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共謀罪、不安払えるか〜朝日新聞(平成18年5月9日付朝刊)と5月9日法務委員会参考人質疑より【Because It's】
http://www.asyura2.com/0601/senkyo21/msg/742.html
投稿者 愚民党 日時 2006 年 5 月 09 日 20:54:52: ogcGl0q1DMbpk
 

(回答先: 共謀罪、危険水域の綱渡り続く  【保坂展人のどこどこ日記 】 投稿者 愚民党 日時 2006 年 5 月 09 日 18:33:34)

【Because It's There  主に社会問題について法律的に考えてみる。など。】
http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/


共謀罪、不安払えるか〜朝日新聞(平成18年5月9日付朝刊)と5月9日法務委員会参考人質疑より

http://sokonisonnzaisuru.blog23.fc2.com/blog-entry-86.html


朝日新聞(平成18年5月9日付朝刊)に「共謀罪、不安払えるか 乱用は?思想処罰は? 衆院審議、今週ヤマ場」という表題で、政府・与野党修正案を比較した記事が出ていました。また、同じ5月9日には法務委員会で共謀罪創設案について参考人質疑が行われました。この記事と参考人質疑について触れてみたいと思います。


1.朝日新聞(平成18年5月9日付朝刊29面)によると、

「共謀罪、不安払えるか 乱用は?思想処罰は? 衆院審議、今週ヤマ場

 共謀罪創設に向けた衆院審議は、今週が大きな山場だ。野党の反発で『4月末の採決』を見送った与党だが、9日に参考人質疑をし、今週中にも採決する構えを見せている。

 共謀罪をめぐっては、最初に示された政府案に対し、『市民活動や会社などに乱用される』『思想が処罰される』などと指摘が相次いだ。その不安は、与野党がそれぞれに出した修正案……で十分に解消されたのだろうか。2つの具体的なケースに即して政府案、与党案、野党案を比較してみた。

 ●ケース1
 暴力団の組員3人が、最近つけあがっている別の組員を監禁する相談をした。3人のうち1人がその後、相手を呼び出す場所として、ホテルを電話予約。残る2人はそのことを知らなかった。

 ●ケース2
 ある建設会社の決算期が近づいた。『利益を隠すために、経費を水増しする』。取締役会での社長の一言に、幹部らはうなずき、『がんばりましょう』と拍手した。

 政府案では、いずれも共謀罪にあたる可能性がある。与党案では、ケース1が共謀罪にあたり、ケース2はならない。野党案では、2例とも共謀罪は成立しない。

 この違いは、『だれが』『何をすると』共謀罪になるのかという線引きで3案が大きく異なることによる。国会審議も長く、この線引きが焦点だった。

 ◆『誰が……』
 政府案は『団体』の活動として共謀した者を罰するとしている。『このままでも普通の市民団体や会社では共謀罪は成立しない』というのが法務省の公式説明だ。しかし、同省刑事局の検事らが書いた解説書には『会社も『団体』にあたりうる』と、食い違う解釈も書かれている。

 与党案は、こうした政府案のあいまいさを踏まえ、『共同の目的が罪を実行することにある団体』と適用対象を狭め、犯罪組織にしか適用できなくしたという。これで、ケース2の例のように会社の取締役会が合意した場合でも、罪に問われないことがはっきりしたとしている。

 民主党案はさらに一歩踏み込んだ。共謀罪の対象となる罪を『懲役・禁固5年以上』に引き上げ、こうした犯罪を実行することを主たる目的・活動とする『組織的犯罪集団』を適用対象とした。

 ◆『何をすると……』
 政府案では『共謀』さえすれば罪に問われる。法務省は『具体的・現実的合意が必要だ』とし、いわゆる『居酒屋談義』では共謀罪は成立しないと説明する。ただ法文上、こうした限定は明記されていない。

 このため与党案は『犯罪の実行に資する行為』がなければ処罰できないとした。ケース1では『ホテルの予約』がこれにあたる。

 これに対し、民主党は『ホテルの予約は、単に話し合うためだったかもしれず、『資する行為』という概念は、広すぎる』と批判し、処罰条件を『犯罪の予備行為』とした。ホテル予約は該当しない。該当するのは、たとえば監禁のためのロープなどを買いそろえたりすることだとという。

 自民党は8日、法案の配慮規定に『憲法の保障する国民の自由と権利を不当に制限することがあってはならない』との文言を加えるなどの再修正案を民主側に示したが、民主側は『もっと抜本的な修正が必要だ』と述べ、協議はまとまらなかった。

 では、こうした与野党の修正努力で法案の問題点が解消されたのだろうか。各地の弁護士や刑法学者には、なお不安視する声が強い。

 与党案の『資する行為』も民主案の『予備行為』も共謀罪を犯した人に対する『処罰条件』に過ぎず、共謀の疑いさえあれば逮捕ができるからだ。あくまで合意だけで共謀罪は成立し、『資する行為』や『予備行為』は、起訴できるかどうかの判断材料になる。

 『ということは……』。法律家でもある自民党議員は4月25日の衆院法務委で、こんな将来を描いた。『容疑のみで逮捕して、(捜査機関が)その後の調べで実行に資する行為があったかどうかを判定することはあり得る』」

