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「もしアイスランドでうまくいくのなら、他の国でも うまくいくであろう。アイスランドはスタートするのには最適の場所である」
http://www.asyura2.com/0601/hasan45/msg/375.html
投稿者 hou 日時 2006 年 2 月 19 日 23:52:28: HWYlsG4gs5FRk
 

http://www.iceland-kankobunka.jp/topics/hydrogen-newsweek.htm

ニューズウイーク 2001年4月8日号掲載を抜粋

  水に存在している水素をエネルギー源とする社会を提言した

ブラーギ・アルトナルソン(Blagi Arnason)のビジョンを人々は長年嘲笑してきた。

今、彼の国アイスランドで最初の試みが始まろうとしている。

その次は世界中で行われるのであろうか?

水素経済

― Hydrogen Economy −

−「もしアイスランドでうまくいくのなら、他の国でも

うまくいくであろう。アイスランドはスタートする

のには最適の場所である。」―

ダイムラー社F.Panik談。

 

 正午少し前、弱い冬の太陽がゆっくりとアイスランドの溶岩の荒地に上り始めた。

乳青色の湯気の立つブルーラグーンを前に、アルトナルソンは未来につき話を始めた。彼の声は地底から出てくる蒸気の音にかき消されがちであった。

 この30年間近く、アルトナルソンの夢はこの火山エネルギーを利用し、H2OからHを分離し化石燃料のない社会、即ち最初の「水素経済」を創造することであった。

白い蒸気を噴出している地熱発電所スヴァルセンギを指差しながらArnasonは次のように話した。

「私が見るのは第一段階であり、私の子供達は変革期を経験し、私の孫達がこの新しいエネルギー経済下で生活することになろう。」

 極寒の風も気にしないでアルトナルソンは、彼につけられたあだ名「水素教授 Professor Hydrogen」の由来となったビジョンにつき説明をし始めた。

「先ず、アイスランドの全ての自動車・トロール船を対象に、ガソリン燃焼エンジンを米国のスペースシャトルと同じ様に水素燃料電池で動く電気モーターへと、徐々に変換していくことである。一方、地熱や水力のエネルギーを利用し、純粋な水素ガスを大量に製造することに着手する。」

 アルトナルソンは国民に対し、世界の主要エネルギー源としてアイスランドが「北のクエート」を目指すべきだと話したことがある。

「彼の言うことに本当に耳を傾けた人は最初そんなに多くはなかった。だって、車を動かすのに「水」を使うなんて一寸考えられませんものね。」とアイスランド商工大臣であるV.Sverrisdottir女史は笑いながら話してくれた。

 でも、今や考えられない話ではなくなった。油井が枯渇した時、原油を代替するのは多分水素であろうと考えている専門家達の中に、ブッシュ政権の石油専門家やGM・Fordの未来派が含まれている。

アイスランドの計画は、今やダイムラーベンツ、シェル及びEUの支援を受け、水素経済の社会面でのラボテストが数千万ユーロを使って行われることが計画されている。今後数ヶ月間に、アイスランドは3台の水素動力源バスを使用し、現場で水素が製造される水素充填ステイションの建設を開始する予定である。

 すべてが計画通りに行けば、この実証試験は2005年には乗用車・漁船に広げられ、30〜40年以内に全ての車が対象となる。

 他国も追従することになろうが、残された問題は「何時」である。長期的には我々は水素に移行して行かねばならない。それが唯一化石燃料と離縁する方法なのであると、M.Mann, Engineer at the US National Renewable Energy Laboratoryは話している。

 水素経済体制ビジョンは現実化されると非常に素晴らしい感じである。水素は水の中に存在しており、大海の如くその供給は無限といっても良い。また、純粋な水素は無害な燃料であり、流出しても空気中に消える。水素燃料電池は水蒸気を排出するだけで、電気モーターは無音である。

プロセスは、水素を分離するため水に電気イオンを与え、分離された水素が燃料電池内で酸素と再結合し、その結果モーターを動かす電荷イオンと副産物として水分子が出ることになる。

 要するに、アルトナルソンは強力な水素燃料を製造するため自然界のエネルギーを使うつもりなのである。この水素燃料は水蒸気を排出するだけであり、温暖化ガスや地球温暖化とは全く無縁で尚且つ枯渇することがないクリーン・エネルギー井戸を約束してくれるものである。

 アルトナルソンは誰でも知っている考えだと思っていた。1970年代、彼は化学博士学位を取得するため、氷河の上で生活し地下熱水賦存地図を作成していた。熱水の存在は国民にとり何ら秘密ではなく、生パンを地中の箱に入れて

パンを焼いたり、裏庭を掘って蒸気湯沸し器を設置したりしている。ただ、アルトナルソンが違ったのは、この分布図を作り巨大な地熱エネルギーが埋蔵されていることを明らかにしたことである。

 それは驚くべき発見であった。アイスランドはエネルギーが乏しい国であり、800年代後半にノルウエーのヴァイキングにより発見された独立心の強い国民の心を痛めてきた厳しい現実でもあった。自国の化石燃料がなく、その上寒冷な気候により多くのエネルギーが必要であり又燃料を大量に必要とする漁船に国民経済が依存しているために、アイスランドは外からの石油に大きく依存してきた。オイルショックで大きな衝撃を受け、インフレは1944年(1994年?)−1995年で17.6%に達した。

