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ケネディ政権のときに本格実践された食糧配給制(フードスタンププログラム)は公民権運動の成果でもある
http://www.asyura2.com/0601/idletalk19/msg/558.html
投稿者 馬場英治 日時 2006 年 8 月 13 日 15:06:54: dcAX/x0KhXeNE
 

(回答先: すでに食糧配給制が始まっているアメリカ:二千五百六十万人,全人口の10%近くが配給プログラムに依存 投稿者 馬場英治 日時 2006 年 8 月 10 日 07:04:33)

http://exodus.exblog.jp/3973285/

前便でも書いたように,私がアメリカで現に食糧配給制が実施されているという事実を知ったのは,≪喜八ブログ≫経由で読んだ在米フリーランス・ジャーナリスト堤未果氏記事によるが,阿修羅掲示板では SunShine さんからいくつかの貴重な情報を寄せて頂いた.それによると,米国における食糧配給制度の歴史は古く,すでに1939年には最初のパイロット事業が実施されているという.この時は1939年5月から1943年春までの正味4年間だった.

1929年10月24日ニューヨークのウォール・ストリートにおける株式大暴落をきっかけに連鎖的な経済破綻が各国に波及して世界経済が大恐慌に突入したとき,民主党大統領ルーズベルト(任期:1933−1945)はケインズの修正資本主義理論を採用して,「ニューディール政策」と呼ばれる積極的な経済介入を行い,団体交渉権の確立・TVA(テネシー渓谷開発公社)などの大規模公共事業による失業者対策・社会保障制度の導入などの社会経済政策を矢継ぎ早に実施した.(ルーズベルトが反戦ムードの強かったアメリカ国民を煽って戦争に導くために真珠湾攻撃をあえて誘発したという論についてはここでは踏み込まない.)


Panic on Wall Street↑ People crowd Wall Street after the Stock Market Crash of 1929. Commissioner Whalen dispatched an extra detail of 400 police officers to guard the area.

最初のフード・スタンプ・プログラム※はこのような情勢下で社会保障政策の一環として実施された緊急避難的性格を持った暫定措置である.大恐慌に先行して発生した農業恐慌の原因は農業の機械化による過剰生産と折悪しく重なった異常気象によると見られるが,市場でさばくことのできない余剰農産物を都会の失業者に直接的に分配するという食糧政策はかなりの効果を挙げ,1943年には初期の目的を果たしたとして一先ず完了した.

※ちなみに日本の食糧配給制度は1941年に開始され(6大都市で先発)1981年に廃止されるまでの40年間という長きにわたり,戦中・戦後の国民経済の重要な基盤として機能してきた.食糧管理法が最終的に廃止されたのは平成7年(1995)である.

1941年に勃発した太平洋戦争のもたらした戦争特需によって失業者が一掃されたことがこの成功の一因であったことは間違いないとしても,米国農務省公式サイトの「フード・スタンプ・プログラム小史」に記された,時のUS農務省長官ミロ・パーキンスのコメント:

「農村には過剰農産物の危機があり,都会ではそれに手を伸ばしながら得られない栄養失調の市民がいる.このような難問を前にした我々はこの断絶に橋渡しする実際的な方法を見つけることを始めた」 は,私が前回エントリで農婦さんのコメントに応えて書いた,

「一方には国民全体に分配してもあり余るほどの食料があり(毎日廃棄されています),他方では餓死する人がいるという現状があります.」

という問いかけに厳密に呼応するものである.最初のFSプログラムが終了してから1961年にプログラムが再起動されるまでの18年間には相当の研究活動の積み重ねがあり,多くのレポートが書かれ,また法案の準備が進められた.1959年の法制化にもっとも貢献した人物としてミズリー州選出民主党女性議員レオナ・K・サリバンの名前※を挙げることができる.


レオナ・K・サリバン(1902 - 1988)の肖像画↑(米国議会コレクション)→画像ソース

※セントルイス市のミシシッピー川沿いの大通りはレオナの名前を冠して,レオナ・K・サリバン通りと呼ばれている.(セントルイスにはミシシッピー川にかかるドクター・マーチン・ルーサー・キング・ジュニア・メモリアル・ブリッジというキング牧師を記念する橋もある.)

サリバン議員の活躍でフードスタンププログラムはようやく連邦政府の政策として法制化されたが,アイゼンハワー政権はプログラムの具体的な実施には着手せず,プログラムが実際に起動されるまでにはなお民主党ケネディ政権の誕生を待たなくてはならなかった.マサチューセッツ州出身上院議員ジョン・フィッツジェラルド・ケネディは1961年第35代アメリカ合衆国大統領に就任し,1963年ダラス市で凶弾に倒れるまでの4年間政権を担当した.

