が米市場向けに輸出を増やしてきたことによる。中国のGDPに占める輸出の割合は42%(05年上半期)で、ハイテク産業の輸出の85%が外資企業による。だから、米経済恐慌は中国を直撃する。中国に進出している日米欧の大企業は、対米輸出の減退による中国での減産・減収という初の事態に直面することになる。最も大きな打撃を受けるのは日本企業だ。

 また、中国の国有企業を中心にしたバブルも崩壊せざるえない。中国では建設や自動車の需要を当て込んで、鋼材・セメント・アルミ・化繊などへの過剰投資・過剰生産が行われてきた。03年から若干の引き締めが実施されたが、地方政府には抑制が効いていない。固定資産投資(インフラ建設・設備投資・不動産投資)は、なおも増え続けている。しかも国有銀行が、国・地方にとって資金を引き出すための「自動預け払い機」のようになっているため、野放図な投資がはびこっている。銀行の融資額は、02年末からわずか1年半で5兆元(約65兆円)も増えた。このため、主要製品600品目のうち約87%もが供給過剰となっている(11月公表)。このような中国バブルが破裂するのは避けられない。それは、世界大恐慌を本格的に爆発させる要因となる。

 米欧ではインフレ化 引き締めは恐慌促進

 大恐慌の今ひとつの引き金として、世界的なインフレ圧力がある。米バブルが崩壊し始めた01年以降、米日欧はそろって金融緩和政策をとった。これが世界的な過剰流動性を引き起こしている。実体経済をはるかに上回るマネーがあふれた。世界の機関投資家の金融資産残高は04年には初めて40兆jを突破するまでに膨らんだ。この過剰流動性のもとで、米欧ではすでに物価上昇に転じ始めている。日本はやっとデフレから抜け出すかどうかの局面だが、世界的にはインフレ化し始めている。さらに原油価格高騰が物価上昇要因として加わっている。このため、米国に続いて欧州中央銀行も、05年12月に5年ぶりの金融引き締めに転じた。

 歴史的には90年代半ばから過剰流動性が続いており、少々の利上げではインフレが収まらない可能性もある。そうなると、インフレに対して厳しい金融引き締め政策をとらざるをえなくなる。それが世界大恐慌の引き金を引くことにもなりかねない。

 21世紀に入って、米帝の恐慌防止策、中国のバブル経済、世界的な過剰流動性のもとで、帝国主義世界経済はなんとか生きながらえてきた。しかし、それは世界的な過剰資本・過剰生産力をますます累積させるものでしかなかった。そのすべての矛盾が今や、世界大恐慌として爆発しようとしているのだ。資本主義のもとでは、生産力の発展は恐慌に行き着くしかなく、労働者は大失業にたたき込まれるしかない。もやは、こんな資本主義は終わらせるべきなのだ。労働者が生きていくためには、資本主義という体制自体を覆すしかないのだ。

 第2節 FTA締結でブロック化へ イランと中国巡り米欧対立

 帝国主義間争闘戦の激化、世界経済の分裂とブロック化も、新しい局面に入っている。
 帝国主義間争闘戦で現在の最焦点となっているのは、石油資源の争奪戦である。米帝によるイラク侵略戦争の最大の目的は、フランス・ロシアなどが持っていたイラクの原油開発権益を奪い取ることにある。石油資源の奪い合いがすでに帝国主義の侵略戦争として火を噴いているのだ。レーニンは『帝国主義論』で、植民政策の要因としてまず〈原料資源の独占的支配〉をあげた。20世紀初頭の帝国主義も21世紀冒頭の今の帝国主義も、まったく同じではないか。産油国に侵略し人民を殺戮(さつりく)して石油を略奪する。軍事力を使って他の帝国主義から石油権益を奪い取る。そのために労働者人民を戦争に引きずり込む。そうした帝国主義戦争がすでに始まっているのだ。

 現在の石油争奪戦は、世界に戦火を拡大していくものとなろうとしている。何よりも、米帝はペルシャ湾岸の石油権益を絶対に手放せないため、イラクで泥沼化すればするほど中東とイランなどへの侵略戦争を拡大していく以外にない。さらに米帝は、原油の調達先を多様化するため、ベネズエラなど南米、ロシアとカスピ海地域、ナイジェリアなどアフリカからの原油輸入を増大させている。しかし、これらの地域はすべて、民族解放闘争が激しく起こっているところである。その地域で米帝が石油権益を奪うには、侵略戦争に訴えるしかなくなる。また、中国も世界中で原油権益の確保に参入しようとしている。石油をめぐる米中対立の激化は、米帝の中国侵略戦争への動きを助長することになる。

