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組織的な犯罪に関する共謀罪の創設の是非  (下)  【Because It's There】
http://www.asyura2.com/0601/senkyo21/msg/659.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 5 月 06 日 22:03:24: ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: 組織的な犯罪に関する共謀罪の創設の是非(上)  【Because It's There】 投稿者 愚民党 日時 2006 年 5 月 06 日 21:59:20)

組織的な犯罪に関する共謀罪の創設の是非(下)

http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-85.html

組織犯罪処罰法改正案において「共謀罪」を創設することの是非について、議論を続けます。共謀罪創設の必要性・合理性について検討します。「組織的な犯罪に関する共謀罪の創設の是非(上)」の続きです。


1.共謀罪創設の必要性はあるでしょうか?


この改正案は、国際組織犯罪防止条約を批准するために国内法を整備することにあり、共謀罪を創設するのは、国際的な組織犯罪を防ぐには、計画や準備段階での共謀を処罰の対象にすることが効果的なので、この条約は、締約国に対し、重大な犯罪の共謀等を犯罪とすることを義務付けているから、と説明されています。

国際的な組織犯罪を防ぐということ自体は妥当な目的ですし、各国の協力が必要なことです。各国のみならず日本における国民の生命・財産を守るという観点からも、条約に基づく各国の協力により、国民の生命・財産を守ることに繋がります。


そうすると、条約を批准することは妥当であり、そのために共謀罪のような規定を創設する必要があるともいえるでしょう。もっとも、国内法の原則との矛盾対立を考慮する必要がありますから、条約加入の際には「留保」を付けることがありうることは、もちろんです。


2.では、共謀罪規定(政府案・与党案)は合理性があるでしょうか?


(1) この共謀罪規定では「対象になる犯罪が、日本では600を超える」のですが(刑法典だけでも130ほど)、これは妥当でしょうか? もっと限定できないのでしょうか?


 イ:この点、法務省のHPでは、

Q4  共謀罪は,たくさんの罪を対象としていますが,もっと限定できないのですか。

 A  「組織的な犯罪の共謀罪」は,組織的に行われる「死刑又は無期若しくは長期4年以上の懲役若しくは禁錮の刑が定められている罪」の共謀を処罰の対象としています。
 これは,国際組織犯罪防止条約が,重大な犯罪,すなわち,「長期4年以上の自由を剥奪する刑又はこれより重い刑を科することができる犯罪」を共謀罪の対象犯罪とすることを義務付けているからです。
 したがって,共謀罪の対象犯罪を更に限定することは,条約上できません。
 もっとも,「組織的な犯罪の共謀罪」は,組織性の要件を満たす重大な犯罪に限り,共謀罪の対象とすることとしていますので,…「団体の活動として,犯罪行為を実行するための組織により行われる」等の厳格な組織性の要件を満たす……共謀に限って,共謀罪が成立するのです。

と、説明しています。

しかし、
「犯罪の実現は、犯罪の決意・計画(陰謀)→犯罪の準備(予備)→犯罪の実行への着手→既遂という過程をたどるのが、刑法は、犯罪の重大性に応じて時間的に処罰範囲を拡張しているのである。
 まず、犯罪の単なる決意や計画(陰謀)だけでは処罰しないのが刑法の原則である。ただし、例外として、内乱の陰謀(78条)、外患陰謀(88条)、私戦陰謀(93条)がある(特別法は除く。以下同じ)。さらに、犯罪の準備行為(予備)は、放火予備(113条)、殺人予備(201条)、身の代金目的拐取予備(228条の3)、強盗予備(237条)などの重大な犯罪に限って処罰されている(このほか、153条)。」(西田典之「刑法総論」275頁)

*陰謀とは、2人以上の者が特定の犯罪を実行することについて、実行前に通謀することをいう(植松正=日高義博・補訂「新刑法教室1」176頁)
*共謀罪にいう「共謀」は予備・陰謀罪の陰謀と同じような意味である(法制審議会刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会 第2回会議 議事録より)


