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鮮血魔術の秘法(魔術の本質?)
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投稿者 海山 日時 2006 年 7 月 31 日 12:22:41: 3RyYZcwxXcgQY
 

Secrets of Thaumaturgy
http://www12.ocn.ne.jp/~piroki/WoD/BMagic1.html


BLOOD MAGIC


 『魔術』の訓え(Thaumaturgy)。
 有史以前より伝わる他の訓えに比べればまだ歴史の浅いこの秘術は、しかしその伝承者であるトレメール氏族に、他の血族との苛酷な闘争に耐えて生き残るだけの強大な力と豊かな遺産をもたらしてきました。『魔術』こそがトレメールの力の源泉であり、『魔術』を通してトレメールはより高次の存在に向けての飽くなき探求を続けるのです。

 ですが『魔術』は最も謎多き訓えのひとつです。その奥義と秘法はトレメールの内陣奥深くに秘匿され、この氏族の中でもほんの一部にしか開陳されることはありません。トレメールの若者たちは、上位者の指示に忠実に奉仕することによってのみ、『魔術』の深奥に触れるチャンスを得ることができるのです。当然ながら、トレメール氏族は他の氏族にこの訓えの秘密が漏れぬよう、その歴史の始まりから今に至るまで厳重に監視の目を光らせてきました。

 一般に『魔術』についてトレメールの外で知られているのは、それが死者を生き返らせ、永遠の命をもたらすという類い希なる強大な力を内に秘めたヴァンパイアの血そのものを触媒・あるいはパワーソースとして、多種多様な神秘的成果をあげることができるということだけです。太古よりツィミーシィやアサマイト、セト人といった他の氏族でもこうした“鮮血魔術”(Blood Magic)は実践されてきましたが、トレメールはそれをより洗練された実践しやすいものへと発展させました。西欧神秘主義の系譜を引くトレメールの魔術師たちは、エジプト秘教魔術や錬金術の手法や理論を用いて、血族の長い歴史の中ではじめて体系的に自らの血という最も身近なパワーソースを利用するすべを編み出したのです。彼らは、お互いに同じ理論を用いて議論し、共同して切磋琢磨に励むことができるようになりました。これがこの新興の氏族に現代まで生き延びる、そしてキャマリラ内で有利な立場を占める大きな原動力となったのです。

 ここではそうしたトレメール魔術師たちの秘法の一端を垣間見ることにします。なお、前編では主に『魔術』の体系、後編ではトレメール氏族の研究体制について述べます。

参考文献:
『Blood Magic: Secrets of Thaumaturgy』
『神秘学の本』(学研、1996年)

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『魔術』の誕生
Hermetic Way

 トレメール魔術師の用いる『魔術』の源流の太い一本は、西欧魔術の主幹を成してきた「ヘルメス学」(Hermeticism)です。“錬金術”という卑俗な名前で人口に膾炙しているこの神秘学は、その起源を古代エジプトの秘教魔術に求めることができます。

 創始者を“三重に偉大なるヘルメス”すなわち“ヘルメス・トリスメギストス”として古代の神秘的な叡智を体現し、エジプトにあっては書記の神トト神としてそれを伝えた存在とするヘルメス学は、「創造主が万物を創造する以前に、すべてのものが創造主の内にあったからには、すべては一であり、また、その一はすべてである」という「単一性」の思想をその中心に持っていました。それによれば、この世の現象は一見すると混沌として多彩なように見えますが、それらは究極的には天地創造の「一」へと帰ります。それゆえ、あらゆる差異の背後にある同一性を発見することが可能なのであり、その「一」の探求こそが、錬金術においては究極の完全なる物質「賢者の石」の探求となり、占星術においては大宇宙と小宇宙(人体)を統べる「天体の法則」、魔術においては天地創造によって生み出された「自然の法則」の探求になったのです。

 こうしたヘルメス学の伝統にのっとって森羅万象の究極的な理解を目指したのが、ヘルメス魔術師“マギ”(Magi)たちでした。彼らは古代エジプト、ギリシア、ローマや中近東諸国で伝えられたヘルメス思想を受け継ぎ、中世に沈降したヨーロッパにおいてそれらを再興させることに成功しました。かくして生まれたのが、マギたちの秘密結社「ヘルメス梯団」(The Order of Hermes)でした。彼らは、創始者のひとりである偉大なる賢者ボニサグスが編み上げた「ヘルメス魔術」(Hermetic Magic)の巨大な体系を駆使して、それまで各地各人でばらばらに研究が進められていた神秘学の伝統を統一し、飛躍的な知の発展を実現しました。

