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ファーストフードチェーンの環境対策  市民の監視でマクドナルドは変わるか? 【富井典之 】
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投稿者 愚民党 日時 2006 年 12 月 14 日 12:46:35: ogcGl0q1DMbpk
 

http://www.bund.org/culture/20061205-1.htm

ファーストフードチェーンの環境対策

市民の監視でマクドナルドは変わるか?

富井典之

大好きなマクドを検証する

 私は現在、大手食料品会社の下請け企業で「食の安全と環境」を考えながら働いている。

 学生時代、マクドナルドでバイトをしていた関係か、40代になった今でも、ハンバーガーが大好物だ。

 私の大好きなマクド(関西やフランスではマクドと呼ぶ)だが、環境問題や食の健康の観点から批判されることが多い。ところがそのマクドが最近、環境と健康を重要視する企業戦略を打ち出しているのを知っているだろうか。日本マクドナルドはこの春、数回にわたって新聞の全面広告を出し、「食の安全」の重視や「バランスいい食事」に配慮することを提唱している。

 マクドは本当に変わったのかを検証してみたい。

マクドは森林の破壊者か?

 世界最大手のファーストフードチェーンであるマクドナルド。  マクドに代表される食肉の大量消費システムが、熱帯雨林の減少などの環境破壊の原因になっているとの批判が絶えない。

 2004年に発表された国際森林研究センター(CIFOR)の報告書によると、ブラジルのアマゾン川流域での森林伐採面積は1990年に4150万ヘクタールだったのが、2000年には5870万ヘクタールに拡大した。原因の多くは放牧地の拡大である。

 アマゾン川流域の牛の飼育数は1990年には2600万頭であったのに対し、2002年には5700万頭に増えているという。

 また今年の4月、環境団体グリーンピースは、米マクドナルドがアマゾンの熱帯雨林を開拓して安い大豆を大量に生産し、鶏の飼料にして安いチキンナゲットを作っているとの報告書を出している。

 では、日本のマクドの食肉はどこで生産されているのだろうか。日本マクドナルドはホームページで牛肉はオーストラリア産・ニュージーランド産であり、鶏肉は中国産・タイ産だと公表している。では、環境破壊とは無縁なのか。

 環境問題評論家の船瀬俊介氏は著書『早く肉をやめないか?』で、マクドのグローバル・パーチェシング(世界一括購入)と呼ばれる食糧調達法を紹介している。船瀬氏によれば、日本マクドナルドの総帥である藤田田元社長みずから、「瞬時瞬時で(インターネット等で)判断して、その都度、世界で一番安い牛肉や原料を輸入して材料にしている」と公言しているので、「オーストラリア産のみの牛肉を使用している」という同社広報部の主張は、「嘘八百デタラメ」だそうだ。

 はたしてどちらが真実なのだろうか。マクドの「お客様サービス室」へ電話で問い合わせてみたところ、「米マクドナルドの牛肉の輸入ルートについては情報がないのでコメントできない」が、日本のマクドの牛肉は、過去約20年にわたってオーストラリア産(一部ニュージーランド産)であり、「アマゾンの森林破壊とは無関係である」との答えが返ってきた。

 例えマクド側の答えが正しいとしても、オーストラリアやニュージーランドだから環境破壊とは無縁だとは言えないはずだ。マクドの大好きな私がこんなことを言うのもなんだが、そもそも牛肉は豚肉や鶏肉に比しても、ダントツに環境負荷の大きい食べ物だ。例えば、鶏肉1キロのためには水4500リットル必要だが、牛肉の場合は2万リットル必要だ。一般に穀物1キロは1000リットルの水で生産できるというから、牛肉がいかに突出しているのかが良く分かる。

マクドは食の健康を脅かすのか?

 アメリカでは、肥満の原因となる食事をさせたとしてマクドナルドが訴えられた。原告は身長163センチ、体重126キロの13歳の少年。市内のマクドナルドで週に数回、ハンバーガーなどを食べ肥満体となり、糖尿病や心臓病など健康被害を受けたと主張して、損害賠償を請求していた。ニューヨークの米連邦地裁は、肥満は食べ過ぎた本人の責任として原告の損害賠償請求を棄却したが、アメリカではファーストフードへの批判は高まるばかりだ。

 背景にあるのはアメリカにおける肥満の増大だ。米疾病対策センター(CDC)によると、肥満を示す「体格指数30」以上の成人は27%と、80年の15%から倍近くに急増。「体格指数25以上30未満」の太り気味を加えると、実に61%だ。

 その結果、糖尿病や心臓病といった肥満に起因する医療費などの社会的費用は昨年、全米で1170億ドル(約14兆円)。最大のたばこ被害に次ぐ高さで、地方財政や企業保険を圧迫するなど、アメリカでは悪しき食習慣による健康悪化が、社会的大問題になっている。

