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メディア制裁システム (綿井健陽)
http://www.asyura2.com/0601/nihon19/msg/808.html
投稿者 Kotetu 日時 2006 年 6 月 13 日 20:36:35: 7m23/iYy5J8l2
 

2006-06-09 01:02  固定リンク nice!(2) コメント(2) トラックバック(1)   関連記事

メディア制裁システム

在学中はほとんど授業に出なかったのに、いまさら「わが母校」というのも変だが、日本大学芸術学部放送学科で面白い試みがされている。

講師を務めるジャーナリストの坂本衛さんhttp://www.aa.alpha-net.ne.jp/mamos/ が受け持つ授業で、「テレビ報道を考える」というブログが公開されている。http://htkv.blog68.fc2.com/ 学生が毎週交代で受け持って書き込みを担当するようだが、学内や担当の先生だけが見るのではなく、自分の「書き込み」「文章」がこうしてさらされるのは、本人にとっても大いに刺激になるだろうし、学生たちが考えるきっかけも増え、他の人の批判や意見も受けることができるので、これこそ「勉強」になると思う。ある種の「公開授業」といってもいいかもしれない。学生以外の人たちもぜひこのブログを活用してほしい。

当然、秋田の殺害事件に関しても書かれているが、http://htkv.blog68.fc2.com/blog-entry-11.html 結構いいところを突いているなあ。「1.加害者の生い立ちを中心に報道→加害者のマイナスイメージの固定  2.近所の話→憶測・推測を させ、情報が独り歩きし始める」の部分は僕も納得。これっていまのテレビの「犯罪報道の典型」だ。

僕が大学に入学した90年に衝撃を受けた犯罪報道に関わる番組があって、そのビデオテープは今でも年に一回ぐらいは見る。それ以来、犯罪報道に対しては敏感になった。たまに大学の授業に呼ばれたりしたときに、学生の方と一緒に見たりもする。これを見るときに、いつも僕は「カメラという凶器」の怖さが全身を駆け巡る。

それは日本テレビ系列のNNNドキュメント「証言・報道被害〜マスメディアに傷つけられた人々」という番組だ。当時読売テレビのプロデューサーだった松田士朗さんが取材・制作された(90年11月11日放送)。番組そのものを見るのは困難かもしれないが、松田さんが書かれたその番組に関わる手記は月刊「創」90年11月号http://www.tsukuru.co.jp/gekkan/gekkan90.html#anchor230480に掲載されているので、図書館ででも読んでほしい。

その手記の中で、74年に起きた「甲山事件」で犯人扱いされた女性の方がこう語っている。「(中略)とにかく犯人とされる人を寄ってたかって袋だたきにする。裁判所が判断する前に、マスコミが被疑者をどんどんたたく、これが現状ですよね」

当時も今も何も変わっていない。

筆者の松田さんも手記でこう書いている。「(中略)人々が犯罪報道に求めているものは、個々の犯罪の微細な事実よりも、むしろその犯罪の背景にある社会病理現象の解明ではないのか」

秋田の事件でも、容疑者が「今朝は朝食を少し残した」とか「犯行前にどこへ出かけた」など、これらの「微細な事実」(しかも、これらは事実とさえも断定できないことだ)をずっと流している。昔は容疑者とは言わず、名前を呼び捨てで「朝食をペロリとたいらげた」というのがよくあった。今回、あるテレビの中継リポーターは「犯人逮捕の一報を受け…」とさらりとしゃべっていたが、もはや「容疑者」という必要性も彼は感じなかったのかな。

あの松本サリン事件の第一通報者で当時「犯人扱い」された河野義行さんはこう話している「犯罪は裁判所が裁くというのも、社会のルールではなかったでしょうか」(朝日新聞98年11月27日付け「だれが容疑者を裁くのか」から)。そして、彼はあえて強烈な皮肉をこめてこう語っている「いっそルールを変えてみたらいい。容疑者が自分の無罪を証明できるまで、疑わしきは有罪だ、と。容疑を受けた者は、市民やマスメディアから制裁をうけていいのだ、と。」(朝日新聞・同日付け)

いまやまさに河野さんの指摘どおりの恐ろしい「制裁システム」ができあがっている。

あの容疑者の顔写真をテレビのスタジオにあそこまで大きく映す必要があるのだろうか?
警察が「逮捕」した段階で(逮捕=犯人ではないはずだが)、それまで隠し撮りで撮影していた映像を一気に流すのはなぜだ?

