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世界で広がる経済格差  市場原理主義のもたらしたもの  【SENKI】
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投稿者 愚民党 日時 2006 年 7 月 29 日 18:26:11: ogcGl0q1DMbpk
 

http://www.bund.org/editorial/20060625-1.htm

世界で広がる経済格差

市場原理主義のもたらしたもの

 小泉内閣の掲げた構造改革によって、日本は深刻な格差社会になりつつある。グローバリゼーションの進展により、世界でも貧困と格差が拡大している。

深刻化する所得格差

 「20代の所得格差が拡大し、固定化が懸念される」。厚生労働省が毎年作成する「労働経済白書」2006年版では、これまでの政府見解とは異なった衝撃的な内容が明らかにされた。

 今回の白書の基になったのは、厚生労働省の「所得再配分調査」データだ。2002年度の当初所得データによれば、年収一千万円以上の世帯が13%を占める一方、百万円未満の世帯は約23%になり、二極分化している実態が明らかになった。

 子どもが就学援助などを受けている子育て世代では、「収入ゼロ」と申告する世帯が増えており、通常考えられている以上に「貧困」が蔓延していると考えられる。格差の度合いを示す指標であるジニ係数は1980年代から上昇し続け、30代後半の男性で30%近くもアップした。

 これまで国会論議でも格差問題は取り上げられてきたが、小泉首相は「問題になるほどの格差はない」と繰り返し、それに呼応する内閣府も「もともと所得や資産の差が大きい高齢者世帯が増えてきただけで、見かけ上の格差拡大にすぎない」と格差拡大論に対する否定的見解を発表してきた。今回明らかとなった厚労省の調査結果は、政府部内での意見と認識の食い違いを露にしている。

 「労働経済白書」では、資産格差の拡大を実証するデータも示されている。たとえば貯蓄ゼロの世帯が05年には23・8%と調査開始以来最大を記録。これに対し、貯蓄保有世帯の平均貯蓄額は1544万円と、10年前の1287万円から20%も増加していた。

 さらに「白書」では、30〜40歳代の正社員の間でも、成果主義賃金の導入が賃金の格差を広げている実態に言及。しかも、30代前半の男性正社員の配偶者がいる割合は約41%なのに対し、非正規雇用では約8%だ。最初の調査時から2年間のうちに結婚した人は正社員で約10%だったのに対し、非正規では約3%にとどまっている。合計特殊出生率が1・25に落ち込み社会的な衝撃を与えているが、若者の間に広がる格差が、少子化を進める要因になっているのは間違いない。 

 小泉首相は、「格差がない社会なんてあり得ない。格差を認め、力を発揮できる社会が望ましい」と述べている。しかし各人の力が発揮されていくためには、格差が固定化されるのではなく、「再挑戦」が可能になることが不可欠だ。「白書」では、年齢を問わずに就職希望者を短期間試験的に受け入れる企業への助成拡大など、「再挑戦」を支える政策対応を促している。

金持ちだけを優遇する

 急激な格差拡大を促してきたのは、金持ちを優遇しながら、増税し福祉を切り捨てる新自由主義的な政策だ。経済評論家の森永卓郎氏によれば、この政策を合理化する考え方の一つに、「付加価値を生み出すのは、みんなの努力ではなく、一部の能力のある人の努力」という手前勝手な理屈がある。こんな考え方に基づいて所得税の最高税率を70%から37%に引き下げる一方で、配偶者特別控除、老齢者控除を廃止し、年金や国民健康保険の掛け金の値上げを行ってきたのだとしたら噴飯ものだ。

 政府は、定率減税と法人税引き下げを「恒久的減税」として実施したにも関わらず、財政危機を理由に定率減税を廃止する一方、法人税は引き下げを継続しようとしている。来年6月徴収分からの税改正では、個人住民税は一律10%になり、所得税も定率減税廃止分を上乗せして課税される。

 これにより年収300万円の課税額は住民税、所得税あわせて18万8500円にもなり、その他の社会的控除を勘案すると単身者の場合手許には260万円ほどしか残らない。企業が優遇され、国民への課税はますます増えていくのだ。

 額に汗することなく株の売買で100億円儲けても、売却益に対する課税はわずか20%だ。一方で、収入が激減した上に税金が増え、生活基盤そのものが脅かされるギリギリの状態に多くの労働者が追いやられている。

 病気や怪我、会社の倒産などをきっかけに職を失い、社会的復帰が困難になる状況は誰にでも起こりうる。こうした人々を排除するのではなく、社会的に包摂していく機能を充実させなければ、不平等が固定化され、結果として社会全体の活力が失われてしまう。