 では、ファーストフードはどれだけ体に悪いのか。韓国で実際に試した人がいる。2004年に「反ファーストフード」キャンペーンを展開してきたNGO環境正義市民連帯のユン・クァンヨン氏が、「韓国版スーパーサイズミー」に挑戦したのだ。

 ユン氏は24日間、1日3食とおやつにハンバーガーなどのファーストフードを食べ続けた結果、体重77・1キロが実験後80・5キロに増加。肝臓疾患の指標とされるアミノ基転移酵素(GPT)が実験を始める前の22(正常4から43)より3倍を超える75となった。

 ユンさんの健康診断を担当した医師は「過剰なカロリーと栄養が肥満を招き、肝臓細胞を破壊した」と発表している。トリビアな実験に「へぇ〜」と感心してしまう。(しかし、実際に試さなくても分かるような気もするが・・・。)たしかに、ファーストフードだけの食事は重大な健康被害をもたらすようだ。

反グローバリズムはマクドに逆風か?

 フランスでは1999年に、中小農家組合「農民同盟」のメンバー、ジョゼ・ボベ氏らが建設中のマクドナルドの工事現場に侵入、柱や壁などを破壊して話題となった。

 ジョゼ・ボベ氏らは、EUによるホルモン肥育牛肉の禁輸措置を違法としたWTO裁定と、欧州産の高級農産物に高率関税制裁を科した米国に抗議したのだ。

 この行動を発端として、「フォアグラの国にホルモン肥育牛肉はいらない」とのスローガンに賛同した農民らが全国約百カ所のマクドナルドで店内に肥料をまくなど「闘争」を拡大。その後ボベ氏はシアトルに渡り、WTOに対する数万人規模の抗議デモに参加、「新しいフランス農民」として人気を集めた。

 イスラエルがパレスチナへの軍事作戦を激化させた2002年には、カイロ大学に近い学生街のマクドが学生らに襲撃された。シオニストを支える米国の象徴としてマクドが標的となったのだ。こうした世界規模での闘争を経て、EU諸国ではファーストフードに対する批判が高まり規制を求める動きが出てきた。

 昨年の英国の労働党年次党大会では、ケリー教育相がハンバーガー・ポテトチップスなどの「ジャンクフード」を学校給食から廃止すると宣言。

 フランスでは、米マクドナルドのフランス現地法人が、本社の反発を受けながらも、「ファーストフードを食べ過ぎてはいけない。マクドナルドに週1回以上行くのもだめ」という栄養学者のコメントを引用した広告を雑誌に掲載するまでになっている。

 グローバルに経営展開するがゆえに、世界規模での批判にさらされているマクドが、近年巻き返しをかけて新たな企業戦略を打ち出した。それは「健康志向」のヘルシー・キャンペーンで企業イメージをアップさせるというものだ。

 米マクドナルドでは、スーパーサイズのフレンチフライやソフトドリンク(スーパーサイズのコーラは約1リットル)を、全米の店舗で、2004年に廃止した。そして世界のマクドで2006年前半から商品の栄養価を包装に印刷すると発表している。

 商品に栄養価を表示するのはファーストフード界で初めての試みだ。表示はカロリー、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ナトリウムなど。また、1日あたりの必要摂取量に対する比率がわかるようにしてある。

 さらに今年の4月からは、米マクドナルドは新メニューのサラダセット購入者に、自宅で運動するためのビデオゲームを提供するキャンペーンを全米で展開している。このビデオゲームは家庭用ゲーム機につないで、画面を見ながらヨガや筋肉トレーニングを行うというもの。こんなジョークのような企画でヘルシーになれるとはとても思わないが、どうやら大真面目のようだ。

 今年から、このヘルシー・キャンペーン戦略が、日本マクドナルドでも始まった。野菜と果実を使った新メニュー「サラダマクド」シリーズを5月13日から発売。健康を考えた食生活を提案するという。また、マクド商品の栄養分析表をホームページで公開している。

 早速ページをのぞいてみた。トマトチキンフィレオとフライドポテトなどの食事では、脂肪やたんぱく質は充分摂取できるが、鉄分やカルシウムビタミンAが不足するようだ。そこでそれを補うために、緑黄色野菜を摂取することを奨励している。だがもちろんマクドには、カボチャやホウレンソウを使ったメニューはない。新発売のレタスとチキンの「サラダディシュ」を食べてみたがコンビニのサラダと大差がなくて、とても野菜不足を補える代物とは思えなかった。

 環境対策のひとつとして「Made For You」システムも導入している。これは客から注文を取ってからハンバーガーを作り始めるオーダーメイドシステム。従来の「作り置きオペレーション」では、時間帯や曜日に合わせたマニュアルとクルーの経験によって注文前にオーダーを出し、作り置きをしていた。そして作ってから7分〜10分経過するとすべての売れ残り商品は廃棄されてきた。