ケネディの時代は公民権拡大の時代でもある.1955年12月アラバマ州モンゴメリーで発生したローザ・パークス逮捕事件をきっかけに,マーチン・ルーサー・キング牧師らが始めた非暴力のバス・ボイコット運動は,1956年に合衆国最高裁判所がバス車内における人種分離に違憲判決を出したことによって勢いを増し,南部諸州各地で黒人の反差別運動が盛り上がりを見せた.時には激しい黒人暴動に発展しながら続けられたこの「法の下での平等な市民的権利を求める運動」は1963年の公民権法(Civil Rights Act)として結実する.

フードスタンププログラムを制度化する努力と公民権運動が組織的に連動していたという「証拠」を見付けることはできなかったが,サリバン議員が南部ミズリー州出身であることを指摘するまでもなく,アフリカ系アメリカ人が市民権を得るまでのプロセスとその市民的権利の一部としての生存権を制度的に確立するための議会内の動きには強い(心情的)連繋があったと考えてよいだろう.ジョン・F・ケネディは公民権運動に理解を示し,南部諸州の人種隔離法(ジム・クロウ法)の禁止などの施策を実施しているが,ケネディの死後実際に公民権法の制定を実現したのはケネディ政権で副大統領の座にあったリンドン・ジョンソンである.

ケネディの後を引き継いだジョンソン大統領は1964年フードスタンププログラムを恒久化する法案改訂を議会に求めた.この法案もサリバン議員の提案によるものであるが,この法案ではアルコール・輸入食品を対象外品目とし,人種・信仰・出自・思想による差別を禁じ,連邦政府と州政府の責任分担が規定された.その後何度かの改定を経て今日に至っている.

当初のフードスタンププログラムは文字通りクーポン券のようなチケットを配布することから始まった.SunShine さんの解説によると,1ドル,5ドル,10ドル,20ドルの額面が印刷された冊子様?のものであったらしい.食料品店ではこのチケットを切って食品を購入することができる.流通はしないが,地域通貨の一種と考えてもよい.フードスタンプに有効期限が記載されているかどうかは不明だが,もしそうであるとすればこれはかつてゲゼルの提案した老化する貨幣(劣化する貨幣)に類似すると言えなくもない.(写真↓では有効期限は見えない)


この画像を拾ったサイトはあまり信頼できるところではないので,画像ソースは提示しない.額面が7ドルとなっているが,これも SunShine さんの解説が正しいとすると疑問がある.

タバコとアルコールは購入することができないし,上記したように輸入食料を購入することもできない.これは政策的にはある種の国内農産物の買い支えであり,農業保護政策としての効果を期待することができるから,食糧自給率を高める食糧安全保障の一環とみることもできる.フードスタンプは世帯ごとに発行されるので,「家族のきずな」を強化する効果もあるだろう.実際,以前にはキッチンと調理具が整備されていることが給付の条件となっていた時期もある.フードスタンプのモットーは「低所得者に栄養価の高い食事を!」というものであり,ジャンクフード漬けの下層階級の食生活を改善するという意図が込められている.

現在では私の知る限り紙製のチケットは廃止され,電子カードの形式に移行しているのではないかと思われる(Sun Shine氏によればクーポン券が使われている州もあるとのことだ).この電子カードはデビッドカード※と類似の方式で決済が行われる.フードスタンプを申し込むためには,ソーシャルセキュリティ番号(国内の住基ネット類似の国民総背番号)を提示することが義務付けられている.従って,当局が望めばある世帯の購買行動を追跡調査することも可能だ※※.連邦政府はフードスタンププログラムの啓蒙にもかなりの力を注いでいる.

※デビッドカードとは店頭で即時オンライン決済のできる銀行発行のキャッシュカードである.買い物をする時にはカードを提示することでその場で自分の銀行口座から商品代金が引き落とされ,販売店の銀行口座に同額が振り込まれる.
※※実際後述するような捜査事例も存在する.

受給資格は前便にも書いたように銀行預金など計数可能な資産が2千ドル以下(老人世帯・障害者世帯では3千ドル以下)で,月収$1,037以下(単身世帯の場合,3人世帯なら$1,744以下,5人世帯では$2,450以下)の世帯である.持ち家と通勤用の車は資産に計上されない.米国籍を持たない非米国市民は原則としてフードスタンプを受けることはできない.(グリーンカード保持者などへの緩和措置はある)生活保護(Welfare)受給世帯はフードスタンプとMedical(医療費全額補助)の給付を受けることができる.フードスタンプを支給される低所得者はMedicare(医療費の一部補助)を受けることもできるようだ.※→参照データ

※このパラグラフ↑に含まれる記述のうち,Welfare(生活保護),Medical(医療費全額補助),Medicare(医療費の一部補助)に関する部分は主に sun shine さんの書き込みを参照していますが,厚生労働省の2000年度厚生労働省白書海外情勢報告の記述との不一致が見られるなど一部疑義がありますので,保留します.たとえば,同白書を見ると公的扶助(生活保護)制度に関しては『アメリカでは、日本の生活保護制度のような連邦政府による包括的な公的扶助制度は存在せず、高齢者、障害者、児童など対象者の特性に応じて補足的所得保障、メディケイド、貧困家庭一時扶助、フードスタンプなどの各制度が分立している。また、州政府独自の制度も存在している。』と記述されています.

