★阿修羅♪ > 国家破産46 > 605.html
 ★阿修羅♪
はめられた村瀬清司社会保険庁長官  【岸田 徹 】
http://www.asyura2.com/0601/hasan46/msg/605.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 6 月 04 日 11:36:54: ogcGl0q1DMbpk
 

http://www.kishida.biz/column/2006/20060530.html

はめられた村瀬清司社会保険庁長官
岸田 徹 【岸コラ】
2006年5月30日(火)

昨日のテレビ朝日「スーパーモーニング」で、鳥越俊太郎が「どうして、そんなに問題として取り上げるのか分からないなぁ。だって、それだからって、国民が不利益を被ってるんですか」と不思議がった。

これに対して、税金の無駄遣いを指摘するテレビ朝日の玉川徹が「だってね、国民年金の免除申請を勝手にされたら、受取る年金が三分の一になってしまったりするんですよ」と反論し、鳥越さんも「あっ、そうか、そういうことですね」とその場をあっさり納めた。

社会保険庁の組織は、中央に厚労省が管理する総務部、運営部がある。そのトップが社会保険庁長官だ。今は村瀬清司氏だ。2年前(2002年7月)に民間から初めて選ばれた長官だ。その下に各都道府県単位に47の社会保険事務局がある。その出先機関として265の社会保険事務所がある。我々が年金や政府管掌の健康保険について問い合わせたり、手続きしたりするところだ。

問題だと騒がれているのは、26都府県で44の社会保険事務所が11万4千人分の不正免除や猶予を申請していたというもの。これで計算上は本来納めなくてはいけない納付義務者の数が減り、その分「納付率」が上がったというのだ。役所は本来、年金保険料を納めていない人に納めてもらうように働きかけ、その結果納付率を上げるのがスジで、活動がおかしいと指摘されている。

しかし、ここは鳥越さんが言ったとおりなのだ。それが国民に不利益を被らせたのか。確かに、社会保険庁の活動は本末転倒で、そんなことやっているのだったら人を減らせと怒りがこみ上げてくるが、社会保険庁が年金保険料の免除申請を勝手にやったからといって、年金の保険料が集まらなくなったわけじゃない。

弊害があるとすれば、勝手に免除申請をする事務コストが我々の納めた社会保険料や税金から使われることぐらいだ。後は、本人の意思を確認しないで勝手に申請書を作成したのだから文書偽造の罪には問われる。これは、我々が追求したい年金問題ではなく、公務員の違法行為の問題だ。

ヒステリックになって年金問題を社会保険庁いじめで終始してしまったら大変なことになる。本当に改革しなくてはならないのは「納付率」ではなく、「年金制度」なのだから。

それが、すっかり社会保険庁解体論に発展し、村瀬長官の辞任論に至ってしまっている。いったいこれは何の騒ぎなのか、探ってみると実に不可解なことがある。不可解な点は大きく二つ。ひとつは、なぜ村瀬長官に矛先が向くのか。もうひとつは、この不正事件が何でニュースになったのかだ。

村瀬長官の責任論は、こうだ。こういう無茶苦茶なことをやるようになったのは村瀬長官が来てきついノルマをかけるようになったからだというのだ。

村瀬さんは、社会保険庁改革のために小泉首相から要請されて就任したということになっていた。ところが、当の小泉さんは「なんで、こんないい加減なことをやってしまうのか」と他人事。無責任とも思える発言だが、小泉さんの発言は無理もない。何も小泉さんが村瀬さんを知っていて就任を要請したわけではないからだ。

村瀬さんが民間から長官に就任した理由は、当時グリーンピアなどの年金財源の無駄遣いや国会議員の年金未納問題などが騒がれ、国民年金の納付率が下がりっぱなしで、民間から活力を与えるということで就任した。

なんで村瀬さんが選ばれたのかは、小泉首相が直接頼んだのではなく、厚生労働省が、当時損害保険協会の会長だった損保ジャパン(旧・安田火災)の平野社長に長官の務まる人材を紹介してくれと依頼し、損保ジャパン内で人選し、副社長だった村瀬さん(旧・安田火災出身)が行くことになった。(読売新聞)

