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Re: 帰国子女も日本育ちも、日本にいながら驚異的英語力を身に付けることができる英語教育
http://www.asyura2.com/0601/idletalk17/msg/372.html
投稿者 こげぱん 日時 2006 年 3 月 29 日 02:12:00: okIfuH5uFf.Lk
 

(回答先: Re: この表題には全面的に賛同できない。帰国子女の英語力を維持すらできない日本の英語狂育こそ問題である。 投稿者 こげぱん 日時 2006 年 3 月 29 日 01:43:38)

この投稿は、拙稿
Re: この表題には全面的に賛同できない。帰国子女の英語力を維持すらできない日本の英語狂育こそ問題である。
http://www.asyura2.com/0601/idletalk17/msg/371.html
投稿者 こげぱん 日時 2006 年 3 月 29 日 01:43:38: の続きです。

http://www.senri.ed.jp/interculture/index.htm
千里国際学園広報誌 Interculture 70号(2000年6月号)より抜粋

<英語科より> この学校で学んでいることを最大限に活かそう

しっかり読み、しっかり書き、しっかり考え、しっかり話し、しっかり参加し、しっかり発表し、しっかり他の人を理解し、しっかり自分を理解しよう

Catherine Brown
English

 1991年に千里国際学園がスタートした当時、英語科の専任教諭は私をふくめて、二人だけでした。英語のプログラムはまだ小規模なもので、生徒の人数も少なかったのです。私たちはその初期のころに、SISの生徒にあうような英語科のプログラムを築きあげるためにがんばりました。それから9年が過ぎ、2000年となった今、SIS英語科には、9人の専任教諭がおり、英語科のプログラムは、かなり大きなものになりました。7年生と8年生には7つのコースを、9年生から12年生には、合計45種類のコースを提供しています。

 学期完結制授業のシステムをとっているために、幅広い選択ができますし、生徒たちは、個人の必要に合わせて、4年間(9年生-12年生)の授業のとりかたを、自分でデザインすることができます。英語科のプログラムは発展してきて、Sレベルの生徒は、3年間の中学校のSレベルのプログラムを終えた後、10年生の秋学期にAレベルにあがるというところまできました。また、H+レベルの生徒には国際的に認められている資格である国際バカロレア(IB)のコースを特別に1年間提供します。OIS英語クラスに関しても、以前より多くの生徒に提供をすることができるようになりました。9-12年生については、週に5回、4回、3回、2回の英語の授業があります。もちろん希望すれば、ひとつ学期に複数の英語のコースを取ることも可能です。

 英語の授業を選ぶ時には、 みなさんがバランスのとれた組み合わせで、授業を選んでほしいものです。そうすることでこの学校を卒業した時には、あなたの受けた英語力は調和のとれたものになり、どんな道にすすむにしろ、将来の人生のためのよい糧となるでしょう。

 私たちは、SISの理想的な英語の生徒にとって、必要だと思われる8つの能力を明らかにしました。下のリストを見て、これからのSISで英語の授業を選んでいく時に、どこにポイントをおかなければならないのかを、自分に問いかけてみてください。

 ここに書いてあることについて、自分にできる限りのことをしてますか?この能力を伸ばすために努力をしてますか?この学校で学んでいることを最大限にいかしていますか?

 An ideal SIS students can - 理想的なSISの英語の生徒ができることという8つの項目のついて9年生の植田玲実子さんが、どう考えたらいいのか具体的に書いてくれました。

Read well-しっかり読む

 しっかり読むということは、いい発音で音読すること。カタカナ英語ではなく、ネイティブスピーカーのようなリズムのある英語で読めることを心がけること。また、しっかり読むとは、ただたんに目で文字を追うことや、いい発音で音読するだけではなく、その文の意味や言いたいことを理解することだ。その時、その文を読んで疑問を持つこと、作者のメッセージを考えることも大切だ。