おそらく生活保護制度は各州がまちまちに実施しているものと推定されます.上記では「生活保護世帯はフードスタンプを受けることができる」としていますが,常識的に考えてこれは妥当な記述ではないかと思います.但し,生活保護の支給額がフードスタンプの資格要件よりも高額であるような場合,フードスタンプを受けられないということも理論的には有り得ます.

現在米国市民の9%2560万人がこの福祉政策の恩恵に与っている.これが1960年代に恒久的なシステムとして確立したアメリカ合衆国のセーフティネットである.これをアメリカの貧しさと見るか強靭さと見るかはパースペクティブの問題である.「国民にもっと痛みを」と叫び,アメリカの厚かましい要求に唯々諾々と従って自滅的な構造改革を進めてきた小泉首相は,本家アメリカの自由主義経済の裏側にこのような仕組みがあることを知っていたか?

対岸のアメリカでフード・スタンプ・プログラムのサービスを受けている貧困層の存在が見えないとしたら,如何にして日本本国の低所得階層の痛みを知ることができるか?

もちろん,イラクにおける残虐な殺戮を続け今はまたレバノンの流血に責めを負うべきブッシュ大統領が富裕層に対する大盤振る舞いの減税と既に3200億ドルを越えるイラク戦費の穴埋めに社会福祉・医療・教育・食品衛生・環境保護その他国民の福利に直結するあらゆる分野への支出をカットしているスタンスから考えても,その恥さらしな太鼓持ちであるコイズミ氏が「そんなこと知ったことか!」とわめきたくなる気持ちは理解できなくもない.

ブッシュ政権のもとでフードスタンププログラムが現状どのようになっているかを見るのは教訓的である.手元に数字はないが,フードスタンププログラムの連邦予算の大幅な減額は避けられないだろう.実際,現在では新たにフードスタンプを申し込むことは実務的に極めて難しくなっている.受付窓口が午前8時に開くとすればその2時間前に並ばなければ申請書類を手に入れることすらできないような情況がある.書類のすべての欄に書き込んで申請しようとしても,大概は何かしらの不備を理由に突き返されることになる.

参照→Confronting Barriers このドキュメントにはフードスタンプ申請の手続きを阻むバリアの前で立ちすくみ途方に暮れる人々の実例が満載されている.これらの事例と日本国内において実際に起きた生活保護申請手続き上のバリアに阻まれて死に至った事例がオーバーラップしてくる.生活保護を2度申請し,2度とも却下された秋田市の男性(37)が7月24日,秋田市福祉事務所前の駐車場で練炭自殺したという痛ましい事件である.

2001年の911以来イスラム系移民に対する迫害・人権蹂躙が続いているが,フードスタンププログラムに関連しても同種の事件が報告されている.やや旧聞に属するが,2002年4月の seatlepi.com の Somali grocers lose right to use food stamps というタイトルの記事によれば,サウス・シアトルの東アフリカ系ムスリム(ソマリア人)の居住区で営業する肉屋が抜き打ち的にフードスタンプを扱う営業許可を取り上げられるという事件が報告されている.この肉屋の母国ソマリアはこの時期,アフガニスタン戦争後の次の攻撃のターゲットとしてアメリカが物色していたいわゆる「テロリスト支援国家」の一つであり,住民のほとんどはイスラム教徒である.このイスラム系の肉屋さんの場合お客の99%はフードスタンプを使っていたということであるから,ほとんど生存そのものを否定するに等しいむごい処分である.

この認可取り消し処分の理由としてトランザクションパターンが不正規だ,などのことが挙げられている.同じ世帯に属する複数の人間が同一時間帯に購買行動しているとか,購買金額が大き過ぎる(まとめ買い)などである.明らかに当局はこれらの店舗がテロリストグループと取引した嫌疑をかけていると推測できるけれど,もしそれが事実ならとうの昔に愛国者法違反容疑で逮捕されなくてはならないはずであり,そうしたことが起きていない以上嫌疑が根拠のない,ただの言いがかりに過ぎないことは明らかである.福祉政策においてもっとも重要な基本原則は,1964年の法改訂で盛り込まれた条文を省みるまでもなく「公正」であり,この原則を欠いたときにはそのシステムは逆に残酷なくびきとなることをこの事例は教えている.

この肉屋さんではヤギや羊の肉しか売っていない.それもある特殊な宗教的手続きによって言わば聖化しなくてはならないらしい.このような手続きを経た肉はハラルミートと呼ばれる.東アフリカ人(ソマリ族)はこのハラルミートを一頭分丸ごと買って家に持ち帰り,冷凍しておいて1ヶ月くらいかけて切り分けて食する.一頭の値段は150ドル位という話だが,5人家族の場合フードスタンプの支給額は601ドルになるので,十分購買できる価格帯である.

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