 日本におけるセーフティ・ネットの象徴は生活保護制度だ。ここ10年で保護を受ける世帯数は増加し、120万人を突破したという。しかし、この制度は多くの問題を抱えている。生活保護は、労働所得がわずかでもあると、その分を扶助費から差し引かれ、また保護そのものを打ち切られるケースが多い。その結果一度生活保護が認められると、労働や自立へのインセンティブが働かなくなってしまい、社会の底辺で固定化してしまう。

 日本の生活保護制度は、イギリスのブレア政権が「第三の道」のスローガンとして掲げた「社会的包摂」「福祉から労働へ」とは対照的に、生活保護に陥った人がそこから再び立ち上がり、再挑戦していく制度として整っているとはとてもいえない。むしろ個人の尊厳と自立心を奪い、社会的階層分化を固定化するものになっている。働いて収入を得ても50%が手元に残る在職老齢年金などを参考に、制度の見直しが求められている。

 かって失業や病気、怪我で困窮した人を救済し、再生を助けてきた家族や親戚、地域のコミュニティーは急速に機能を失いつつある。相互扶助の自治的な繋がりを再建すると共に、税制や福祉制度のあり方を改革し、新自由主義、市場原理主義的な構造改革路線から脱却していくことがますます問われている。

絶対的貧困の拡大

 メリルリンチ日本証券によると、居住目的の不動産を除く100万ドル以上の資産を保有する人は世界で830万人いるが、その6人に1人が日本人だという。グローバリゼーションのなかで、先進国のごく一握りの人々が極端に豊かになる一方で、貧困と格差が拡大の一途をたどっているのも世界の現実だ。

 約60億の世界人口のうち、現在なお、12億もの人々が貧困状態の中で生活している。最も貧しい5ケ国と、最も豊かな5ケ国の一人当たりGDP(PPP)の平均を比較すると、1950年には1対19であった格差は、1992年には1対37にまで拡大した。

 特にサハラ以南のアフリカ諸国は世界で最も貧しい地域だ。国際社会の援助が差し向けられ、「貧困を過去のものにしよう(Make Poverty History)」という標語が掲げられてもなお、解決し得ない多くの問題を抱えている。  アフリカ諸国は、独立を実現した1960年代とは対照的に、1970年代以降経済成長の低迷に苦しんでおり、多くの国ではマイナス成長を記録している。国民の半数以上が1日1ドル以下の生活を送っている国もある厳しい状況だ。

 昨年、スコットランドのグレンイーグルスで開かれたG8サミットでは、アフリカからの代表8名を加えてアフリカ問題について討議が行われ、一部の債務免除や、500億ドルの途上国支援の大半を今後5年間アフリカに差し向けることで合意された。日本もODAを100億ドル増加させることを約束し、再びアメリカに次ぐ世界の援助大国となった。

 しかし、事態は少しも改善されていないばかりか、アフリカ諸国の貧困、格差はますます深刻さを増している。国連は今年2月、アフリカの30ケ国で4000万人が食糧危機にあり、緊急援助が必要だと発表した。国際社会は2015年までに世界の飢餓を半減させる目標を掲げたが、早くも修正を迫られている。

 20年以上もアフリカに係わってきたジャーナリストの石弘之氏は、「サハラ砂漠から南のアフリカで、大変なことが起きている」「事態は予想を大きく超えて悪化している」(『子どもたちのアフリカ』2005岩波書店)と警鐘を鳴らしている。

 事態悪化の最大の原因はエイズの蔓延だ。この20年間に世界のエイズウイルス(HIV)の累計感染者数は6500万人に上り、2500万人以上が死亡した。死亡者のうち2000万人はサハラ以南のアフリカの感染者だ。国連エイズ特別総会では「15歳から24歳までの感染者数を25%減らす」と目標を掲げたが、現在も感染は拡大しており達成は難しい状況だ。

 加えて「貧困」と「犯罪」が事態を悪化させている。1975年には47歳だった平均寿命は40歳にまで下がり、寿命、識字率、所得、就学率など開発の程度を総合指数化した国連の「人間開発指数」の下位25ケ国のすべてがアフリカ諸国で占められる。

 今年7月中旬、ロシア・サンクトペテルブルクで開催される予定のG8サミットを前に、アフリカ問題は国際社会に突きつけられる大きな課題だ。ロシアなどはアフリカの貧困国支援を打ち出しているが、巨額の援助だけでは不十分だ。アフリカ各国の腐敗した政権の下で、巨額の援助が中身のないプロジェクトに浪費され、資金が国外の銀行口座に消える例は後を絶たない。

 こうした状況に絶望し、優秀な人材は次々と国外へ流出している。アフリカから先進国へ移住する医療従事者は年間2万3000人にのぼる。このことは、エイズや貧困に苦しむ多くの人々が見捨てられていくことを意味している。

 フランスの哲学者ポール・リクールは、「人の苦しみはそれを見た者に義務を負わせる」と語った。世界が共同して、この義務を果たしていくための努力をすべきだろう。


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http://www.bund.org/editorial/20060625-1.htm

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