Write Well-しっかり書く

 しっかり書く、それは授業で習った文法や単語をできるだけ使うことを努力するということ。自信がなくてもトライすること。間違いを恐れていると、何にも始まらない。

Speak wellしっかり話す

 たとえ間違っていても話してみよう。そうすることによって単語力がつくし、自然に発音もよくなる。自分から話しかけよう。他人が話しかけてくれるのを待っていたら、いつまでたっても英語を話すことは身につかないし、単語もふえない。

Think well しっかり考える

 しっかり考えるとは、疑問をもつこと。なぜ、そんなことを作者は書いたのか、この文は何がいいたいのか、相手は何を考えているのか。しっかり考えることによって、疑問がわいてくる。疑問を抱くことによって、答えが得られると思う。

Participate well しっかり参加する

 しっかり参加するとは、目的意識を持って自分のために勉強すること。そして、他人の考えを聞いて、自分の考えをふくらましていくこと。

Present well しっかり発表する

 どの項目にもあてはまると思うけど、自信を持ってトライしよう。先生があててくれるまで待っていると上達はいっそうしない。また、しっかり発表するとは、きちんと準備して100%自分をだすこと。

Understand self well しっかり自分を理解する

 とは、しっかりした目的をつくり、それに向かって進むということ。しっかり自分の意見をもつこと。

Understand others well しっかり他の人を理解する

 自分の意見を持ち、なおかつ、他の人の意見も受け入れられること。他の人が言いたいことを理解し、それをサポートできること。しっかり他の人を理解するとは、自分を理解できた上でのことだと思う。

この学校の英語教育の詳細は、下記pdfで公開されている。
http://www.senri.ed.jp/departments/all.pdf

この学校の英語教育の成果を、現福井医科大学教授(元教員)の田浦秀幸氏が分析・報告している。

コラムを2つ連載します!(Interculture 66-69号より抜粋)
田浦秀幸
SIS英語科旧職員(福井医科大学教授)
 

 インターカルチュアの紙面を借りて、在職中時間が取れず実現できなかった2つのコラムを連載していきたいと思います。SIS Research Column では、一英語教員・語学科全体・帰国子女教育センターとして取り組んだ様々なデータを使いながら、どのように一般生・帰国生の英語力が在学中に推移しているのかを少しずつ分析していきたいと思います。また、Bilingualism Columnでは、バイリンガル教育界の第一人者Colin Baker博士によって1995年に出版された"A parents' and teachers' guide to bilingualism" (1995)の中から1トピックずつまとめて翻訳していこうと思っています(これは専門書ではなく、保護者や学校の先生対象に書かれたものです)。両方とも私がここ数年興味を持っている分野であり、特に前者は学園・保護者・生徒にリサーチ結果を還元していくものですが、管理職はもとより元同僚の先生方(特に井嶋先生と英語科の先生方)の理解と協力がなければ収集し得なかった貴重なデータであり、本来は在職中にまとめ上げておくべき性質のものであったことをお詫びします。ただ、遅ればせながらもこのような形で千里国際学園の素晴らしい教育実践を外に向けて発信できることを幸せに思うと同時に、インターカルチュア誌上で課外活動ばかりでなく、教科内で行われている地道な教育実践報告もどんどんなされることを個人的に希望します。

 データ収集は複数の教員の手を通って行われましたが、リサーチ結果の分析や表記上の誤りにつきましては全て私1人の責任であることをここに付記し、ご意見や質問等はメールで直接私宛にお願いします(e-mail address:PDF02662@nifty.ne.jp)。また、部外者となった現在、私の持っているデータについては全て生徒の名前を消し、便宜上数字を打ってあるだけなので、そこから個人名を判断することはできませんし、研究以外の目的で使用することは一切ありませんので、プライバシーの保護につきましてもご安心下さい。


SIS Research Column

<1> 千里国際学園の生徒の英語の実状は?

