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タミフルに隠された真実 第二の薬害エイズに発展か(立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」 )
http://www.asyura2.com/0601/health12/msg/605.html
投稿者 gataro 日時 2007 年 3 月 26 日 20:09:35: KbIx4LOvH6Ccw
 

http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070324_tamiflu/index.html から転載。

2007年3月24日

タミフル服用による異常行動死問題で、厚生労働省の対応が急展開した。

タミフルによる異常行動死の問題は、2年前の05年11月から学会では報告されていた。その頃から、一部の医療関係者からその因果関係を強く疑う意見が公にされていたのに、厚労省はその因果関係をずっと否定しつづけてきた。

一貫して因果関係を否定し続けた厚労省

06年10月には、この問題を無視しきれなくなった厚労省が、研究班を作って、その因果関係を調べたところ、特別の因果関係は発見できなかったと発表した。その骨子は次の通りである。

インフルエンザにかかって、その特効薬として知られるようになったタミフルを服用して、異常行動を起こした患者は確かにいる(その結果死んだ者、死ななかった者、両方含めて)。

しかし、もともとインフルエンザにかかった結果として、異常行動をきたす「インフルエンザ脳症」になる患者が一定の割合でいることが知られている。

そこで、05年から06年にかけてインフルエンザにかかった患者(あるいは患者の保護者)2500余名から異常行動の有無について聞き取り調査をしたところ、異常行動の平均発現頻度は10.9%だった。

これを、タミフル服用者と非服用者に分けて調べたところ、服用者の発現頻度は11.9%であったのに対し、非服用者の発現頻度は10.6%だった。若干、服用者の発現頻度が高めに出ているものの、その差は、統計的に有意な水準に達しているとは考えられない(統計誤差の範囲内におさまっている)。結局、両者の間に因果関係があるとは認められない。

これが厚労省の公式見解で、記者会見でも、国会答弁でも、厚労省はずっとこの論理で押し通してきた。だから、もちろんタミフル服用の危険性について警告を発するなどということもしてこなかった。

世界の7割のタミフルを消費する日本

逆に厚労省は、タミフルの効用を大いに認めて、薬の認可と保健薬の指定をわずか数カ月で出すなどという異例の対応をとってきた。それというのも、近い将来、インフルエンザウィルスが変質して、人に感染するようになり、それによって大々的な感染が起こることを心配していたからである。そういう場合にそなえるとして、国家的な備蓄を大々的に進めるなどということまでしてきた。

日本で鳥インフルエンザの恐怖が広がるなかで、「唯一の特効薬、タミフルの準備は大丈夫か?」などといった報道がマスコミを通じて何度も流されるなかで、「インフルエンザの特効薬はタミフルしかない」という刷り込みが、日本人の頭の中に(医者にも患者にも)しっかりとなされてしまった。

それに加えて、タミフルの危険性情報が医者に十分届かなかったために、日本の医者はインフルエンザにかかった患者に安易にタミフルを処方した。それによって日本は、タミフルの世界生産の7割をたった一国で消費してしまうという大消費国になってしまった。

FDA(米国食品医薬局)の調査で、タミフルによる異常行動の報告例がほとんど日本に集中している(米国5人、ドイツ2人などに対し、日本は95人)という結果になったのも、そもそもタミフルをそれだけ大量に消費する国は日本くらいだったという事情があるのである。

2月27日仙台市で、タミフルを服用した中学生が、異常な行動を起こして高所(マンション11階)から転落するという事故が起きた。一般のメディアがその異常さ(正常な人間なら絶対にやらないような行動=マンションのベランダの防護棚を乗り越えて飛び降りた)を特筆して報道するようになって、ようやく、厚労省も、タミフル服用後、子供を一人にしないように警告を発するようになった。

しかし、それでも厚労省は、まだタミフルと異常行動の因果関係については、否定的な見解を表明しつづけた。

厚労省がその態度を変えたのは、3月20日になって、タミフル発売元の中外製薬から、これまでのタミフル服用事故死例の中に、高所からの転落死事例がさらに2例あり、未成年者の転落死が計15件にものぼることを厚労省に報告してからである。

