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[希望のトポス]「反CPEデモ」に見る、フランス民主主義の“ど根性”
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投稿者 鷹眼乃見物 日時 2006 年 3 月 21 日 10:56:37: YqqS.BdzuYk56
 

[希望のトポス]「反CPEデモ」に見る、フランス民主主義の“ど根性”

  CPEは、フランス政府が新雇用促進策として進めようとしている「初期雇用契約制度(法)」(Contrat premi鑽e embauche )のことです。「雇用平等法」の一部として、この法案が3月9日に上下両院で可決されてから反CPEデモが急速に拡大しており、大学の評議会(学長レベル、あるいは教職員と学生代表で構成される最高意志決定機関)や労組もCPEの撤回を強く求める状況となっています。また、直近の世論調査によると約7割がCPEに反対しています。CPEは、企業が26歳未満の若者を採用する場合、2年の試用期間内であれば自由に解雇できる新しい契約形態です。ドビルパン首相の狙いは、労働者の権利が手厚く守られてきたフランスで解雇条件を緩和することによって企業側の雇用意欲を促進させることにあり、国が責任を持って就職や職業訓練を推進させる新たな雇用促進策の一環と位置づけられています。しかし、学生や労組側は、解雇条件を緩和することを優先するのでは「企業側による一方的な解雇が可能で、企業側を利することになる!」、「企業側優先の施策で信用できない!」と反発している訳です。

  その後、この法案に反対する学生(大学生・高校生ら)の反CPEデモが拡大の一途となっており、19日付・パリ発共同通信の報道によると、18日にフランス各地で行われたデモの参加者数は警察発表で約50万人(労働団体集計で約150万人)の規模になっています。そして、労働団体からは愈々ゼネストを求める声が高まっているようです。この騒動の背景には、第二次世界大戦後のベビーブーム、移民増加などで就業人口が増え続けてきたフランスでは、その「充実した社会保障制度」、「同一労働・同一賃金の原則」などが壁となって失業率が上昇してきたという事情があります。結局、今、その皺寄せが就業前の若者に集中してきたため、エリート校であるグラン・ゼコールを除いた大学・高校生らの失業率は約22%と平均のヨーロッパ諸国(欧州連合平均は18・6%)に比べて高いものとなっています。

  ドゴール主義(ゴーリスム)の直系である「シラク大統領−ドビルパン首相」(同じ正統保守であるこの両者にも温度差はあるが・・・)の強硬な態度を懸念する声が高まっています。来年の大統領選挙候補のライバルであるサルコジ内相は音無しの構えですが、19日付のジュルナル・デュ・ディマンシュの調査(出典:同上の共同通信)によると、ドビルパン首相(ラファラン前首相に代わり、シラク大統領の指名を受けたドビルパンの愁眉の課題は深刻化した雇用問題の解決)の支持率が前月から6ポイント下がり37.0%となっています。このため政府側の態度の変化が注目されます。大きな学生デモで思い出されるのはドゴールを自任へ追い込んだ38年前の「パリ5月革命」(1968)です。しかし、この「パリ5月革命」がベトナム戦争批判や平和主義の希求などの理念を求める闘いであったことに比べると、今回のデモは、青少年たちの卒業後の就職と将来の生活への不安という身近でリアルな問題であり、その根本はバンリュー(Banlieueは「郊外」の意味/バンリューの暴動については下記ブログ記事(★)を参照乞)の若者たちの暴動に繋がるものでもあります。そのため、今回のデモ騒動には独特の暗鬱な空気が漂っています。
★「暴動の炎」はフランス共和国への絶望と希望の相克[1]、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051120
★「暴動の炎」はフランス共和国への絶望と希望の相克[2]、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051121
★「暴動の炎」はフランス共和国への絶望と希望の相克[3]、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20051124

