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「エコツーリズム」の現実を問う  【ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版】
http://www.asyura2.com/0601/hasan47/msg/387.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 7 月 29 日 11:44:06: ogcGl0q1DMbpk
 

http://www.diplo.jp/articles06/0607-3.html

「エコツーリズム」の現実を問う

アンヌ・ヴィニャ(Anne Vigna)
ジャーナリスト、連帯的エコツーリズム推進団体「エコーウェイ」代表
訳・阿部幸

 カンボジアのアンコールの寺院めぐりは、あるツアー会社が取り仕切っている。ヴェトナムのフエのような歴史的都市には、観光ツアーがとめどなく押し寄せる。世界各地の遺跡の一部はユネスコの世界遺産に登録されているが、それでも結局は金儲けが先に立ち、遺跡の保護や住民の生活は二の次だ。世界観光機関(WTO)からは「エコツーリズム」なる理念が打ち出され、環境問題が気になる旅行者たちの耳をくすぐる。だが、この用語には明確な定義がない。およそエコロジカルとは言えず、どう見ても社会的に問題のあるようなプロジェクトでも、政府や民間団体によって「エコツーリズム」と銘打たれる。たとえばラテンアメリカの事例のように。[フランス語版編集部]

原文
http://www.monde-diplomatique.fr/2006/07/VIGNA/13608

 グアテマラ北部に、中米で最も広大な自然保護区であるマヤ生物圏保護区が広がっている。ここに、エル・ミラドール遺跡という森林に守られた秘宝がある。地元コミュニティと人類学者のほかには、この26のマヤの都市遺跡を知る者はなかった。それらは先古典期のもので、パレンケ、コパン、ティカルといった他の主要なマヤの遺跡よりも1000年から1800年も古い。メソアメリカ最大の高さを誇るピラミッド(高さ147メートル)が残されており、専門家はマヤ文明発祥の地であるとする。アメリカの人類学者、リチャード・ハンセンは、この文化遺産に新たな金鉱を見出した。「ここには熱帯林と計り知れない価値を秘めた遺跡という他に類のない取り合わせがあります。この遺跡は、グアテマラにとって大きな観光資源となるでしょう」

 彼によると、ここに複合型の観光施設を建設すれば、その収入によって遺跡を修復し、考古遺物の盗掘を防ぎ、自然資源を保全できるという。こうして生まれたのが「エコツーリズム」をうたう「エル・ミラドール計画」である。グアテマラのベルシェ大統領に加え、唯一の目的は自然保護だという多数の機関(1)から支援を受けている。しかし、保護区に年間12万人の観光客を迎え入れるという計画は、それまで一体だった地元のコミュニティを分断した。学術目的や観光目的と言いつつも、どこか不透明感がただよう同計画のもと、遺跡が私物化されようとしているのだ(2)。

 プロジェクトの詳細が明らかにされ、環境影響調査が多少なりとも進められる以前から、マスコミはエル・ミラドール計画を、グアテマラ経済と地球環境にすばらしい利益をもたらすグッドニュースとして報じていた。しかし水の問題は取り上げられすらしなかった。エル・ミラドールには水がなく、発掘調査団にはヘリコプターで水が輸送されているが、観光客が訪れるようになったらどうするのか、解決策は何も考えられていない。それでも、ハンセン氏は事業の推進(つまり遺跡付近の土地の収用)を急ぐべきだと言う。「マヤ生物圏保護区の豊かさを守らなければなりません。地元のコミュニティが、環境破壊の元凶となっています」