 同社の経営方針を述べている「マクドナルドレポート2005」によれば、新システムの導入で廃棄物量が25パーセント削減できたらしい。ただし、食材廃棄物に限っても、いまだに1店舗で年間約12トンも出るという。包装資材をプラスチックから紙などの再生可能素材への転換、食材廃棄物のバイオマスガス化も検討されているが、これはまだ研究段階にとどまっているようだ。

 さて、マクドは変わったか? 残念ながらマクドのヘルシー・キャンペーンや環境対策は、いまひとつ説得力に欠けている。特に、もっとも関心が高い食材の生産プロセスの情報開示が充分なされていないのが大きな問題だと思う。

 環境重視のファーストフード店は不可能なのだろうか。

消費者の目が「改革」を促す

 私は職場での仕事を通じて、大量生産システムの意義と限界を肌で感じている。原材料を大量に確保して一括して加工することで、均一の品質の商品を安価に供給できるといったメリットもあるが、いったん健康被害や環境破壊を及ぼす商品が市場に出回れば、その影響はとても大きいものになる。

 こうした大量生産システムのデメリットを少なくするには企業が社会的責任を自覚すると同時に、消費者の監視が必要なのだ。ファーストフード店の経営をより環境重視型のものへと変革するためにも、消費者の厳しい目が求められている。

 韓国では1992年、「資源の節約と再活用促進に関する法律」を制定し、リサイクル容器の促進と使い捨て容器の規制に踏み切った。同時に企業が使い捨て容器削減の「自主協定」を結んだことによる相乗効果で、コーヒーショップやマクドなどファーストフード店でのマグカップやグラスの使用が促進され、協定を結んだ店舗では、容器の使用量が平均21・4パーセント減ったという。

 今年2月ソウルを視察した、国際環境NGO「FoEジャパン」の瀬口亮子氏は、韓国で使い捨て容器の規制が進んだ理由について、「市民の監視が強い。企業は、イメージダウンを恐れる意味からも協定に参加している」と分析している(4月21日 毎日新聞)。

 日本の消費者の意識も年々向上している。FoEジャパンの調査によると、スターバックス・コーヒーの利用者の8割が、マグカップやリユースのカップでドリンク類を飲むことを希望していることが分かっている(FoEジャパン・ホームページ)。韓国の試みは、日本でも有効なのではないだろうか。

 企業努力と市民監視によってマクドが変わった例は、ヨーロッパでも見られる。ドイツのマクドは、世界に先立ってハンバーガー類のプラスチック容器の使用をやめて、現在すべてに紙製の包装材を使用。スイスのマクドは、2003年3月から、国内全店の139店舗でフェアトレード認証のコーヒーを提供している。また、牛肉やミルク・小麦・ジャガイモなどがスイス産で、その他の素材もほとんどがEU産で占められている。

 グローバル化の代名詞であるマクドには、文化的・経済的・環境的「侵略」とも言える負の側面がある。各国・各地域でその「侵略」を阻止するという選択肢もあるだろう。同時に、マクドの進出を包摂しながら変革を促すという可能性もあるのではないだろうか。

 かつて、社会学者のジョージ・リッツァはマクドナルドの企業システムのように、効率性を追求して労働過程が脱人間化・画一化する社会を、「マクドナルド化する社会」と捉えた。しかし他方で、人類学者ジェームズ・ワトソンは、「マクドナルドはグローバルか」で、世界的に画一化されたマニュアルによって、グローバルに企業進出してきたマクドが、東アジア地域(日本・韓国・台湾・香港)において、その地域の食文化や風習に変化を与えながらも、逆に地域別のメニューや接客の仕方において「現地化」=地域への適応を行っていく過程を浮き彫りにしている。

 私は、ファーストフード・チェーン店は世界を「マクドナルド化」して文化的にも経済的にも画一化(あるいは文化的に植民地化)するが、同時に世界進出のプロセスで地域市場におけるニーズに合わせて変貌し、リージョナルなあり方へと企業形態を変更していくこともありうるのだと思う。韓国やEUのように環境を重視する「市民監視」によって、マクドを「よりマシ」な企業へと変革していく可能性もゼロではないのだと思うのだ。

 将来、地域の特産物を生かした新商品を開発して、「地産地消」型ファーストフード店などは出来ないだろうかと考えたりする。

 もちろん、いまだ現実のマクドはそんな私の夢想からは程遠い。何しろこの春から「早朝深夜営業」の拡大をめざしているぐらいだ。「朝食習慣を応援する朝マクドの味も、深夜にホッと落ち着けるブレンドコーヒーの味も、現代人のための、マクドナルドならではのおいしさです」(広告のコピー)…。

 なんだかうまいことを言うなぁと感心してしまう。私は、つい便利に利用してしまいそうだが、長時間営業で環境負荷がまた増えることは間違いないだろう。マクド好きの環境派はやっぱりまだ肩身が狭い。


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