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◇米軍再編めぐり 岩国市きょう住民投票
民意 投票率５０％の壁超すか
米軍再編により、神奈川県の厚木基地から米空母艦載機部隊の移駐が予定される山口県岩国市で十二日、受け入れの賛否を問う住民投票が行われる。注目されるのは投票率。市条例によって５０％未満の場合、開票せずに終わるからだ。投票を呼びかける反対派に対し、国や賛成派は関心が高まらないよう沈黙する。米軍再編を左右する住民投票の行方は予断を許さない。 （社会部・半田滋）
「皆さんの意思を全国に示してください」。茶色の上着にアスコットタイを締めた井原勝介・岩国市長が、ＪＲ岩国駅前で投票を呼びかけた。
米軍再編に関係する自治体の中で初めて住民投票を発議した。移転の「白紙撤回」が信念だが、五日の告示後は「賛成でも反対でも投票を」と慎重に言葉を選ぶ。
市長後援会や革新政党など移転に反対する住民らは「住民投票を成功させる会」など三つの団体をつくり、街頭活動も盛ん。一方、投票自体に反対する建設業者らの「住民投票に反対する会」の活動は目立たない。
米軍普天間飛行場の移設をめぐり一九九七年に沖縄県名護市で行われた住民投票では、那覇防衛施設局の職員が総動員され、バラ色の振興策を示して賛成の投票を呼びかけた。投票率は８２・４５％に達したが反対票が上回った。今回、岩国に防衛施設局職員の姿はない。「関与しない」という政府方針があるためだが、防衛庁幹部は「投票率が高くなれば反対票が増える。投票が成立しないよう関心を高めないことが一番」と本音を漏らす。
市条例は住民投票について「市政に重大な影響がある事柄」を対象にしている。空母艦載機五十七機が移転してくる米軍再編は「重大な影響」に該当しないのか。
「反対する会」代表で建設コンサルタントの広瀬嘉道さんは、「安全保障は国の専管事項。住民投票にはなじまない」。市議会の桑原敏幸議長は「市議会は昨年、受け入れ反対決議をした。岩国は一枚岩なのだから住民投票の理由がない。市長の狙いは町村合併後の選挙を有利に戦うこと」と井原市長を批判する。
岩国市は今月二十日に八市町村で合併し、井原市長は前日に失職する。四月の市長選挙には井原市長と、自民党の推薦を受けた会社社長の二人が立候補を表明。住民投票は「市費を使った市長の事前運動」とのうがった見方もある。
八日夜、賛成、反対双方の市民が参加したシンポジウムが行われた。建設会社を営む松塚展門さんは「投票に行かない」と明言し、「岩国は基地と共存するしかない。この際、小泉首相に誠意を示してもらおう。市の借金を棒引きしてもらい、毎年補助金ももらおう」と話すと、出席者から「それは共存ではなく依存だ」と反論が出た。
主婦の河本かおるさんは「地域振興というが、経済がうるおうのは一時。重くなった基地負担は永久に消えない」と移転反対を訴えた。この日は夜九時すぎまで米軍機のごう音が響いた。
期日前投票率は１０・１１％に上り、過去の選挙と比べ高かった。
■井原 勝介市長に聞く 『日米政府に地元の声届けたい』
――市議会は空母艦載機部隊の受け入れ反対を決議しているし、六万人の反対署名もある。住民投票は必要なのか。
議会は今年になって受け入れ前提に、条件闘争に切り替えた方が良いという議員も出てきて意見が割れてきた。艦載機部隊が来ると岩国基地の航空機数は二倍となり、基地の在り方が大きく変わる。市民の意思を聞いて判断しようと決めた。
――住民投票の狙いは市長選との批判がある。
そんな矮小（わいしょう）な問題ではない。米軍再編の最終報告は三月末。それまでに市民の声を日米両政府に届ける必要がある。合併後の市長選では間に合わない。
――市長は二〇〇一年、ＭＨ５３ヘリコプターの岩国配備に賛成したが。
あの時は米中枢同時テロ後で、緊急事態に米軍家族を運ぶ人道支援の目的と説明を受けた。今回は基地機能の拡大。岩国には基地の拡大強化は認めない基本方針がある。
――地元の賛否とは関係なく、国が空母艦載機の配備を強行する可能性がある。
地元の声は重い。われわれの協力がなければ基地は安定使用できない。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060312/mng_____kakushin000.shtml
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