 千里国際学園では数ヶ月に一度、新編入生徒が入学してきます。英語の授業を担当していると、帰国後間もない生徒からは「先生、僕(私)の英語力をkeep-upするにはどうしたらいいですか?」と質問され、帰国後1、2年以上経つ生徒からは「以前より絶対に英語の力が落ちた!」とよく聞かされました。確かに、周りの環境が全て英語であったのが一変して、週に5時間の英語の授業と、joint classes(SIS/OISの合同授業)やクラブ活動でのnativeの先生達や一握りの同級生との会話を除けば、英語を使う機会が極端に減ります。毎日当たり前のように使っていた表現や単語も、日常生活の中で使わなくなると思い出せなくなったり、思い出すのに時間がかかったりしてフラストレーションを感じるようになると思います。でも、高校2、3年と2年間通して同じ生徒を教える事が多かった英語担当者として、「英語の力は伸びて卒業している」と確信が持てていました。英語力の向上をきちんとした数値として示すことができれば、きっと帰国生を安心させることができると思ったのが、私のリサーチの出発点でした。

 言語能力には大きく分けて能動的能力と受動的能力とがあります。能動的能力とは話をした文章を書いたりする能力のことで、受動的能力とは話や文章を理解する能力のことです。言語喪失を取り扱ったさまざまなリサーチを見てみると、一度高いレベルまで到達した言語能力のうち受動的能力はかなりの期間(あるリサーチによると驚くべき事に50年間も!)保持されるようです。ですから少なくとも3年以上英語圏の現地校で勉強をした帰国生について、帰国後英語が聞き取れなくなったとか、英語の本が急に読めなくなったという現象は極めて起こりにくいと考えられます。それゆれ、帰国生が「英語力が落ちた」と感じるのは主として能動的能力、特に以前のように流暢に英語が口をついて出ない時だと思われるのです。本当に英語を話したり書いたりする力は帰国後落ちているのでしょうか?また、英語を聞き取ったり読んだりする力は維持されているのでしょうか?このテーマ(帰国生の入学後の英語力の推移)について今後7、8回に渡って見ていきますので、今回まず語の定義をしておきました。このテーマが一通り終わった時点で今度は、一般生の中学1年から高校3年までの6年間に渡る「書く力」の向上の様子について、アメリカ人の中高校生や帰国生との比較の中で如何に驚くべき程のスピードで進歩しているのかを、お話する予定でいます。

 
次回は、帰国生のリサーチを始めるに当たって、当時手元にあった毎年高校2年生全員を対象に4月上旬に行われていた TOEFL模擬テストの結果を、ある年度の高校2年生の冬及び高校3年生の冬のTOEFL模擬テスト結果と比較して能動的能力がどのように変遷していったのかを見てみます。


<2> 英語圏からの帰国生徒のTOEFLスコアの推移

 日本人のように英語を母国語としない人たちで、アメリカの大学へ入学を希望する者は、大学で行われる講義に英語でついていけるかどうかを示すためにTOEFL(Test of English as a Foreign Language)と呼ばれるテストを受けて、スコアを志望大学に送らないといけません。通常500〜550点(満点は毎回調整されるので一定ではなく 670点位)が必要とされますが、数年前アジアからの受験生対象にこのスコアが国別に集計され日本が最下位にランクされました。当時、日本の英語教育がかなり批判を受けましたが、TOEFL受験者の層がアジア各国と日本とではかなり違う側面を考えるとこの結果も納得できるものでした。つまり、アメリカの大学で勉強をしようと志すアジア諸国からの学生は、各国でもエリートと呼ばれる人たちであるのに対して、日本では極端な場合英語力の向上を測るためためだけの目的で受験する中高生も沢山いるわけで、その平均点を単純に比較してもあまり意味がなく、逆に日本人の英語学習に対する熱心さと、ごく普通の生徒でもなんとか工面すればアメリカに留学できる日本の経済的豊かさを示していたに過ぎなかったのです。