 彼の挙げた推進理由は激しい顰蹙をかった。環境破壊の元凶だとされたコミュニティは、ペタン森林コミュニティ協会(ACOFOP)というネットワーク組織に属している。この組織は、1992年のヨハネスブルク地球サミットで、森林管理協議会(FSC)の認証条件(3)を満たした「保護区内の土地50万ヘクタールの持続可能な管理」によって表彰されている。「ACOFOPはマヤ生物圏保護区の森林破壊には一切責任がない」。こう憤慨するのは、ペタン行動推進連帯グループのイレアナ・バレンスエラだ。「ハンセン氏は、環境破壊の原因が(私企業による)石油開発や森林開発、麻薬密輸用の道路にあることをよく知っているはずだ。観光事業を進めれば、これまでACOFOPの活動のおかげで守られてきた区域でも、住民が追い立てられ、企業活動が始まることになるだろう」

 エル・ミラドール計画は、すでに当初の計画に対する広範な反発を受け、「グリーン」さを増す方向で見直されている。もともと予定されていた道路と空港にかわり、鉄道とヘリポートが敷設されることになった。しかし、そのうち観光客のバスや森林会社のトラックが行き来するようにならないという保証はない。プエブラ・パナマ計画(4)の一環であるムンド・マヤ計画により、「観光道路」の建設が予定されているからだ。ムンド・マヤ計画は、米州開発銀行(IADB)のほか、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドル、ベリーズ各国の観光省が主体となり、目的を「グリーン・ツーリズム」の発展と地元住民の利益においている。少なくとも建前ではそうだ。

 具体的な目的はというと、ムンド・マヤ計画は、「観光客がマヤの様々な遺跡の間を容易に移動できるようにし、観光インフラを整備する」ことを掲げている(5)。メキシコのパレンケやトゥルム、グアテマラのティカル、ホンジュラスのコパンといった遺跡を結ぶ交通路を整備するということだ。それは、マヤ生物圏保護区内エル・ミラドール付近の手付かずの区域を横断することになる(6)。この地域は公式には「文化と環境を尊重し、収益を貧困対策に用いる観光」の発展を約している(7)。しかし実際には、ムンド・マヤ計画はすぐに逆の結果を生みかねない。


40年前とまったく同じ

 メキシコでは、142件の「ビーチ」増設プロジェクト(8)が進行中で(予定総数は260)、海岸が次々とコンクリートで固められている。環境保護政策を展開し、特筆に値する例外となっているコスタリカを除き、中央アメリカでは自然は売り物になると思われている。だが、「エコツーリズム」だとされるプロジェクトの多くは、自然のなかで過ごすというだけで、プロジェクト自体に関しても環境への影響を軽減する措置に関しても、策定や運営に住民が加わることは想定されていない。民間の投資家は未開拓の保護区を求め、中米の国々は素材を提供して、従来型の観光から収入を得ようとし、関係省庁では各自が任期中に「大プロジェクト」を展開することを夢みるといった具合だ。

 メキシコのフォックス大統領は、2000年の当選直後から、国家観光振興基金(FONATUR)が主導する環境破壊的なプロジェクトを支持してきた。それは「世界最後の水族館」と呼ばれるバハ・カリフォルニア州の開発プロジェクトである。この海域は、他に例のないほど豊かな海洋生物の住みかであり、コククジラとジンベエザメの繁殖地となっている。FONATURのコルテス海プロジェクトは、騒音や化学汚染によって多大な被害を受けかねない244の島々(9)にアメリカのヨットを引き寄せようとするもので、総計5万隻の私有船舶を収容可能な24のマリーナの建設を計画し、2014年までに500万人の観光客を見込んでいる。