 米帝のイランや中国への侵略戦争の策動は、米欧争闘戦をますます非和解にし、軍事的緊張を引き起こしていく。フランスを始めとしてEUは、イランとも中国とも経済的・外交的な関係を強めている。フランスは05年3月の台湾総統選の前には、中国と初の海軍合同軍事演習を実施するなど、軍事的関係にまで踏み込んでいる。

 ロシア・中国がドル離れしユーロ格上げ

 さらに、帝国主義は死活をかけて、世界市場の再分割、勢力圏の奪い合い、FTA(自由貿易協定)の締結合戦にしゃにむに突っ込んでいる。03年秋のメキシコでのWTO(世界貿易機関)閣僚会議の決裂は、「多国間交渉」を頓挫(とんざ)させた。これ以降、各帝国主義は一斉にFTA締結に突っ走った。04年には世界中で結ばれたFTAが200件を突破、05年には300件に達する見込み。第2次大戦の最大要因となったのは1930年代の世界経済のブロック化だった。それをはるかに上回るブロック化がすでに今、進行しているのだ。

 各帝国主義国は、他の帝国主義国を排除して勢力圏を囲い込もうとしているが、実際は排除できず、米欧日の入り乱れた争闘戦になっている。東アジアでは日米欧が、南米、中・東欧、中東・アフリカでは米欧が激しく争っている。

 こうした通商面だけでなく、通貨面からもブロック化が進んでいる。欧州単一通貨ユーロは、やはりドル体制を突き崩すものとなっている。すでに、アジア各国・地域の預金に占めるドルの割合は、01年9月末の80%強から04年末の67%にまで大きく低下した。05年にはロシアと中国が自国通貨をドル連動制からバスケット方式に変え、ユーロの割合を引き上げている。ドイツなどEUはロシアに対し、原油・天然ガスの輸出をドル建てからユーロ建てに替えるよう働きかけている。もしこれが実施されると、通貨面でのブロック化が一挙に加速するだろう。

 第2章 年金・医療解体するブッシュ フロリダ州モデルに民営化

 第1節 所有者のための社会に転換 所得税廃止し消費税一本に

 米国の労働者階級は、戦争と民営化(労組破壊)の攻撃と果敢に闘っている。米帝は、80年代初めのレーガン政権以来、労組への弾圧と破壊、賃下げと労働条件の改悪、経済的・社会的規制の緩和・撤廃と民営化、社会保障の削減を四半世紀にわたって強行し続けてきた。長期の不況と国家財政の破綻(はたん)のもとで資本主義として延命するために、同時に帝国主義間争闘戦で優位に立つために、ひたすら労働者に犠牲を強いてきたのだ。

 現在、米帝は労働者階級への攻撃を質的にエスカレートさせつつある。第2期ブッシュ政権は、「オーナーシップ(所有者)社会」構想を国内政策の基軸としている。米国では、30年代のニューディール以来、階級協調的な社会政策が膨大に作られ、制度化されてきた。レーガン時代以来、解体されてきたとはいえ、依然として残っている。ブッシュ政権はそれを徹底的に解体し、「所有者」=資本家階級の利害に沿った社会に大転換させようというのだ。

 「オーナーシップ社会」構想の第一の柱は、公的年金制度の破壊である。65歳以上の米国民の年収のうち、公的年金が4割弱、企業年金が2割弱を占める。現行制度では、労働者が給与所得の6・2%を公的年金の保険料(社会保障税)として国に納め、政府が一括運用して高齢者に給付している。これを廃止して、任意加入の「個人退職勘定」に変え、運用も個人の管理に任せようとしている。要するに、年金を国家の社会政策から個人の資産管理に転換するということだ。

 第二の柱は、公的医療保険制度の解体だ。米国では無保険の人が全人口の16%にも上っている。公的医療保険は、高齢者向けのメディケアと低所得者向けのメディケイドに限られている。それでも、連邦政府支出に占める公的医療保険の割合は、公的年金を上回る。これを解体し、民間医療保険に転換させようとしている。

 1935年創設の公的年金と1966年施行の公的医療保険こそ、米国の社会保障制度の柱をなす。それを解体して民間に投げ捨てようというのだ。05年版「大統領経済報告」では「個人の選択機会と管理権の拡大」などと称している。要は国家制度の民営化そのものだ。