 さて、そのTOEFLの模擬テストをSISの高校2年生と3年生の4月に一斉に行い、英語の実力を生徒自身に自覚してもらい、英語科の教員もそこに至るSISの英語教育を省みる1材料とすると共に、高校2,3年生での英語の授業内容へ反映させる一助としてスコアを分析してきました。具体的にTOEFLでは前回お話ししました英語の受動的力(英語を聞いて理解する力、読んで理解する力、文法・語彙力)が測定対象となっています(受験月によっては書く力を試すessay writingもありますが、毎回ではないのでここでは割愛します)。ある年の高校2年生22人(英語圏滞在年数3年以上の帰国生)の4月時と12ヶ月後のスコアを比べてみて見ると、2年生時の平均点が537点、3年生時が577点でした。各分野ごとに細かく統計分析をして比較すると(難しい言葉で言うと「有意水準が5%以下」)、聞き取る力と文法力が1年間にかなり伸びていることがわかりました(それぞれ50.73が60.20点に、45.05が 57.32点にアップ)。

 SISでの英語教育の成果をよりよく見るために、この22人の帰国生を帰国後の年数(=SIS在籍年数)で2グループに分けて比較してみました(帰国してSISでの在籍年数が2年未満のグループ11名と、2年以上4年以下のグループ11名)。帰国後2年未満のグループは1年間で文法力にのみ統計的向上が見られたのに対し、帰国後の年数が長くその分SIS在籍が長い生徒のグループは英語を聞いて理解する力、読んで理解する力、文法・語彙力の全ての分野に於いて向上が見られたのです(有意差1%以下)。この結果を前にして私が思ったのは、常々帰国生徒が「帰国後英語力が落ちた」と嘆いているのは少なくとも受動的英語力については当てはまらず、英語教員として体で感じていたSIS帰国生の英語力の向上が数字により裏付けられた、ということでした。従来の言語喪失を取り扱った世界中のリサーチで一度も報告されたことのない「英語圏を離れたあとの英語力の向上」が、それも SIS在学期間が長くなればなるほどその度合いを増す、という言語学者から見ると全く「常識外れな」現象が千里国際学園で実際に起こっているように思われました。ただこれを断定するにはあまりにも対象人数が22人と少なく、また英語の能動的力(話し書く力)については一切データがないので、この2点をクリアーできて初めて千里国際での英語教育の素晴らしさとユニークさが証明できると考えました(一般生徒の英語力については、帰国生のリサーチ結果の報告が一通り終わった時点で行う予定です)。

 そこで、対象を7年生から12年生の帰国生(ただし条件として、英語力が同級生と同等になる考えられている「英語圏滞在年数3年以上」の生徒に限った)に広げ、かつ能動的な英語力を測るために、1997年12月から1998年1月にかけてSIS在籍生徒全員対象に行われた英語ライティングテストの結果から該当者のデータを抽出し分析することになりました(この分析には英語科の全教員が当たり6ヶ月を要した)。また能動的英語力のうち「話す」力については、千里国際学園海外・帰国子女教育センター(1998年当時)の協力を得て新・編入帰国生徒から長期間に渡るデータ収集を行い分析することになったのです。この分析結果を次回・次々回報告することにします。


SIS Research Column <3>

帰国生徒の英語ライティング力の推移 

 1997年度SIS在籍生徒全員対象に実施された英語ライティングテストの結果を今回はお知らせします。このテストではライティングの3側面、つまり(1)CC: 英語を書く上での決まり事で、文の始まりは大文字を用い、必要な箇所にはコンマやピリオドを打つ等ができる力(2)CL: 文法力(3)StC: 筋の通った、読者を意識したものを書ける力を測りました。  

 英語を母国語とする中高校生であれば6〜12点の間に収束し、平均点が10点になるようにこのテストは作られています。SIS帰国生徒について結果からわかることは、第1に、英文を書く決まり事については、入学当初より既に英語母国語話者と遜色のない力があり、学年と共にその力も向上し続けるが12年生で低下が見られる、第2に文法力については、7年生が英語母国語話者に劣るものの8年生で追いつき9、10年生と高原状態になった後、11年生で再向上し12年生で低下する、第3に物語り構成力については、入学後急速な伸びを示し、10年生は英語母国語話者の平均を大きく上まり、その後2年間は低下が見られるものの英語話者の平均以上を保っている、ということです。 