 現在“トレメール”と呼ばれている氏族は、かつてはこの梯団に参画する学派のひとつでした。「Arbitrium Vincit Omnia」(アルビトリウム・ウィンキット・オムニア)すなわち「意志はすべてを制する」というモットーを掲げたこの野心的な魔術師たちもまた、宇宙の究極的な理解を求めてヘルメス学の伝統にのっとって探求と研鑽に打ち込んでいました。しかし、中世のある時期を境に梯団と袂を分かちました。トレメールの幹部たちは、永遠の探求を続けるために不死性を求めて自らヴァンパイアとなり、その代償としてヘルメスのマギたちが実践してきた魔術を用いる力を失いました。この損失を埋めるために、トレメールの一党は新たな魔術を創始する必要に迫られました。そんな彼らが目をつけたのが、太古より各地で行われてきた鮮血魔術の手法だったのです。トレメールはヘルメス梯団で培われた理性と論理に裏打ちされる“科学的”手法を、最強のパワーソースであるヴァンパイアの血を用いる鮮血魔術に導入しました。かくして、『魔術』の訓えが誕生したのです。


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鮮血魔術の実践
Paths and Rituals

 『魔術』は数ある訓えの中でも最も汎用性が高い術であり、他の訓えの効果を模倣することも可能です。トレメールの大魔術師たちに言わせれば、『魔術』はヴァンパイアの血が本来持つ潜在力を完全に引き出すことができるのだから、限定的にしかパワーを呼び起こせない他の訓えでやれることは『魔術』によってすべからく可能なのです。『魔術』にはまさに無限の可能性が秘められており、トレメールたちはそれを極めるべく日夜研究し続けているのです。

 『魔術』は「系統魔術」(Path)と「儀式」(Rituals)の二系統の魔術体系から構成されています。部外者から見ると、比較的短い時間で発動できる系統魔術があるのになぜ複雑かつ長時間かかる儀式をトレメールが実践しているのかは不可解にも思えます。しかし彼らにはうかがいしれない長所と短所をこの二つの系統はそれぞれ持っているのです。どちらが欠けても鮮血魔術としては不完全なのです。

系統魔術 Paths
 「系統魔術」は最も純粋な形での鮮血魔術といえます。簡単に言えば、系統魔術とは魔術師の知識と意志によって呼び起こされた力であり、訓えと同じように即座に現実世界に影響を及ぼすことができる力です。儀式と違って、充分な知識と技術さえ備えていれば、系統魔術を行使するにはほとんど準備らしい準備は必要とされません。いつでもどこでも即座に効果を発揮できることに加えて、系統魔術にはそれこそ無限ともいえるバリエーションが魔術師たちの研究によって生み出されてきており、その汎用性は訓えの中では右に出るものがないほどです。

 部外者が見れば、系統魔術の発揮する力と他の訓えとはほとんど見分けがつかないこともあります。しかし、トレメールの大魔術師たちによれば、この二つの力の間には非常に重大な違いがあります。それは、他の訓えがヴァンパイアが本来的に持つ体機能の一部であるのに対して、系統魔術はヴァンパイアの血そのものを燃料として効果を実現する技であることです。その証拠に、他の訓えでは実際にヴァンパイアの体内の血を消費することはあまりないのに、系統魔術を使う際には鮮血魔術師は必ずいくばくかのヴァンパイアの血を消費しなければなりません。これは魔術師自身の体から直接引き出したり、あるいは実際に血管を切り開くことで血を漏出させることで行われます。特に後者は「血文字」と呼ばれる手法で、これをいつでも行えるよう鮮血魔術師の多くは小ぶりのナイフを持ち歩きますし、刃物がないときには鋭い爪で手首を切るのです。

 系統魔術、そして『魔術』全体は、超人的な腕力や俊敏さ、知覚能力などといったヴァンパイアが体機能として本来的に持っている力ではありませんが、熟練した鮮血魔術師は自らの不死性を糧にすることで、同様に効果を現実世界に及ぼすことができるのです。

 しかし系統魔術には無視できない短所があります。それはその力の限界があることです。系統魔術はどんなに高い世代の者であっても研鑽に励めばマスターすることができますが、儀式には低い世代の血族でなければ行使できないような奥義が存在しています。これはつまり、儀式のほうが潜在力として優れているということを意味します。また、どれほど熟練した大魔術師であっても、系統魔術はある限られた上限までしか効果を伸ばすことができません。それぞれの系統魔術はそれぞれのカバーする範囲内で大きな力を振るうことができますが、上限を超えることはできないのです。さらに、系統魔術では必ず少量といえど体内の血を消費することが問題です。これはすなわち鮮血魔術師は自分の血の最大貯蓄量(つまり體血の上限)という限界を課されてしまっていることでもあります。

 こうした重大な短所があるために、トレメール魔術師は系統魔術を使うよりも儀式のほうを重視して実践しています。実際、よほど緊急時でなければ、系統魔術ではなく儀式を使って慎重に事を運ぶのが鮮血魔術師の間では普通です。

儀式 Rituals
 「儀式」はヘルメス学の伝統に沿った形で執り行われる一連の魔術祭儀のことです。これらはヴァンパイアの他の力に比べれば、相当に複雑であり長い時間を費やさねば効果を発揮できません。こうした古風な祭儀を行うには、術者はさまざまな品物をそろえた上で、すでに滅んだ古代の言葉で詠唱し、複雑怪奇な身振り手振りを正確に実行しなければなりません。与えられた魔術の定式(formula)から少しでもはずれることがあれば、儀式魔術は失敗に終わってしまいます。部外者から見れば、鮮血魔術師がなぜこんな迂遠なやり方を勉強するのに多大な時間を割いているのか不可解かもしれません。

