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インフルエンザ診療現場ノンフィクション風フィクションと雑感
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投稿者 町医者 日時 2007 年 3 月 25 日 00:23:27: Jlt0pjLrwYKl6
 

いま、NHKの「ハゲタカ」が終わった。Happy Endっぽいが、レンズ部門以外の大空電気の従業員たちは結局救われないだろう。事実は小説より奇なりだ。次回は医療ドラマみたいだが、小生は本業に関わるドラマが逆にストレスになるので見ない。現実との乖離に腹が立つことが多いからだ。そんなわけで久しぶりに投稿しようと思った。ある日の診療所の一コマである。フィクションだが、思考ルーチンはノンフィクションである。

山田修平は47歳内科医、大学で研究もしてたが、論文を書くより臨床に熱心だったため、外の病院に出され、市中病院でも、保険診療を度外視した診療で重症患者に肩入れしすぎたために院長から肩たたきにあった。他科の先生からの相談に親身になって病院中の患者を患者を多数診てたが、本人担当の入院患者数や外来患者数が少なく(と言うか、腕がいいので、すぐ退院するか、安定して開業医に逆紹介していた為だ)、業績が評価されなかった。で、アフリカの貧困国や、僻地も考えたが、今まで診てた患者を捨てきれず、近所に開業することにした。
開業にあたっては、CTは是非必要と思い、コンサルが、先生のお人柄なら大丈夫ですよ!というので、思い切ってリースした。が、この毎月○十万の支払いが結構こたえ、正直後悔している。医療機器の納入価なんて値段があってないものだとあとから知った。ウブなので、数社競合させて購入するなどという駆け引きもしなかった。後から友人から教わったが、ここ数年診療報酬が下がり、自己負担増加で患者数が減少し、重装備開業は無謀であることが身にしみてわかった。

朝診療所に付くと、珍しく駐車場に患者の車が止まっている。早起きの農家の老人か一晩中苦しんだ患者だろうか?後者の場合、検査・診断・思考・手続きに時間がかかり、ゴールデン・タイムの9時台の患者をみんな待たせることになってしまう事が多い。

その患者は22歳女性、近くの工場労働者だ。身長155cm、体重70kg、体温39.8度、なにかわからないがかぜ薬で薬疹の既往あり。
3日前から38度の発熱、咽頭痛、鼻水、咳、痰、嘔気、下痢。食事はほとんどたべれない。市販のくすりでよくならないので受診。
(最近こういう患者が多い。38度も熱があるなら会社休めばいいのに。以前、そう言ったら、休むとやめさせられるかもしれないそうだ。それに、同僚で熱を出して働いているものも多いそうだ。そう言えば、インフルエンザの患者に5日間休む様指示しても、三日後に出勤した患者もいた。これじゃあ、会社がインフルエンザが蔓延するだろうに・・。)
のどをみたら真っ赤にはれている。
「ノロウィルスじゃないですか?!」
最近はテレビを見て自分で診断をつけて患者が多い。
「まだわかりませんが、検査してみましょう。」
(インフルエンザかどうか確認するために迅速診断キットをやってみよう。ただ、ちょっと本人には自己負担3割になってお金がかかるんだよな。でも、社会的な衛生上の問題もある。患者本人も、地域の公衆衛生も町医者の仕事だと思う。)
検査結果はA型ウィルス陽性だった!
ついこの間まではタミフルを出していたが、いまは事情が違う。医師会から通達があり、例の副作用を話さねばならない。
「インフルエンザなので、タミフルをだしたいんですが、精神に異常を来たして道路に飛び出したり、高いところから飛び降りる方が稀におります。」
(昔は、でも大丈夫です、すぐ良くなります、と言ってたものだ。患者を安心させるのも医師の務めと信じるが、最近は残酷なことも隠さず話す傾向が強い。それが直りを悪くしている面もあるだろうし、場合によってはうつ病を作ることもある。が、多少でもリスクがあれば話しておかないと、後で訴訟にでもなった場合明らかに不利になる。)
「なら、恐いので出さないでください!違うのですぐ治る注射をうってください!」」
(と、こうである。それが人情と言うものだろう。年配の開業医の先生は、今は昔、ステロイドの注射をしていたようだ。確かに即効性に症状が劇的に改善される。が、免疫抑制で潜在していた感染症があれば致死的に悪化することがあり、医療訴訟社会になって敬遠されたか、禁止されたか、今ではあまり用いられないと聞く。静脈注射の解熱剤も同様だが、こっちは急速な血圧低下でショック死する事故があり、製造中止された。解熱剤の筋肉注射もあるが、インフルエンザの熱には脳症を起こすことがあり、使われない。座薬はどうか、これも脳症を引き起こすとされる)
「そういう注射はないんです。点滴ならありますが。」
「どれくらい時間がかかるんですか?」
「できるだけ短縮しても最低1時間はかかります。」
「でも、これから仕事にでなきゃいけないんです!」
「インフルエンザなので、会社は休んでください。」

結局対症療法の内服薬のみを処方して、お帰りいただいた。結局市販のくすりと大差ないかもしれない。待合室の患者のなかで、待ちきれず、怒りながらあとで処方箋のみ受け取りに来ると言って帰った患者が一人いた。

その患者は結局会社にもどるんじゃないかと言う気がした。
(あ!いろんな説得に気を奪われて妊娠を聞くのを忘れた!もし、妊娠初期だと、解熱剤で心奇形が生じる危険もあった。もし、そうなれば訴えられて損害賠償か、悪い評判が立って診療所はつぶれるかもしれない。そういえば、市販の熱さましのんでたと言っていたから大丈夫か?でも、妊娠初期だとしても、そこまで知識があるとも思えない。市販薬、サプリなんかはテレビでいいことしか宣伝しない。当然副作用はほとんど知らない。何かあった場合は医師や薬剤師に相談してくださいで終わりだ。)

(ベニスの商人という小説がある。一滴の血も流さずに1オンスの肉を切ることは可能なのか?一人の死者も出さずに数千万人のかぜの治療が可能なのか?そして、結果的に、数千人の患者を治してきた、死者を出した医師は葬られ、数千万人の治療に貢献したくすりが使用禁止になり、、、。)

最近タミフル服用せず、飛び降りがあったという事実が報じられた。小児科の先生の中にはそういう事例は以前からあったらしい。

厚生労働省は以前はタミフルとの因果関係は不明といった。今回は可能性はあるという。どっちも真実だと思う。問題はコロコロ変わることが腹立たしい。

タミフルと飛び降りの因果関係は、おそらく、数十万のインウルエンザ患者でタミフル投与群に飛び降りが起きた事例数と、同じく、限りなく同条件のインフルエンザ患者でタミフル非投与群に飛び降りが起きた事例数との間に有意差検定で有意差が認められるかを証明しなければならないはずだ。

素人が考えるほど簡単な問題ではないし、数週間で厚生労働省がこの検定を行えるとも思えない。

年々歳々、金融の厳しさから日本人のその道のプロである誇りと良心と、マスコミとネットの薄っぺらな知識に基づく自分以外のプロに対する信頼性が損なわれてきている感じがするのだ。

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