としています。


2.朝日新聞の記事では図表もありますが、引用した記事だけでも、政府・与野党案の違いがよく分かると思います。


(1) 大まかに言えば、政府案は、殆ど無制限な形で共謀罪の創設を認め、与党案はごくわずかだけ制限する形で共謀罪の創設を認め、野党案はもっと踏み込んで制限するような形にして共謀罪の創設を認めるものです。

ただし、いずれの法律案も、「資する行為」「予備行為」は、自由や財産権を著しく制約する強制捜査を制約することにはならないのですから、共謀の疑いさえあれば逮捕はもちろん、捜索差押えをすることも可能となるのです。

(2) このように、基本的に制限しない政府・与党案と制限する野党案というように、共謀罪創設に対して臨む姿勢が異なるのはなぜかでしょうか?


共謀罪創設に関して、平成18年5月9日に法務委員会で参考人質疑が行われました。

衆議院TVライブラリ
http://www.shugiintv.go.jp/jp/video_lib3.cfm?deli_id=30471&media_type=wb
このビデオライブラリは、国会審議テレビ中継で収録した音声と映像をそのまま提供しています。
(平成16年12月 4日以降のものを提供)

案件・発言者情報

開会日 : 平成18年5月9日 (火)
会議名 : 法務委員会
収録時間 : 2時間 02分

案件(議題順):
犯罪国際化及び組織化並びに情報処理高度化に対処するための刑法等改正法案(163国会閣22)

発言者一覧

説明・質疑者等(発言順): 開始時間 所要時間
 石原伸晃(法務委員長)  9時 32分  01分
 藤本哲也(参考人 中央大学法学部教授)  9時 33分  11分
 高橋均(参考人 日本労働組合総連合会副事務局長)  9時 44分  09分
 櫻井よしこ(参考人 ジャーナリスト)  9時 53分  07分
 早川忠孝(自由民主党)  10時 00分  23分
 津村啓介(民主党・無所属クラブ)  10時 23分  22分
 伊藤渉(公明党)  10時 45分  23分
 保坂展人(社会民主党・市民連合)  11時 08分  21分


この参考人質疑において、藤本哲也・中央大学法学部教授(刑事政策)は、
「絞り込みすぎてしまって、肝心なものが抜けるよりも、ある程度余裕ないし幅を持たせて作っておいて、さまざまな刑については運用面で適切に対応すればよい。共謀罪を創設するのが国際的な標準化であって、創設しないと国際的威信を損なう。だから政府案・与党案に賛成する」

という趣旨のことを述べています。
ここに政府案・与党案の基本的な考え方が現れているのではないかと思うのです。要するに、本来処罰の必要がない場合であっても、犯罪共謀ありと疑われるものはすべて処罰の対象とし、今よりもずっと幅広く逮捕・捜索できるようにしたい、というわけです。


「組織的な犯罪に関する共謀罪の創設の是非(上)」というエントリーで述べたことですが、
「刑罰という制裁は強力で、劇薬のような副作用(資格制限や犯罪者としての烙印)を伴うのですから、本当に刑罰をもって抑止する必要の行為のみを刑罰の対象としなければなりません。刑罰というのは、人間の規範違反的行為をコントロールするための「最後の手段」なのです(西田典之「刑法総論」(平成18年)31頁)。」


藤本教授のご見解やそれが基礎にあると思われる政府案・与党案は、処罰の必要がない場合も処罰の対象とするのですから、この刑罰の基本的・基礎的な役割に反する考えであるといわざるを得ません。

藤本教授は、刑法学の基本的な役割さえ忘れてしまったようですが、刑事政策だけの学者ですから、刑事政策的にはいいのかも知れません。(なお、「衆議院TVライブラリ」を聞くと、共謀罪創設案の「共謀」と「共謀共同正犯」の「共謀」が同じ意味であることさえ知らないことが分かります(保坂展人議員の質疑をお聞き下さい)。共謀罪創設案についてよく知らずに質疑に望んだようです。これでは藤本教授の発言の信用性が殆どないと思います。)

しかし、こと国内法として制定する以上、刑罰の基本的・基礎的な役割に反することまで肯定してしまうことは、とても認めることができないと思うのです。


3.平成18年5月9日の法務委員会でジャーナリストの桜井よしこさんが、
「法律ができたからといって、実際上、どれだけ犯罪を防ぐことができるのだろうか? 北朝鮮による拉致事件(早い時期に逮捕者がいて北朝鮮の関与を認めたのにその後も拉致が続いた)やオウム真理教による松本サリン事件・地下鉄サリン事件だって防ぐことができなかったのに」

というような趣旨のことを述べています。
要するに、現行法で犯罪発生を防ぐことができた場合であっても、できていないのです。政府案・与野党案を問わず共謀罪を創設しても、実際上は、犯罪防止の効果がないのではないでしょうか?

他方で、共謀罪が創設されると、上で触れたように処罰の必要がないような場合であっても、逮捕・捜索・起訴される可能性さえでてきます。

犯罪防止の効果がなく、他方で、処罰の必要がない者に対して逮捕・捜索・起訴される……。いったい何をしたいための共謀罪創設案なのでしょうか。政府案・与野党案を問わず疑問視せざるを得ないと考えています。 


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