 彼らが儀式魔術を用いる理由の一端は、もともとこの手法を鮮血魔術に持ち込んだトレメールという集団が、ヘルメス梯団のもとで理論と公式を用いた“科学的”魔術を推進していたことにあります。トレメール氏族の創始者たる大魔術師トレメールとその七人の弟子たちは、新たに『魔術』を作り出すときに、生前培ってきた手法を躊躇無く持ち込みました。その伝統が現在でも連綿と徒弟制度を通して受け継がれているのです。彼らは、創始直後からツィミーシィをはじめとする怒り狂う血族たちに全方位で攻撃されました。その苛烈な襲撃から新興氏族を守るために、生前は禁忌として触れず封印した魔道書や太古の邪法までも探しだし、新しい魔法体系に組み込んでいかなければなりませんでした。特にヴァンパイアやグールをよせつけない防護の魔法が率先して開発されていきました。現在でも重宝されている結界儀式は、トレメール草創期にまでその起源をさかのぼることができるのです。

 系統魔術が発明されてからも、トレメールたちは儀式魔術を使い続けました。極めつけのリアリストの集団である彼らが捨て去らなかったのですから、儀式には系統魔術に勝る有効性があったということです。それは、術者にかかる負担が少ないという点でした。

 儀式を行う際には、鮮血魔術師は実際に自らの血を消費する必要はめったにありません。これは常に血を費やさねばならない系統魔術に比べて大きなメリットです。これはすなわち、トレメール魔術師は自分の体内にある血の量に左右されることなく、大規模な魔術を行使することができるということを意味するからです。もちろん、強力な儀式の中には血の消費を要求するものもありますが、そうしたものの効果は、同じ量の血を求める系統魔術の成果よりもはるかに長時間持続し、強大なものとなります。そして、儀式魔術によって得られる強大な効果は、トレメール氏族に数々の勝利をもたらしてきました。その代表例が、アサマイトの呪縛、ガーゴイルの創造、そして何よりもトレメール創始者たちが定命の人間からヴァンパイアへと変身を遂げたこと、なのです。

 また、儀式魔術は行使の際に術者が被るリスクの点でも系統魔術より優れています。鮮血魔術を完遂するには、非常に強靱な意志が必要とされます。特に系統魔術は、純粋な形の魔術であるがゆえに、術者の意志がダイレクトに作用します。つまりそれは失敗すれば、術者の精神的・霊的な部分に危険が及ぶということでもあります。もし系統魔術の効果を発揮するために必要な意志を充分に放出できず、失敗の反動によって意志の力にダメージを被れば、それは魔術師にとって取り返しのつかない損失となります。系統魔術発動の失敗を重ねたために、魔術師としては廃人同様となってしまった者も過去決して少なくはないのです。系統魔術を行使する際には、鮮血魔術師は常にこの危険を考慮に入れねばなりません。その点、儀式は時間をかけて入念に準備するだけあって、術者をこの種の危険から守る方策をいろいろと講じることができます。

 新しい儀式の開発は、新しい系統魔術を作り出すよりもはるかに容易であることは過去の歴史が実証してきた事実です。何より、儀式魔術こそが『魔術』が生み出した最初の鮮血魔術なのですから。トレメール氏族は、その時々の必要に応じて適切な儀式を発明してきました。ヘルメス魔術の鮮血魔術の定式理論を用いることで、魔術師たちは合理的に魔法の形を編み上げていくことができます。また、系統魔術が段階的に効果を作り上げていかねばならないのに対して、儀式はそれぞれ単独で開発ができるのも大きな強みです。

 儀式の力は、鮮血魔術師がどれだけ『魔術』の体系全体について理解しているか、ということにのみ制限されます(ゲーム的な言葉でいえば『魔術』のレベルのみということ)。儀式を修得するには、鮮血魔術についての基本的な理解以上の前提条件は必要とされません。つまり、魔術師は系統魔術とは違って、必要な内容の儀式を好きなように学習することができるということです。こういったわけで、多くの鮮血魔術師は、系統魔術よりもはるかに多くの儀式を修得しているのが普通です。

 まとめれば、系統魔術は確かに鮮血魔術の非常に高い“潜在力”を体現していますが、実用性においては儀式魔術のほうがはるかに高いということです。優秀なトレメール魔術師は数多くの儀式を効果的に使うことができる者のことだということもできるでしょう。


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魔術理論
Logical Mystic Paradigm

 言うまでもなく『魔術』は数ある訓えの中でも最も学習を必要とする術です。なにしろ、何百年にもわたるトレメールたちの研究にも関わらず、この鮮血魔術にはまだまだ明確にわかっていない点もあるくらいなのです。残念ながら「魔法法則」といえるほどまでに『魔術』の理論体系は完成されたものではありません。今日でも、鮮血魔術師たちは何年何十年とかかる長い試行錯誤を繰り返して、わずかずつ前進し続けています。