  たまたま、我が国では「小泉政権の構造改革路線」による「格差拡大」が懸念され始めたこともあり、「同一労働・同一賃金の原則」(オランダ・モデルの検討)などがメディアの俎上に上るようになってきましたが、その行く先には同様の困難な雇用問題が微妙に絡んでくる可能性があり、我われ日本国民にとっても対岸の火事としてこれを見過ごすことは許されないはずです。ここで重要となる観点は、日本政府が「格差問題」へ取り組むためには、先ずデフレ不況へ後戻りしないよう適切なマクロ政策の舵を取りながら、本気で弱者(敗者)への配慮(福祉・医療政策の根本理念)を見直すことです。日本政府による「B層」や「ヘタレ・ショタレ」などの烙印に甘んじる人々が存在する一方で、権力側の道具と化した主要メディアの情報操作の為すがままに弄ばれている日本の若者たちや中間層の人々の(彼らはせいぜいネット上で梯子外し(=揚げ足取り)ゲームの憂さ晴らしにうつつを吐かすか、あるいはネット・トレーダになってパチンコ型ギャンブルの熱病に嵌る位しか術がない)無気力さに比べると、フランスの若者や労働組合員たちが「目下の政治の理不尽さ」に対する直接行動(デモ)に打って出る強い意識と行動力、そして健全な主権者意識を持ち合わせていることは、とても羨ましくさえ思えてきます。

  このような“フランス民主主義社会の活気”の熱源の一つと見做されるものにフランス独特の「アソシエーション」(フランス語の発音風に表記すればアソシアシオン/associations)という社会システムがあります。強いて言えば、これは日本のNPO法人(http://www.npo-hiroba.or.jp/)に相当しますが、実際はかなり似て非なるものがあります。つまり、その成立までの歴史的経緯と活動の実体および影響力の大きさは、かなり日本のNPOとは異なります。「労働政策研究・研修機構(JILPT) 海外労働情報 フランスのNPO」に基づいてフランスの「アソシエーション」のエッセンスを纏めると以下のようになります。なお、詳しくは同HP(http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2004_8/france_01.htm)を参照してください。

(アソシエーション成立の経緯と法的根拠)

●フランス革命(1789)で倒されたアンシャンレジーム(旧制度/Ancien-regime)の基盤が様々な特権を持った宗教団体(カトリック僧侶らの諸特権)やギルド(同業組合等の諸特権)で構成されていたため、それ以降のフランスでは、長い間にわたり「団体の成立は個人の自由意志を拘束するもの」と見做され、伝統的に中央集権的な政治体制が採られてきた。

●産業革命の成果がフランス社会の隅々まで及ぶようになり、フランスで共和制議会が本格的に定着した第三共和制(1870〜1940)下の1901年に「アソシエーション法」(Loi du ler juillet 1901relative au contrat d'association)が成立した。同法によれば、「アソシエーションとは、2名以上の者が利益の分配以外の目的のために自分たちの知識や活動を恒常的に共有するために結ぶ合意」であり、不法な目的や利益を内部で分配しない限り、かなり広範囲にアソシエーションの設立が認められることになった。

●ここで初めて「結社を結成する自由」と「結社に加入する自由」が宣言され、保障された訳である。なお、このアソシエーションは次の三つに分類される。

(1)無届のアソシエーション
(2)届出をしたアソシエーション
(3)公益性を承認されたアソシエーション

(アソシエーション活動の現況)

●全国で毎日のように届出(現在は年に約6万件のペース)があり、その数は凡そ730〜800万件とされる。その平均寿命は5年程度だが、長いものは100年以上続いている。活動内容は千差万別だが、1990年の「国立統計局・調査」によると「スポーツ24.5%、文化・観光・娯楽23.0%、衛生・福祉16.5%、社会生活9.5%、住居・環境9.5%、教育・訓練8.5%、企業へのサービス8.5%」である。

(フランスのアソシエーション活動の特徴)

●「国や自治体との関係のあり方」(=パートナーシップ)が特徴である。そのポイントは、自立性を確保したアソシエーションが国や自治体と一定の距離を保ちながら最も客観的な作業を展開できるようにすることを理想としつつ、その活動の発展に対する国や自治体の経済面での十分な支援が重要と理解されていることである。

●フランス人の約4割が少なくとも一つのアソシエーションに参加しているが、直接参加はせず支援金を払う形で参加する人も約4割を占める。結局、「フランス全人口の約8割が何らかの形でアソシエーション活動に関与している」ことになる。先ず、これがフランスのアソシエーションの大きな特徴となっている。