村瀬さんにしてみれば、納付率が下がりっぱなしの状態を何とか上げてくれと頼まれたようなもので、その期待にそう活動をしただけのこと。旧安田火災は平野社長以下営業活力の点では評判が高く、業界トップの東京海上をキャッチ・アップする気概が強かった。その意味では、厚労省が納付率アップのための人材を安田火災に求めたのは順当だった。

しかし、納付率低下は国民の年金制度への根強い不信感が背景にあるのと同時に、徴収事務についても問題があった。納付率が急激に下がり始めたのは、グリーンピアや国会議員の未納問題が起きた2004年より前のことだった。

国民年金の納付率は、2000年には73.0%、以降2001年70.9%、2002年62.8%、2003年63.4%、2004年63.6%、2005年64.8%と、2001年までは7割を維持していたのに、2002年になってからは6割の前半で推移している。グリーンピア問題など不信感が増した2004年の水準はすでにその2年前から始まっていたのだ。

2002年のぐっと下がった時期に何があったのかというと、保険料の徴収を、それまで地方の自治体が行なっていたのを社会保険庁が行なうようになったのだ。理由は、小泉改革の地方にできることは地方にということと関連していて、地方の自立を中央が要請したものだから、今まで中央の仕事を地方にお願いしていたものを引上げなくてはならなくなった。これに国民年金の徴収事務が入っていた。

どちらが徴収しても変わらないのではないかと思えるが、実際には市区町村の方が地方税の納付状況を把握しているので、保険料の請求は誰にしたらいいのかがよく分っている。10%近く納付率が下がってしまったのは、このような実務的な側面が見逃せない。

ところが、状況が少し変わってきた。2004年10月に国民年金法が改正され、社会保険事務所が市町村から住民の所得情報の提供を求めることができるようになったのだ。この情報を元に一部の社会保険事務所では不正免除の申請を恒常的に行なうようになった。

これが、村瀬長官の就任時期(2004年7月)とたまたま一致するのだ。村瀬長官が就任したのは納付率アップのためで、村瀬さんが旧安田火災の出身だということからすれば、その発破のかけ方も大変なものがあったのだろう。しかし、村瀬さんが就任せず、相変わらず厚労省のキャリアが長官をやっていたとしても、市町村からの所得情報をもとに不正免除の申請が始まっていたに違いない。社会保険庁が存在できるとすれば、それはもう納付率のアップ以外に理由はなかったからだ。

もうひとつの不可思議は、報道だ。そもそも、社会保険庁の不正免除申請を暴いたのは誰なのか。どうして、これがニュースになったのかをたどると変なのだ。

この事実を発表したのは、実は社会保険庁の社会保険事務局だった。大阪社会保険事務局が5月22日に府内の未納者約3万7千人について、本人の申請がないまま納付の免除や猶予の手続をしていたと発表したのだ。また、同じ日に長崎社会保険事務局が5千人あまり、東京社会保険事務局も77人の不正免除手続を行なったと発表した。

これに対して川崎厚労相が局長の監督責任は重いと24日に更迭するよう指示したとされ、社会保険庁は同日菅原昭大阪保険事務局長を更迭した。後任に瀬戸茂愛知社会保険事務局長を充てたが、愛知でも同様の不正免除手続が行なわれていたことが発覚し、瀬戸氏も異動させる方針を社会保険庁は固めた(5月30日産経新聞夕刊)。

地方の保険事務局が中央の知らない間に不正をしていたことを発表し、驚いた中央が地方の局長を更迭する。なんでこんな不思議な更迭劇が起こったのか。これには二つのことが想定される。

ひとつは、不正免除申請は村瀬長官はじめ中央のキャリアが地方に指示して一斉に行なったが、責任論が噴出したので、責任を地方に押し付け、中央の責任者は知らぬ存ぜぬを通した。