特に今回は警察が逮捕する前から、取材現場にいたメディアが「犯人を確信」したからなのか、よけいに「我々が犯人を最初から追っていた」「こんな女がこんなことを言っていた」とばかり大々的に「メディア制裁」をやっている。

いくらなんでも、ある「限度」を超えてないか?そこまで「殺到」して、「容疑者を社会的に殺す」ことはOKなのか?

ネットの「2ちゃんねる」というのは、誹謗・中傷・デマ・噂、さらには差別的なことが多々書かれているが、一方で以下のような指摘は妙に的を得ているようにも感じる。

「今朝朝ズバで秋田の小学生の殺人で畠山容疑者のことを 逮捕前から取材陣に声を荒げてっと放送していた 犯人かどうかは別にして、もし自分の子供が死んで報道陣にあんなに囲まれて
付きまとわれフィルムまわされたら、暴言ぐらい吐くだろう そのことをそのひとの人格として放送していた 」

「例えば犯人の実名報道はともかく「住所」は必要か?」

「マスコミは畠山容疑者の醜い姿を映して喜んでるみたいだけど いっしょにマスコミの醜い姿(無言で囲んでカメラを向ける)も映してるのは気付いてないみたいだね。 」

「私達(おじさん42)がまだ子供の頃は「ニュースは詰まらない」モンだったよ、シンプルで・・・しかも今になってみれば一定の「節度」のようなもの?がちゃんとあった。」

以前も書いたのだが、http://www1.odn.ne.jp/watai/050503.htm いまちょうど映画「花よりもなほ」http://www.kore-eda.com/hana/index.htmlが公開中の映画監督・是枝裕和氏はこう話している。

『ずっとテレビをやっていたせいか、特にテレビの報道を見ていていつも感じるのは、役割分担のはっきりした人しか出てこないということなんですね。「悪魔のような犯人」と「殺されてしまった無垢な犠牲者」と「悲しみに暮れる被害者の遺族」と。この三つがあると大体オーケーで、あとは一体何が悪かったのかという犯人探しで終わる。でも、現実の世の中はもう少し複雑だと思いますし、そのあまりに明快な「こっちが善で、こっちが悪」という色分けで見ていく限りにおいて、テレビの前の人間はつねに第三者でしかない。(後略)』(「広告批評」01年5月号から)

最近さらに性質が悪くなったのは、「人殺しの奴は、さっさと殺せ」といわんばかりの動きと、以前も書いたがメディアの「集団的正義感」→別のHPを参照 http://www1.odn.ne.jp/watai/050428.htm 特に、「警察に逮捕された人」「殺人事件の加害者」「強制捜査を受けた団体・組織」(ところで、最近「強制捜査」って、やたら多過ぎないか?あのエレベーターの事件でやるものか?)に対して、メディアが見せるあの「集団的正義感」だ。ところが、それはいまやメディアだけでなく、ほかのところにも波及していないか。僕の家の近くには警察署が作成したこんなステッカーが壁に貼ってある。

「誰か見てるぞ」

最近JR新幹線の改札口で「警戒」という腕章をつけている係官がいたので警察官かと思ったら、JRの職員だった。駐車違反の取締り民間委託や地域の「防犯パトロール」なども含め、これからだんだん世の中で、あなたの周りで、あなたのご近所で「不審者情報」「ヒソヒソ話」「密告」が始まるぞ。「あそこの人には近寄らないようにしましょう」運動が始まるぞ。「犯罪者・殺人者予備軍」がどんどんつくられていくぞ。

みんながみんな「警察官」になっていく。「監視社会」「警察国家」というのはこうやってできていくのか。

…………………………………………………
綿井健陽 WATAI Takeharu
Homepage [綿井健陽 Web Journal]
http://www1.odn.ne.jp/watai

映画「Little Birds〜イラク戦火の家族たち」
公式HP http://www.littlebirds.net/
DVD発売・各地で上映中
…………………………………………………

http://blog.so-net.ne.jp/watai/archive/200606

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