厚労省は「因果関係なし」としてきたこれまでの見解を大きく修正して、「因果関係を再調査する必要性」を認めることになったのだ。

厚労省を突き動かしたネットの力

一般の報道を追っていただけの人は知らなかったろうが、厚労省のこのような方針大転換の背景には、インターネットの大きな働きがあった。

特にニつのサイトの働きである。

一つは、浜六郎医師が主催しているNPO法人「医薬ビジランスセンター」の「薬のチェックは命のチェック」のインタネット速報版のページである。

このページでは、05年2月の段階から、「タミフル脳症(異常行動・突然死)」の問題が起きていることを大きく報じ、それ以後も次々とこの問題についての最新情報をアップしてきた(そのすべてをこのページをクリックすればいまからでも読むことができる)。

FDAの報告や、厚労省の報告(タミフルと異常行動の因果関係なし)が出るたびに、浜医師はそれに注釈を加え、同じデータの読み方を変えるだけで、すでに立派に因果関係が立証できるとしてきた(06年11月〜12月)。

そのエッセンスは、NPO法人の医薬品治療研究会が発刊しているTIP(The Informed Prescriber『正しい治療と薬の情報』)誌の06年11月号の「第1図」(pdfファイルの3ページ目)に示されている。

これは、タミフル服用者と非服用者の間の異常言動の発症割合を棒グラフで対比的に示したものである。

証明されたタミフルと異常行動との因果関係

このグラフで、厚労省研究班が、「両者の間に統計的有意差がないから因果関係なし」と結論したのと同じデータを用いて、立派な因果関係があることが一目瞭然で示されている。ぜひこのページをクリックしてグラフをみてほしい。

要するに、異常行動はほとんど、発熱初日の昼間の服用後数時間のうちに起きている。そこで服用初日だけをとって比較すると、タミフル服用者は非服用者の4倍以上の比率でなるのだ。統計的に有意も有意どころか、これを見て因果関係なしという人がいたらアタマがオカシイとしかいいようがないくらい大きな両者の差が示されている。

厚労省研究班は、両者の発現頻度の差わずか0.6%とみて、統計的に有意でないとしたのだが、絶対値で2%程度の差があり、相対的では4倍だから400%の差があることになる。

なぜ、タミフルによってそのような異常行動が起きるのかの説明も、実にわかりやすく、明快に示されている。

要するに、こういうことなのだ。

「タミフルは脳の働きを抑制することが動物実験と人に起きる症状から分かっています。睡眠剤や鎮静剤、麻酔剤、アルコールと同じです。アルコールを飲むと、寝てしまう人、興奮して暴れる人などがいます。麻酔剤は、強く作用すると呼吸が止まります。麻酔中は人工呼吸器で呼吸していますので死ぬことはありませんが、人工呼吸しなければ呼吸が止まって死に至ります」

「脳には、それぞれの神経が秩序だって働くようにコントロールしている『統合中枢』という管制塔のような中枢があります、タミフルを飲むと、脳の中にタミフルが入り込んで、まずその部分を乗っ取ります。そうすると、いろんな神経が思い思いに勝手に動きだすために異常行動を起こすのです」

「タミフルで低体温になりますが、熱が下がったと喜んではいられないのです。これは体温中枢が乗っ取られているからです。今まで経験したことのない34度や32度といった低体温になる人もいます。これは異常行動や呼吸が止まる前兆です。もっと激しく作用すると、人の命に最も大切とも言うべき、呼吸中枢が乗っ取られてしまいます。すると、呼吸が止まり、命もとまります」

「つまり、体温中枢が乗っ取られると異常なまでの低体温、統合中枢が乗っ取られると異常行動、呼吸中枢が乗っ取られると呼吸困難、突然死になるのです」

『薬のチェックは命のチェック』インターネット速報版No77「薬のチェック」の緊急警告!事故死・突然死の原因はタミフル!より)

このようなデータと見解が昨年11月〜12月に出され、厚労省(厚生労働大臣)には、このNPO法人から、何度も警告、要望(タミフルの使用中止と医療関係者に対する注意喚起を求める)が出されてきた経緯も、このページですべて読むことができる。

これを読むと、今年1月から一般メディアでタミフル問題が大きく報道されるようになってきた大きな理由が、このページを通じての情報発信にあったことがすぐにわかるだろう。