 年金では企業年金が積立不足になっており、医療では企業の医療費も削減されており、何重ものダメージとなる。現在の米国の自己破産の原因で一番多いのは医療費負担で、破産の半分を占める。乳幼児死亡率はキューバ以上の高さになっているが、これも医療が奪われているからだ。公的年金と公的医療が解体されれば、もっとひどい事態となる。

 第三の柱は、資本家階級を徹底優遇する税制への大改悪だ。すでに第1期ブッシュ政権下で、株式配当・値上がり益への課税は累進税率を撤廃して低率化し、所得税の最高税率は35%に引き下げ、相続税は撤廃して、贈与税は最高税率を35%に引き下げた。01年度の減税のうち3分の1もが、年収120万j(約1・4億円)の富裕層に集中した。法人所得番付で上位200社のうち80社が法人税を1jも払わなくてもよくなった。

 第2期ブッシュ政権は、個人所得税を10―35%の6段階から15―33%の3段階にし、法人所得税は8段階から30%に一本化し、配当・値上がり益課税と贈与税を撤廃しようとしている。さらには、所得税を廃止し、消費税一本に大改悪する案が出ている。配当など資本家の金融所得を無税にし、労働者の生活にだけ課税しようというのだ。

 第2節 州予算の41%が民間委託に 40%占める臨時職・パート

 ブッシュ政権は、従来から行ってきた規制緩和・民営化を一段と進めている。
 規制緩和では、05年4月に第2期政権としての規制緩和策の実施を関係省庁に指示した。たとえば、米雇用機会均等法によって、従業員1000人超の企業には業務部門ごとの男女の従業員の比率、人種構成などの詳細な報告が義務づけられているが、それを簡素化する。つまり企業が女性差別、人種差別をやりやすくする。また、米国では企業への集団代表訴訟が多いが、資本家階級の要求を受けて訴訟を難しくする新法を作った。さらに医療過誤訴訟の賠償金には上限が設けられた。工場や発電所の排ガス規制も緩和された。雇用、企業訴訟、医療、環境という多方面にわたり、資本家階級の利害に沿った規制緩和が強行されている。

 民営化では、政府サービスの実施主体を官と民の競争入札で決める制度が導入されつつある。米国では「競争的調達(コンペティティブ・ソーシング)」と呼ばれるが、日本の「市場化テスト」とまったく同じだ。ブッシュ政権は、「連邦政府職員の半数が、民間でもできるサービスに携わっている」として、「その半数に当たる約43万人を競争的調達の対象にすべき」としている。

 州政府の民営化では、フロリダ州が全米のモデルとなっている。99年から05年にかけて140件もの州機能が民営化・民間委託された。その結果、州予算570億j(約6・8兆円)のうち41%もが、委託した民間会社に支払われるまでになっている。史上かつてない規模と範囲の民営化だ。

 人事業務の民間委託では、委託先のカバーガイズ社には守秘義務が課せられているが、カバーガイズの下請けには守秘義務もなく監査もされておらず、個人情報の安全が問題になっている。さらに、事前テストでエラー率が37%だったにもかかわらず強引に民間委託したため、人事業務の外部委託では業務に遅れが発生、州公務員の保険が解約される事件も起きている。民営化がとんでもない事態を引き起こしているのだ。

 さらにブッシュ政権は、社会福祉や環境保護などの制度を連邦から州に移管する形で切り捨てている。

 連邦から州に移管し民営化して切り捨て

 06会計年度の連邦予算では、農業・住宅・環境保護など150以上の連邦政府事業を州移管によって縮小、廃止する。しかし、州財政の方も第2次大戦後最大の危機にある。貧困層のための制度・機構は、連邦レベルに比べて州レベルでは弱い。しかも、多くの州では州法で財政均衡が義務づけられており、州移管となると即、民間に投げ捨てられてしまう。

 実際に03年度の場合、州財政全体で教育・福祉・医療・刑務所などの経費が145億j(約1・7兆円)も削減された。この中には相当規模の民営化が含まれる。04年度では、州全体の歳出の約3分の1を占める教育関係費が最も多くしわ寄せを受けた。約20州で小中学校などの教職員削減や学校閉鎖を余儀なくされた。教育の民営化そのものだ。さらに、各州が運営しているメディケイドも予算が圧縮された。一方で、04年度だけで29州が175億j(約2・1兆円)もの増税を実施した。これこそ日帝の「三位一体改革」の原型にほかならない。