 民間の投資家はやりたい放題だ。コルテス海プロジェクトの一部をなすパライソ・デル・マール(海の楽園)計画は、必要な許可を取得せず、所定の手続きにのっとった環境影響評価もなしにスタートした。500ヘクタールの土地に、コテージ1500棟、総室数2000のホテル群、2つのゴルフ場、ショッピングセンター、遊園地、2つの民間病院の建設を予定しており、投資総額は推定9億ドルにのぼる。投資家の軽挙妄動(無許可の道路建設、マングローブ林の破壊、等々)を前にしたユネスコは、1978年以来メキシコによって保護されてきたことになっているカリフォルニア湾の島々を世界遺産に登録した。バハ・カリフォルニア州のアグンデス知事と州都ラパスのコシオ市長が、パライソ・デル・マールの起工式には参加したくせに、2005年8月23日の世界遺産登録の記念式典に出席しなかったことは意味深長である。「ユネスコは、観光に関しては何ひとつ規制はできないだろう。その権限はないからだ」と、ユネスコで働く専門家のゴンサロ・アルフテルは嘆く。ユネスコは政府の要請があったときしか介入することができず、メキシコ政府は介入を要請していない。この民間プロジェクトが「環境影響評価を行った際に、鯨とマングローブの存在を考慮しなかった」として裁判に訴えたのは、地元のネットワーク組織、シウダダノス・プレオクパドスである。このネットワークによれば、「社会的な背景は無視され、地元の発展は思いきり軽視されている」のだ。

 ホンジュラスもまた、カリブ海で最も美しい浜辺にあるジャネット・カワス国立公園のすぐそばで「エコツーリズム」を手がけている。ここは1880年以来アフロ・クレオール系のガリフナ族が暮らす土地だ。沿岸部では、英語が話されドルが流通するロアタン島を中心として、ダイビング向けの島々を北米人に、パイナップル用の農地をアメリカ企業ユナイテッド・フルーツ(1990年にチキータ・ブランド・カンパニーに改称)に「売り込んで」きた。まだ残っていたのが、やしの木に囲まれ、それまで政府から顧みられなかった公園付近の土地だった。

 ホンジュラス観光局は極めて実利的な「国家利益」の名のもとに、海岸部のガリフナ人の土地300ヘクタールを補償金なしに収用した。そして2004年にこの土地を、一大プロジェクト「ミコス・ビーチ・アンド・ゴルフ・リゾート」の事業主体として設立された民間企業に1900万ドルで売却した。このプロジェクト名は多くのガリフナ人に強烈な印象を与えた。「ミコスは我々の言葉で、猿という意味だ。ここには猿は一匹もいない。やつらにとって浜辺にいる猿とはただひとつ、我々ガリフナ人のことさ」。ガリフナ文化振興組織、ペリカン・カフェを率いるアレックス・ポディージャ青年は語る。ここには猿はいないが、25ヘクタールのゴルフ場と、総室数2000のホテル群、コテージ170棟、コンベンションセンター、マリーナなどが建設される。主要なアトラクションは国立公園であり、詳細は不明だが「数々のレジャー」が繰り広げられる予定である。「ガリフナのダンスや音楽も魅力いっぱいだ」とプロモーターは言う。セックス・ツーリズムも織り込みずみということだろうか。

 エル・ミラドール、コルテス海、ミコス・ビーチ。この3つの大プロジェクトでは、40年前に風光明媚なアカプルコ湾がたどった道とまったく同じように、自然が収奪され、売り物にされている。使われる方法はほとんど変わらない。腐敗した公権力、出されない情報、少額あるいは皆無の補償金、環境や社会への影響の恒常的な否定。プロジェクトを主導するのは、いつも同じプロモーターと投資家であり(底値で買いあさるため「観光のコヨーテ」と呼ばれる)、地上に手付かずで残る最後の秘境を探し回っている。


地元コミュニティへの圧迫

 世界観光機関(WTO)と諸国政府が採択した世界観光倫理コードや、エコツーリズムに関するケベック宣言(10)など、どこ吹く風といった現状だ。「エコツーリズム」の真の意味とはとてつもなく隔たっている。エコツーリズムという呼称が、自然保護を名目として(実際はどうであるかにかかわらず)、従来型の観光では考えられないほどのスピードで、自然資源の私有化を推し進めている。なかには環境整備をうたったものもあるとはいえ、どのプロジェクトでも事業者の所有権の保障が要請され、地元住民が追い立てられている。