被害者の会が告発する膨大な事例

このページと並んで、タミフル問題の社会的アピールで大きな役目を果たしてきたのが、「薬害タミフル脳症被害者の会」のページだ。

ここには、ゾッとするような事例が沢山載っている。

「雪の積もっている中を裸足で走り、塀を越え、線路を横切り、国道に出て大型トラックにはねられて死亡した17歳高校生男子」

「(受験が終わったばかりの中学生)4時ごろ、薬を飲んで1時間30分〜2時間ほどして、うわ言(動物のように「ウォーッ!ウォーッ!」)のように、階段を飛び降りようとする」

この中学生はそれからベランダに出て4回ほど飛び降りようとしたのでそれを家族が2人がかりでなんとか引き止めたのだという。

説明できない高所から飛び降り衝動

タミフル脳症で不思議なのは、この高所から飛び降りるという異常行動だ。

この事件を一般誌で最初に大きくかつ正確に扱ったのは、「週刊文春」3月22日号の椎名玲・吉中由紀「タミフル『大人でも突然死23』の驚愕」である。先に引用した浜六郎医師の話なども詳しく紹介されているが、同じ号に載っている小林信彦のコラム“本音を申せば”でもやはりタミフルをとりあげていて、こんなことが書かれている。

ぼくは身内の子供がインフルエンザにかかる時のことを心配して、ラジオ番組三つをきいたのだが、タミフルを飲んで異常になる子供を抑えた二人の話が気味悪かった。

問題は転落死にあるのだが、どこの局だったか、ゾッとしたのは、服用してから、

「ぼく、とびおりなきゃ」

とソワソワしたという男の子の言葉である。そういう衝動をおこさせるなにかが薬にあるのだろうか。

ここがタミフルの大きなポイントだ。

タミフルの謎は脳科学の謎

厚労省は、この点の因果関係をなかなか認めようとしてこなかった。

<厚生労働省のホームページ>

■「タミフル服用後の死亡例について」(2005年12月15日発表文)

■「新型インフルエンザに関するQ&A」(2006年7月10日発表文)

■「タミフル服用後の異常行動について」(2007年3月20日発表文)

■「10歳代のタミフル服用後の転落・飛び降り事例に関する副作用報告について」(2007年3月21日発表文)

※これらの発表文にある通り、タミフル服用と死亡の因果関係について、厚労省では一貫して否定してきたが、今年3月21日にようやく「再度これまでの事例を精査をし、その後、薬事・食品衛生審議会で検討する予定としています」との発表を行った。(編集部注)

異常行動は、インフルエンザ一般、あるいはその他の高熱を発する病気でも起こりうる熱譫妄(せんもう)現象だという立場を崩していないが、これは多くの若者が、タミフル服用後間もなく異常な飛び降り行動に走った理由の説明には全くなっていない。もしそうなら、タミフルを飲まないインフルエンザ患者、あるいは高熱を発するその他の病気の患者の中から異常な飛び降り行動に走る者が続々出るはずなのに、そういう事実は全くないからである。

この異常行動の背景には、小林氏がいうように、タミフルの中に何かそういう衝動を起こさせるものがあるのだろうと推論すべきである。タミフルに含まれるなんらかの化学物質が脳に作用して、そのような異常行動を誘起しているのだろう。

それが何かまだ全くわかっていないが、このタミフルの謎を解くことは、おそらく脳科学上の大きな謎を解くことにもつながるのではないか。

なぜタミフルは異常に早い認可が下りたのか

これはタミフル脳症被害者の会が主張するように、明らかに薬害問題である。

厚労省は、早く予防的アクションを起こさないと、エイズ問題と血液製剤の問題のときのように、問題がもっと大きくなってから、その責任を大々的に問われることになるだろう。

おそらくなぜタミフルに異常に早い認可を与えたのか、認可するにあたって十分な審査をしたのかという根本問題にまでさかのぼっての責任が問われることになる。

なにしろ、医療ビジランスセンターのページを見ればすぐわかるように、この問題に関しては、2年も前から、繰り返し繰り返し、警告・要望が出されているのだ。

これまでの薬害問題で、厚生省が繰り返し使った逃げ口上、「知りませんでした」は全く通用しないのである。

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立花 隆

評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月-2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。2006年10月より東京大学大学院情報学環の特任教授。

著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌—香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。

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