 このような規制緩和・民営化によって、非正規雇用がますます増大している。米国では90年代以来、業務の外部委託やリストラによって人員削減と非正規雇用化が強行されてきた。米国のパートタイム・臨時雇用など非正規雇用の労働者数は4390万人(04年)、公式・非公式の解雇者を加えると6000万人以上で、1億3200万人の労働者の40%が長期的臨時職あるいはパートタイムだ。医療、運輸、小売り、公務、教育、ホテル、食品業などで外注化と臨時職・パート化が拡大している。

 非正規労働者は、賃金が低いだけでなく健康保険、有給休暇、企業年金などの付加給付がつかない。日雇い派遣労働者の場合、最低賃金で8時間働いても手取りで30j弱(約3600円)にしかならない。アフリカ系の公務員労働者の多くが貧困ライン以下の生活だ。「非正規職の増大は、長期常用労働者の職の安定性・労働条件・手当などを脅かしている」(サンフランシスコ労働者評議会)。実際、ホワイトカラーの時間外の割増賃金禁止法(ホワイトカラー・エグゼンプション)によって、600万人の労働者から残業代が奪われてしまった。

 イラク戦争下で米国の労働者階級は、こうした攻撃にさらされている。日本の労働者階級への攻撃とまったく同じと言っていい。このような攻撃に対し、米国の戦闘的労働組合は、アメリカ革命を切り開く質を持った闘いに立ち上がっている。だからこそ日米韓の労働者の連帯が切実に求められているのである。

 第3章 米中バブルに頼る韓国経済 非正規職化で体制延命図る

 第1節 構造調整で危機的構造激化 対日貿易赤字が過去最大に

 韓国の労働者階級も、戦争と民営化に対して本当に死活をかけて闘っている。日本の労働者階級は、なんとしてもこの闘いに肉薄し連帯しなければならない。

 韓国経済は、97年の通貨危機とIMF(国際通貨基金)管理によって、戦後の重化学工業化の矛盾を露呈させた(『現代帝国主義論U』144n〜参照)。米帝を筆頭に帝国主義はこの危機につけ込み、韓国への支配の強化、再植民地化政策に乗り出した。当時のキムデジュン(金大中)政権は、直接投資や株式取得などを外資に開放して、帝国主義に売り飛ばした。同時に、金融・財閥・公共部門・労働市場の「4大構造調整」を強行し、労働者を犠牲にして経済体制を再編してきた。

 この結果、韓国の全株式の約4割を外国人が支配するまでになった。外国人持株比率は、銀行トップの国民銀行で77%弱、鉄鋼大手のポスコで70%弱、現代自動車55%強、サムスン電子54%弱に上る。いずれも韓国経済を代表する大企業だ。

 一方、「構造調整」によってガス、発電、通信が民営化され、鉄道も民営化が策動されてきた。98年には整理解雇制が導入されて失業者が増加。非正規労働者も97年危機以降500万人も増えて855万人になり、1500万労働者のうち56%にも及んでいる。

 そして今、このような「構造調整」によって、韓国経済は危機的構造を深めている。
 第一に、輸出志向型の重化学工業化という点で、新しい成長軌道が生まれているわけではない。04年に韓国の輸出先として中国向けが43%増で、輸出全体の2割を占めるまでになった。ここには二つの問題がある。@日米欧と比較して国際競争力が劣位であるため、帝国主義国向けではなく中国や新植民地主義体制諸国への輸出に頼らざるをえない。帝国主義からの重圧を受け続けているのだ。A輸出品目の1位は半導体、2位は無線通信機である。中国にこれらを輸出し、中国で製品に組み立てて対米輸出する構図になっている。つまり、韓国の対中輸出の激増は、米経済バブルの引き延ばしの上に初めて成り立っているものにすぎない。米バブルが本格的に崩壊すれば、韓国の輸出も激減する。

 さらに、半導体や液晶の製造装置、液晶材料など重要な資本財・部品を日帝に依存する構造も変わりない。04年は297億jの貿易黒字だが、対日貿易赤字は237億jと過去最高になった。

 第二に、財閥の旧態依然とした体質も同じままである。05年10月には、サムスンの事実上の子会社の前社長らが、世襲を目的にした株の贈与で有罪判決を受けた。また、現代自動車グループ会長の長男が、傘下の起亜自動車の副社長に就任している。こうした体質が敬遠されて、好業績のサムスン電子ですら株価が04年1年間でわずか0・3%しか上昇していない。

 第三に、国内経済では、カード普及策によって無理に消費をあおってきた結果、家計が借金まみれになっている。05年半ばの家計の負債総額は4500億j(50兆円弱)で、00年の約2倍に膨らんだ。カードや銀行ローンの支払いを滞納しているのは、特に20代、30代が多い。