 それでも、トレメールは『魔術』の実践において根幹となる七つの“原理”を確立しています。この複雑な訓えが発揮する効果は、系統魔術であれ儀式であれ、この七原理によって統御されています。『魔術』を行う際にはこれらを無視することは決してできないのです。

大原理 Major Principles
 『魔術』に絶対必要不可欠な原理は四つあります。これらは「大原理」と呼ばれ、すなわち血、意志、知識、識別の四つです。これらはあらゆる系統魔術や儀式において欠くことはできません。四つのうちどの一つが抜けても、それは『魔術』ではなく単なる別の訓えの発現にしかすぎないのです。つまりこれら四つを備えてはじめて『魔術』の力ということができるわけです。他の訓えでも似たような前提が必要となることもありますが、洗練と複雑さの度合いにおいて、(どちらも運動神経を使っていますが)椅子から立ち上がるのと、長大なコンピューター・プログラムを組むことくらいの隔たりが『魔術』との間にはあるのです。

■血(Blood)
 当然ですが最も重要な要素です。『魔術』とはすなわち血を用いる魔術です。これなくしては何の成果もあげることはできません。血こそは『魔術』のあらゆる側面を濾過し収束させる媒体です。系統魔術を使う際、魔術師は“自分自身の”血を一定量消費する必要があります。他人の血は(人間のものであれ血族のものであれ)使えないのです。魔術師が現実世界に影響を与えるためには、自らの肉体と精神そして意志を結びつける媒体が必要となるからです。ただし、他者の血を飲んで自らの血となすことによって、それを『魔術』に用いることは可能です。
 儀式魔術においては、実際に血を消費する必要はあまりありませんが、血自体は魔術師の体内になければなりません。このとき、魔術師は血を直接の魔力源ではなく、他の原理を統合し、効果を発現させるべく魔力を伝導する一種のフィルターとして用いることになるからです。

■意志(Will)
 血の次に必要となるのは、世界を意のままに変えようとする鮮血魔術師の強い意志の力です。血が『魔術』の潜在力を表しているとすれば、意志はその潜在力を解放する原理だといえます。魔道書を開き、そこに書かれている呪文を読み上げるだけでは何ら効果は発揮されません。それを欲する強い意志が絶対不可欠なのです。ただし誤解してはならないのは、だからといって効果が暴発しないというわけではない、ということです。“そういう意志はなかった”としても、誤った心の持ち方をもって『魔術』を行えば、予想もつかぬ事故が起こり得ます。鮮血魔術師はこのことを重々承知しておかねばなりません。過去、自分の術によって消し炭と化した愚か者には枚挙にいとまがないのですから。

■知識(Knowledge)
 血と意志があっても、ヘルメス式の魔術定式を深く理解し、魔法の対象との相関関係を把握しないことには、『魔術』を発動することはできません。そうした知識なしに同じような効果を生み出すことは可能ですが、それは『魔術』ではなく別の訓えです。知識は、血と意志によって生み出された魔力を望む効果の形へと成形する原理です。これは『魔術』の理論と定式、儀式の手順といったことがどのような概念でありどのような意味を持つのかということを細かく正確に理解することで得られます。鮮血魔術師は、さまざまな呪文や祭具などがどのような形で鮮血魔術に関係しているのかを完全に理解していなければ望む効果は得られません。このため、トレメールの徒弟たちは、実際に儀式を行う前に何度も何度もその概念と意味について復習を繰り返すのです。

■識別(Identity)
 あらゆる生物、物体、存在にはすべからく固有の性質と他との相関関係を有しています。過去、錬金術師たちは森羅万象のあらゆる物事についてその本質を見極めようと研鑽に励みました。『魔術』もまたこの伝統を受け継いでおり、「識別」の原理として体系の根幹に組み込んでいます。この原理は要するに、あらゆるものには本質があり、その本質にはそのもの固有の部分と、他のものと共通の部分がある、ということを説いています。鮮血魔術においては「識別」の原理を用いて、魔法の目標を特定しねらいを定めます。四つの原理を喩えてみれば、血は火薬、意志は弾丸、知識は銃身、そして識別は照準器だということができるでしょう。
 識別の原理で最も有名なものが「真の名前」(True Name)でしょう。物事の本質を言い表したこの神秘的な名称は、理論魔術において古来より非常に重視されてきました。現在では「真の名前」の使用は時代の変遷に従って廃れてきていますが、数々の魔術定式では依然として「真の名前」が重要な要素として要求されますし、「真の名前」は最も信頼できる識別方法として今も重宝されています。それゆえに、トレメール魔術師は自らの「真の名前」を慎重に隠します。「真の名前」を割り出すのはただでさえ困難な作業ですが、魔術師のそれを知るのは多くの罠や誤導によってほとんど不可能事です。

小原理 Minor Principles
 『魔術』の小原理は三つあります。小原理は鮮血魔術をより効果的に使うために用いる手法のことで、共感則、伝染則、内在則から成ります。前者二つは『魔術』の対象指定に使い、内在則は魔術師の意志の収束をより効率的に行うための原理です。小原理は大原理とは違って、『魔術』の発動に必ずしも必要ではありませんが、幅広い応用を可能にするため、ほとんどの儀式には小原理が何らかの形で組み込まれています。