●アソシエーションで働く専従職員(有給の被雇用者)は約120万人で、全給与労働者の約6%強を占める。未だまだボランティアが多いとはいえ、雇用の観点から見て、このセクターの拡大はますます無視できなくなっている。失業問題が深刻化する中で、16歳〜30歳未満の青年を対象にして“公的セクター+アソシエーション”で35万人の雇用創出を図る政策、「青年雇用プログラム」(Emplio−jeunes)が1997年から実行されている。このため、雇用の受け皿としてのアソシエーションの重要性が更に増してきた。

●雇用の創造に関連するアソシエーションとしては「失業者の社会的権利を求める!」(AC!/Agir ensemble contre le Chomage)のようなユニークなものがあり、ここでは失業者自身が考え出す思いもよらぬ斬新なアイデアが生まれている。

●このように、フランスのアソシエーションは「フランス人の社会・文化活動に大きな影響」を与えている。例えば、近年はバンリューでのサブカルチャー、福祉支援活動などの分野で、つまり「特に社会的な問題を抱える地域での役割」が期待されつつある。つまり、このアソシエーション活動は「地域格差や世代間格差の壁を乗り越えるために必要なきめの細かいコミュニケーション・ネットワークの役割を担うこと」がますます期待されている。この点がフランスのアソシエーションについて二つ目の大きな特徴となっている。

●しかし、右派が政権を取るとアソシエーションに対する公的支援が縮小される傾向があり、2002年のラファ ラン内閣発足以降は特にその傾向が強まり、アソシエーションへの国からの補助が削減されてきた。このような政策は、特に「社会的な問題を抱える地域」でのアソシエーション活動に打撃を与えている。なお、この点についての詳細なドキュメント(下記のブログ記事★)があるので参照を乞う。
★ブログfenestra、2005.11.17付・記事『置き去りにされた郊外・燃える郊外(中期的観察 その2)』、http://d.hatena.ne.jp/fenestrae/20051117

  もう一つフランスの“フランス民主主義社会の活気”の熱源となっていることが考えられます。それは1958年10月5日に「第五共和国」(ドゴール大統領体制)が誕生した時のエピソードにかかわります。フランスは、第二次世界大戦後の第四共和制(1946〜1958)下のルネ・コッティ大統領のとき植民地問題(アルジェリア独立問題)が拗れ泥沼化し、精鋭アルジェリア駐屯落下傘部隊の動きに呼応した大規模な軍事クーデタの危機に見舞われます。このため、コッティ大統領は第二次世界大戦時の救国の英雄であるドゴールを首相に指名します。ドゴールは、将軍として軍事力を掌握しながらもナチス・ヒトラーに屈服した苦い経験から、強力な「軍事リアリズム」の信念を持っており、強力な軍事力によるフランス国家体制の保守を信念とする人物でした。結局、ドゴールは大統領に強大な権限を与える新憲法草案を国民投票にかけ、フランス国民はこれを承認して、1958年10月5日に現在まで続く「第五共和国」が成立したのです。このような「軍事リアリズム」で強いフランスを維持するという立場はゴーリスム(ドゴール主義)と呼ばれ、この信念はその後の保守政権によって正統に引き継がれており、現在のシラク大統領はその延長線上に立っています。

  尤も、このゴーリスムは政権交代により左派が国政の主導権を握ったときも完全にフランス政権の信念から消え去ることはなく、例えば社会主義の実験を行ったとされるミッテラン大統領(1981〜1995)も、自身が大統領に選ばれた1981年にはフランスの「核戦力保持」に関する批判(この頃までフランスの左派は核戦力の放棄を謳っていた)を自ら変更しています。このようなフランス伝統のゴーリスムの裏には、国家としてのフランスの存亡を他国の手に委ねることは絶対できないという、大方のフランス人に共通する強固な信念が存在しており、今や、そのような覇権力をフランスに及ぼす可能性のある他国の筆頭がアメリカという訳です。無論、現在のフランス共和国が軍国主義国家だという訳ではなく、見方次第では、このようなフランス独自の外交スタンスはフランス革命以降のフランス独自のユニークな歴史経験がもたらしたものだとも考えられます。ともかくも、このような要素を考慮しつつ現代フランス政治の特徴を抽出して見ると次のようになります(ただし、これはあくまでも筆者の私見に過ぎずアカデミックな見解とは無縁である)。