 第2節 日帝は労働運動解体を要求 米日帝に屈するノムヒョン

 こうした中で、帝国主義諸国はFTAという形で一層の侵略と再植民地化政策を強めている。米帝と日帝がわれ先にと、貿易と投資での対外的な障壁をすべて解体して、韓国経済を組み敷こうと狙っている。

 特に日韓FTA交渉での日本企業の要求はすさまじい。在韓日本企業団体であるソウルジャパンクラブの要望文書(04年8月)では、まず最初に「労働・労使関係分野」をあげている。具体的には、「不合理な各種手当やベースアップは問題」「過度に労働者が有利な労使協定・慣行の是正」「労働紛争が横行しないよう政府等が徹底して指導する」「パートの労働条件に関する法律の廃止」「派遣後2年経過時に雇用義務が企業に生じる制度の廃止」「60日前の事前通知など正規職解雇の条件の緩和」など膨大な要求を突きつけている。韓国の労資関係を一変させる項目ばかりだ。韓国の労働運動を破壊しようとしているのは、誰よりも日帝と日本資本なのだ。

 さらに日本企業は、税制での外資優遇、韓国外為市場の開放、銀行による中小企業向け貸出比率の義務づけの撤廃、知的財産権の保護と違反行為への罰則強化、自由貿易関税地域(関税ゼロ地域)の対象の拡大、首都道路網の整備、交通マナー・運転マナーの改善、文化開放の一層の促進、警察における外国語対応電話サービスの徹底などを要求している。韓国の経済・社会・文化のすみずみにまで侵略し、植民地支配を実質的に復活させようとするものだ。この一点だけでも日本の資本家階級は万死に値する。

 ノムヒョン(盧武鉉)政権は、このような日帝を始めとする帝国主義に屈服し、同時に財閥資本の要求に沿いながら、労働運動への抑圧と破壊をますます強めている。その中心的政策が非正規職の拡大と労働条件の悪化である。正規職と非正規職を分断して労組の団結を破壊し、労働運動を圧殺する。非正規職の拡大で低賃金と劣悪な労働条件の労働者を増大させる。それによって正規職も一層搾取する。非正規職化は労働運動破壊の主要手段と位置づけられているのだ。

 ノムヒョン政権にとって、労働運動をこのまま放置しておいては、米日などとのFTAを結ぶことはできず、財閥資本も生き残れず、そうなれば体制が崩壊してしまいかねない。だから、非正規職問題は体制の成否をかけたものとしてある。もっと大きく見れば、現在の韓国労働運動の攻防の中には、アジアをめぐる日米争闘戦、日帝による韓国の再植民地化、韓国財閥資本の延命、分断国家である韓国の体制的護持、そして米日帝の北朝鮮侵略戦争の策動など、さまざまな歴史的圧力が凝縮されているとも言える。民主労総は、そのような歴史的な攻防をまさに生死をかけて闘っているのだ。

 第4章 工場法以前の搾取狙う日帝 改憲へ公務員労組破壊策す

 第1節 もはや財政破綻は解決不能 延命へ労働3権解体を狙う

 日本の労働者人民はこの06年、4大産別決戦と改憲阻止を一体のものとして闘い、日帝打倒へ飛躍しなければならない。日帝は今日、経済・政治・外交・社会のあらゆる面で体制が崩れかねないほどの危機に陥っている。だから、戦争・改憲と民営化の攻撃は帝国主義としての生死をかけた激しいものになっている。しかし、日帝がどのようにあがいても、その危機から逃れられるものではない。

 日帝・小泉「構造改革」の柱は民営化にある。小泉政権は「官から民へ」「国から地方へ」と称して、郵政民営化、公務員制度改革、社会保障制度の解体、医療制度の改悪を矢継ぎ早に仕掛けている。その背景には、国家財政・地方財政の大破綻がある。@国・地方の債務残高は774兆円で、政府短期証券などを加えると1000兆円にも達する(05年度末)。国債発行残高だけでも税収の14年分で、第2次大戦末期の12年分よりも大きい。Aしかも、債務額は今も雪だるま式に増え続けている。一般会計の歳入の42%が新規国債であり、歳出の22%が国債費である(05年度)。Bさらに、90年代後半に大量発行した10年物長期国債が償還期を迎えている。しかし返済できないため、借換債を05年度100兆円、08年度130兆円も発行しなければならない。

