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後だしジャンケン 70分早くければ90%の確率で生存できた?
http://www.asyura2.com/0601/health12/msg/671.html
投稿者 どっちだ 日時 2007 年 4 月 12 日 00:41:28: Neh0eMBXBwlZk
 

----いなか小児科医--------------------------------------------------------

http://swedenhouse-oita.cocolog-nifty.com/pediatrics/2007/04/post_5e54.html

後方視的議論

2007年4月11日 晴れ
桜は、ほぼ散ってしまいました。

医療過誤を裁く法廷では、俗に「後だしジャンケン」とも揶揄される、後方視的な見方で議論が進められます。医療の現場では、目の前の患者さんの一瞬でも未来は予測できない。何らかの原因で突然死することもあるのです。「あの時、こうしていれば...」助かったかも?という議論は、現場にいない方々にできる議論です。そして、現場の状況は後になりすべて再現することはできません。もう一つ言うならば、患者さんは十人十色。一卵性双生児であっても、別の人間なのです。別の人間が、同じ病気にかかっても、同じ経過はとりません。

とかく、EBM(Evidence based medicine)では、この病気にこの治療を行えば、何%の確率で救命できる。という話がでてきますが、それは所詮、確率論でのお話。90%の方々を救命できる処置であっても、その患者さんが残りの10%に入らないとは限りません....。医療は不確実なものです。我々、医療者は出来るだけ確実に救命できる様、努力を続けます。しかし、医師は神ではありません。一生懸命その患者さんに対して頑張って、それでもダメだった場合には...遺された方々と一緒に悲しみ、どうすればもっと良い結果を残せたのか?を考え、将来に役立てていきたいと考えるものなのです。

さて、共同通信の記事。

『急性心筋梗塞(こうそく)のため市立加古川市民病院(兵庫県)で診察を受けた後に死亡した男性=当時(64)=の遺族が「専門病院への転送手続きの遅れが死を招いた」などとして加古川市に対し計約3900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁は10日、市に請求全額の支払いを命じた。』

まずは、この件で亡くなられた64歳の男性と御遺族の方々に衷心より、お悔やみ申し上げます。しかし、全額の賠償を認め、「専門病院への転送手続きの遅れが死を招いた」とするには...どうでしょうか?心筋梗塞発症早期の死因のうち一番多いのは致死性不整脈(心室細動など)であるとされています。特に一旦詰まった冠状動脈が何らかの原因で、再び流れるようになったとき(再環流)に起こることが多いとも聞いています。

『橋詰均(はしづめ・ひとし)裁判長は判決理由で「約70分も転送受け入れを要請するのが遅れた。注意義務が果たされていれば、90%程度の確率で生存していたと推認できる」と指摘した。』

この70分間に何をしていたのか?という情報がありませんので、何ともいえません。ただ、90%の確率で生存していた...というのはちょっと乱暴です。裏を返せば、10人に1人は死亡するということです。この患者さんが10人に1人の中に入った可能性はないのでしょうか?結果をみて、後から「こうすればよかった...」というのは簡単なことです。しかし、我々医療者はそのような感覚では、生きていません。目の前の患者さんにいま出来ることをしているのです。

70分費やした時間の原因は何だったのでしょうか?転送先がなかなか見つからなかったとか?家族との連絡が付かなかったとか?外来が忙しく、その合間に転送先を探していたとか...であれば、この日直医に罪をかぶせるのは少し酷であろうと感じます。

『しかし同市民病院には、治療に最適とされるカテーテルを使った冠動脈の再建手術ができる設備がなく、転送する必要があったのに、日直医が近隣の専門病院に転送を要請したのは午後1時50分だった。男性は心室細動を発症し同3時半ごろ、死亡した。』

心室細動は急性心筋梗塞発症早期にはいつでも起こりえます。仮に、この患者さんが市民病院に搬入され、直ぐに診断がついて30分後に心室細動を起こし亡くなった場合はどうなのでしょうか?

このような事例を法廷に持ち込んでも、何ら将来によい影響を残すとは思えません。原告、被告双方で真実の隠し合いが起こり、一番大切な「真実の追究」と「考察」が行われません。医療者側の故意あるいは重大な過失などがないかぎりは、法廷にもちこまず、公平な第3者機関で審理するべきであろうと感じます。

本日、参照させていただいた記事です。

『急性心筋梗塞(こうそく)のため市立加古川市民病院(兵庫県)で診察を受けた後に死亡した男性=当時(64)=の遺族が「専門病院への転送手続きの遅れが死を招いた」などとして加古川市に対し計約3900万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁は10日、市に請求全額の支払いを命じた。

 橋詰均(はしづめ・ひとし)裁判長は判決理由で「約70分も転送受け入れを要請するのが遅れた。注意義務が果たされていれば、90%程度の確率で生存していたと推認できる」と指摘した。

 判決によると、男性は2003年3月30日正午ごろ、自宅で急性心筋梗塞を発症し、同市民病院でアルバイトの男性日直医(34)が間もなく診察した。

 しかし同市民病院には、治療に最適とされるカテーテルを使った冠動脈の再建手術ができる設備がなく、転送する必要があったのに、日直医が近隣の専門病院に転送を要請したのは午後1時50分だった。男性は心室細動を発症し同3時半ごろ、死亡した。

 加古川市は「当方の主張が受け入れられず、非常に厳しい判決だ」とコメントしている。』

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