■共感則(Sympathy)
 「識別」原理で対象の指定に用いられる「真の名前」のかわりに最もよく使われる小原理。目標の体の一部あるいはその所持品を入手し、儀式で媒体として用いることで、鮮血魔術の効果を正確にその目標へ送りつけることができます。一般に用いられる媒体としては、髪の毛、血の一滴、皮膚の一片、爪のかけらなどの他、相手が大事にしている物品があります。そうしたものにはあたかもDNAのように目標の身元を示す鍵となるのです。具体的にどんな媒体が必要であるかは、儀式ごとに定式で定められています。
 逆に、目標とする者全体に共通する要素を共感則によって特定することで、目標全体に魔法をかけることも可能だと言われています。その証拠が、トレメールによってアサマイトにかけられた呪いだと伝えられているのです。

■伝染則(Contagion)
 これは、特定の品物に触れた者に自動的に鮮血魔術がかかる(つまり伝染する)、という小原理です。伝染則によって発動待機の状態におかれている魔法は、誰かが物理的に触れたり、手に取ったりすることで効果を発揮します。この原理の優れたところは、儀式をかける際に、実際の魔法がかかる相手がその場にいなくてもよい、という点です(例外はありますが)。
 魔法の発動条件をもっと細かく指定することもできます。これを“調律”と呼び、具体的には、「識別」原理を利用して、ある特定の人物が触れたときには魔法が効果を発揮しないようにできるのです。ただしこの際には儀式を行うときに指定対象の人物がその場にいなければなりません。トレメール魔術師は、古来よりこの原理を使って魔法的な罠や防護を施してきました。自分を対象外とすることで、術者だけが魔法的な結界を素通りすることができる、というわけです。
 逆に、ある特定の人物やグループが触れたときに“だけ”魔法が発動するように条件付けすることも可能です。しかしこれは極めてまれな用法です。比較的よく知られている例としては、トレメール魔術師が血のストックを特定の品物に封入して持ち歩く「血潮の封入」の儀式があります。この儀式で作成された“血の貯蔵器”からは術者本人かあるいは術者の指定した者にしか血を引き出すことができないのです。

■内在則(Inherency)
 前二者の小原理とは違って、内在則は鮮血魔術の目標を指定する原理ではありません。この原理は、さまざまな品物に“本性的に内在”する性質を用いて、実践する儀式に術者の意志をより強く収束させ、確実な効果を生み出す法則です。トレメールの大魔術師たちによれば、儀式魔術の多くが血の消費を必要としないのは、この原理の効果によるものだということです。例えば、防護結界の魔法ならば、はねのける対象の存在にとって対極に位置するものを用います。対人狼ならば銀、対霊魂ならば塩、対グールならば人間の血、といったようにです。霊体と化す儀式で割れた鏡の破片を使うのも、鏡が持つイメージを映し出すという本質を用いて、霊体となった術者の形を維持するという目的のためです。
 なお、儀式で触媒として用いる品物の由来は、必ずしも先の例のように理解しやすいものではありません。忘れ去られた過去の伝承に基づいているものもあれば、迷信の類に起源を求めることができるものもあります。「悪魔の災い」の儀式で一見関係なさそうな粗悪なペニー硬貨を使うのはその一例といえます。

儀式魔術の祭具
 トレメール魔術師の儀式では、余計なものは一切使わず、必要最低限の品物と手順を踏んで魔術が実践されます。鮮血魔術師は、必要なもの以外はできるだけ煩雑さを削ぎ落として洗練した形を好むからです。一般によく言われるような鐘、厚い書物、仰々しいロウソクなどは、『魔術』の儀式ではあまり見られません。とはいえ、今日でも祭具はまったく使われないわけでもありません。

 儀式はすべて魔術師の精神集中から始まります。静かに瞑想するだけで充分なこともありますが、たいていはラテン語などの文言を唱えることで精神集中の助けにします。これに続いて望む効果を得るために、儀式を組み立てていくことになります。必要な物品と呪文や手振りを行い、魔法の成功に向けて術者の意識をより高度に収束させていくのです。最後に、組み上げられた魔法の効果を正確に目標に向けて解き放ちます(このとき小原理が用いられるわけです)。これに失敗すれば自らを滅ぼすことになりかねません。

 トレメール魔術師は、魔法陣をよく用います。最も一般的な魔法陣が、二重の同心円を描き、円と円との間に防護用の文言を刻んだ円陣です。これは魔術師の住処の床に恒久的な形で描かれているのが普通です(形としては、タイルで構成したり、直接床に刻んだりします)。これらは妖魔や霊魂を召喚するとき(後述)や、危険な存在から一時的に身を守るために使われます。多くの魔術師は、要らざるリスクを背負わぬためにも、儀式を行うときには必ずこの魔法陣の中に入ります。

 特殊なロウソクも多くの儀式で触媒として用いられます。ロウは炎を燃やすときに独特の触媒としてはたらくからです。この最も有名な例が「栄光の手」です。絞首刑に処された犯罪者の手首から先を切り取って血を抜き、そこにロウソクを握らせて燃やすことで、結界作成をはじめとしたいろいろな儀式に使える有効な触媒とすることができるのです。