 この結果よりSIS帰国生徒のライティング力を概観してみると、7年生はSIS入学前に平均して1年9ヶ月日本の小学校に通っており、その間英語の学習が極端に少なく(あるいは全くなく)、その為入学後brush-upに約1年かかるが、8年生以降はネイティブの教員による英語指導(特に文法に力を入れた指導でない)の結果、文法力が順調に伸びそれにつれて内容自体にウェイトを置いた英文が書けるようになっている様子がうかがえます。特に10年生については「モノリンガル(1言語しか使えない人たち)に比べてバイリンガルの子供たちの表現力はより創造的である」という通説を実証したものであると言えます。また、11年生から始まるG/Tの授業も帰国生にとっては文法力を再確認する意味で有意義であることが、11年生のCLの向上によりわかりました。残念なことにいずれも3側面全てに於いて12年生に低下が見られ、この原因はおそらく日本の特殊事情、即ち受験対策の為に、帰国生に限っては国語や小論文対策に時間を割かれ、英語との接触時間が11年生以前よりかなり減ったことが一因であると考えられますが、この証明には SIS卒業後の追跡調査が必要です。また、学年固有の問題が一因であるとすれば、当時10、11年生であった生徒たちが12年生になったときのライティング力と比較することで容易に判断がつくはずです(リサーチ継続中)。 

 このプロジェクトでの一番の収穫は、帰国後僅か1日1時間のSISでの英語の授業であっても(それもライティング力や文法力にターゲットを絞ったものでない)、ライティング力が着実に向上しているという事実が数字で裏打ちされたことです。帰国生に関する研究で帰国後英語力が伸びると報告したものを私は個人的に目にしたことがなく、言語力の中でも最も身につけるのが困難とされるライティングの力に於いて、SISの帰国生の場合(12年生に低下が見られるものの)8年生以降英語母国語話者と同等或いはそれ以上のスコアを残していることは特筆すべきことなのです。英語科の先生方は自信を持って今の指導を続け、生徒の皆さんはそれを信じてしっかり勉強に励んで下さい。保護者の方々は、あまりあれこれ細かな注文をつけずに英語教育を安心して千里国際にお任せしてはどうでしょうか?次回は帰国生徒のスピーキング力の推移を見る予定です。 


SIS Research Column <4>

帰国生徒の英語スピーキング力の推移

 帰国生が帰国後日本語環境の中に戻り、英語接触量が激減し、今まで毎日使っていた単語や表現が口をついてでてこなかったり、言いたいことがすらすら言えなくなってしまい、せっかく苦労して体得した英語を失うのではないかと焦燥感に苛まれることがよくあります。英語環境としては非常に恵まれているSISの帰国生とて当然例外ではなく、担任・教科担当としてそのような悩みをよく耳にしました。ところが、SISで帰国生徒に英語を教えていると(日本人英語教員が帰国生徒と授業で関わりを持てるのは従来10年生からであったので9年生以下については私個人の経験からは何も断定できませんが)、決して英語力が低下しているとは思えませんでした。以前お話しした通り、これが私のSISに於けるリサーチの原点であり、ここ数回に渡りTOEFL scores, ライティング力と見てきました。今回は、英語スピーキング力について、英語圏から帰国後SISでどのような推移を見せているのか調べた結果を報告します。対象帰国生徒(実験群と呼びます)は、3年以上英語圏の学校滞在経験があり、帰国直前には同級生とほとんど同じだけの英語力を付けていたと考えられる人たち22人です。比較対照のために(統制群として)、英語を母国語とする高校生10人(英語圏以外での生活体験のない者)と、日本人英語学習者(日本で英語を学び、英語圏滞在経験の無い者)10人にも協力してもらいました。先ず、帰国生徒を帰国後の期間(=SIS在籍期間)によって2つのグループに分けました。便宜上、帰国期間が比較的短い(平均約2年)グループを実験群1,比較的長い(平均約4年)グループを実験群2と呼ぶことにします。このリサーチに協力してくれた生徒42人は全て同じ学年であり、年齢差はありません。