もうひとつは、本当に地方が勝手にやって納付率を上げ、何らかの追及があって自白せざるをえなくなったのだが、それは村瀬長官には知らされなかった。

常識的には、前者が正解なのだろうが、今回は後者が正しかったのではないだろうか。

なぜ5月22日に地方の社会保険事務局が不正をやっていたと発表したのかは、5月23日に「週刊朝日」が発売されるからだった。その中で「スクープ! 現役職員、OBが告発 門外不出の不祥事リストを入手 社会保険庁の巨額裏ガネ」という記事が書かれていた。

私はこの記事を読んでいないが、朝日新聞がこれに合わせるように5月23日の第一面に「年金納付、不正に免除 4万2700人分、無断で 未納率の削減狙う 19社保事務所」という記事を載せている。その手口を第2面の「時時刻刻」で詳しく述べている。

他の新聞社の扱いは小さく、読売新聞は23日に大阪の朝刊に発表があった事実を述べているだけだ。日経新聞に至っては24日に囲み記事で報じているだけだ。

今回のように報道が大きくなったのは明らかに朝日主導だということが分かる。

不正免除申請の問題は、実は今回が初めての報道ではなく、今年の3月に京都社会保険事務局で1万6千人について本人の申請がないのに免除承認通知を作成していたという報道がある。このときは年金課長が減給処分になっている。

朝日の報道はこの問題を追ったものだと思われる。それを週刊朝日の記者が他でもやっていると追求したのだ。その情報を得た大阪社会保険事務局が耐えられなくなって週刊朝日発売前日に自ら発表したというのが真相だと思う。

じゃ、朝日のスクープ勝ちだと思われるかもしれないが、事はそう簡単ではない。まず、大阪や長崎、東京の社会保険事務局が中央の許可なく勝手に発表したとは絶対に考えられない。では、村瀬長官にもう逃げ切れないから発表させてくれと断ったのかというと、それもありえない。

しょせん、役人は役人しか信じない。中央のキャリアに相談し周到に打ち合わせをしてからの発表だったに違いない。つまり、社会保険庁には、表向きの村瀬長官の組織と裏の純然たる官僚組織の二重構造が完全にできているという疑いだ。

さらに考えるのなら、週刊朝日のスクープも社会保険庁内部の協力者がいない限り「門外不出の不祥事リスト」など手に入るわけがない。恐らく、村瀬長官追い落としの官僚勢力が内部資料を朝日側に流したのではないか。

では、なぜ5月23日発売の週刊誌だったのか。それは二つ考えられる。ひとつは、社会保険庁改革関連法案が今の国会で通過するはずだった。社会保険庁の解体につながるとされるこの法案を社会保険庁サイドが阻止したかった。

もうひとつは、損保ジャパンへの業務停止命令だ。損保ジャパンは、お客が支払うべき保険料を社員が立て替えて保険契約を結んだとして今週中にも厳しい業務停止命令が金融庁から出ることになっている。(5月23日日経夕刊)

ここのところ金融庁は、過度なノルマの行き過ぎたセールス体制について厳しく処分を行なっている。アイフル、明治安田生命、三井住友銀行、そして損保ジャパンだ。どこも業界トップを狙うために過度なセールスを展開したとされている。

村瀬さんが損保ジャパンの出身であることを考えると、タイミングがよすぎるのだ。行き過ぎたセールス体制というのは是正しなくてはならない問題かもしれない。しかし、それを是正するのは役人ではない。

行き過ぎかどうかは、お客や社内の役職員が判断することだ。また被害にあっていればそれを報道するマスコミが判断すること。さらに、行き過ぎたセールスが市場で認められなければ、悪評が立ち株主も去っていくというルールが民主主義経済の基本だ。

やたらと金融庁が罰則を連発するのはよくない。それに呼応するように社会保険庁のキャリアが「村瀬決死隊」のセールス手法を非難したのではないか。過度なセールスを否定し、自由競争を否定する社会は、社会秩序を調整する役人天国だ。小泉改革の中で生き残ろうとする官僚が、周到に考えて今回のおかしな発表劇を演じたのではないだろうか。

http://www.kishida.biz/column/2006/20060530.html

 次へ  前へ

  拍手はせず、拍手一覧を見る

▲このページのTOPへ HOME > 国家破産46掲示板


  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。