 財政破綻は、帝国主義国家の存立にかかわる超特大の危機にほかならない。資本家階級の側も財政破綻を絶叫し始めている。しかし、問題はその原因だ。国家財政が破産したのはなぜか。労働者には何の責任もない。何よりも、バブル崩壊後の90年代に、大銀行・大企業を救済するために、膨大な財政支出が行われてきたからだ。90年代の景気対策は11回、計137兆円に及んだ。さらに97年秋から恐慌への対策として、銀行に公的資金が36兆円弱も投入された。全上場企業の年間利益が10兆円だから、ものすごい額だ。日帝は「官から民へ」と言うが、実際は「民」の崩壊的危機に対して「官」が総力で介入してきたのだ。その結果、「民」に加えて「官」もとり返しのつかない危機にたたき込まれてしまったのだ。

 一方、超低金利によって、本来なら家計の利子収入となるべきものが大銀行・大企業に収奪された。福井日銀総裁自身が、「93年からの10年間で失われた家計の利子収入は実に154兆円」と試算している。大銀行は不良債権を減らすため、こうした例のない大衆収奪をしてきたのだ。

 さらに、90年代末に税制が大企業優遇と大衆課税に転換させられた。法人税は88年度まで42%だったが、99年度に30%に下げられた。帝国主義国では英と並び最低になった。所得税も84年の19段階で最高税率75%〜最低税率10・5%から、99年に4段階で37%〜10%に変えられた。一方で、97年の消費税税率引き上げで5兆円の増税となった。04年度では消費税が法人税を上回るまでになった。

 日帝は「構造改革」によって財政再建ができるかのように言っているが、どうあがいても不可能だ。大銀行は郵政民営化で郵貯・簡保330兆円を自分の資金に分捕ろうと狙っている。しかし、郵貯・簡保の国債保有は国債残高の24・6%で、民間銀行より多い。だから、民営化後も国債での運用を優先すると法で規定せざるをえなかった。そもそも民営化しても、財政赤字と財政資金需要が減らない限りは「官から民へ」とはならない。むしろ逆に、民間金融をつうじて資金が「官」に流れることになるだけだ。

 日帝は今や、国家公務員の大幅削減と賃金引き下げに乗り出し始めているが、“削減対象として想定している国家公務員の人件費は年4兆円規模”とされる。消費税税率も引き上げようとしているが、仮に消費税を5%アップして10%にすると12・5兆円の増収となる。しかし、これらすべてを強行したとしても、1年分の国債発行額35兆円にはるかに及ばない。ましてや債務残高はけた外れだ。仮にもし日帝が郵政民営化、「三位一体改革」、公務員制度改革など「構造改革」をほぼすべてやったとしても、財政破綻から逃れられないのだ。

 そもそも、日帝に財政再建の真の「青写真」があるわけではない。帝国主義国家としての破滅を目前にして、ただひたすら労働者に犠牲を押しつけているだけなのだ。ブルジョア的に言っても展望のない「構造改革」に、労働者人民が引きずり込まれていいのか。こんな「構造改革」はずたずたにして、日帝を破滅に追いやってしまえばいいのだ。

 “世界市場獲得”叫び非正規雇用を急拡大

 民営化はまた、終身雇用制・年功型賃金を解体し、労働3権(団結権、団体交渉権、争議権)の制度を解体する基本政策としてもある。

 95年の日経連の「新時代の日本的経営」は、“常用雇用は1割、あとは非正規雇用にする”との構想を打ち出した。米欧との争闘戦に勝つために、不況下で資本が生き延びるために、労資関係の大転換に踏み込んできたのだ。以来10年、実際に非正規雇用は32・3%にも達している(05年4―6月期)。93年1月末〜05年7月末で正社員など一般労働者は143万人も労働、パート労働者は531万人も増加した。派遣労働者のいる事業所は全体の31・5%になった(04年の厚労省調査)。03年の約20%からわずか1年で10ポイントも増えた。派遣労働者の3人に1人は、04年に解禁された製造業で働いている。

 こうした非正規雇用の増大、それによる賃金引き下げによって、大企業は収益性を高めてきた。04年度の上場企業1620社の人件費は27兆円で、前年度から4%も減り、05年3月期の全国上場企業の純利益は過去最高の10兆円にもなった。1620社でみると、売上高が17%減っても赤字にならないまでになった(04年度)。

 しかし、世界が大恐慌と世界戦争の時代を迎えている中、資本家階級はさらに労働者に襲いかかろうとしている。05年6月の「骨太方針X」では、「経済の活性化」「世界市場を獲得する競争力をつくる」と称している。「世界市場を獲得する」というのだ。“世界を獲得する”と言っているに等しい。日本の資本家階級がこういう言い方をするのは歴史的に初めてだ。