言い換えると、刑法の原則上、犯罪は原則として既遂の形で規定し、そのうち重要な犯罪について未遂を罰して、重要な犯罪のうちでも、特にまた重要なものについては予備を罰し、さらにもっと重要なものについては、予備ばかりだけでなく、陰謀を罰すると定めているのです。

このように非常に重要な犯罪についてのみ陰謀を処罰しているのに、600(刑法では130ほど)を超える犯罪について陰謀と同じである共謀罪を創設するとなると、実質的には共謀罪処罰を原則とするのと同じです。

これでは、現行刑法の法体系と合致しないといえます。そうなると、国際組織犯罪防止条約における共謀罪規定は、国内法の原則と矛盾対立するのですから、本来的には「留保」すべき(=共謀罪規定は効力を否定)だと考えます。

 ロ:川端博・明治大学法科大学院法学部教授は、「600種類にもわたる犯罪が共謀罪の対象犯罪としてよいのか?」という質問に対して、

「第一の要請として国際条約上の要請があるという点と、それから第二には、国内法上の立法事実もございますので、その限度で私は国内法上もこれを立法化しても差し支えないであろうと考えているという趣旨でございます。」(第163回国会 法務委員会第8号(平成17年10月26日))

と答えています。


しかし、足立昌勝・関東学院大学法学部教授は、

「特に日本の刑法は、構成要件を柔軟に定め、法定刑の幅を広げています。その結果、長期四年以上の懲役または禁錮の刑を定める犯罪がふえてしまうのです。構成要件を細分化していれば、長期四年以上の懲役または禁錮に該当する犯罪は、それなりの重さを持つものに限定されているはずです。」(第163回国会 法務委員会第8号(平成17年10月26日))

と批判されています。
要するに、諸外国の刑法では細分化して規定されているから、4年以上の懲役の犯罪も限定されているのに対して、日本の刑法は抽象的に規定しているため、広範囲になってしまうのです。そうすると、「条約の要請がある」として共謀罪を肯定した、川端教授の説明は、諸外国の刑法を前提とした条約であることを明らかに失念した考えであって、妥当ではないのです。

 ハ:川端博・明治大学法科大学院法学部教授は

「特別刑法においては、共謀罪を処罰する規定は決して少なくはないのです。例えば、国家公務員法百十条一項十七号、地方公務員法六十一条四項、軽犯罪法一条二十九号、競馬法三十二条の六、自転車競技法二十八条、モーターボート競走法三十九条等があります。その詳細は、衆議院調査局法務調査室作成の法務参考資料三号二百二十五ページ以下に記載されているとおりでございます。」(第163回国会 法務委員会第8号(平成17年10月26日))

として、多数の共謀罪規定を創設することは不当ではないと説明しています。

ここで説明している規定は、国家公務員法110条1項17号(何人たるを問わず第98条第2項前段に規定する違法な行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者)は3年以下の懲役又は10万円以下の罰金、競馬法32条の6(競馬においてその公正を害すべき方法による競走を共謀した者)は2年以下の懲役又は百万円以下の罰金)、軽犯罪法1条29号(他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者)は拘留または科料、自転車競技法28条(競輪においてその公正を害すべき方法による競走を共謀した者は、2年以下の懲役又は百万円以下の罰金)となっています。
刑法の原則と異なり、軽犯罪法のように非常に重要な犯罪でなくても共謀罪を処罰していますし、刑罰の重さが様々です。


しかし、公務だけを対象としたり、競馬や競輪にかかわる者だけを対象としていて限定していて、本来的に限定して処罰しているのですから、この規定があるからといって、共謀罪規定を創設していいとはいえないと考えます。

さらに、軽犯罪法1条29号は「刑法典では扱わなかった犯罪類型について、それが共謀による場合を特に危険の大きいものとしてとらえ、しかし、単に共謀の段階で犯罪とすることには不都合があるので、少なくとも予備の段階に至ることを要件にした」のです(軽犯罪法の解説(一橋出版)78頁)。そうすると、共謀の危険性はどの犯罪でも同じですし、まして軽微な犯罪でさえ、予備行為を必要とするのですから、共謀罪を創設する場合には、予備行為を要件とする方が妥当といえると思います。予備行為を必要としない共謀罪規定(政府案や与党案)は妥当でないといえるのではないでしょうか。

このように
そうなると、現行刑法を基準とすれば、政府案・与党案は合理性がないと考えます。

(2) 次に、共謀罪規定はどのような者が対象になるのでしょうか? 労働組合や民間団体には共謀罪は成立しないのでしょうか?