 地元コミュニティは自分たちの土地、漁場、水源という、生きるための手段を失っていく。これまで共同で利用していた場所(浜辺、川辺、森林)が、不法な利用だと突っぱねられて、私企業の手に落ちることもある。これらの観光事業によって、今なお見られる鯨やセイバ(グアテマラのシンボルである木)、ガリフナの珊瑚礁は、最も富裕な層、つまり最大の破壊者となってきた者たちの専用とされる。保護された自然を味わうためには料金を、しかも高額を支払うことが当然になっていくだろう。エル・ミラドールはヨーロッパの(より文化的な香りのする)ツーリズムを当て込み、コルテス海やミコス・ビーチはアメリカ人の好みに合わせて整備される。

 「エコツーリズム」という名称の不正使用は、しかしながら、ほとんど批判されることがない。この言葉は広くよいイメージを持たれ、現在のトレンドになっており、国際的な開発機関にとっては万能手形にすらなっている。中央アメリカとメキシコでは、国連機関(11)や融資機関、米州開発銀行、米国国際開発庁(USAID)、欧州連合(EU)などが、地元コミュニティに向けた多数の開発プロジェクトをあたためている(12)。これらの機関は開発の利点として、経済活動の創出や、職業教育の機会提供、そして地元の自然遺産や文化遺産の豊かさに関する住民の啓発といったことを挙げる。遺産を保全しながら有効活用するという要請に応える完璧な公式、と見えなくもない。

 NGO団体のコンサベーション・インターナショナルや米州開発銀行のような諸機関は、この地域での活動方針を批判されつつも、1990年代には地元コミュニティが完全に主導する小規模な観光事業に資金を提供していた。そうした事業であれば、住民は観光収入によって真の環境保全を実践することができる。

 国連環境計画(UNEP)のプロジェクトでは「環境保全プロセスを推進するのは地元コミュニティの参加である。住民なくしてはいかなる観光事業も成り立たない」と、UNEPで中南米地域の観光関連事業を所轄するディエゴ・マセラは語る。対照的に政府にとっては「地元コミュニティ」という要因、つまり住民による事業の開始と運営は、新たな問題の種となる。地元の自然資源の価値に気付いたコミュニティ組織は、安い値段で土地を売ったり、水源や滝の私有化を許したりはしなくなるからだ。

 メキシコのチアパスで政府(州と連邦)が推進するエコツーリズムは、地元コミュニティに依拠したものではなく、民間の家族経営的な観光事業を奨励しようとする。州政府はエコツーリズムを「チアパスの経済問題に対する解決策」だとひたすら持ち上げる。しかし過去数年にわたって資金を出している対象は、メキシコのエコツーリズム事業のなかでも最悪のものだ。最近チアパスに調査に行ったエコツーリズム・コンサルタントのマキシム・キフェルによると、「住民は準備段階で何も相談を受けていない。すでに決まった事業を示され、できあがったコンクリートの小屋を見せられるだけだ。環境汚染を抑えるための措置も講じられていない。責任者は訓練を受けておらず、集団運営体制もなければ、地元発の開発プロジェクトもない。ごみ処理についても考慮されていない」という。さらにひどいことに、地元コミュニティが観光プロジェクトを拒否した場合に用いられる説得手段は、地域にとって暗い未来を予見させる。サパティスタのコミュニティであるロベルト・バリオスの自治評議会は、彼らの滝のそばでエコツーリズム事業を推進しようとする公務員や民間の投資家による脅迫を、何度も非難している。だが、コミュニティの第一の権利は、自分たちの土地への来訪を拒否できることにあるはずだ。チアパス観光事業の責任者が「ものすごくいい」プロジェクトだとマスコミに繰り返すようなものであろうと、観光プロジェクトを強制されない権利があるはずである。