 アルトナルソンは、エネルギーの奴隷状態にある時に国民が“どうしたらこの状態を変えられるのか”と問うことは極めて自然なことであったことを、思い出した。彼は最初から水素がその答えだと思っていた。1970及び1980年代、水素燃料電池はサイズが大きくて高価であった。米国の宇宙計画で使われていたことのみが、彼の構想の唯一の頼りであった。1978年最初からは恐る恐る最初の論文を発表した。「それを出しても良いものか自信はなかった。皆は私がおかしくなったと考えると思った。先生は論文を読んで、“もし20年か30年で実現できると信じているのなら、今から皆に話し始める必要がある“と言った」ことを彼は想い起こした。

 彼はロータリークラブを中心に、級友とか小さな集会で話をし評価を得た。彼の旧友でNational Power Companyの副社長であるM.Mariussonは、「彼はいつもエネルギー専門家達からグルと呼ばれていた。彼は水素教授の名前が好きでなく、皆があざけっていると思っていた」と話している。(事実多くの人があざけっていたのだが・・)

 間もなく世の中が彼に追いついた。1990年代アルトナルソンのやっている仕事に良い結果が出始め、巨大石油・自動車会社が水素を「次の石油」として真剣に考え始めた。

最初の突破口は1992年バンクーバーにあるBallard Power Systemsが、最初の水素燃料バスの実証試験を行ったことである。このバスはレイキャビックで使われる自動車のモデルとなった。驚いたことに、Ballard社のバスの水素モーターは技術者が予想していたよりも15倍の150キロワットを出力したことであった。ダイムラーベンツが積極的になり、25百万ドルを投資し、アイスランドに取り組み始めた。

 そのためにアイスランドはぴったりの場所であった。新型自動車の耐久性をテストするための厳しい気候条件下にあり、28万人の小さな人口でエネルギーコストが高く代替エネルギーを実験する理由があったことである。更に、アルトナルソンを長年目立たない会議で見てきたダイムラー社の燃料電池責任者F.Panikとアルトナルソンが知己であったこともある。巨大多国籍企業の大物科学者が支持したことで、疑問を抱いていた人は沈黙してしまった。

 1998年ダイムラーの一行が交渉のためレイキャヴィークに到着したが、当地としては余りにも大きな話題であったので、交渉は郊外の秘密の場所で行われた。「我々は隠密裏に行う必要があった。全てがうまくいった。」とアイスランド側交渉責任者であったH.Arnason国会議員は回想している。

 巨大自動車会社が興味を示したことで、他世界的企業も興味を示すこととなった。結果的に、Icelandic New Energyが設立され、その構成は51%−アイスランド、49%−私企業(DaimlerChrysler,Shell oil,Norsk Hydro)となっている。

お互いが皆知り合いである小さな首都レイキャヴィークで、あっという間に取引が成立したことは欧州の実業家に衝撃を与えた。

 EUも直ぐに興味を頂き、現在までに本件のバス・プロジェクト分野に2.85百万ポンドを割り当ててきている。EUは同様のバス・プロジェクトを、英国・ドイツ・スペイン及びその他最低4ケ国で行う計画をしている。「もしアイスランドでうまく行けば、他の国でもうまく行くであろう。アイスランドはスタートするには最適の場所である。」とPanikは話している。

 アイスランドは非常に野心的な国である。バンクーバーとパームスプリングス間の都市の中には既に水素バスを走らせているところもあるが、アイスランドがやろうとしているのは、化石燃料を完全になくし温室効果排出物を出さない最初の社会を創り出そうとしていることである。New Energy社は水素充填ステイションや自動車の設計を一段と高め、水素経済に関する全般的な考えが社会的に受け入れられるように、今後広範な市場調査を展開していくことになろう。

 障害の核心はコストである。New Energy社は、甘く見積もったとしても水素はガソリンの倍のコストとなると、見ている(水素はガロン当たり倍の距離を走ることが出来るが)。

 アイスランドは製品分野でもモデルである。International Code Council(Virginia)は4月に、水素経済に関連する火災・電気・工業燃料基準(code)について、公聴会を開催する予定であり、6月にはInternational Organization for Standardizationが水素用タンク・コンテイナー・充填所に関する安全ガイドラインを検討する予定である。「アイスランドは基準や規格をテストしたり実証したりするには丁度手ごろなサイズで

あり、世界に今後どうすればよいかを示すことが出来よう。」とRasulは話す。

 問題は「いつ」そして「値段は」ということである。Shell Hydrogenは米国で水素燃料プラントと充填所を建設するには190億ドルかかり、英国では15億ドル、日本では60億ドル必要だと計算している。「アイスランドでやれば、数百万ドルでやれるし、ここの人は島の外に車を持ち出して運転はしない。だから、島外でインフラが出来上がるまで待つ必要もないのである。」とCEOのD.Hubertsはいっている。

 アイスランドは他の分野でもユニークさを見せることになるかもしれない。同国の莫大な地熱エネルギー賦存は欧州では無敵であり、水素を欧州本土に輸出し新しい産業を興す夢がある。

 何はともあれ、新たなるエネルギー時代の夜明けにあたり、アルトナルソンはこの荒地のヴァイキングの土地に水素経済の最初の種が育ったことに満足することになろう。水素教授は最早彼につけられたニックネームをいやがる理由はないのである。

                                          抄訳:ジャパン アラブ メディアネットワーク

                       アッラーイド氏

 

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