 鮮血魔術師の中には、暗赤色や黒いローブを好んで着る者もいます。これは伝統的であることに加えて、血の染みを隠しやすいということがあります。ただ、現代の若いトレメールの間では、同じ血の汚れを消せるならば目立ちにくい暗色系のジャケットなどのほうが好まれる傾向にあります。


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妖魔と霊魂の使役
Demonic Servants

 異界の存在を召喚し使役することは、トレメール魔術師の間ではあまり積極的に行われているわけではありません。そうした魔物との取引は大きなリスクを伴いますし、何より強大な存在を召喚できるほどの魔術師ならば、魔物などの助力に頼らずに事を為す方法を選ぶべきだ、という風潮が鮮血魔術師たちの間には一般に広まっているからです。この理由から、トレメール魔術師の多くはジョヴァンニの死霊術師を軽蔑しています。

 それでも、そのほうがリスクが少ないと判断したり、あるいは必要に迫られれば、鮮血魔術師は妖魔や霊魂を躊躇無く召喚して使役します。ただし、これは悪魔崇拝者たちが地獄の悪魔たちと放埒な取引を行うのとはわけが違います。トレメール魔術師は、異界の存在を召喚した場合には必ず厳重にそれを呪縛してから、自らの役に立てようとするのです。「真の名前」などによる呪縛の行程は、召喚儀式の中で最も重要な部分です。ただし、すべての存在がたやすく呪縛できるわけではないので、魔法陣や防護魔法などといった万全のセキュリティを自らにかけておく必要があります。

妖魔 Demons
 一般的な分類として「妖魔」(Demon)は、いわゆる地獄の“悪魔”たち(使役するのは弱い悪魔だけですが)に加えて、木々や川の精霊、聖地の守護精霊といったさまざまな神秘的・超自然的な存在をも含んだ呼称です。これらはトレメール魔術師の提供する血の供儀を承ける代償として、何らかの助力をもたらします。古来より魔術師たちは、こうした異界の存在たちの「真の名前」やその特徴を数多くの書物に著してきました。妖魔の中には数百年の昔に与えられた命令にいまだ縛られているものすらいるといいます。しかし、「真の名前」による呪縛も数百数千年のスパンを経ればその力を減じるといわれています。

 トレメールは直接妖魔の力を引き出すような術はあまり好みません。妖魔の使役もほんの短時間にとどめるのが賢い魔術師のやり方だとされています。長時間強い存在に奉仕を強制するのは、後々の復讐を招きかねないからです。そういうわけもあって、トレメール魔術師が比較的よく使役するのは、「ホムンクルス」(homunculi)と「妖魔憑き」(demon-bound)と呼ばれる弱い存在です。

■ホムンクルス
 一般に奇怪な姿をした小型の生き物で、鮮血魔術師が血を使って作った肉体に、非常に弱小な妖魔が封印された存在です。呪縛の解放後も復讐を被る可能性が相当に小さいため、人によってはしばしば使役される人造生命体です。ただし、ホムンクルスの肉体は魔術師の血によって作られているため、妖魔が魔術師の「真の名前」を割り出してしまう危険性が指摘されています。

■妖魔憑き
 魂だけを追い出した生きた人間の体に、妖魔を封じ込めて使役する半生命体。妖魔と肉体の本来の持ち主の「真の名前」を用い、体にいくつもの入れ墨や文様を描いて行います。できあがった“妖魔憑き”の目は瞳のないオレンジ色の輝きと化します。人間の体は妖魔を入れておくには脆弱なため、あまり長くは持ちこたえられません。

霊魂 Spirits
 トレメール魔術師は死者の霊魂を軽んじています。彼らにとってそうした存在は、自らを守ることのできなかった無力な連中の成れの果てでしかないからです。それでも、必要とあれば彼らは霊魂…レイス(Wraith)、スペクター(Spectre)とも呼ばれます…を使役することがあります。一般に霊魂の使役は妖魔の使役に比べて容易です。霊魂は物質界とのつながりを断ち切れずにいるため、鮮血魔術師はそれを利用することができるからです。「真の名前」の割り出しも妖魔より簡単で、何より霊魂には妖魔のように魔術師に復讐できるだけの力を持った者はほとんどいません。

 トレメールの間には“骸のしもべ”(corpse minion)と呼ばれるアンデッドの召使いを作り出す秘法が伝えられています。この儀式によって術者は死者の魂を呼び戻して、生前の肉体(今は死骸です)に封入することができます。“骸のしもべ”は妖魔憑きよりも作るのが簡単ですし、リスクも少なくてすみます。しかし、これは何ら超自然的な力は持ちませんし、どんどん腐敗していってしまいます。氏族草創期に作られた“しもべ”の魂がいまだ塵芥と化した肉体に囚われたままになっているというぞっとしない伝説も伝わっています。