認証ラベルは解決策となるか

 チアパス州のプロジェクトは、EUからもプロデシス計画の枠組みのもとに支援を受けている。制度的革命党(PRI)のパブロ・サラサールを知事とする州政府は、信頼に足るパートナーとは言いがたい。同州の観光政策は、環境保全とは縁もゆかりもなく、エコツーリズムの基本ルールに反する点が多々あるのだが、それでもEUはこれを支援している。ラカンドンの密林にあるラカンバ・チャンサヤップのコミュニティでは、民間プロジェクトが家族単位で相互の協力のないまま運営されている。彼らはいつも伝統的な貫頭衣(13)を着ることにしている。観光省(SECTUR)から派遣された指導員から、観光客はそういう格好を見たがるものだと聞かされたからだ。

 観光パンフレットによれば、チアパスは自然と平和の地であるという。1994年のサパティスタの蜂起以来、この地域に駐留を続ける兵士たちのカーキ色が、エコツーリズムの緑色によって掻き消されるというわけだ。広報は巧妙で、うまくいきそうに見える。チアパス州のプロジェクトがエコツーリズムの主要な原則を守っていないにもかかわらず、エコツーリズムのコンセプトが政府のあらゆる広報宣伝で使われていることは、州都トゥクストラ・グティエレスにある観光省の地域事務所も認めている。

 しかしながら、2006年3月にチアパスで開かれた第2回連帯ツーリズム国際フォーラム(FITS)の共催者となったフランスは、この偽のエコツーリズムに賛意を示した。同州のサラサール知事は、バハ・カリフォルニア州の破壊を提唱した張本人であるフォックス大統領を「連帯ツーリズムの偉大な創始者」として歓迎した。プロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏のジャン=ルイ・デュー議員は、連帯ツーリズムに関するチアパス州の努力を賞賛した。彼によると、チアパスは連帯ツーリズムの先駆けであり、じきに手本になると言う。一方で、アフリカとアジアからのフォーラム参加者たちは、主催者に対する公開書簡を発表し、「現地視察の際、地元コミュニティと議論する機会がなかった」と不満を表明している。州政府の見方がフォーラム参加者の見方と完全に一致するわけでないことは、この書簡にも示されている。

 「エコツーリズム」のコンセプトを擁護するネットワークや市民組織、大学研究者にとって、「エコツーリズム」という呼称を救い出すことが、連帯ツーリズム国際フォーラムその他の場で重要な課題となっている。最初のうちは、連帯ツーリズムなどのラベル認証制度が、最も有効な解決策だと考えられていた。

 連帯ツーリズムという認証ラベルを設ければ、環境保全に配慮するようになり、住民自身が観光プロジェクトを運営し、収益の一部が公共的なサービスへ再投資されることになるはずだという考え方だ。フランスでは、連帯ツーリズムを手がける旅行代理店が公正連帯ツーリズム協会(ATES)を結成し、フェアトレード認証機関FLO(14)に対し、観光も対象とするよう申し入れている。ATESの加盟業者にとっては、ラベル認証によって透明性をうたい、自社の事業が連帯と倫理を重視していることを主張できればありがたい。他の旅行代理店は「責任あるツーリズム」という魅力的なフレーズを広報に用いつつも、自主的な行動規範を掲げているだけだからだ。

 しかし、認証手続きは厄介で、複雑でコストもかかるのが現状である。スペインのNGO団体、責任ある観光を目指す協会(ATR)のエルネスト・カニャーダ代表によると、「費用が高いせいで小さなプロジェクトは認証を受けられない」という。たとえばメキシコでは、コーヒー生産農家の団体がフェアトレードのラベル認証を受けようとすれば、年間2000ユーロ近くかかる。「それに、ネスレやマクドナルド、カルフールのような多国籍企業のコーヒーを認証するなんて、話が違います。他方では従業員の権利を相変わらず踏みにじっているようなホテル・チェーンも、じきにエコツーリズムを手がけるようになるでしょうが、そんなところに認証を出すなんて、私たちに言わせれば意味がありません」

