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文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(6)自費出版のあるべき姿 [JANJAN]
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投稿者 white 日時 2006 年 10 月 30 日 20:36:15: QYBiAyr6jr5Ac
 

(回答先: 文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(5)過熱する賞ビジネス [JANJAN] 投稿者 white 日時 2006 年 10 月 29 日 16:24:31)

□文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(6)自費出版のあるべき姿 [JANJAN]

 http://www.janjan.jp/media/0610/0610243344/1.php

文芸社・新風舎の盛衰と自費出版(6)自費出版のあるべき姿 2006/10/30
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 これまで協力・共同型出版について取り上げてきましたが、筆者はリスク負担型の商業出版を全面的に否定するつもりはありません。ただし、著者が負担する費用の見積を出版社にまかせてしまうのではなく、著者が印刷会社から見積りをもらい印刷会社に直接代金を支払う、また編集やデザインは社内で行うのではなく外注にし、著者が編集者やデザイナーに直接費用を支払うなどの方法をとり、それ以外の経費は出版社負担とするなど、費用の支払を明確にすべきです。

 そうすれば、出版社も必ずリスクを負うことになりますから、ほとんど売れないような作品にまで協力・共同型出版を推奨することなど不可能になり、異常としか思えない賞ビジネスや勧誘合戦も収束するはずです。大半の作品には従来の自費出版が適用され、良心的な自費出版社が生き残れるでしょう。

 あの手この手で原稿を集め、本来「私家本」とすべき本まで流通本として契約させ、不透明な負担金を請求して利益を得ようとする協力・共同型出版社の台頭は、出版文化の低下と良心的な自費出版の衰退を招いています。出版不況といわれる近年、出版点数だけが右肩上がりなのは、こうした流通する有料出版本の急増とも無縁ではないでしょう。

 ノンフィクション作家の佐野眞一氏は、『だれが「本」を殺すのか』(下巻・新潮文庫)の中で、【自分史や回顧録などの自費出版本は,別名饅頭本と呼ばれる。葬式のときに近親者に配る饅頭のように、「よろしかったら召しあがって下さいませんか」という領域の本だからである】と、自費出版本を評しています。

 確かに、自費出版本の中には読者のことを考えていない私的な回顧録や、自慢話が鼻につきうんざりさせられるような自分史も多いでしょう。しかし自分史であっも、趣味の俳句や詩であっても、また旅行記などのエッセイであっても、文章をしたためることは自由ですし、脳の活性化にも役立つことでしょう。それを本にするのもしないのも、本人の自由です。ただしそのような性格の本は、基本的に販売を目的としない「私家本」としてつくるというのが本来のあり方です。

 では、素人の本は自費出版、プロの本は商業出版というすみ分けがいいのでしょうか?音楽CDや映画などではインディーズ(自主制作)がしばしば見受けられ高い評価を得ている作品もありますが、出版においてもこうした自主制作、すなわち自費出版がもっと注目されてもいいのではないでしょうか。

 商業出版の本であっても中味は玉石混淆です。また自費出版の中にも優れた本や学術的価値の高い本、貴重な記録などもあります。そうした本を評価し流通させることは大きな意味を持つでしょう。自費出版はとかくマイナーに捉えられがちですが、「饅頭本」「素人の趣味」として片付けるのではなく、「自主制作による発信」と捉えることで、大きな可能性を秘めています。

 ベストセラーになった山崎豊子氏の『沈まぬ太陽』のモデルである故小倉寛太郎氏は、その著書『自然に生きて』の中で、自費出版にまつわる逸話を紹介しています。

 山崎氏が『沈まぬ太陽』の構想を編集者に話すと、巨大企業に睨まれるような小説は出版社の不利益が大きいとの理由でみんな逃げてしまったとのこと。それで山崎氏は自費出版を考えたそうです。小倉氏が「いくらなんでも中小出版社なら引き受けるところがあるでしょうに」と言ったら、「いや,わたしが自費出版するといったら日本の出版界で話題になるでしょう。いかに腰抜けな出版社ばかりかということを国民の方もわかってくださるのではないか」と言ったそうです。

 腰抜け出版社が出せない本を出版できるというのも、自費出版のひとつの役割であり魅力でしょう。『沈まぬ太陽』は最終的には新潮社が出版を引き受けベストセラーになったのですが、もし自費出版で出ていたら自費出版の評価は大きく変わったことでしょう。

 印税で食べていけるような作家は少ないといわれていますが、売れる自信があるプロの作家こそ自費出版で印税よりはるかに大きな収益をあげることも可能です。それにもかかわらず、版元の名前欲しさに「買い取り」をしてまでも商業出版を望む作家がいると聞きます。いびつな商業出版信仰がはびこっているゆえに、中味で勝負するのではなく版元の知名度に頼ってしまうわけです。

 私家本の制作だけが自費出版の役割ではありません。プロ・アマを問わずに優れた作品、価値のある著作を世に出すことは、自費出版の担う役割のひとつでしょう。そのためには商業出版に劣らない充実した編集や装丁が求められます。とりわけ素人の文章は丁寧な編集が必要でしょう。安ければいいというものではないことも念頭に置くべきです。自費出版編集者フォーラムのように良質の自費出版を目指し、情報交換などを行っている非営利団体(NPO/NGO)もあります。

 筆者は文芸社との契約と解約を経験したことがきっかけで、自分で本づくりを体験することになりました。その中で得たことは,自ら時間と労力をかけて本づくりの過程を楽しむことでした。タイトルに頭を悩ませ、装丁にこだわることも、自主制作の自費出版ならではのことでしょう。たとえ私家本であっても誤字だらけでは欠陥品ですから、校正も念入りになります。著者の思い入れを詰め込めることこそ、自費出版の大きな魅力ではないでしょうか。

 団塊の世代が定年を迎え、自費出版ブームはますます過熱するといわれている今、騙しの出版商法を質し、自費出版のあり方を問い直すときでもあります。

(松田まゆみ)

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