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その他の伝統魔術
Other Traditions

 伝統的なヘルメス学がトレメールの間で主流となる鮮血魔術の手法ですが、その他にも世界各地のさまざまな伝統的魔術が、『魔術』の中に取り入れられて実践されています。こうしたいっぷう変わった流儀を用いる魔術師たちは、ほとんどがその魔術が発祥している文化圏の出身です。彼らは主流派の魔術師たちとは異なる思想・哲学をもって『魔術』を行っていますが、鮮血魔術の根本的な部分(原理など)では他のトレメールたちと共通しています。

 以下では、最も代表的なヘルメス学以外の鮮血魔術の流儀をいくつか紹介します。

■カバラ神秘学(Kabbalah)
 紀元前5世紀ごろユダヤ文化圏に生まれたカバラは、ここ数世紀の間にトレメール氏族中に広範に知られるようになりました(とはいえ実践者は20人程度だといわれています)。実践者の大半はユダヤ系で、全員が男性です。カバラが最もよく実践されている地域には、ニューヨーク市、ドイツ、ポーランド、イギリスがあります。
 カバラは、ユダヤの律法『トーラー』には天地創造の秘法と力が秘められていると説き、ヘブライ文字が本来有する表音文字と数字という二元性をもとに、数字をもとにした神秘学体系を作り上げています。この魔術体系ではヘブライ語と数式が、魔法定式などの形而上的な物事を表すのに使われます。トレメールに伝わる古い魔法定式の中には、このカバラ数秘学の方式を取り入れたものが散見されます。
 カバラ鮮血魔術では、大原理の中でも特に「知識」が重視されます。カバラ魔術師は全員がヘブライ語に精通していなければなりませんし、儀式で用いる言葉の数秘学的な数価を熟知していなければなりません。加えて、魔術師は複雑怪奇な数式を正確に解く能力も持っていなければならないのです。小原理の中では「共感則」「内在則」が重視されます。特に数価という形で「共感則」が用いられ、これがカバラ鮮血魔術の中枢をなしています。言葉の数価を数式によって関連づけることで、「共感則」による魔術が可能となります。これは、正しく数価を変化させることさえできれば、わずかな労力で巨大な成果を得られるということでもあります。
 カバラ最大の問題点は、それがヘブライ語によってのみ扱えるという点です。「真の名前」や魔道書はすべてヘブライ語の形で記述されなければなりません。また、別言語で著されている儀式定式は、ヘブライ語に正確に翻訳された形でなければ効果を発揮しないのです。

■ヴードゥーとサンテリア(Voodoo and Santeria)
 五百年弱の比較的歴史の浅い魔術伝統であるヴードゥーとサンテリアは、アフリカの土着宗教と民間魔術が、カリブ海の奴隷たちによってカトリックに代表されるヨーロッパ文化の要素と混淆された結果生まれた独特の魔術体系です。ヴードゥーが行われているのは主に米国やカリブ海の島々で、サンテリアはメキシコ、フロリダ、キューバ、そしてニューヨーク市で実践されています。
 発祥以来、この二つの魔術伝統では、血と生け贄が「ロア」(助力をもたらす精霊)などの異界の存在と交信するための重要な要素とされてきました。このため、ヴァンパイアの鮮血魔術へと発展させるのはさほど困難なことではありませんでした。「ボコル」(bokkor)と呼ばれるヴードゥー魔術師の力はトレメール主流派の魔術師に劣らぬものですが、この魔術の誕生と発展にはサバト・セト人(光の蛇:Serpents of Light)やジョヴァンニといった他の氏族の関与が疑われているために、氏族内でこの魔術を学ぶ者は当該地域のほんの少数にとどまっています。
 『魔術』である以上、この二伝統も四大原理によって縛れています。しかし他の伝統の魔術師たちから粗野で未開的だと軽視される原因ともなっていることですが、ヴードゥーとサンテリアは弱いロアなどの精霊を、目的達成のための媒介者として使役します。これを『闇魔術』や死霊術への堕落にすぎないと断罪する魔術師すらいるのです。
 小原理はこの二伝統では非常に重視されています。よく知られている“ヴードゥーの呪い人形”は共感則の魔法そのものです。写真や髪の毛を人形にはさみこむことで、目標へと魔法の効果を飛ばすわけです。また、未開伝統魔術の系譜を引くヴードゥーでは「内在則」に基づいて薬草やさまざまな麻薬が用いられます。ボコルは数束の薬草を「グリス・グリス」と呼ばれる小さな腰袋に入れて護符として持ち歩くことが知られており、彼らは一般にかなり異様な姿をしています。「伝染則」によって、グリス・グリスは持ち主から離れたらその効果を失うといわれています。逆に、目標に“呪いの品物”を持たせることで災いをもたらすのも、ヴードゥーの有名な魔法です。
 他の魔術師たちが最も軽蔑する点が、「ロア憑依」と呼ばれる手法です。これは精霊を自分に乗り移らせ、それを統御することで魔法を行う秘術です。当然ながらこれは非常に危険です。