 データ収集法と統計分析対象変数に関する詳細は省きますが、分析の結果有意差(p<.05)が見られたのは、話し言葉の流暢さと英文自体の構造の複雑さでした。即ち、帰国後の期間(SIS在籍期間)が長くなればなるほど、英語で話をする際にポーズ(会話中の無言時間)の割合が減りより流暢になり、英語自体もより複雑な構文を使用するようになっていることがわかったのです。勿論これは帰国生徒の英語力に関する従来の研究結果とは正反対のもので、驚くべきことです。ただ、偶然このリサーチに協力してくれた生徒たちの動機付けが、非常に高くて、今回のような結果が出たのかもしれない可能性も多分に残っています。SIS英語教育の良さや、SISでの英語環境の良さを証明するには、今後より多くの帰国生を対象にするとともに、在籍期間を通しての追跡調査が不可欠ですが、これには膨大な時間がかかることが予想されます。ただ、日本で初めて英語でのイマージョン教育(小学校1年から国語以外の教科を英語で教え初め、学年が上がるにつれて日本語での授業を増やしていきバイリンガルを育成する方法: カナダでかなりの成果を上げている)を実践している静岡県の加藤学園でも、担当者が追跡調査をして学会でその成果を(マイナス面も含めて)発表し、校外に情報を発信している現状を見ると、新たな教育信条を持つ千里国際学園がコアとしている英語教育の成果を発信する必要性は、少なくとも私の目には明らかであるように思われます。今後、現場教育のみならず、このような面の充実も計られることを旧職員として望んでいます。

 さて、少し本題からそれてしまいましたが、このリサーチ結果にもかかわらず帰国生徒が、どうして英語が口をついて出なくなったとSISでも感じてしまうのでしょうか?ここからは研究結果の個人的な解釈ですが、例えばオーストラリア英語では「授業をさぼる」ことをスラングで"wag a class"と言い、ほとんど毎日の様に耳にし、自分でも使っていたと思います。ところが日本に帰国するとそのような表現を聞くことが一切なくなり、そのうちに使いたくても出なくなり、あまりに普通の表現であったためにより一層フラストレーションを感じてしまうと思われます。そうのなことが度重なると、学校での学習英語力は向上しているのに、日常で使う便利な単語や表現を忘れてしまったことの方が気になり、客観的に自分の英語力を判断できず「英語力が落ちてきた」と感じるのではないでしょうか。定期的にTOEFLなどを受験して常に自分の英語力を把握しておけば、不安感を抱くことなくきちんと自分の英語力が向上していると感じることが出来ると思います(英検は日本語と英語両方の力が必要なので、英語力のみの測定にはTOEFLの方が適しています)。また、私が行ったリサーチは私の個人的な疑問が出発点でしたが、それを数字的に裏打ちされた結果として生徒にフィードバックしたいという思いも半分以上ありました。連載している通り、SIS帰国生徒の英語力は言語学理論に基づいたリサーチの結果、ほとんどの場合低下していないどころか、むしろ向上しているケースが多いのです。今の英語のクラスで一生懸命取り組んでいれば、必ず力の付くプログラムを英語科は組んでいるので、安心して勉強に励んで下さい。


補足
帰国子女受け入れを主目的とする学校でなくとも、文部似非科学省お仕着せの受験英語などに背を向けて日本育ちの生徒に驚異的な英語力を習得させる学校ももちろんある。例えば下記リンクを参照されたい。
(先の拙稿に記した友人知人には、ここの卒業生が複数いる。この学校の英語教育の絶大な効果を自ら目の当たりにしたときは激烈なカルチャーショックを受けた。)
http://www.kobejogakuin-h.ed.jp/kyouka/eigo/

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