 イ:法務省のHPは、

Q3 どのような行為が,組織的な犯罪の共謀罪に当たるのですか。一般国民にとって危険なものではないですか。

A 「組織的な犯罪の共謀罪」には,以下のような厳格な要件が付され,例えば,暴力団による組織的な殺傷事犯,悪徳商法のような組織的詐欺事犯,暴力団の縄張り獲得のための暴力事犯の共謀等,組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の共謀行為に限り処罰することとされていますので,国民の一般的な社会生活上の行為が本罪に当たることはあり得ません。
すなわち,新設する「組織的な犯罪の共謀罪」では,……第二に,@団体の活動として犯罪実行のための組織により行うことを共謀した場合,又はA団体の不正権益の獲得・維持・拡大の目的で行うことを共謀した場合に限り処罰するという厳格な組織犯罪の要件(注)が課されています(したがって,例えば,団体の活動や縄張りとは無関係に,個人的に同僚や友人と犯罪実行を合意しても,本罪は成立しません)。
第三に,処罰される「共謀」は,特定の犯罪が実行される危険性のある合意が成立した場合を意味しています(したがって,単に漠然とした相談や居酒屋で意気投合した程度では,本罪は成立しません)。

と、説明しています。

しかし、足立昌勝・関東学院大学法学部教授は、

「組織的犯罪処罰法は、組織として犯罪を行う団体を処罰するものではありません。対象となる犯罪を行うことができる団体であれば、どのような団体でも適用されます。
 この組織的犯罪処罰法の中に共謀罪を位置づけることは、共謀罪が組織的犯罪対策の一環として行われ、それに限定しているかのような外皮をまとわせることを目指しています。しかし、法案では、組織の持つ犯罪性は要求されていないので、どのような団体であれ、その団体の性質を問わず、法案に該当する犯罪の共謀を行えば、それは処罰対象とされてしまいます。
 これでは、すべての組織が対象となるでしょう。政党、会社、団体、市民運動など、すべての団体や組織が対象となるのです。しかし、この共謀罪の独立処罰を組織的犯罪処罰法に規定することにより、このようなすべての団体が適用対象となるという一般化の外皮を社会に隠し通すことができるのではないでしょうか。」(第163回国会 法務委員会第8号(平成17年10月26日))

と批判されています。
要するに、対象となる団体を限定しているようにみえて、限定されないのです。共謀の段階ではいかなる犯罪に発展するかは具体的には判然としないのですから、対象となる団体ももっと厳格に限定しておくべきだと考えます。

 ロ:与党案はどうでしょうか?

団体を「その共同の目的がこれらの罪又は別表第一に掲げる罪を実行することにある団体に係るものに限る。」として限定しようとする点は評価したいと思います。

しかし、
「与党は「一定の犯罪を行うことを共同の目的とする団体によるものに限定する」という条文により、適用対象を狭めたとする。しかし、日弁連や野党は「これでは、過去に犯罪を遂行した団体とは限らず、NGOなどにも適用可能」と批判」(東京新聞平成18年5月2日付「『共謀罪』 与党修正案を検証する」より)

されています。
結局は、限定されているとはいえないようです。


このようなことから、共謀罪規定(政府案・与党案)は妥当でないと考えます。


3.共謀罪規定を創設することで、「その実行に着手する前の段階での検挙・処罰が可能となり,被害の発生を未然に防止できる」(法務省のHP)のですから、国民の生命・身体・財産を保護することになり、これ自体は妥当といえることは確かです。


(1) しかし、「共謀というのは一つの機会に多数の犯行を同時に並行的に共謀することも,容易にできる」(法制審議会刑事法(国連国際組織犯罪条約関係)部会 第2回会議 議事録より)のですから、およそ実行できないような犯罪も含まれる可能性があります。およそ実行できないような犯罪の共謀は、冗談に近いといえます。