■ウィッカ(Wicca)
 魔女とヨーロッパ土着異教(pagan)の系譜を引くウィッカは、トレメールの間で小規模ながら実践され続けてきました。ウィッカ鮮血魔術師の大半はヨーロッパで活動しています。現代、ニューエイジの一環として巷間に流布している形の魔女術は、鮮血魔術とはあまり関係がありませんし、ほとんどが頼りにならない代物ばかりです。鮮血魔術としてのウィッカは、秘密主義のカヴン(魔女団)でひそかに口承によって伝えられてきているといわれています。このため、こうしたトレメール魔術師たちは体系的で合理的な研究体制という点では他の魔術伝統から遅れをとっていると言わざるをえません。共通の参考文献の欠如、方言による乖離、個々人による歪曲などによって、この古き魔法伝統を現代の『魔術』として体系化するのは至難のわざになっているのです。
 加えて、ヘルメス学系の主流派魔術師たちは、低俗な魔術だとしてウィッカを軽蔑する傾向がかなり強くあります。これは、ヘルメス学がそうした土着魔術を反面教師として発展してきた経緯が色濃く影を落としているのです。このこともあって、ウィッカは氏族内でも半ば異端児のような扱いを受けています。
 本来、ウィッカは豊穣性と生命に根ざした魔術であったため、アンデッドという状態はこの魔法に大きな制限を加えることにもなりました。ウィッカ鮮血魔術師の行う魔術は、伝統的な儀式の中でも呪詛や防護魔法に特化するようになったのです。ウィッカはその本来の哲学性を失い、ごくごく実用的な魔術として現代まで伝わることになりました。ウィッカは自然への支配力がその特徴です。森林や天候といった対象を巧みに操ることができ、元素関連の物事に強いという長所を有しています。ただ、大規模な儀式を行うには、ウィッカたちはあまりにもばらばらに散らばりすぎています。
 ウィッカ魔術は「真の名前」よりも「共感則」「伝染則」「内在則」に多くを頼っている点でヴードゥーとよく似ています。“エンチャンテッド”(魔法のかかった)品物の使用が最も一般的な魔法の手法であり、「悪魔の災い」儀式はこの伝統から生まれたものだといわれています。
 ウィッカでは、奇妙な舞踏や触媒となる品物、あるいは五芒星がしばしば儀式で用いられますが、ヘルメス学やカバラのような理論的・体系的研究がほとんどなされていないために、その意味が本当は何であるのかははっきりわかっていません。薬草も多用されていますが、それと魔術との関連は現代の研究の大きな主題のひとつです。ウィッカ魔術師はヘルメス学系の魔術師のような膨大な蔵書は持たず、ウィッカ的手法による儀式を現代的に翻訳したものをより深く研究することに没頭しています。

■『闇魔術』 Dark Thaumaturgy
 悪魔と地獄の力から伝授された邪法である『闇魔術』は、ほぼサバト内だけで実践されている魔術です。サバト内でも地獄の勢力を撃退しようと戦い続けているグループがいますから、この魔術の実践者は反逆者として断罪されるリスクを常に背負っているわけです。
 『闇魔術』は魔術は魂を汚すだけではなく、やがては術者の体すらもおぞましい地獄のものへと変貌させてしまいます。このため、『闇魔術』の魔術師は早晩身を隠さなければなりません。トレメール氏族では、もしこのような徴候が現れれば即座に処断されます。
 トレメール氏族が『闇魔術』を憎む理由は二つあります。一つ目は、この魔術は力を求める安易な近道であるという点です。悪魔から秘密を漏らしてもらうことで、術者は伝統的な『魔術』よりもすばやく力を得ることができますが、儀式や系統魔術についてしっかりとした理解を得たわけではありません。彼らはいわば分不相応の道具を与えられた子供のような存在であり、その行く先には途方もない堕落と行き止まりしか待ち受けてはいないのです。
 二つ目の理由は、『闇魔術』の実践は、自分を地獄の支配者たちに売り渡すことに他ならないということです。魂には永遠に消すことのできない汚点が刻み込まれます。術者は悪魔の呼びかけに応えなければならず、究極的にはその恐るべき代償を支払わねばならなくなるのです。
 『闇魔術』のはたらき方は、本来の『魔術』と同じです。違う点はその安易さにあります。地獄の力による魔術は、主流の『魔術』に比べてひどく荒っぽく粗野な現れ方をします。トレメールに言わせれば、これは魔術理論に関する無理解が引き起こすものに他なりません。儀式の手法も本来の『魔術』とあまり変わりませんが、師匠となった悪魔の性質にあわせていろいろとおぞましい要素が付け加わります。よく知られているのは、まるまると太った赤ん坊を生け贄にするという祭儀でしょう。そうした行為を通して、術者は堕落の道を突っ走っていくことになるのです。
 『闇魔術』の中には、他のトレメールには知られていない儀式もあります。これらははるか昔に失われた儀式であるといわれることもあり、トレメールたちはこのことを、悪魔が他者の業績を盗んで自らのしもべに与えた結果だと考えています。
 ただ、『闇魔術』と地獄の勢力についてはあまりにもわからないことが多すぎます。真に知るにはあるいはその道へ踏み込んでみなければならないのかもしれませんが、その道が一方通行であることは忘れてはならないことなのです。

匿名の滅却者
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