 フェアトレードのラベル認証と同じ過ちを繰り返さないためには、認証にかかる費用を自己負担にせず、大多数を占める小規模プロジェクトも参加できるようにしなければならない。何よりも重要なのは、連帯的で持続可能、責任あるツーリズムというラベルについて、大企業による競走を排除するような基準を立てることである。

 ラベルの有無にかかわらず、エコツーリズムは顧客を欺くことをやめなければならない。エコツーリズムという事業は、どこでも実施できるような普遍的な解決策ではない。遺跡や原生林のそばで暮らす人々が、環境保護や社会発展という名目のもと、全員ガイドに転業できるはずもない。チアパス州政府は性急にも、未来を「エコツーリズム」に託すという危険な賭けに出た。この地域のコーヒー栽培の低迷をフェアトレードによって食い止められなかったのと同様に、「えせ」エコツーリズムが効果的な貧困対策になることはないだろう。

(1) カリフォルニア大学、ナショナル・ジオグラフィック協会、カウンターパート・インターナショナル、グローバル・ヘリテージ基金。
(2) チアパスでは、マデラス・デル・プエブロという組織が、エコツーリズムの名を冠した計画の実態はバイオパイラシーだと繰り返し批判している。この批判は現時点で根拠が確認されていないが、政府当局は真剣な調査をまったく行っていない。
(3) FSCは、森林所有者、木材関連企業、社会団体、環境保護団体により、1993年に結成されたNGO団体である。FSCラベルは10の原則と56の基準に基づき、独立した認証機関の審査によって付与される。
(4) プエブラ・パナマ計画は、パナマからメキシコのプエブラ州にかけての地域でインフラ整備(道路、橋、ダム等)を行い、経済活動(保税地区、鉱業)を振興させるという触れ込みの開発プロジェクトである。See Braulio Moro, << Une recolonisation nommee "plan Puebla-Panama" >>, Le Monde diplomatique, December 2002.
(5) プエブラ・パナマ計画に関する米州開発銀行の文書(http://www.iadb.org/ppp)。
(6) グアテマラのNGO、トロピコ・ベルデのウェブサイト上の資料「Que es el proyecto Mundo Maya ?」参照(http://www.tropicoverde.org )。
(7) 2002年にイベロアメリカ・カリブ海20カ国の観光・環境相が、エクアドルで開いた会議で調印した「ガラパゴス宣言」による。同じメンバーが2004年9月にはブラジルのイキトスで、同様の内容の「アマゾン宣言」に調印している。
(8) 他に「文化ツアー」「ビジネス・ツアー」「クルージング・ツアー」「冒険ツアー」などが提供される。出典:Secteur (Secretaria de Turismo), Proyectos en desarrollo, Mexico, 2005.
(9) ユネスコによると、この地域の島々は極めて豊かな海洋生物の住みかとなっている。ここには891種の魚類、695種の水生植物、およびクジラ目の3分の1が生息する。
(10) 国際エコツーリズム年の翌年にあたる2002年5月に採択された。
(11) 国際労働機関(ILO)、国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、世界観光機関(WTO)。
(12) プロジェクトの多くは、国内法または国際法によって保護された地区(ユネスコの生物圏保護区、メソアメリカ生物回廊など)に暮らす農民や先住民の生活に関わってくる。
(13) メキシコ政府はマヤのラカンドン族を「売り込んで」いるが、彼らの出身地は「ラカンドンの密林」ではなく、ユカタン半島である。
(14) FLOは1997年に、マックス・ハヴェラーなど約20のフェアトレード団体を集めて結成された。2004年には548の協同組合がFLO-CERTの認証を受けている(http://www.fairtrade.net)。

(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版2006年7月号)
All rights reserved, 2006, Le Monde diplomatique + Abe Sachi + Nimura Junquo + Saito Kagumi

http://www.diplo.jp/articles06/0607-3.html

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