また、「特定の犯罪を実行しようという具体的・現実的な合意」があるとしても、冗談であれば故意(刑法38条1項)がなく、犯罪は成立しません。そうなると、法廷において「冗談だ、いや冗談でない」といった冗談論争が繰り広げられる可能性があります。
犯罪に着手したとか、少なくとも外部的に現れた「予備行為」があれば、冗談であるとの言い訳は難しいですから、「冗談論争」はなくなるでしょう。しかし、政府案では「予備行為」がないのですから、毎回「冗談論争」が繰り広げられる可能性があります。このような「冗談論争」は、訴訟経済に反するばかりか、それ以前にあまりにも馬鹿馬鹿しいのではないでしょうか。

(2) 犯罪の実行に着手する前の段階での検挙できるとしても、共謀事実自体についての立証を必要とするのですから、共謀段階で有罪にできるほどの証拠まで集める必要があります。そうなると、有罪とすることができず、無駄に終わる捜査が増加すると思われますし、他方で、もし共謀罪立証を重視するとなると、既遂に至った場合の捜査の方が疎かになる可能性も出てきます。


全刑法犯の「検挙率は、平成7年以降低下傾向にあったが、平成14年以降上昇に転じ、平成17年は28.6%で、前年に比べ2.5ポイント上昇している…。検挙件数が減少する中、検挙率が上昇したのは、認知件数の大幅な減少による」(警察庁「平成17年の犯罪情勢」(平成18年4月24日掲載)より)


このように現在でさえ、検挙率が下がっているのです。共謀罪で検挙する場合が増えるとしても、一般市民にとって最も重視して欲しい、既遂に至った場合の検挙が減ってしまい、犯罪を繰り返す者を検挙できず、結局は一般市民の利益・社会公共の利益に繋がらないおそれさえあるのです。


共謀罪規定を創設することで、抽象論や理念としては「その実行に着手する前の段階での検挙・処罰が可能となり,被害の発生を未然に防止できる」としても、実際上は、共謀罪規定を創設することで、かえって「被害の発生防止」につながらないおそれさえあるように思えるのです。


<追記>

共謀罪創設の是非を検討する場合に、参考となるHP・ブログを紹介しておきます。どれもご存知かもしれませんが、ぜひご参照下さい。

共謀罪について全般的に理解するには、「「共謀罪」ってなんだ!」さんと、「Under the Sun -TBC- - 共謀罪」さんです。後者のブログは、TBセンターになっていますので、多くのブログを参照することができます。いずれも、法務省による「共謀罪Q&A」へのリンクなど、有益なリンクなされていますので、大変参考になります。

国会における議論は、「第163回国会 法務委員会第8号(平成17年10月26日)」と「第164回国会 法務委員会第20号(平成18年4月25日)」で分かります。前者では、学者の意見が出ていますし、後者では与党案の検討がなされています。

法制審議会での議論については、「北の系」さんの「北の系 資料/法制審議会刑事法部会議事録」の部分と、「愚民党文芸BLOG【下流・B層生活革命】で読むことができます。全部読むのは大変ですが、ざっと斜め読み程度であっても読んでおくといいと思います。

共謀罪創設の是非について精力的に論じているのは、「情報流通促進計画byヤメ記者弁護士」さん、「法と常識の狭間で考えよう」さん、「日本がアブナイ!」さん、「華氏451度」さんです。私が検討したのはごくわずかですが、これらのブログでは共謀罪規定の問題点について、もっと多くの指摘を行っています。

そのほかに有益なエントリーを行っているブログとして、「三輪のレッドアラート」さんの「2006.04.27 Thursday 今日、共謀罪の質疑、もしかすると採決が行われます」というエントリー
、「中山研一の刑法学ブログ」さんの「9月2日の京都新聞」というエントリー、「すうたまちゃん」さんの「根拠なき主張」というエントリーとコメントです。いずれも読んで気づかされる点が多々あるのではないかと思います。

http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-85.html

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