 そのために、 経団連の03年版経労委報告の原案では、「日本の労働者の賃金水準を発展途上国並みに引き下げる」としている。05年版経労委報告では、「工場法の時代の遺制を引きずる労働基準法などの関係法令を、今日の環境にふさわしいものに抜本的に改革する」と、“工場法以前に戻せ”と言い放った。「労使自治」などと称して、“労資関係に国が口を出すな”“資本の好き放題にさせろ”と言っているのだ。

 さらに、07年には労働契約法案を提出しようとしている。労働組合ではなく常設の「労使委員会」を労資協議の場とし、解雇をめぐる裁判では金銭解決に道を開くなど、労働3権を実質否定するものだ。自民党の新憲法草案は、労働3権を原理的に否定している。改憲攻撃と並行して日帝は、制度としても労働3権を解体しようとしている。

 公務員の終身雇用・年功賃金を集中攻撃

 日帝は今や、常用雇用1割、「途上国」並み賃金、工場法以前の労資関係、労働3権の全面剥奪(はくだつ)に踏み込もうとしているのだ。しかし、公務員労働者の組合的団結、終身雇用制・年功型賃金を解体しない限り、これは進められない。だから今、日帝は公務員労働者に集中的に攻撃をかけてきているのである。公務員の削減と賃下げによって終身雇用制と年功型賃金を解体し、それによって民間で一層の団結破壊と非正規雇用化・賃下げを図る、という狙いだ。だから、公務員労働者だけではなく、全労働者の利害がかかった問題なのである。

 しかし、工場法以前のような搾取でしか生き延びられないというのは、資本主義としてあまりにも破産的ではないか。工場法以前の英国の労資関係は、「無制限な奴隷状態の制度、社会的にも肉体的にも道徳的にも知的にもどの点でも奴隷状態の制度」(『資本論』第1巻)だった。児童が劣悪な条件下で1日十何時間も働かせられるのが通常だった。このため19世紀の英国では実際に寿命が短くなった。とことんまで搾取するのが資本の本性なのだ。そこで1833年から1864年にかけて工場法が設けられ、労働時間などが一定制限された。国が法律をもって介入しないと、労働力を維持することさえできなくなったのだ。

 そうした、労働力を維持できなくなるほどの時代に戻そうというのだ。生産力がこれほど発達したのに、1世紀半前の労資関係―支配関係に逆行させないと成り立たない。生産力が発達したのであれば、人類はもっと豊かになっていいはずではないか。それなのに、1世紀半前のむきだしの奴隷制度に戻すだと! こんな体制は転覆する以外にないのだ。

 第2節 アジア勢力圏化は絶望的に 帝国主義の“最弱環”化進む

 戦争・改憲攻撃との闘いも正念場を迎えた。日帝は06年から07年にかけて、北朝鮮・中国侵略戦争に突入していくために、あらゆる面での準備を完成させようとしている。しかし、日帝にとって確たる未来があるわけではない。絶望的なコースが待っているだけだ。労働者階級が真正面から立ちはだかれば、日帝打倒への好機とすることができる。

 日本経済はアジアを“生命線”としている。アジアへの直接投資の急増によって、日本経済はアジアの日系工場を抜きに成り立たない構造になっている。現在も中国への直接投資を増やし続けている。04年度の対中投資額は前年度比4割増の4909億円で、9年ぶりに過去最高を更新、対米投資とほぼ同額となった。こうした対アジア投資の増加で、上場企業の海外生産分の利益は利益全体の30%弱と最高になっている(05年3月期)。輸出分を加えるとさらに大きくなる。製造業の海外売上比率は91年度の5・6%から04年度には16・1%に上昇した。海外売上比率が30%を超す企業は電機・自動車だけでなく化学・機械・医薬品などの業種でも数多い。

 このように“生命線”と化しているアジアを日帝は勢力圏として囲い込もうとあがき続けている。05年5月にマレーシアと、9月にタイと、FTAを核とするEPA(経済連携協定)に正式合意した。シンガポール、メキシコ、フィリピンに続き5カ国目となる。12月にはASEAN(東南アジア諸国連合)とのFTA交渉を07年春までに妥結することを確認した。