●フランス国民は、国家の最高法規であるフランス共和国憲法への絶対的信頼(フランスのアイデンティティを保持するための軍事力を直轄する「大統領を中心とする政治権力」と「フランス革命以降の民主主義の理念」をバランスさせる機能だという理解)を持っている。

●フランス国民は、「強力な大統領制」(=ゴーリスムの遺産)と「健全な批判勢力としての左派」のバランスが必要であることを十分に理解している。

●ドゴール以後の現代フランス史を概観すると、継続的に左右の政権が拮抗してきたことが分かる。ミッテランを除くと、ドゴール(1959〜1969)、ポンピドー(1969〜1974)、ジスカール・デスタン(1974〜1981)、シラク(1995〜  )は全て右派であるが、左派のミッテランは15年に及ぶ超長期政権であった。現在も右派と左派の勢力は拮抗しており、これはフランス国民が健全な民主主義を選択するために、自らの歴史経験で身につけた絶妙なバランス感覚のように見える。

●フランス国民には、「民主主義の理念」を自らの社会的活動の実践で現実的に確認するという「大革命」以降のフランス的伝統が身についている。例えば、その典型がフランス特有の「アソシエーション」の存在であり、フランス人は、「反CPEデモ」に見られるように、多くの国民が“真の民主主義を要求するための直接行動の意義”を理解している。言い換えれば、フランス人の多くは“街頭へ繰り出して、政治権力側へ自らの意志を強くアピールすることの重要性”を理解している。

  結局、我われが、民主主義のあり方についてフランスから学ぶべきことは次のような点だと思われます。

●先ず、国家としての「自主独立の外交スタンスを確立する」ことが根本的に重要である。
・・・現在のアメリカ(フランスの民主主義と決定的に異なるのは、アメリカの民主主義が政教分離ではないという点)べったりの姿勢は噴飯ものである。無論、フランスに倣って日本も「核戦力」を保持すべきだなどということではなく、それどころか、日本は独自の歴史経験から学んだ「平和主義」を自負すべき崇高な国家理念として堂々と掲げるべきである。このことと必要限度の軍事力を装備することは別問題だ。

●「日本国憲法」が政治権力に対する強い縛り、つまり政治権力に対する「授権規範性」を持つことの意義を国民が徹底的に学び直し十分に理解する必要がある。
・・・「授権規範性」が無視されれば、政権与党の政治は、小泉政権がそうであるように必ず暴政化し腐敗して、一般国民の主権が侵害され踏みにじられることになる。今や、我が国では自民党の憲法改正案などに見られるとおり、安易な「欽定・大日本帝国憲法」への回帰論(神憑りの軍事国体論の亡霊)が現れつつある(参照、『「軍事的国体論」を超える日本国憲法の先進性』、http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/20050419)。

  『非学者論に負けず』という俚諺があります。これは「自分のこととして自覚して学んでいない人々は、いくら正しいことを学び知識を詰め込んでも本当には理解できない」ということです。大方のアカデミズムで飯を食う方々にとっては耳が痛い俚諺だと思います。今、日本でこの“非学者”に相当するのは、特に“日本の権力政権与党に属する腐敗した政治家、及びその取り巻きのマスコミ人と御用学者たち、彼らによってヘタレ・ショタレなどと見下されて小ばかにされている、いわゆるB層と見做された国民層、そして無気力な野党の政治家たち”です。一方、たとえ学歴などがなくても、フランスの一般国民およびバンリューの住民およびフランスの学生と労働者たちは「政権が腐り易いものであること」を熟知しているのです。

  特に、無気力な民主党など野党の国会議員らは高給官僚や与党の腹黒い政治家に劣らぬ“税金泥棒的存在”と化しています。また、ネット上で際限なく繰り広げられているヘタレ・ショタレらによる“ウヨ・サヨの揚げ足取り(又は梯子外し)ゲーム”もエネルギーの浪費であり不毛です。今の日本で大切なことは、フランスの民主主義のあり方を参考としつつ健全で(アナーキズムへ逃避しないという意味)リアリズムに徹した、行動力のある“批判勢力”を育てることです。バランスの取れた健全な資本主義と民主主義を実現し、世界の平和に貢献するため我われ日本国民がやるべきことは無尽蔵にあるのです。

(参考URL)http://d.hatena.ne.jp/toxandoria/

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