 日帝がアジアFTAから排除される危機

 しかし、日帝のアジア勢力圏化は絶望的なまでに困難だ。@12月に初めて開かれた東アジア首脳会議では、日帝はもともとASEANと日中韓の13カ国を提案していたにもかかわらず、中国の影響力を恐れてインド・オーストラリアなども参加させる方針に転換、ASEAN側の反発を買うという醜態を演じている。A何よりも要をなす韓国とのFTA交渉が04年12月から中断したままになっている。一方で米帝が韓国とのFTAを追求している。さらに韓国はASEANとのFTA交渉を加速、06年発効を目指し始めた。BしかもASEANが中国、米帝、EUとのFTAを先行させて進めている。特に中国とは2010年の関税撤廃を目指して、05年7月には貿易品目の9割以上の関税を引き下げた。

 日帝は70年代以来、韓国やASEANと最も深い経済的関係を形成してきた。ところが、このまま進むと、韓国―中国―ASEANがFTAを形成し、そこに米欧が介入し、日帝が排除される事態になりかねない。これは日帝にとって“生命線”の失陥であり、死に等しい。

 だから日帝には、戦争と改憲以外に生きる道がなくなっているのだ。すでに90年代以来、米帝は帝国主義間争闘戦で優位に立つために軍事力を振りかざし、実際にも戦争を発動してきた。軍事力のない帝国主義は勢力圏も築けず、滅びてしまう時代がとっくの前に始まっている。日帝は90年代に円圏を策動したが、アジアで戦争をやる力がないために米帝にたたきつぶされてしまった経緯がある。しかも現在、米帝は世界戦争計画をもってイラク侵略戦争に突入し、中国・北朝鮮侵略戦争を準備しつつある。日帝にとって、日米枢軸を基本戦略とし、トランスフォーメーションで日米安保を強化し、そういう形でアジアで戦争をやるしかない。それが日帝にとって勢力圏争奪戦からはじき飛ばされないための唯一の選択となっている。

 しかし、改憲と大々的な侵略戦争は、国家機構内の労働組合を放置しておいてはできない。そうした労組的団結が存在したまま戦争に突入すると内乱を招き、体制が崩壊してしまう。戦前の「産業報国会」のように労働者が積極的に協力しない限り、帝国主義戦争はできない。だから日帝は、07年改憲に向けて公務員労働運動をつぶすことを最大の国家政策にしているのだ。4大産別決戦は、改憲と戦争を再び繰り返すのかどうかをかけた歴史的な意味を持つ。4大産別決戦のすべての現場で、「ここで踏ん張って戦争を止めよう」という叫びを響きわたらせよう。

 労働者の国際的団結で帝国主義と闘おう

 日帝の戦争・改憲の未来は絶望的なものでしかない。何よりも、第2次大戦に至るすべての歴史を肯定し、再び天皇を押し立て、「日の丸・君が代」を強制し、靖国イデオロギーを振りまく、というやり方でしか戦争ができないからだ。これはいったん第2次大戦で敗北したやり方である。それから60年を経てまったく同じ方策にのめり込んでいるのだ。今度こそ日帝を打倒しなければならない。

 すでに現在、靖国問題をめぐって日韓、日中関係が緊張し、それが韓国とのFTA交渉を中断させるまでになっている。アジアを勢力圏とするために戦争国家にのしあがる、そのために靖国参拝を強行する、しかしそれへの反発からFTA交渉がこじれて勢力圏化が絶望的になる――こういう事態になっているのだ。戦争国家として突出しようとすると、アジア勢力圏化が後退してしまう、というジレンマにすでに陥っている。このような意味で、日帝は帝国主義の“最弱の環”なのだ。

 日帝はだからこそますます凶暴化するだろう。しかし、日米韓3国の国際連帯を発展させ、日本の労働者人民が決起すれば、日帝を一段と破滅的なところに追いつめ、革命に転化することはまったく可能だ。

 日帝の攻撃には、体制としての成否がかかっており、尋常ではない激しさがある。だから、一瞬でも立ち止まってしまうと、労働者階級は敵の攻撃の暴風雨に吹き飛ばされてしまう。しかし、その攻撃の大元には、帝国主義としても解決しようのない絶望的な危機がある。だから、労働者側がたえず一歩でも二歩でも前進しようとしていれば、必ず敵の破産がさらけだされ展望が開かれてくる。これが05年の激闘をとおしてつかんだ確信である。06―07年、一歩どころか何十歩も何百歩も進撃して、日本革命への血路をなんとしても切り開こう。4大産別決戦を基軸に、改憲阻止決戦、新たな安保・沖縄闘争を大爆発させよう。


http://www.zenshin.org/f_zenshin/f_back_no06/f2229c.htm#a14_1

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